秋狼記16

東方秋狼記



   第十六話:月はまだ出ていないから


 ところ変わって永遠亭。
 この日、輝夜はいつになく落ち着きがなかった。
 のんびり屋なはずなのに、早朝から縁側に腰掛け、そわそわと竹林を眺めているのだ。
 これには鈴仙・優曇華院も不穏な空気を感じずにはいられない。いや、不穏な空気なんて頻繁に感じているのだけれど、というより同居人に平穏を感じさせてくれる者がいないわけで、強いて言うなら大人しい輝夜くらいだ。
 たまに思いつきに巻き込まれることはあっても、薬の実験や罠の数々の標的にしないだけ、輝夜は鈴仙の安全圏だった。しかしその安地も今、崩れ去ろうとしている。
 気にはなる。何があったのかと聞いてみたくもある。
 しかし声を掛けるなんてとんでもない。
 できることならこの場から逃げ出したいくらいだ。
 まさか、あのお気に入りの人間を待っているのだろうか。いやいやそれこそまさかだ。鈴仙の知る輝夜はそんな人じゃない。気に入った人間がいても、気に掛けたりしないのだ。わがままなのだ。とっても。
 こんな時に限って、永琳は新薬の開発とか言って部屋に籠もってしまったし、てゐは言われなくてもスタコラサッサと行方をくらました。あの要領の良さには感服する。それに引き替え自分と来たら、変に憶病で変に真面目なせいで、そして少し要領が悪いせいで、こんな地雷原に放置されてしまっているじゃあないか。
「不幸だ……」
 鈴仙は己を呪った。
 このままだと自分のところに藤原妹紅が突撃してくるような、そんな気がする。それか、前代未聞の数の急患か。
 なんとなく空を仰ぐ。月は出ているか、いや出ていない。
 夕べの月はひときわ狂気に満ちていた。
(きっと、何かの凶兆なんだ。そうに違いない!)
 その時だった。
 ガサッ、と音がして、竹が揺れた。
「号外ですよー! 号外ー!」
 騒々しくも陽気な声がしたかと思うと、風が縁側を吹き抜けていった。
 ほら来た。射命丸文と書いてメンドウと読む。面倒臭い妖怪の代表選手のお出ましだ。天狗みんながこう変なヤツというわけではないらしいけれど、とりあえずこいつは面倒だ。
「といってもまだ刷ってませんけどッ!」
 輝夜の前に降り立った射命丸はとりあえず、びしぃッとポーズを決めた。
 負けじと決めポーズを取り、輝夜は胡乱な眼差しを向けた。
「あら、新聞も持たずに何をしに来たのよ? ブン屋らしくもない」
「えぇーとですね、とりあえず緊急でして。霧の湖がいきなり真っ二つなんです」
「ふぅーん? 山の巫女が試し割りでもしたのかしら。それとも今度のロケットは湖から飛び出すとか?」
「いやぁそれはないでしょう、さすがに。いえ、やりそうな気もしますがー」
「でしょう? いいえ、こんな冗談を言ってる場合じゃないのだったわ」
「ええ、それはもう緊急ですからねっ」
「そうなのよ、緊急。それが霧の湖というのがいかにも緊急よ。私の大事な友達が紅魔館に行ったきり戻らないんだもの」
「あややや! あなたに友達なんていたんですか!」
「あら、失礼ね? 私にもいるのよ」
 なんということだろう。鈴仙は息を呑んだ。
 早口の射命丸と、ゆったりと喋る輝夜の息が合っているという奇妙さにも驚いたが、それ以上に、あの人間を友達と言った事の方が驚きだった。妹紅への嫌がらせか、最悪ペットみたいな立場だと思っていたのに。
 まさか、自分より立場が上だったなんて!
「あの目は妹紅とも違うわ。何も恐れていないんじゃなくて、恐れに打ち勝てる目なの」
「ほぉーう、高慢ちきなあなたがそこまで言うとは! 相当ですね」
「相当なのよ。まだまだうちの兎より弱いけど」
「え。それって紅魔館に行かせちゃあダメじゃないんですかね?」
「えっ、そうなの?」
「そうですとも」
「なにそれまずい。助けに行かないと。才能が開花するどころじゃないわ」
「相変わらずドジですね」
「いいえ、こういうのは『愛嬌がある』っていうのよ。私、姫だし」
「もうワケがわかりませんが、頑張ってください」
 いい顔でサムズアップする射命丸に、輝夜もやる気に満ちた表情でサムズアップ。
「うどんげ、いるんでしょう? 行くわよ!」
「ええ!?」
「事態は一刻を争うわ! 月はまだ出ていないから、月に代わってお助けよ!」
 輝夜は逃げようとしていた鈴仙の襟をむんずと掴み、いつもゴロゴロしているとは思えない膂力で空中へと連れ去っていく。
「不幸だぁー」
 もはや反抗する気も失せて——というより反抗すると後が怖いので——鈴仙はがっくしと項垂れた。湖が割れるだの、紅魔館だの、不穏すぎる。輝夜にとっては無問題かもしれないけれど、憶病な月兎には心労甚だしいというのだ。
 正直、あの子は苦手なんだよなぁ、と独りごちた声は、幸か不幸か輝夜の耳には届かなかった。

   ★

 どうしてこうなってしまったのだろう。
 ミスティア・ローレライが壺いっぱいの水をせっせと運んで自分の屋台へ戻ると、見慣れぬ人間達が自慢の屋台を取り囲んでいた。
 まだ閉店中だよ、と上空から声を掛けようとしたが、どうもおかしい。
 彼らはその手に斧やハンマーを持ち、今にも屋台を壊そうという体だったのだ。
「こらぁぁぁあ!」
 慌てて下に降りて屋台の前に立ち塞がった。人間達はほんの少しだけざわついたが、それだけだ。不気味なくらい冷静で、でも血走ったような恐ろしい目で睨まれ、ミスティアは一瞬だけ怯んだ。
 普通じゃない! こいつら普通じゃない!
 なにが、と聞かれると言葉にできないが、本能が訴えかける。これは、人間じゃないと。
 四人の男が、重い武器を持った四人の男が、無表情で何か短く言葉を交わす。それを見ている一人の女だけが、苦々しい憎悪の表情をしている。
「夜雀……歌う、妖怪…………ッ」
 血を吐くように呟き、顔を歪めると、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「死ね、妖怪……ッ!」
 それは女とは思えないほど、ひずみのある声だった。
 ひび割れた声が四方から押し寄せるような感覚の後、突然体が拘束された。見えない何かに締め付けられているように息苦しい。手足を動かすことも難しく、呼吸もできないので頭がぼーっとする。
 それを待っていたように、男たちが武器を振り上げて襲い掛かってきた。
「ひぃっ」
 火事場の馬鹿力で羽を動かし、身を守る。斧で切られ、ハンマーで殴られ、激痛が走る。
 だがこちらは妖怪だ。痛くても人間よりはずっとずっと耐えられる。謎の締め付けが外れた瞬間に、妖力を全開にして男共を蹴散らす。まずは吹き飛ばし、あとは視力を奪えばいい。人間も商売相手にしている以上、むやみに殺すのも悪いと思ったのだ。
 能力を発動しようとした瞬間、女の様子が急変した。
「う、うぎゃぁああッ!?」
 ひずんだ叫びに、ミスティアはびくりと肩を震わせて動きを止めた。嫌な予感がした。
 視線を向けると、女の手が、異形のものに変化していた。水掻きを備え、指先が丸くなっている。なんだろう、と考える前に友人の顔が浮かんだ。そうだ、あれはよくチルノに凍らされている……
 憎悪一色だった女の顔が、今度は底知れない恐怖に歪んだ。
「うそッ『代償』は声だけじゃなかったの!? 聞いてない! こんなの聞いてない!」
 ぎぃこぎぃことひび割れた声で女が絶叫する。そうしている間にも、体が膨れ上がり、肉も肌もぐちゃぐちゃにされて、ヒトではなくなっていく。きっとそれは激痛を伴って。
「なんで、なんでこんな……ひぐぁッいぎゃぁああアアアッ!」
 断末魔の叫びを上げる中、女の肉体は怪物へと変貌した。原型なんて留めていない。
『ゲ、グェ……グァィィイイイイッ!』
 その怪物はさらにひずみが増した雄叫びを上げると、仲間だったはずの男に飛び掛かり、腕でひと薙ぎに打ち払った。びちゃ、と音がした。即死だ。
 ミンチみたくなった肉を一口に食らい、怪物は次の獲物を見定める。
「お、おい……やめ——」
「ぎぃぁッ」
 ぐちゃり、びちゃり。一人、また一人と逃げる暇も与えずに打ち潰し、犠牲者を骨ごと食い尽くしていく。あるいは、骨まで粉々に砕けているのだろうか。ミスティアに理解できたのは、人間が化け物になり、人間を食べ始めたということだけだった。
 屋台を囲んでいた人間はあっという間に潰し尽くされ殺し尽くされ食べ尽くされ、その光景そのものがゲシュタルト崩壊を起こす中で、怪物はぎょろりと大きな目をミスティアに向けた。
 次の瞬間、怪物の口の辺りが大きく膨らみ——爆音。

   ★

 ふん、と静流は声を漏らした。
 涼しい顔のまま落ちている腕を拾い上げる。
 おそらく体幹を潰されたときにちぎれたのだろう。いかにもぞっとする話だが、不思議と静流の心は落ち着いていた。むしろその事にぞっとする。
 人が怪物となって人を食った。
 まるで怪談話のようだが、そういう例を静流は聞いていた。
 悪魔憑き。夏目がカルネヴァーレと言っていたアレは、人間の魂無き心が怪物へと変貌したものだ。言い換えれば、人間の中には怪物の素が住んでいる事もあるわけだ。もしかすると、自分の中にもいるのかもしれない、と。静流は胸に手を当ててほんの少しだけ目を閉じた。
 静流はあまり迷わない。
 やりたい事と、やっている事。その間にはほぼ溝がない。
 いったいどこに乖離があるのだろう。それが力になるのなら、喜んで使ってやるのに。
『つまり、静流君。ミスティア嬢を襲ったのは先日の蜘蛛と同様の存在だというのかね』
「さぁね。直接見てもいないんだ。真相なんてわかるはずがないだろう」
 にべもなく答え、静流はすぅっと目を細めた。
「……でも、そうだね。とりあえず幸田行成の仲間なのは確かみたいだ」
 ちぎれた腕には全て、目立たない場所に『尊』という刺青が入っている。
 このマーク、静流には見覚えがあった。
「こいつら、尊人党だ」
「なにそれ?」
「幻想郷の歴史を調べ、妖怪の排斥を目論む秘密結社さ。怪しい集団でしかなかったけど、行動力はあってね。妖怪がどこに住んでいるかも調べているから、かなり的確に襲撃できる。まぁ、人を尊ぶと言いつつ人間やめてたら世話無いけどね」
 目に呆れの色を宿して、静流は肩をすくめた。
 なんにせよ、尊人党が厄介な力を手に入れてしまったことには変わりない。人里に郵便システムを敷くという目的の邪魔になるのは間違いないからだ。
 もしそんなことになれば、今まで積み重ねてきた計画が全てお釈迦になる。
「あのさ、今まで不思議だったんだけど」
「なにさ」
「静流ってどこでそういう事を覚えてくるのかなぁって。普段何してたらそうなるの?」
「なにもたいした事じゃないだろう? 何でも屋なんてやっていれば大勢の人を見ることになるし、片手間に本を読んでいれば知識くらい増やせるのさ。おまえたち妖怪のことも少しは知っているよ。阿求の家でいろいろ読んだからね」
 さらりと答えた静流は頭をとんとんと指で叩いた。
 実際、紅魔館で読んだ本の内容はほとんど覚えている。日が経てば少しずつ忘れていくだろうが、それは使わないものをノイズとして切り捨てているだけのことだ。必要な知識を忘れることはまず無い。
 まだ全然だが、ずいぶんと術の勝手がわかってきた。それだけでも大きな一日だった。
 問題は、これからどう戻るか、ということだ。
「静流はこれから永遠亭に行くんだっけ?」
「ああ、そうだな」
「永遠亭ってことは、みすちーも治せるじゃないのさ! なんで早く言わないのよ!」
「言ったよ。おまえが聞いてなかっただけでね」
 静流は半眼で答え、ミスティアに目をやった。
「夜雀はたしか……鳥目にする能力。それで、リグルは蟲を、チルノは冷気を操るんだな。バーネット、おまえはどういう能力があるんだい」
『吾輩はレターオープナーの憑喪神であるからして、さしずめ、封を開ける程度の能力といったところかな』
「封を開ける……ずいぶんと曖昧じゃないか。とはいえ、隠密の逆みたいだな」
「いきなりどうしたのさ静流。何かいい事でも思い付いたの?」
「それを考えているんだよ」
 組んだ腕を指で叩くこと数回、はっとした顔で静流はリグルを見た。
「リグル。蟲を使って離れたところを見張ったりできないのか」
「え? できるよ。私が直接見るワケじゃあないけど、見てもらうことなら」
「ちょうどいいじゃないか。虫が飛んでいても誰も不思議には思わないだろう? 最高の偵察隊じゃあないか」
「でも、なんとなくしかわからないよ?」
「それで十分だろう? 誰にも会わないように進めばいいだけなんだ」
「そんなめんどーなことしなくても、人間くらいならブッ倒せばいいじゃん!」
「本当に学習しないヤツだね。人間の形をしているだけかもしれないだろう。それに相手は複数なんだ。騒ぎを聞きつけて集まられたらどうするんだい」
 すぅっとミスティアを指さすと、チルノははっとしたように顔色を変えた。自分の強さにプライドを持っていても、それは弱っている友達を巻き添えにしていいという理由にはならない。少なくとも、彼女はそういう感性を持っている。
 そんなヤツだから信用できる。
「とにかく、誰もいない場所を見つけていけばいいんだね? うーん、やってみるよ」
 リグルは周りに引きずられやすいが、自分に正直だ。最初に会ったときにそれはわかっている。関係のない者の事まで気にするようなお人好しじゃあないし、自分が好きな方を優先するタイプだ。
 そんなヤツだから信頼できる。
「ついでに人里の様子も見た方がいいだろうね」
「うわ、たしかに、なんかすごいことになってるみたいだよ……」
「すごい伝言の速さじゃあないか。それで、なにがすごいのさ?」
「うまく言えないんだけど、慌ただしいというか、なんかヤバめって感じ」
「つまりドッカーン!ってわけね!」
「それはヤバめじゃあなくて、ヤバイって言うんだよ」
「えー。そんなの、どっちでもおんなじじゃないのさ。ヤバくなくないんだから」
「きな臭いのと火が上がってるのとは違うんだよ。まぁ、どちらも避けて通った方がいいのは間違いないけどな」
「ほらッ! やっぱりそうなんじゃないのさ」
「おまえ、自分で何を言っているのかわからなくなったりしないか?」
「あたいは天才よ。わかんなくなくならないっての」
「ちょっと静かにしてよ二人とも。けっこう集中力がいるんだから」
 不毛な会話を続けていると、ペーパーナイフをタクトのように振るっていたリグルが手をぴたりと止めて不満の声を上げた。
「はぁ……とりあえず、私に付いてきて。大丈夫っぽい方へ行くから」
「さっすがリグルね!」
「あ、静かに付いてきてよ? 歩きながら偵察するんだから」
「わかった。その間に私は黙って術に慣れておくよ。用心に越したことはないんだ」
『うむ、では吾輩もリグル君のタクトとして尽力させてもらうとしよう』
「尽力することなのか、それ……?」
 半眼で静流が呟いた問いは誰に答えてもらうこともなく、森の中へ消えていった。

   ★

 永遠亭は静かだった。
 トラブルを立ち上げる人物がいないのだから仕方ない。てゐはもとより、輝夜もいないとあっては、騒ぐタネなんてそうそう見つかるものではない。
 病室から庭を眺め、療養中の身である上白沢慧音はほっとため息をついた。
 これで何日休んだのだろう。半分妖怪なので瀕死の重傷からも生還できたが、半分人間なので治りが半分遅い。半人半妖とはかくも不便なものだと、胸中で独りごちるわけである。子どもたちは大丈夫だろうか。ため息に混じって出ていくのはそんな心配事だ。
 他の先生を立てようにも適任がいないので休校中だ。
 教師をやるような人が他にいないのは実に遺憾なことではあるが、今の生徒のうち一人でもそういった道に進んでくれると嬉しいなぁ、と淡い夢を抱いたりもしている慧音である。その脳裏にちらつくのは、自分が半ば姉のように接している双子の姉妹である。その妹の方は少し前にふらりと現れて、台所で雑炊を作っている。姉は昨日出ていったきり顔も見せない。忙しいんだろうな、と気遣いつつ、同時に寂しくもあったりする。
 対照的だが揃って優秀な双子が寺子屋を手伝ってくれたらなぁ、という思いがシャボン玉のように浮かんだが、慧音はそれをあっさり破った。
 いいや、彼女たちにそんなことを求めるのは間違っている。二人とも夢に向かって行動しているのだ。それを曲げる権利は自分にはないのだと頷き、同時に静流は子どもの相手なんかできないよなぁ、と悪戦苦闘する姿を思い浮かべてひとり微笑を浮かべる。
 願わくば、あの双子が——
「ちょっと、よろしいかな」
 外から掛けられたずっしりとした声に、慧音はびくりと弾かれたように振り向いた。
 声を掛けてきたのは精悍な顔つきをした初老の男だった。灰色の髪を後ろに撫でつけて髷を結い、武将のように見事な髭をたくわえている。なかなか手入れに苦労しそうだなと、いささか場違いな感想を心中に浮かべ、そこで慧音は目を丸くした。
 彼の体が、ほんの少し『ブレて』いる。
 まだ回復が足りないんだろうかとも思ったが、どうやら違うらしい。
「何用でしょうか、ご隠居」
「ここに、秋瑞穂という少女がいると聞いたのだが」
「ッ、貴方は、何者ですか……」
 突然の名指しに、自然と警戒心が芽生えた。
「その色だけで結構。訪問の許可をもらいたい」
「……名乗りもしない人を入れるとお思いで?」
「ほぅ、賢明でなにより。そうさな、わしは土御門実篤。あの双子にとっては、宗家の長ということになる」
 慧音は耳を疑った。あの双子の身内は探しても探しても見つからなかったのだ。そもそも親の時点で身寄りもなかったというのに。
「そんなはずが……!」
「君が疑うのも無理はない。だが、静流の使う呪符を見たことがあるかね。そう、こんなものなのだがね……」
 懐から一枚の紙片を取り出す土御門。
 紙片に描かれた紋様を見た途端、慧音の意識が白い霧に包まれた。目は虚ろな光を灯し、まるで操り人形のようにぐったりと。
 どうしたのだろうと、疑問に思う。老人の声が反響しながらじんわりと降りてくる。
「入れてくれるかね、上白沢慧音」
「……どうぞ……お入りください……」
「それはありがたい。では、お邪魔させてもらうとしよう」
 一瞬のブレを伴って、初老の男は履き物を脱ぐことさえなく永遠亭に上がり、奥へと入っていった。

 その数分後、様子を見に来た永琳によって、意識を失って倒れている慧音が発見され、事は明るみになるのだが、その時にはすでに瑞穂の姿は永遠亭から消えていたのである。


あとがき

 文体が安定しないのはご愛敬。と言い張ってみるテスト。
 最初にクリアしたのが永夜抄(ベタ)な私としては、永遠亭での掛け合いは書いていて楽しい。
 慧音がいいとこなしとか言っちゃダメ。





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最終更新:2010年12月16日 15:26
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