簡単に言えば、ただただ悔しかった。
何の為に医者になったのだ。見ているだけの自分が嫌で、助ける為に医者になるのではなかったのか。
医者になったところで、結局助けられてないじゃないか。
けれども名も知らぬ少女は、言った。
『私の敵討ちをしろ、なんて、いわ、ない、自分を、後ろめたく、みる、な、とだけ言っておく、そして、この状況を、打破、しろ』
『、、、、、、……………Vっ!』
医者の少女――レベッカは、確かな決意を持った。
少女の遺体から少し離れた場所でレベッカは、支給品の確認を始めた。
遺体をじっと見ていることなんて、出来なかった。出来れば戻って埋葬してやりたいが、まずは支給品の確認だ。
もしかしたら、何か役に立つ道具があるかもしれない。
「……これは……」
スラリとした細身の剣が出てきた。所々にある細かい銀の装飾が、まるで貴族の使う剣のように魅せた。
レベッカは内心ホッとしていた。自分の得意とするのは大剣ではない、レイピアのような細身の片手剣だ。
この剣――説明書によると、ソーディアン・シャルティエと言うらしい――も、レイピアとは言わないが細身の片手剣だ。
人を殺す気なんてないが、それでもこのシャルティエで身を守ることは出来る。何時も通りの戦い方が出来る。
『やあ、ぼくシャルティエ!』
「えっ!」
何処からか声が聞こえ、慌てて周囲を見回した。
しかしどんなに見回しても、見えるのは薄暗い森の中と背の高い木だけだ。
『僕です、シャルティエです。よかった、僕の声が聞こえるんだね』
「シャルティエ……って、あなた、この剣なの!? 剣がしゃべってるの!?」
『はい』
コアクリスタルが金色に光った。
シャルティエはレベッカと話ができると分かった途端、様々なことを喋りだした。
自分はソーディアンという剣で、人格が投射されていて喋ることが出来ること。
自分を持てば『晶術』という特殊な術を使うことが出来ること。
自分の持ち主は、『リオン・マグナス』という少年だということ。
「リオン……リオン……あったわ。リオン・マグナスくんね」
『坊ちゃんもいるんですか? 坊ちゃんはどこ?』
「ごめんなさい、シャルティエくん。リオンくんはここにはいないのよ……」
レベッカが申し訳なさそうに言うと、シャルティエは『そっか……』と言った。
彼にもし人間の体があるのなら、悲しげに俯いてしゅんとしているだろう。
「残りの支給品は……箒? キリサメ・マリサっていう人のものって書いてあるけど……」
『ねえ、キミ……名前は?』
「あ、そうだったね。ごめんね。私はレベッカ・ミューンよ」
そう言って自己紹介しながらもレベッカは支給品を探すが、出てきたのは澄んだ青い宝石のついた指輪。
シャルティエ、箒、指輪。これがレベッカの支給品だ。
「埋葬に使えそうなものはないわね……」
『レベッカ、近くに町はある? あったら、そこで使えそうなものを探そうよ』
自分が今いるのは草原、C3だ。少し遠くに町のようなものが見えたので、間違いないだろう。
レベッカは筆記用具を持ち、地図のB3の部分に印をつけた。さっきまで自分がいた場所……つまり、少女の遺体がある場所だ。
「待っててね、絶対あなたを埋葬するから。墓標に名前は書けないけど……でも、レニーファって人から名前を聞いたら絶対に墓標を立てるから!」
『レベッカ! 坊ちゃんは……』
「あなたの持ち主も必ず探し出すわ。責任を持って、あなたを持ち主まで返しに行く。それまでは……私で我慢してくれる?」
『……うん、レベッカ!』
少女は剣を持ち、歩き出した。
物言う剣を持って。
物言う剣、シャルティエは知らない
このゲームに、もう1人のリオンがいることを――
【C3 森・朝】
【名前・出展者】レベッカ@テイルズオブジアビス更なる悲劇
【状態】健康 確かな決意
【装備】ソーディアン・シャルティエ
【所持品】基本支給品一式、アクアマリンの指輪@テイルズオブファンタジア、魔理沙の箒@東方Project
【思考】
基本:あの子の遺志を継ぎ、この状況を打破する
1:C3の町へ向かい、何か道具を探す
2:あの子(ララ)を埋葬したい
3:仲間を探す
4:レニーファという人物、及びリオン・マグナスを探す
(※現在C3に移動中です)
(※シャルティエからある程度の晶術の知識を得ました)
(※アクアマリンの指輪の説明書を読んでいません)
【名前・出展者】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブデスティニー
【思考】
基本:レベッカに出来る限りの助言をする
1:気をつけてね、レベッカ
2:坊ちゃん(リオン)に会いたい
【魔理沙の箒@東方Project】
魔理沙が空を飛ぶのに使っていた箒。高度に制限はあるものの、跨れば飛べる。
前の話
次の話
最終更新:2008年11月15日 18:30