中学校 - (2006/01/23 (月) 15:37:56) の1つ前との変更点
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あの戦いから三年が経った。僕は今、近所の私立高校に通っている。<br>
自慢じゃないけど成績は学年でトップクラスだ。<br>
「ジュン、何をしているの?」薔薇のように可憐な少女が、ドアの隙間からこっちを見ている。<br>
彼女の名前は真紅。ローゼンによって作られた人形だった。<br>
「あぁ、ちょっとな」<br>
「眠りの時間は大切よ。勉強もいいけど、ほどほどにしなさい」<br>
「わかったよ」<br>
素っ気無く答えたからか、真紅は部屋に戻っていった。<br>
足音が聞こえなくなるのを確認してから、パソコンに向き直った。<br>
「やっぱり不思議だよな・・・」</p>
<p>~三年前~<br>
アリスが誕生した。だがアリスは一瞬で滅んだ。ラプラスと共に。<br>
ローザミスティカの膨大な力に、戦いで傷ついた体では、耐え切れなかったのだ。<br>
その体から溢れんばかりの赤い光が、nのフィールドを包み込み、爆発した。<br>
ラプラスの機転で、僕は助かったらしい。ローゼンは、僕をかばう様に息絶えていた。<br>
残ったものはローザミスティカだけ。<br>
「うわああああああああああああああああああああああああ!!!」<br>
絶叫した。何が起こったのか理解できず、どうしたらいいのかも、わからない。<br>
倒れているローゼンの肩を、必死に揺さぶった。<br>
「おい!起きてくれよ!一体どうなったんだよ!」<br>
ローゼンが死んでいると気づくのに数分かかった。<br>
「なんでだ・・・何なんだよ!」<br>
何もできなかった弱い自分が悔しくて泣いた。涙が尽きるまで泣き続けた。<br>
激しく泣いたせいか、少しだけ冷静になった。<br>
「ここはどこだろう・・・?」<br>
周りを見渡すと、ここが町外れの廃墟だとわかった。<br>
「ッ!?」<br>
ガラスの塊のような物が、太陽の光で反射していた。<br>
まるで、僕に気づいて欲しくて光っているような気がした。<br>
それはローザミスティカだった。</p>
<p>「これは・・・」<br>
手にとってみる。人肌のように温かい。<br>
僕はローザミスティカを抱きしめながら呟いた。<br>
「どうして・・・どうしてこんな事に」<br>
涸れ果てたと思っていた涙が、また溢れ出ていた。<br>
一筋の涙が、頬を伝って零れた。<br>
それは偶然にも、指輪のあった場所に落ちた。<br>
「熱ッ」<br>
真紅と初めて契約したときの痛みが、僕を襲った。<br>
指が焼けるように熱い。激しい痛みに身を悶える。<br>
「痛ッ!!イダダダダダダ!!」<br>
奇声を上げながら、地面を転がり続けた。<br>
痛みが治まってきた頃には、すっかり夜になっていた。</p>
<p>
静寂が辺りを包み込んだ。月明かりで、かろうじて見える。<br>
「はぁ、はぁ・・・。何で指輪が戻ったんだろう。しかも前より痛かったし…<br>
そうだ!ローザミスティカ!ローザミスティカはどこにいったんだ!!」<br>
起き上がろうとするが、立つことはできなかった。<br>
「クソっ!」<br>
怒りを静めるべく、地面を叩いた。<br>
ふと夜空を見上げると、視界の隅に、キラキラ光るローザミスティカを見つけた。<br>
心なしか、ローザミスティカの輝きが、以前より増した気がする。<br>
「あんな所まで飛んでたのか」<br>
這いずるようにして、近づいていった。<br>
不思議なことに、ローザミスティカは、指輪と共鳴しているようだ。<br>
僕との距離が縮まるほど、力強く、燃える様に赤く、光り輝いた。<br>
「眩しいな」<br>
手で光を遮りながら進んだ。</p>
<p>左手を伸ばす。<br>
「あと・・・、ちょっと・・・!」<br>
ローザミスティカに、指先が、微かに触れた。<br>
すると、ローザミスティカが、みるみるうちに、指輪に吸い込まれていった。<br>
「え?」<br>
指輪から温かい光が溢れる。その光は、綺麗に七本に別れた。<br>
七本の光は一本に集束し、轟音とともに閃光が走った。<br>
ほんの一瞬だが、世界は光に満たされた。<br>
僕は咄嗟に目を閉じ、顔を伏せた。<br>
やがて光は収まり、漆黒の夜が戻ってきた。<br>
そおっと瞼を開けていく。<br>
「うぅ・・・」<br>
目を擦りながら、光の集まった場所を見詰める。<br>
「し、真紅ッ!?それに翠星石に蒼星石!雛苺!」<br>
ぼんやりとだが、真紅たちが見える。僕は名前を呼び続けた。<br>
「金糸雀!水銀燈!薔薇水晶!」<br>
さっきと同じように、僕は、這いずりながら近づいていく。</p>
<p>
ぼんやりとしていた視界が、徐々に鮮明になってくる。<br>
「なっ、おまえら・・・・」<br>
言葉に詰まった。真紅たちだと思っていた者が、人間だったから。<br>
背丈は僕より少し小さいくらい。健やかな寝息を立てている。<br>
このまま放っておくわけにもいかないので、真紅にそっくりな子を起こすことにした。<br>
「あのぉ」<br>
全く起きそうにも無い。<br>
「あのぉ!起きてください」<br>
「・・・・・バシッ」<br>
いきなりビンタされた。<br>
「汚らわしい手で触らないで頂戴!」<br>
声は真紅そっくりだ。たぶん性格も。<br>
そういえば僕の手は、地面を這いずり回ったせいで、ひどく汚れていた。<br>
「おまえ真紅か?真紅なのか?」<br>
必死に涙を堪えながら、僕は聞いてみた。</p>
<p>真紅たちの記憶は無くなっていた。<br>
でも僕は覚えている。僕の覚えていることを全て話した。<br>
話し終わる頃には、真紅たちの記憶が戻りつつあった。<br>
水銀燈が暴れて大変だったな。<br>
例外で、薔薇水晶の記憶だけ戻らなかった。<br>
僕は薔薇水晶のことを、あまり知らなかったので、話せなかったんだ。<br>
それから真紅たちは、戦うのをやめた。<br>
真紅と薔薇水晶は僕の家に下宿することになった。雛苺は巴の家に、翠星石と蒼星石は時計屋のおじいさんの家に。<br>
水銀燈はメグのところへ。金糸雀はミっちゃんさんの家へ。それぞれ去っていった。<br>
「人間になったんだから、学校に行ったらどうだ?」<br>
僕の提案で、真紅たちも学校に通うことになった。<br>
ずっとサボっていた中学校、真紅たちと一緒に通ったら楽しかった。</p>
<p>
あの戦いから三年が経った。僕は今、近所の私立高校に通っている。<br>
もちろんみんな一緒だ。姉ちゃんも一個上の学年にいる。<br>
自慢じゃないけど成績は学年でトップクラスだぞ。<br>
昔なら考えられないほど、僕はこの学校が気に入ってる。<br>
「ジュン、何をしているの?」真紅が、ドアの隙間からこっちを見ている。<br>
「あぁ、ちょっとな」<br>
「眠りの時間は大切よ。勉強もいいけど、ほどほどにしなさい」<br>
「わかったよ」<br>
これからも、僕たちはずっと一緒だ。</p>
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