拝啓、お母さん。

私はきっともうすぐお母さんの元へ行きます。っていうか逝きます。
……私に恨みでもあるんですか、学院長。まさかバトロワに参加するとか夢にも思ってませんでしたよ。
いや、読むのは好きですよ、バトロワ。パロロワも結構サイト回って読んだりしますし。
でも自分が参加したいなんて思わないですよ普通。思うわけないじゃないですか。
だって私が参加したら確実に真っ先に死ぬじゃないですか……。ラビットシンボルください、本当に。
ああ、私の幸運値は-999以上だから、幾つ装備したところで変わらないですね、あはは。

「……支給品、確認しよ……」

私が今出来る最も最善のことだと思いました。決して虚しくなったとか、そういうことはありません。たぶん。
とりあえず、デイパックを漁ります。わー、本当に地図とか食料とか入ってるよあはははは。
いや待て落ち着けKEELに……いやCOOLになれ、私。武器を確認せねば。
……手ごたえ、あり。なんか硬くてツルツルしてます。それをデイパックから出してみると、そこには――

ながつきは かくせいきをてにいれた! ▼

「……………………」

初っ端から死亡フラグきたああああああああああ!!!1!!
こ、粉☆バナナ! これは私を陥れる為に誰かが仕組んだ孔明の罠としか思えない!
ああ、お母さん。私はレジュームリングを使った憶えも某仮面ストーカーの仮面を装備した憶えもないのですが。
しかもご丁寧に説明書までついてやがります。なんか泣きたくなってきました。これを私に使えと?
……い、いや落ち着け。COOLになれ。まだ支給品が1つとは限らないじゃないですか。
また、デイパックに手を突っ込む。中を漁る。今度は……布?

ながつきは ルルさんセットをてにいれた! ▼

「…………あはは……」

コ ス プ レ し ろ と !?
とりあえずルルさんセットを持って立ってみる。……やっぱり、私にはとても着れそうにない。サイズ合わないヨ。
これにもごっ丁寧に説明書が。『ゼルガディス=グレイワーズが女装する時に着ていた服』。それだけかい。
いや、見たいんですけど。見るだけならいいんですけど。ゼルさんの女装姿見たいんですけど。詰め物まで入ってるヨ。
仕方なくルルさんセットを仕舞う。後1個、何か武器が入っていることを願って私はデイパックを漁った――!

おめでとう! ながつきは ソーディアン・アトワイトをてにいれた!! ▼

鞘に入っていたとはいえ、見覚えのあるソレは確かに刃物。私は驚きのあまり、一瞬アトワイトを地面に落としそうになった。
テイルズオブデスティニーのヒロイン、ルーティさんの使っていた武器。
ディムロスさんの恋人、アトワイトさんの人格が入ったハロルドさんの作った剣。
……もしかしたら喋るのかな。ひょっとして私にも声が聞こえちゃったりするのでしょうか。

「……あの、聞こえますか? ソーディアンのアトワイトさん、ですよね? 聞こえたら返事を……」
『私の声が聞こえるの!?』

私は再びアトワイトさん(剣だけど)を落としそうになった。慌てて周囲を見渡すけれど、誰もいない。
と、いうことは――

「……アトワイトさん、ですか?」
『ええ。あなたはルーティじゃ……ないわね。あなたは誰なの? 何故、ソーディアンのことを知っているの? そもそもここは――』
「ちょ、待って。答えきれませんから」

とりあえずアトワイトさん(一応年上なので、剣でもさん付け)の質問に1つ1つ答えていく。
名前は長月コトナ、コトナの部分が名前(おかしな感じだといわれた)。
私の世界は色々な伝説が本で残っていて、ソーディアンのことはそれで知った(あながち間違ってはいないと思う)。
私はある学院に通っていたのだが、気づいたら変な場所にいて現在殺し合いの場にいます。
とりあえず、こんな感じで答えてみた。するとコアが光り、アトワイトさんは少し慌てた様子で

『そこにルーティは参加させられている?』

と聞いてきた。
私はデイパックの中から名簿を取り出す。ルーティ・カトレット……ルーティ……。
さらっと見てみたところ、ルーティの名前は名簿になかった。その代わりと言うのもなんだが、“リオン”の名前を見つけてしまった。
複雑な気持ちを覚えつつ、とりあえずアトワイトさんに報告をすることにする。

「ルーティさんは参加してないみたいです。よかっ……」
『コトナ、後ろ!』

反射的に振り向くと、そこには人が立って――人?
振り向く→武器持ってる→実はマーダー→ぬっころされる→【長月コトナ 死亡確認】
最悪の展開が頭の中を巡って、埋め尽くしていく。悲鳴を上げる間もなく私は、気がついたら両手を突き出していた。

「――――!」

何か言ってたようだったけど、よく聴き取ることは出来なくて。
ざぱーん、と大きな飛沫を上げて何かは湖に落ちた。……あれっ?

「お、おおおお……落としちゃったー!!!」
『落ち着きなさい! 相手は大人だったようだし、上がってきた時に謝れば……』
「こ、殺されるかも……」
『…………』
「黙らないでください、お願いだから!」

ああ、私の人生終わったかも……。
拝啓、お母さん。私がそっちに逝ったら生あたたたたたかく迎え入れてやってください。

   *   *   *

俺の名前はゼルガディス。クールだけどちょっとお茶目で暗い過去を持った(以下略)
そして俺は今、1人の少女に……

「あああああ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、本当にごめんなさい……」

……物凄く謝られていた。(しかも子供だというのに土下座までしている)
何故、こんなことになったのか。それは数十分前に遡る。

俺の名前は(以下略)
俺は今、殺し合いの場にいる。
何故か――それは分からない。気がついたら知らない場所に飛ばされ、気がついたらゼロスがいて、気がついたら……
……少し混乱してるのかもしれない。
腰に下げた剣に触れようとして、その剣が無いことに気がついた。どうやら、武器は没収されたようだ。
そういえば、武器は支給されると言っていた気がする。早速、デイパックを調べてみた。
最初に出てきたのは……小さな壷だった。
説明書によると『マジカルポット』というもので、時間を置いて蓋を開けるとアイテムが飛び出してくるらしい。
早速マジカルポットの蓋を開けると……赤くて丸いトマトが2個、飛び出してきた。
……まあ、食料に困ることはないだろう……多分。
次に取りだしたのは……これは、調理器具か? お玉、フライパン、包丁だった。
これにも説明書がついており、それぞれ伝説のおたま、金のフライパン、万能包丁というらしい。
……いや、俺にどうしろと。
確かにお玉は黄金色、フライパンは金色をしている。売ればそこそこ高値になりそうだが、武器になりそうなのは包丁ぐらいだ。
包丁でも、武器があることに喜ぶべきなのだろうか。ゼロス後で憶えてろ。
そして最後に出てきたのは……巨大な飴、だった。
説明書によると、正確には飴を模した杖(ロッド)で名前はロリポップ…………
俺は、頭を抱えたくなった。寧ろ泣きたくなってきた。

暫く歩くと、湖が見えた。湖の近くで1人の少女(おそらく)が座り、何やら名簿を読んでいる。
そしてその少女の付近には、剣が置いてあった。
……交渉すれば、交換してもらえないだろうか。
殺し合いの場でこの考えは甘いのかもしれないが、相手は(おそらく)普通の女子供だ。リナとは違う(といいなと思う)。
とりあえず話だけでもしてみようと近寄ってみる。

『コトナ、後ろ!』

何処からか声が聞こえた。――何故だ? この少女の他には誰もいなかったというのに。
それに驚いたのか少女は両手を突き出した。俺はそれでバランスを崩し――

「っ……水気術(アクア・ブリーズ)!」

このままでは湖に落ちる――そう理解した瞬間、俺は水中での呼吸を可能にする呪文を唱えた。
唱え終わった瞬間、俺の岩の体は湖に落ちた。……軽いデジャヴを憶えた。

「浮遊(レビテーション)」

水の中で浮遊(レビテーション)を唱え、水面まで上がっていく。湖から上がった瞬間、少女は物凄い勢いで土下座してきた。

……そして、今に至る。

「本当にすみませんごめんなさい、敵意がないとは思わなくて……」
「もういい。俺は現にこうして生きている。あまり気にするな」

すると少女は顔を上げ、最後に一度だけ謝罪の言葉を口にした。……流石に、前にも一度湖に落とされたことがあるとは言えない。

「俺の名はゼルガディスだ。ところで、お前さんの他に誰かいるのか?」

濡れた服を脱ぎ、絞って木に干しながら問いかける。(どうやら彼女に敵意はないようなので、大丈夫だろう)
ついさっき聞こえた少女以外の声が気になった。俺は細心の注意を払っていたつもりだったし、少女以外に人がいないのも確認した。
少女は置いてあった剣を持ち、俺に見せてこう言った。

「アトワイトさんです。喋る剣のソーディアンです。あと、オレの頭はおかしくないと思います」
『……コトナ。あなた剣に向かってさん付けって……』
「剣が……喋っている!?」
『私の声が聞こえるの!?』

少女――コトナの持った剣の中心の装飾部分(レンズのような見た目をしている)が何度か光り、女の声が聞こえた。
コトナの説明によると、アトワイトはソーディアンという特殊な剣で、人格が入っているとのこと。
つまりは元々アトワイトという名の1人の人間がおり、その人格が入った剣がソーディアン・アトワイトなのだという。
そしてその声は本来、ソーディアンマスターにしか聞こえないという。

「うーん……誰にでも声が聞こえるように改造されたとか?」
『憶えはないわね……。そもそも、そんなことが出来る人間がいるとは思えないわ。ハロルドはもう生きていないもの』
「人間か……。なら、その改造を施したのが“人間ではない生き物”だとしたら?」
『……心当たりは?』
「主催者の1人のゼロスだ。奴は人間のナリをしているが、人間じゃない。魔族だ」

勿論、ゼロスだと決め付けるのは時期尚早だろう。
名前こそ聞いたことはないが、あのウサ耳女(みろるんと言うらしい)もひょっとしたらゼロスのように魔族なのかもしれない。

「……それだったら学院長の仕業かもしれないです」
「学院長……?」
「ああほら、みろるん学院長ですよ。ウサ耳の」
「あいつを知っているのか!?」

コトナの肩に掴みかかると、コトナは小さく悲鳴を上げた。……そういえば、ほぼ全裸に近い状態だった。
とりあえず謝ってから、全然乾いていない湿ったマントを羽織った。

「オレの通っている学院の学院長でして、ストーカーは鈍器で撲殺、勝手にパソコンやる輩はアイアンクロー、逆らうと全治3ヵ月、そんな感じの可愛いウサギさんです」
「とりあえず、一体何処がどう可愛いのかから聞こうか」
「えっと……み、見た目?」
『聞いてどうするの』

確かに、見た目だけならリナやアメリアよりも幼く、そこそこ可愛らしい顔をした少女だろう。
しかし、魔族であるゼロスと組んでいる辺り、油断することは出来ない。ただの子供が魔族と組む筈がない。
……しかし、服が無いのは辛い。湖に落とされるのは想定外過ぎる。

「あ、あの、ゼルガディス……ゼルさん」

コトナが遠慮がちに話を切りだす。人と話すのが苦手なのか、俺の外見に恐れているのか……それとも、両方か。

「あの、オレ……服、支給されたんです」
「本当か?」
「はい。サイズが大きすぎて着れそうになくて……。湖に落としたのもオレですし、よかったら……ど、どうぞ」

よくよく見てみると、初対面だというのに、コトナが俺の外見に怯えている様子はなかった。
どちらかというと他人と話すのが苦手で、尚且つ常に控えめに出ている、そんな感じだろう。

「……ああ。ありがたく使わせていただく」

そう言うと彼女は、どこか嬉しそうにデイパックの中に手を突っ込んだ。
きっと根は真面目なのだろう。

「はい、これです!」

……デジャヴ再び、同時に眩暈を憶えた。
『神聖フェミール王国』――優秀な巫女を育成する為、男性の入国は一切禁止された国。
そこに入る際、リナ達女性陣に無理矢理女装させられたことがあった。そこで姫さんを助けたが、姫は実は男だった。
しかもそこの住人の殆どが男だった。……なんの為に女装したんだ、一体。

そしてその悲劇が、今また繰り返された。

「何故俺がこんな……こんな……!」
「だ、大丈夫です! すっごく似合ってます! オレよりずっと美人です!!」
「うれしかねーよ」

心なしか目が輝いている気がするのだが、気のせいか? いや気のせいと信じたい。
そういえばこのガキ詰め物も入れやがっ(省略)

『……コトナ、あなた喜んでない?』
「……ちょっと嬉しかったりします、はい」


俺はそろそろ、本当に泣きたくなってきた。


【D4 湖 朝】

【名前・出展者】長月コトナ@リアクション学院の夏休み
【状態】健康、ちょっとドキドキ
【装備】ソーディアン・アトワイト@テイルズオブデスティニー
【所持品】支給品一式、拡声器@現実
【思考】
基本:殺し合いには乗りたくない。早く帰りたい
1:る……ルルさーん!
2:ルル……ゼルさんと話し合いがしたい
3:もうちょっと女装拝みたいなぁ……


【名前・出展者】ゼルガディス=グレイワーズ@スレイヤーズ
【状態】疲労少、ルルさんセット着用中(女装中)
【装備】無し
【所持品】支給品一式、お料理セット@テイルズオブデスティニー2、ロリポップ@テイルズオブジアビス
マジカルポット@テイルズオブデスティニー2
【思考】
基本:殺し合いに乗るかどうかは決めかねている
1:何故俺がこんな……
2:コトナと情報を交換したい
3:早く元の服を着たい
※元々の服は付近の木に干してあります


【名前・出展者】ソーディアン・アトワイト@テイルズオブデスティニー
【思考】
1:まったく……
2:今後の方針を決めたい
基本:出来る限り助言はする。また、もし持ち主が殺し合いに乗ったらなんとか説得する
※ロワ内では誰でもソーディアンの声を聞くことができます
※また、威力は落ちるもののソーディアンさえ持てば誰でも晶術を扱えます


【ルルさんセット@スレイヤーズ】
アニメスレイヤーズNEXTでゼルガディスが着ていた(アメリアに着せられた)服。詰め物付。

【お料理セット@テイルズオブデスティニー2】
伝説のおたま、金のフライパン、万能包丁の3つ。秘儀! 死者の目覚め!!!

【マジカルポット@テイルズオブデスティニー2】
時間を置いて蓋を開けるとアイテムが出てくる。
ロワ内では食料が出てくる確率が極めて高く、よくてアップルグミかオレンジグミ程度。


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最終更新:2008年11月14日 22:43