* * *
ジューダスが何よりも驚いたのは、殺し合いに参加させられたことではなく、自分が生きていることだった。
歴史は修正され、“ジューダス”という名の人間は確かに“いなくなった”筈なのだ。
けれどもジューダスは、こうして生きている。体を動かし、物を見て、息を吸って吐くことも出来る。
そしてジューダスは今、墓場に立っていた。思わず自嘲がこぼれる。
――なんという皮肉だろう。自分が死んだ人間だから、墓場か。それとも単なる偶然か。
ジューダスはとりあえず、デイパックの中身を確認した。
デイパックの中から名簿を見つけ、自分の仲間がいないことを祈りながら目を通す――息を、呑んだ。
“リオン・マグナス”
そう、かつてジューダス自身が“一度死ぬ前に”名乗っていた名前。
結果的にリオン・マグナスとジューダスは、同一人物なのである。
“リオン”と“ジューダス”――何故、同一人物であるのにこうしてこの場に共存できるのだろう。
疑問は幾らでも沸いてくるが、それの答えは見つからない。
ジューダスは名簿を一旦畳み、デイパックに仕舞った。支給品を確認する為、デイパックの中を探す。
早く真実を、知るためにも――
「……はは。これで正体を、隠せというのか」
ジューダスがカイル達と旅をしていた時、つけていたもの。
竜族の骨で出来たそれは、リオン・マグナスだった男の正体を隠していた仮面だった。
そこでジューダスは初めて自分が仮面をつけていなかったことに気がついた。また、自嘲が漏れた。
もし本当に“リオン”が参加していたとして、同じ顔の自分は何か混乱を引き起こすかもしれない。
それに、“ジューダス”を知らない“リオン”に、自分の正体がバレるのはマズいだろう。
ジューダスは仮面を手に取り、つけた。
『じゃあ……ジューダス!』
一緒に旅をしていた、英雄と呼ばれる男の息子の声が蘇ってきた。
自分を仲間だと言ってくれた、正体が分かっても普通に接してくれた、――助けようと思ったのに、逆に助けられてしまった。
一度死んだ人間には、大きすぎる幸せだった。
「……カイル」
英雄の息子の名を、父親に負けない、歴史には残らぬ英雄の名を、呼んだ
(僕は再び、“ジューダス”となろう)
決意を胸にジューダスは、またデイパックの中にある支給品を探し始めた。
そしてジューダスが見つけたのは――!
「こ、これは……!」
薄く丈夫な膜のようなものに、何か黄色いものが入った容器が3つ包まれている。
また、同じような膜で包んである小さく透明なスプーンも一緒についていた。
そしてそこには確かに“プリン”の3文字があった。
それはかつてジューダスがリオンだった時、メイドのマリアンがよくおやつに作ってくれたものだった、
その美味しさに感動しつつも、男が甘いもの好きというのは恥ずかしいものがあり、「甘いものは嫌い」だと言い張っていた。
ジューダスはゴクリと唾を飲み込み、プリンを見つめていた。
仮面をつけた黒衣の少年が、プリンを持って墓場に佇んでいた……。
【C1 墓場 朝】
【名前・出展者】ジューダス@テイルズオブデスティニー2
【状態】健康
【装備】骨仮面@テイルズオブデスティニー2
【所持品】支給品一式、プリン×3@現実、未確認支給品
【思考】
基本:ゲームには乗らないが、襲ってくる輩には容赦しない
1:プリン……マリアン……
2:支給品や地図を確認する
3:プリンを後で食べたい
※近くにいるであろうネスにはまだ気づいていません
【骨仮面@テイルズオブデスティニー2】
ジューダスが着けてる竜族の骨の仮面。TOLでは防具として登場していた。
【プリン@現実】
某お皿にプッチン出来るタイプのプリン。プラスチックのスプーン付。
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最終更新:2008年11月15日 18:08