「――これか」
レベッカ・ミューンと名乗った少女の言っていた辺りを探すと、そこには少女の死体があった。死体特有の臭いの所為か、割とすぐに見つけることが出来た。
体こそ冷たくなってはいるものの、表情は死体とは思えないほど穏やかなものだった。顔だけ見れば、「実は寝ているだけでした」と言われても驚かないかもしれない。
けれど、おびただしい量の血と青白くなった肌がその少女が“生きてはいない”ことを証明していた。
―最……低……! こんな、死者を冒涜するような……!!―
去り際にレベッカの残した言葉をふと、思い出す。もう、痛みはない筈の頬に触れる。今思い出すと、彼女は泣いていたような気がする。――何故?
―あいつの首を切り落とすのは勝手だが、埋葬位ちゃんとしとけよ?―
そして“自称レベッカの友人”の少女の言葉もまた、浮かんでくる。この少女の首を切り落としたければ好きにすればいいが、その代わり埋葬ぐらいはしろ、ということだろう。
彼女達の言葉が浮き上がり、泡のようにはじけて消えて、また浮かび上がって、混ざり合う。
クロの逆刃刀・真打を持つ手に、僅かに力がこもった。
【B3 森・昼過ぎ】
【名前・出展者】暗黒 黒王@リアクション学院の夏休み
【状態】健康
【装備】逆刃刀・真打@るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―
【所持品】簡易首輪レーダー(パッチ当て済み)@暁、基本支給品一式
【思考】基本:主催者を倒しゲームを終わらせる
1:…………。
2:目の前の死体から首輪を回収する。(首輪の回収が終わったら埋葬する?)
3:主催者打倒のための仲間を集める
4:なんとか記憶を取り戻したい
* * *
「僕達は殺し合いには乗っていません」
街の中で出会った少女(おそらく10歳前後)にナギとスバルは接触していた。ナギとスバルよりも年下であろう黒髪の少女は、剣を二本所持している。二刀流だろうか。
しかし少女の表情は年下とは思えないものだった。表情だけを見れば、少女の方が年上に見えてしまうかもしれない。
「……それを、私に信用しろって言うのか?」
「無理に、とは言わない。だが、俺達が殺し合いに乗っていないのは事実だ」
少女はナギとスバルをじぃっと、値踏みするように見つめる。そして、
「……お前達、名前は?」
「シン・カミナギです。ナギと呼んでください」
「スバル・カミナギだ。スバルでいい」
ナギとスバルはそれぞれ名乗る。――一応は“認めてもらえた”と考えていいのだろうか。表情がやや厳しさの抜けたものとなる。
「私の名はレイスだ。ところでお前達、剣術を扱える……いや、剣術が得意だろう? 違うか?」
レイスと名乗った少女の言葉に驚きつつも、ナギとスバルは揃って頷いた。誰よりも得意とは言わないが、どちらかと言えば2人とも剣術は得意な方だろう。
レイスはそれを見て、嬉しそうに笑う。先ほどの表情をしていたのは別の人物ではないかと思うくらい、その笑顔には確かな幼さがあった。
「しかし、お前達本当に殺し合いには乗っていないんだな? 強い奴がいるのは色々な手間が省けるから嬉しいし、信用するぞ?」
「僕が強いかどうかは分かりませんが、そう言ってもらえると嬉しいです」
ナギはそう言って、レイスに笑いかけた。――勿論、偽りの笑い。
さも本当に“殺し合いに乗っていない”ように見せかけ、隙を見て誰も見ていないところで少女を――レイスを殺害する。それが2人の目的だ。
周囲に参加者は……いない。少なくともこの辺りにいるのは、ナギにスバル、そしてレイスだけだ。
そしていかにレイスが“少女らしくない少女”だとしても、人間である以上“隙がない”のはまずありえない。仲間意識が出来れば尚更、隙は出来やすくなる。
「とりあえず、そこの民家で話でもしないか?」
レイスが2人に背を向け、民家を指差して言う。――今だ。
ナギは持っていた剣を抜き、隙のできたレイスに斬りかかろうとする。しかし、“誰も見ていない”と思ったことこそが“最大の誤算”だと2人は気づかない。
ナギは剣を持ち、レイスに向かって剣を――
* * *
「ようやく街についたと思ったら、これか……。ディー、あんまり見ない方がいいよ」
「それ、どっちかっていうと俺が言うべき台詞じゃね? う、グロ……」
街につき、ようやく休めると喜んでいた矢先にある青年の死体が目に飛び込んできた。
両親の実験で数多くの“モルモット”と称されたヒトの死体を見ていたフレイアは(多少苦痛だが)我慢できる。しかし、ユークリッドでヒトの死体とは無縁の生活をしてきたディーは別だ。
確かにルイスやフレイアと旅をすることで死体をみることはあったが、それはヒトではなく魔物だ。倒すのが当たり前となってしまっている魔物と、ヒトの死体では感じるものも違う。
思わず口元を押さえるディーの服の端を、フレイアは片手で一度軽く引っ張った。(そらこをおぶっているので両手は使えない)
ディーはそれに気づき、フレイアと一緒に早足で死体の横を通って街の中へと入った。
フレイアは内心、「そらこが起きていなくてよかった」と少し安心していた。もし死体に慣れていないであろう彼女がこれを見たらどうなってしまうのやら……。
「とりあえず、何処か適当な民家でソラコを休ませなきゃ」
「フレイア。街についたし、おぶるの変わろうか?」
「やー、別にいいけど?」
「民家までなら俺だって大丈夫……っていうか、俺エルフとはいえ一応男なんですけど。あれおかしいなこの会話」
「別におかしいところなんて――」
……フレイアの歩みが止まった。何事かとディーが声をかけようとすると、フレイアが小さな声で「しっ」と言った。
その視線の先には――2人の青年と1人の少女がいた。何かを喋っている様子だ。まだこちらには気づいていない。少し様子を見てから話しかけようということだろう。
そして少女が2人の青年に背を向けた瞬間、青年の1人が銀色に輝く“何か”を抜いた。鋭く尖り、光が反射するそれはまるで――
「ディー、ソラコをお願いっ」
「え? ちょ、待てよフレイ……」
ディーがその言葉を全て言い終える前にフレイアは魔術の詠唱を始める。……当てることは考えなくていい。威嚇目的で足元に下級魔術を撃ち込めばいい。
ミスティシンボルの効果で、普段よりも早く魔術を発動させることが出来る。そしてそれが最も詠唱の早い下級魔術ならば――詠唱に一秒もかからない。
「ファイアボール!」
フレイアが魔術を唱え終えると、3つの火球が青年の方へ……正確には、青年の足元に飛んでいく。詠唱を終えた時点で気づいたのか、青年はその魔術を避けようと後ろに下がる。
――もっとも、最初から威嚇目的で放った魔術だ。避けるまでもなく火球は地面に飛び、地面を黒く焦がした。青年2人と少女1人がフレイアとディー(とそらこ)に気づいた。
「その子から離れろっ!」
フレイアはそう青年達に言い放った。
――青年の2人が小さく舌打ちしたことは、誰も知らない。
【D3 街内部・昼過ぎ】
【名前・出展者】
シン・カミナギ@ラ ビ リ ン ス マ イ ン ド
【状態】健康、不安
【装備】剣
【所持品】基本支給品一式 魔術本
【思考】
基本、ゲームに乗り、優勝する
1、まさか人がいたなんて……
2、目の前の人物をどうにかする(場合によっては殺害もする?)
【名前・出展者】
スバル・カミナギ@ラ ビ リ ン ス マ イ ン ド
【状態】健康
【装備】セブンソード
【所持品】基本支給品一式
【思考】
基本、シン・カミナギと共にゲームに乗り、シン・カミナギを優勝させる
1、くそっ、どうする……!?
2、目の前の人物をなんとかする。場合によっては殺害も考える
3、リオンたちが心配
※二人ともレイヴンを敵と確信
【名前・出展者】レイス@レイスの短編帳
【状態】健康
【装備】光墨@ハーフ 緋緋色金の光剣@世界樹の迷宮Ⅱ 諸王の聖杯
【所持品】思い出の品@ハーフ 基本支給品一式
【思考】
基本、弱い奴を保護して、強い奴に引き渡す。中途半端、危険人物は必要無い
1、なんだなんだ?
2、やや混乱
※レイスは基本大剣を軽々と振りまわすタイプですが、二刀流もOKのはずです
【名前・出展者】右京そらこ@リアクション学院の夏休み
【状態】烈閃槍による疲労、気絶
【装備】はどうのゆうしゃセット@ミュウと波導の勇者ルカリオ
【所持品】支給品一式、はどうのゆうしゃセット@ミュウと波導の勇者ルカリオ、不明支給品
【思考】基本:殺し合いには乗らない
1:…………(気絶中)
【名前・出展者】フレイア@テイルズオブコンチェルト
【状態】やや疲労、TP消費小(移動の間に回復)
【装備】ミスティシンボル@テイルズオブシリーズ
【所持品】支給品一式、ミニ八卦炉@東方Project
【思考】基本:殺し合いには出来る限り乗らない
1:あんな小さい子まで……!
2:2人の青年をぶっ倒す(殺害まではしない)
3:ソラコ、もうちょっと待っててね
4:ルイス達を探したい
【名前・出展者】ディー・ゼロディス@テイルズオブコンチェルト
【状態】健康
【装備】無し
【所持品】支給品一式、エリクシール(×3)@テイルズオブシリーズ、霊夢のスペルカード@東方Project
【思考】基本:ルイスを探してから帰りたい
1:あーもう、勘弁してください……
2:ソラコを守る。状況によってはフレイアを援護する
3:さっきの男のことは忘れたい
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最終更新:2008年12月16日 15:51