甲殻類で分かる釣り場の海底状況
生物部の校外活動として、私は釣り歴僅かに1年半ですが、先輩たちと多くの釣り場に行ってきました。2007年の11月頃に初めてカニ網という釣り道具の存在を知ってから、以降釣り場の直下にそれを仕掛け、多くの生物(といっても釣りの外道ばかりだった…)を採集することが出来ました。そして、採集生物の生息する環境を調べていくにつれて、堤防直下の海底がどんな環境にあるか分かるようになったのです。以下の記録は、その海底調査記録をまとめたものです。
調査記録
2月11日(建国記念日) 天気:雨 場所:三浦半島の東大臨海実験場裏の磯にて
採集生物:イソガ二×1(甲羅幅2cm) エサ:イカの煮付け
記録…この日はあいにくの雨で、しかも釣り場が磯だった。また、エサのイワシを買い忘れてしまった為、イカの煮付け(ゲソ)をエサとすることになってしまった。更に、釣り場にいた時がずっと、引き潮に近い状態だったので、水深はわずか60cm程度であった為、調査はほぼ失敗に終わってしまった。
3月15日(土) 天気:晴れ 場所:横須賀
三春町岸壁
採集生物:ツノガニ×4(甲羅幅1cm) ヨツハモガニ×7(甲羅幅2~3cm)
イソガニ×8(甲羅幅3~4cm) モエビ×2(3㎝) シバエビ×1(1cm)
ケブカヒメヨコバサミ×2(2cm)←ヤドカリ科 学名Paguristes ortmanni
イトマキヒトデ×2(6cm) マナマコ×1(8cm)
エサ:イワシ
記録…私の行き慣れている釣り場である三春町岸壁で、カニ網に加えてもんどりを使用した。三春町岸壁は約300m程の岸壁で、この日は岸壁の中央部に仕掛けた。すると、普段は海藻やカイメンを被ってカモフラージュして暮らすツノガニやヨツハモガニが採れた。ツノガニの方は皆一様にカイメンをつけていたが、ヨツハモガニは海藻をつけていて、その海藻の名前はマクサというものだった。マクサはテングサ科で、岩場に根元をつけて暮らす褐草である。更に、岩場で活動するイソガニやイトマキヒトデが多く手に入ったので、ここの海底は岩場で、マクサがその上に生えていると推測される。また、この釣り場では投げ釣りをすると大量の
モミジガイが釣れる。モミジガイとは砂地にすむヒトデである。よって、ここの岸壁直下は岩場だが、何十mより先からは砂地ということになる。投げ釣りをしてもほとんど根掛かり(仕掛けが海底に引っかかること)に遭わない為、岩場もほとんどない砂地なのだろう。何mから先からが砂地なのかは次回来た時に調べてみる。
3月19日(水) 天気:曇り→雨 場所:
本牧海釣り施設(個人釣り行き)
採集生物:ウミフクロウ×5(6cm)←背循目のウミウシ キヒトデ×4(8~12cm)
エサ:アジとイワシ
記録…今回はカニ網一つだけを仕掛けた。この施設は沖桟橋・旧護岸・新護岸の3つのエリアがあるが、この日は新護岸に仕掛けた。結果、カニ類は一切かからなかったが(この日は波が強く、網が5m程動いてしまうので、カニ達は驚いて網に寄らなかったのではないか)、砂泥地にすむウミフクロウ・キヒトデが採集できた。その為、新護岸の直下は砂泥地だと言える。更に、この日新護岸で投げ釣りをした所、シャコとアナゴが釣れた。シャコもアナゴも砂泥地に穴を掘って暮らすので、仕掛けの飛距離からして約6~70m先も砂泥地であることが分かる。ただ、新護岸や沖桟橋で投げ釣りをすると、意外なことに根掛かりによく遭う。また、胴突き釣りや際釣りをする人達は、岩礁帯に潜むカサゴやメバルを釣っている。その為ベースは砂泥地だが、岩場が多く点在していることが覗える。
投げ釣りをした際、海底の岩の一部が掛かった。それを割ってみたら、中の空洞からイッカククモガニというカニが7匹出てきた。このカニも砂泥地にすむが、外来種で、汚染に強いためしばしば大繁殖するそうだ。東京湾に帰化している生物である。
3月25日(火) 天気:霧→晴れ 場所:再び三春町岸壁(個人釣り行き)
採集生物:イソガニ×11(甲羅幅は2~4.5㎝) ヨツハモガニ×3(甲羅幅2~3cm)
ケブカヒメヨコバサミ×8(1~3.5㎝) イソヨコバサミ×1(2cm)
モエビ×4(3㎝) アミメハギ×2(2cm)←カワハギ科
イトマキヒトデ×2
エサ:イカとサンマの頭
記録…今回はカニ網ともんどりを使用した。今回採集できたものは、前回とほとんど同じであったが、前回に比べ量が多くなった。さて、前回ここに来た時の疑問(何mより先からが砂地か)を晴らすべく、3本の竿の投げ仕掛けを飛ばす距離をそれぞれ変えて、岸壁から最も近くからモミジガイが釣れた所から先を砂地とする調査を行った。すると、意外なことに岸壁から僅か5mの地点からモミジガイが3匹も釣れたのだ。今の所岸壁直下に垂らしたトラップからモミジガイは採集できてはいないが、このデータからは岸壁直下も一応砂地であることが想像できよう。それに対し、直下からは岩場で活動するイソガニやイトマキヒトデが多数採集されている。すると、前回の釣り行きのも含めたデータを総括して考えると、岸壁直下の海底の地形は、砂地がベースで、岩場が点在している、と考えることが出来る。岩場がベースで砂地が点在していると考えることも出来るが、モミジガイは岩場にすむヒトデと違い、歩行に使う足(管足という)に吸盤がない。その為、岩場を這ったり吸い付くことが出来ないので、岩場にすむ事は出来ないのである。吸盤がないのは、彼らの先祖が(といっても何千万年も前)、生息場所を砂地とした為、砂に潜ったりし易いように吸盤を退化させたのだと思われる(岩礁帯にすむ、吸盤のあるヒトデは、一応砂地にも生息できる)。
沖については根掛かりが少なく、モミジガイが前述の通り多いことから、沖はほぼ完全な砂地であると思われる。
終わりに
え、もう終わり!?と思われた方もいらっしゃるだろうが、ご安心を。次回の部誌
(文化祭時)には更に多くの調査記録を掲載しておくので、その時をお楽しみに!次回の部誌では、勝浦や大磯など、釣りの有名地での調査もあるので。さて、今回の感想
…実は、この調査を始めるきっかけとなったのは、部員のU氏が、三春町岸壁において、甲羅幅15㎝程のワタリガニを網で掬ったことでした。それを見た私は、ワタリガニをもっと確実にたくさん捕る方法はないかと思索していると、カニ網という釣り道具があることを知りました。その後、期待しながら三春町岸壁にカニ網を垂らしてみると、なんと食う価値もないイソガニ達しか捕れなかったではありませんか!そしてなぜワタリガニが捕れなかったのだろう、と思索するうちに、どうやら岸壁直下は岩場で、ワタリガニのいるような砂地ではないのだということを、食うことのできない採集生物達が教えてくれたのです。…要は、この調査の発端は、私の欲望から始まった、というわけですね。
では、最後にまとめ。これからこの釣り場に行かれるという方は参考にでもしていただければ.幸いです。
本牧海釣り施設:海底は根の多い砂泥地。沖桟橋も同様。
三春町岸壁:海底は砂地がベースで、岸壁から10~20m程度までは根が多い。だが沖は根がほとんどない砂地である。
最終更新:2009年09月22日 22:23