薔「水銀燈…」
水「どうしたのぉ…薔薇…きゃっ…!」
薔薇水晶にベッドに押し倒される
薔「…今日は…私が…攻め…//////」
水「あらぁ…珍しいのねぇ…。」
細い指が薔薇水晶の頬を触る…
それだけで薔薇水晶の顔は林檎のように紅くなる…
薔薇水晶はフルフルと首をフルと顔を少しずつ近づけていく…
薔「…(ドキドキ)///」
水「……」
水銀燈の瞳がまっすぐに自分に向けられている…
薔「…(ドキドキドキドキドキ)//////」
水銀燈との距離がどんどん縮まり…そして…
ぷしゅう~…
薔薇水晶は覆い被さるようにへたり込む…
残念ながら…水銀燈の顔の横…
薔「…ダメ…無理///」
水「ふふふ…それは残念ねぇ…。また今度期待してるわぁ…w」
水銀燈は薔薇水晶の頭を包み込むように両手ではさむと自分の方に向ける…
薔「…///」
水「ダメよぉ…キスするときは目を閉じなくちゃぁ…。」
そう言って目を閉じ…そのまま…
チュッ…
あれから数日が経った。
あの夜の甘美な交わりから水銀燈と薔薇水晶の仲はそれほど変わった素振りはない。
そう、学校では…
薔薇「銀姉さま…一緒に寝よ?」
水「あらぁ、今日もぉ?ここんとこ毎日じゃなぁい?」
薔薇「ダメ…?」
水「いいわよぉ…いらっしゃい、私のお人形さぁん…」
薄着のネグリジェの水銀燈の胸に薔薇水晶は飛び込む。
その瞬間、甘い匂いと柔らかい感触が彼女を出迎えた。
二人は長く、淫靡なキスを交わし、そして交わる。
世界は廻り再び夜が明け朝が来る。
水銀燈は低血圧なので起きるのは何時も遅く薔薇水晶から先に目が覚める。
カーテンの隙間から光が差し込む。
薔薇水晶は朝が嫌いだった。
一日がずっと夜なら、水銀燈とずっと二人で愛を確かめ合えるのに…
薔薇「………銀姉さま、朝…」
水「んん…」
前の日に起こさなかったら怒られたので今日は起こそうとする。
だが低血圧なので中々目が覚めない。
今度は体を揺さぶる。
薔薇「学校…遅れちゃう…」
水「う…ん、めぐぅ…」
水銀燈の口から聞き慣れない名前が紡がれる。
それと同時に水銀燈の目から一粒の涙が頬を伝う。
薔薇水晶はそれが無性に面白くなかった。
薔薇「……姉さまのバ~カ…」
寝ている水銀燈を放って薔薇水晶はベッドを後にする。
そして学校。
梅岡「出席取るぞー、水銀燈ー、いないのかー。」
笹塚「水銀燈さん今日も遅刻なのかな、最近は薔薇水晶さんと一緒に遅刻してたのに今日はもう薔薇水晶さんは来てるし…。」
梅岡「状況説明ご苦労、笹塚ーベジータと一緒に立ってろー。」
ベ「ちょwwwなんで俺までwwwww」
翠「なんか変です。」
蒼「何が?」
翠「薔薇水晶です、今朝から怒ってるです。」
金「どうしてわかるのかしら?」
翠「奴の眼帯を見るです。」
薔薇水晶の左目の眼帯に赤のマジックで『怒』と書かれている。
金「物凄く分りやすいのかしら…」
真紅「大方水銀燈と何かあったのではなくて?」
雛苺「うゅ?どーしてそー思うの?」
真紅「考えてもみなさいな、此処最近の水銀燈との同時遅刻は尋常じゃないわ。」
蒼「確かにそうだね、殆ど同じ日に遅刻して同じ時間帯に登校して来る。」
翠「分ったですぅ!きっと水銀燈と薔薇水晶は学校サボってシューマイ食ってたです。」
「それで今日は水銀燈が薔薇水晶のシューマイを食っちまってそれで薔薇水晶は怒ってるです。」
金「凄いかしら、けどその程度のことこの薔薇乙女一の策士であるカナには分ってたことかしら~!?」
蒼「確かに前に翠星石がシューマイを取ったとき怒ったけど本当にそうかなぁ…」
翠「甘いです、蒼星石!シューマイの執念は恐ろしいです、食ったら最後死ぬまで追い掛け回されてムシャラムシャラ食われるです!」
雛苺「やぁー!!怖ぁぁぁいのぉーーーー!!」
梅岡「翠星石、雛苺、煩いぞ!お前らも廊下で立っていたいのか?」
翠「すみませんですー。」雛苺「ご、ごめんなさいなのー。」
水銀燈は3時間目の放課後になってからようやく学校にやって来た。
水「おはよ~。」
彼女が入ってきたことによってクラス中の喧騒が止まった。
クラスの皆は薔薇水晶と水銀燈の関係に興味があったのだ。
水銀燈は訳がわからないという顔をしている。
水「あ、薔薇水晶ぅ~今朝はどうしたの~勝手に行っちゃうなんて。」
薔薇「………(プイ」
何も言わず薔薇水晶は自分の眼帯が見えるようにそっぽを向く。
水銀燈はそれを見てちょっと吹いた。
水「なぁにそれぇ、新しいギャグ~?」
薔薇「………(ムカムカ」
クラス中は戦々恐々としている。
傍目から見ても誰もが薔薇水晶は本気で怒っている。
このままだといつ薔薇水晶が暴れだすか分ったものではない。
真紅「ちょっと、水銀燈、話があるのだわ。」
堪りかねて真紅が水銀燈を呼び出しこの時は事なきを得た。
水「一体何ぃ?貴女から私を誘うなんて。」
真紅「貴女…薔薇水晶に何かしたの?」
水「どうして?何かあったのぉ?」
翠「愚鈍ですぅ…」
真紅「薔薇水晶は本気で怒ってるわ。だからさっきからあの眼帯をしてい…っ!?」
説明しながら薔薇水晶を見てみると物凄くドス黒いオーラを此方に向けている。
そして目線でこう語っていた。
『水銀燈に手ぇ出したらタダおかねど!』
流石の真紅達もこのオーラには恐怖を隠し切れない。一瞬、薔薇水晶の背後に死神の影を見た気がした。
翠「お、おっかねーですぅ!蒼星石怖いですぅ!」
蒼「う、うん…あれは…流石に…」
雛苺「む、ムシャラムシャラ食べられちゃうのー!怖いのー!」
水「う…何か知らないけど怒ってるのはわかったわぁ…」
金「え?水銀燈には心当たりがないのかしら?」
水「そうよぉ、心当たりがあったらあれだけ怒ってたら謝るわぁ。」
蒼「困ったね…それじゃあどうしたらいいんだろう。」
結局打開策は見つからずクラス中は薔薇水晶の逆鱗に触れないように一日中静かにしていた。
放課後、薔薇水晶と水銀燈は二人だけで学校に残っている。
水「ねぇ、薔薇水晶。いい加減ご機嫌斜めな理由くらい教えてくれなぁい?」
薔薇「………(プイ」
やはり駄目だ。すぐにそっぽを向いてしまう。彼是この押収が2時間近く繰り返されている。
真紅達はもう帰った。彼女達がいると余計話がこじれてしまう。
水「はぁ…私に非があったなら出来るだけ直すからぁ…」
薔薇「………めぐ。」
ボソリと薔薇水晶は囁く。水銀燈は驚いた。
水「貴女…どうしてめぐのこと…」
薔薇「…水銀燈が寝言で…言ってた。言って………泣いてた。」
水「薔薇水晶…貴女……もしかして妬いてるのぉ?」
無言で薔薇水晶は頷く。水銀燈は苦笑した。
水「あはは、そっか…私が…めぐの名前を………」
水銀燈は泣いていた。苦笑しながら泣いていた。
薔薇「水…銀燈……?」
水「ご、ゴメン…その、ね…めぐは私の小さい頃からのお友達だったの。
幼稚園の頃ぐらいかな…その時はよく二人で遊んだわぁ…。
遊んだって言ってもめぐは体が弱かったから殆ど家の中だったけどね。
あおの頃は楽しかった、めぐが笑ってくれたら私は幸せだった…でもね…。」
水銀燈の涙はどんどん溢れ出る。傾いた日に当てられ空と同じ茜色を放つ。
何時しか薔薇水晶は水銀燈を抱きかかえていた。
水「小学校の時に…何も言わずに引っ越しちゃった…の。」
薔薇「え……じゅ、住所は…?」
水「知らないわぁ……本当に…何も言わずに…次の日には居なくなってたんだもの…
ねぇ…私とめぐは友達じゃなかったの…?めぐにとって私はどうでもよかったの……?」
薔薇「銀……姉さま………」
水「ねぇっ!!応えてよぉ……っ………ヒック…」
薔薇水晶の頭の中は真っ白になっていた。
先ほどの怒りは微塵もない。今はただ、水銀燈に泣き止んで欲しい。悲しんで欲しくない。
しかし、自分は何も出来ない。
水銀燈の過去も知らずに一人で勝手に怒って、勝手に水銀燈のことを全て理解した気になっていた。
出来ることと言えば、こんなあどけない水銀燈を抱きしめ他から隠し守ることしか出来ない。
薔薇「姉さま…ゴメン…ゴメンね…姉さま……っ」
水「ねぇ…薔薇水晶…」
薔薇「……何?姉さま…」
薔薇水晶は泣きじゃくって乱れた水銀燈の髪を梳く。夕日に照らされたその髪の色は夜に見るものよりも温かい。
水「薔薇水晶は…ずっと、傍に居てくれるわよね…?」
薔薇「………うん。」
水「本当ぅ?」
薔薇「本当」
水「絶対ぃ?」
薔薇「絶対……私は姉さまから離れたくない…。」
水「薔薇す……っ」
突然、薔薇水晶は櫛を捨て水銀燈の赤い唇に自分のそれを重ねる。
その時、二人の時間は止まった。『このままでいたい…』初めての夜の薔薇水晶の願いは水銀燈の願いにもなっていた。
二部完
薔薇と水のほのぼの学園生活シリーズ
桃太郎電鉄シリーズをやる二人。
水「うふふ、北海道も関西地方も、全部私のものになったわぁ~」
薔薇「……でもボンビーついてるよ…」
水「これだけ物件あるんだし、ボンビーなんて怖くないわぁ」
ボンビー進化。
水「ちょっちょっとぉ、こいつなんなのよぉ!?私の物件がぁぁ」
薔薇「……それはハリケーンボンビーだよ…」
すかさず、薔薇水晶はカードを使う。
水「あっ!私のカードが全部吹っ飛んじゃったぁ~!なにすんのよぉ~」
薔薇「……そういうゲームだし…」
ボンビーがキングボンビーに進化。ついでに、ボンビラス星直行。
水「はあ!?なんなのよ、ボンビラス星に行きたいなんて頼んでないわよぉ!」
薔薇「……ご愁傷さま」
水「もうやだぁ!つまんなぁい。こんなのおかしいわぁ、帰るぅ」
薔薇「…待って…残り64年残ってる…」
短気な人はやらない方が良い。それが、桃太郎電鉄…。
薔「一緒に……帰ろう、水銀燈」
微笑みかけてくる薔薇水晶を見て、水銀燈は不安に思った。
彼女が、自分以外の誰かと話しているのをほとんど見たことがない。
始終一緒にいるわけではないから、全てを把握しているなんてことはない。
それでも、薔薇水晶は誰かと話すのを苦手としている気がした。
自分だって外面が良い訳ではないが、それとはワケが違う。
銀「ええ、そうね」
不安をおくびにも出さず、立ち上がる。
薔薇水晶は自分と話しているとき本当に楽しそうだ。
口数が多いほうではないが、心から笑ってくれているのがわかる。
薔薇水晶といると楽しい。彼女が笑うと自分も嬉しい。
だが、このままではいけないと思った。
このまま依存してしまえば、屹度薔薇水晶は孤立してしまう。
そして、それを防ぐには……自分の存在が邪魔なのかもしれない。
翌日、水銀燈は学校を休んだ。体調不良だった。
家で布団を被ったまま考える。どうすればいいのだろうと。
考えるまでもなく、学校にいる間薔薇水晶は自分にべったりだった。
周囲から見ればそれは二人だけの空間だとか、そんな風に見えたかもしれない。
以前真紅に「仲が良すぎるのもどうかと思うわ」と言われたことを思い出す。
前にそれとなく、友達を作らないのかと聞いてみたことがある。
答えは「水銀燈がいれば、いい」だった。
銀「よし、明日からは少しだけ距離を取ろう」
決心するが、直後に脳裏に浮かぶ寂しそうな表情の薔薇水晶。
揺らいだ。決心はあっさりと揺らいだ。だが、踏みとどまる。
好きだからこそ、彼女にはもっと周囲を知ってほしいと。
常に側にいられるわけではないから。
自分以外の誰かとも、もっと気兼ねなく話せるような関係を。
――遅刻した。昨日昼間から寝ていたため、夜遅くまで眠れなかった。
おかげで学校についたときにはにはもう昼休みになっていた。
一応担任には今朝方もまだ体調が悪かったと言ってはおいたが。
賑やかな廊下を通り抜け、少し申し訳なさげに教室後ろの扉を開ける。
昼食時ということもあってか、幸いほとんど誰も気付かなかったらしい。
何人かに挨拶をしながら席まで辿り着き――信じられないものを見た。
銀「あ……薔薇水晶」
薔薇水晶が、何人かの女子生徒と一緒に笑いあっている。
まだぎこちなさは感じる笑顔だったけれど、安心できた。
難しく考え込む必要なんてなかった。1日距離を置いただけで。
元々素材自体は良かったのだ。密かな人気はあったのだろう。
図らずも、自分の存在がこの状況を妨げてしまっていたこと。
手の掛かる妹が嫁に行ってしまったような寂しいような複雑な気持ち。
だが、それ以上に嬉しかった。
薔「あ、水銀燈……もう、いいの?」
銀「ええ、もうすっかり」
だからきっと、優しく笑えた。
放課後も楽しそうにクラスメイトと話している薔薇水晶。
どうやら帰り際に遊びに行く予定らしい。
邪魔をしてはいけないと思い、気付かれる前に一人教室を出た。
いや、別の人物には気付かれていたが。
紅「良いの?」
銀「あら、いたの?……まあ、いいんじゃない」
紅「貴方も気を遣いすぎて損するタイプね、きっと」
違いないと思った。まあ、性格は変えられないし、そう悪くもないと思っている。
こんなお節介をわざわざ焼いてくれる娘もいないではないし。
銀「ふふ……」
紅「意味深な笑いね。まあいいわ」
真紅と一緒に帰る途中、彼女が買い物があるというので付き合うことにした。
なんでもくんくんのDVDだとかで、後で貸してもらう約束をした。
紅「あら、あれ……薔薇水晶じゃない」
真紅が指差した方向にいるのは確かに薔薇水晶と、先程のクラスメートたち。
思わず、物陰に身を隠してしまう
距離が離れているのでわからないが、和やかにはとても見えない。
身長の低い薔薇水晶を一人が見下ろし、他の二人が諌めようとしている。
薔薇水晶は――睨み上げている?あの気の弱い娘が?
紅「どうやら口論になっているようね……あっ」
女子生徒の一人が、薔薇水晶を突き飛ばした。
地面に倒れた薔薇水晶に、何事か言って去って行く。
もう二人もおろおろしながら、結局はそれに付いて行った。
銀「……どうして?」
真紅が駆け寄っていく。私はそれを見ていることしかできない。
手を取って立たせてあげ、それから一言二言話しただけで。
薔薇水晶も走り去っていってしまった。
真紅がこちらに戻ってくる。……一体、何があったのか。
紅「逃げられたわ。何があったのかは話してくれなかった」
銀「……そう」
きっと、私が聞いても彼女は話してくれなかっただろう。
紅「ただ……哀しそうで。それに怒っているように見えたわ」
翌日、薔薇水晶はまた一人だった。
楽しそうにはにかんで笑っていたのが、嘘のよう。
彼女を取り巻くクラスメートは、もういない。
離れた位置で、薔薇水晶を無視するように話し合っている。
今の薔薇水晶は、周囲を完全に拒絶している。
何故こんなことになってしまったのだろう……
あんなに楽しそうだったのに、今日はこんなにも辛そうで。
だからと言って、私に出来ることなんて……
チャイムが鳴る。先生が来て授業が始まるその直前。
クラスメートの一人が、ちらりと薔薇水晶の方を見た。
申し訳無さそうな表情をしている。
……後で、理由を聞いてみよう。
昼休み
銀「ちょっと、いいかしら」
女「え、水銀燈……さん」
一瞬怯えたような表情を見せる女生徒に苦笑いする。
銀「別に取って食おうってワケじゃないわ。話があるだけよ」
言って半ば無理やりに教室の外へ連れ出す。
残された二人と、離れてみていた薔薇水晶が唖然としていた。
人の少ないところまで行き、事情を問い質す。
この娘は昨日のことについて何か引け目を感じているようだったから。
女「……あの、私たちが悪いんです」
銀「え?」
彼女たちは前々から、薔薇水晶と仲良くなりたいと思っていたらしい。
だが、彼女の側にはいつも私がいたことで、若干近づきにくさを感じていた。
私が1日学校を休んだことで、安心して話ができて仲良くなれたと。
女「水銀燈さんって、学校の支配者だとか、ベジータ君を奴隷にしてるって噂が」
銀「それは嘘よ。ベジータが勝手に私の言うことを聞くだけで」
女「は、はぁ……で、昨日は薔薇水晶ちゃんと遊びに行ったんですけど」
女「楽しく遊んでたんですけど、その……」
言いよどむ。どうやら、私には言いづらい話らしい。
銀「気にしないから、続けて」
女「はい……その……彼女、水銀燈さんのことばかり話すんです」
銀「え?」
女「それで、その事を少しからかったら彼女、怒っちゃって……」
辛そうな、泣きそうな表情になりながら訥々と語る。
周囲からすれば、私がいじめて泣かせているように見えるかもしれない。
女「売り言葉に買い言葉っていうか……シスコンみたいって言っちゃって」
話を聞いて、大体の流れはわかった。
――なんだ、悪いのは私じゃないか。
銀「ごめんなさいね。悪いのはあの子じゃあないから」
女「え?なんで水銀燈さんが謝って」
銀「ちゃんと、あの子にも謝らせるから。嫌いにならないであげてくれる?」
女「あ……勿論です。私たちこそ……ご、ごめんなさい」
理解はできた、だから次は薔薇水晶の番だ。
……あと、これからは少しベジータを使うのを抑えよう。
ベ「銀嬢~俺パン買ってこようか」
銀「邪魔だから暫く消えててくれないベジータ」
ベ「……なっ、ここからが本当の地獄か」
とりあえずベジータを無視して薔薇水晶に近づく。
銀「薔薇水晶、いいかしら?」
薔「……水銀燈」
銀「どうして、彼女たちと今日は話さないの?」
薔「!!……だって」
確信をいきなり突いた事に驚いたらしいが、自分から言おうとはしない。
銀「昨日あったことは大体聞いたわ。彼女たち、後悔してるって」
薔「……し、知らない。私は水銀燈がいれば、それで……」
投げやりな言葉を吐こうとする薔薇水晶を抱き締める。
そんなことを言うべきではない。本心からではないのに、言ってほしくない。
銀「ありがとう。でも私は、薔薇水晶にもっと幸せになってほしいの」
薔「……銀ちゃん」
銀「薔薇水晶は、彼女たちといるのは嫌だった?」
ぶんぶんと、私の胸の中で首を振る。
薔「違う、ともだち……うれしかった」
嗚咽する薔薇水晶の頭を撫でる。
こんなにも繊細で寂しがりやのこの子が、幸せになれますように。
銀「謝ってきなさい。ここで、待っていてあげるから」
薔薇水晶を送り出して暫く、入れ替わるように真紅とベジータが入ってくる。
紅「……水銀燈、こいつをどうにかしてくれないかしら」
ベ「ぎ、銀嬢!!俺とのことはお遊びだったのか!!」
銀「いや最初から別に何でもないんだけど。それで、何?」
紅「薔薇水晶、一人で行かせていいのかと思ってね」
ああ、そうか。真紅は彼女なりに、薔薇水晶のことを心配しているらしい。
いや、それとも私のことだろうか?
銀「大丈夫よ、もう子どもじゃないもの。一人で出来るわ」
ベ「俺は誇り高きサイヤ人の王子だが、そんな誇り愛の為には捨て」
五月蝿いなあと思っていたら、薔薇水晶が戻ってきた。
後ろには、ややばつの悪そうな顔をした3人のクラスメートを連れて。
……まあ、彼女たちが目の周りを腫らしているのは、見ないことにしてあげよう。
なんだかんだで、薔薇水晶も彼女たちも嬉しそうだから。
銀「さ、帰りましょう」
楽しそうに話しながら帰る薔薇水晶たちの少し後ろを見守るように行く。
嬉しくはあるのだが、やはり少なからず寂しさは感じる。
まあ、これでいいのだろう。友達ができても、薔薇水晶がいなくなるわけではない。
紅「寂しそうね……でもわ、私がいるのだ」
ベ「なんだかよくわからんが、ジュースでも奢ろうか銀嬢」
紅「(邪魔臭い……)少し黙りなさいベジータ」
銀「ふふ、二人ともありがとう。私は大丈夫よ」
いつかはきっと、薔薇水晶とも離ればなれになるだろう。
このままずっと一緒にいられるなんて虫のいいことは考えていない。
だからこそ、今のうちに幸せな薔薇水晶の姿を焼き付けておこう。
彼女には友達がいる。もう私が心配しなくても、彼女たちが心配してくれる。
それでも何か辛い事があったら、優しく抱き締めてあげよう。
薔「銀ちゃん、ありがとう!!」
唐突に近づいてきた薔薇水晶にそう言われて、少し驚いたが。
微笑んで頭を撫でてあげる。薔薇水晶も嬉しそうで。
皆がそれを笑って見てくれていた。
おわり