「よ、ようやく……抜け出せ……た……」

放送から約一時間。ラなんとか……もといランウィーツは、ようやく砂から自力で抜け出すことが出来た。
砂の中にいたせいで放送の内容は全くメモしていなかったが、禁止エリアぐらいは思い出せる。
そして地図を確認し、絶句した。禁止エリアの内の一つ、A4は砂浜。自分が今埋まっていたのは、砂。つまり……。

「この辺……もうすぐ禁止エリア……?」

ランウィーツは支給品の確認も忘れ、急いで地図を仕舞うとデイパックを持って全力で走った。一刻も早く砂浜から抜け出す為に。
首輪が爆発して死ぬなんて、まっぴらごめんなのである。


【A5 砂浜・昼過ぎ】

【名前・出展者】ランウィーツ@セルリアン
【状態】疲労、全力疾走中
【装備】なし
【所持品】基本支給品一式 不明支給品1~3個
【思考】
基本:まだ考えていない
1:兎に角砂浜から抜け出す

   *   *   *


――ゼルガディスは無事にコナン(※間違い)の元へ行けたのだろうか。
霊夢のその考えは浮かんだ直後に隅っこへ行ってしまった。……何故なら、目の前のこの少女をどうにかしなくてはいけないからだ。
一見、2人いるこちらの方が有利に見えるが……。
霊夢の武器は全く使い慣れていない鉈。相手の少女の武器は巨大なハンマー。後ろのレベッカの持った武器は喋る剣のシャルティエ。
そして少女は地面から行き成り現れたのだ。油断は出来ない。

「霊夢ちゃん、出来れば……ううん、絶対にあの子を殺さないで」
「分かってるわよ。私だって、そこまではやりたくないもの」

続く睨み合いに終止符を打ち、真っ先に動いたのは少女だった。ハンマーを持ち、霊夢に飛び掛ってくる。霊夢はそれを右に飛んで避ける。
すると、少女のすぐ近くに何かが現れる。……鏡、だろうか。少女はその鏡の中に入って、消える。
何事かと思っていると、今度はレベッカの近くに鏡が現れる。鏡から少女が現れ、レベッカに向かってハンマーを振り上げる!

「レベッカ! 後ろっ!」

少女のハンマーが勢いよく振り下ろされる。ぐしゃっ、と何かが潰れたような音……は、不思議と聞こえなかった。聞こえたのは、金属がぶつかった音。
シャルティエを鞘から抜いたレベッカが、シャルティエを使ってハンマーを受けていた。シャルティエを押し出してハンマーを弾き、レベッカは後ろに下がった。

「あなた……どうして殺し合いなんかに乗っているの!?」
「あなたには。。。関係ない。。。」

少女は再びハンマーで殴りかかってくる。レベッカはそれを避ける。ただの医者だと思っていたが、戦闘の経験もそれなりにあるように見えた。

「お願い、話を聞いて!」

少女はそれに答えず、再び殴りかかる。レベッカはそれを後ろに飛んで避ける。すばしっこいレベッカに大振りのハンマーを当てるのは無理だと判断したのか、少女はまた鏡に隠れる。
そして鏡から霊夢の目の前に飛び出し、ハンマーを振り上げる。霊夢は空に飛び上がり、それを回避した。ブオン、とハンマーが空を切る音が聞こえる。
こちらの武器がどちらも刃物である以上、下手に攻撃を仕掛ければ少女を殺害してしまう可能性がある。だから、下手に手を出すことが出来ないのだ。

「殺し合いに乗るのなんてやめて! 話を……」
「。。。うるさいッ!!」

少女はハンマーを思い切り地面に叩きつける。大きな音を立てて、ハンマーが地面にめり込む。少女はそれをまた持ち上げて、レベッカを敵意に溢れた目で見ていた。



   *   *   *


あいつを殺害して、ティアラと家を出て、私とティアラは兎に角遠くへと逃げようとした。
そこで出会ったのが、新しい仲間だった。セレスや百、シェララにサユリ……

そして、白夜くん。

女性恐怖症なのに、私に普通に接しようとしてくれた頑張り屋な白夜くん。泣き顔や悲鳴が女の子みたいな白夜くん。……笑顔がとっても綺麗だった、白夜くん。
だから私は必ず生き残ると決めた。生き残って元の世界に……私のようやく見つけた居場所に帰ると。本当に願いが叶うのなら、あの平和な家族との暮らしを取り戻すと。

「あなた……どうして殺し合いなんかに乗っているの!?」
「あなたには。。。関係ない。。。」

ああ、不愉快だ。どうしてお前なんかに私の事情を話さなくちゃいけないんだ。――この首輪がある限り、皆で仲良く脱出なんて出来るワケがないのに。

「お願い、話を聞いて!」

うるさいうるさい黙れ黙れ黙れ。お前の話なんか聞きたくない。どうせ「頑張ってあのゴキブリとウサ耳を皆で倒して脱出しましょう」とでも言うつもりなんだろう。
そんなこと出来るわけない。だから私はこの殺し合いと言う名のゲームに乗ったというのに。この偽善者はなんにも分かっちゃいない。

「殺し合いに乗るのなんてやめて! 話を……」
「。。。うるさいッ!!」

ハンマーが大きな音を立てて地面にめり込む。私の苛立ちは納まらない。……ここまでイライラしたのは、あいつを殺害しようと思った時以来だと思う。

「私は。。。私の目的の為に。。。殺し合いに乗っている。。。あなたに。。。とやかく言われる筋合いは。。。ない。。。」

そう言い放つと、ようやくレベッカとかいう女は黙った。……と思ったら、また何か喋り始めた。

「確かにそうかもしれない。でも……あなたの願いを叶える為に、多くの人を犠牲にしていいと思ってるの!?」
「黙って。。。ください。。。」
「あなたの願いはそれほど大きなものなのかもしれない。でも、その為に死んだ人はどうなるの!?」
「。。。黙れ。。。」

まだ喋るか、まだほざくかこの女は。

「あなたの願いの為に多くの命を奪うなんて、決してやっていいことじゃないのよ!」
「。。。黙れ黙れ黙れ。。。黙れ、偽善者!!」

何も知らないくせに、勝手なことをほざかないで。


   *   *   *


「。。。黙れ黙れ黙れ。。。黙れ、偽善者!!」

少女はそう叫ぶと、レベッカに向かって突進する。それをレベッカが避けると、少女は地面に踏ん張って急ブレーキをかけ、レベッカに向かってハンマーを振り回した。
突然のことに対応出来なかったレベッカはそれを受け、吹き飛ばされてしまった。霊夢の叫び声が聞こえる。――いい気味だ、と少女は思った。

『レベッカ!』
「だ、大丈夫……だと、思う」

更に攻撃を仕掛けようとした少女を霊夢が鉈を(刃を向けないように)振り下ろして妨害する。レベッカはその間に治癒の譜術の詠唱を始める。
体の節々が痛むが、どうやら骨折はしていないようだ。急に止まって不意をついたので、少女の方もあまり力を入れることが出来なかったかもしれない。

「ファーストエイド」

何時もなら直ぐに痛みがなくなるハズなのに、白い光が消えても痛みはなくならない。やはり、譜術の効果は相当落ちているようだ。それでも、戦えないほどではない。
レベッカは立ち上がり、シャルティエを握り締めた。

(確かに私は偽善者かもしれない。何もかも救いたいなんて、甘いかもしれない)
「ストーンブラスト!」

シャルティエを使い、晶術……ストーンブラストを唱える。少女の足元から小さないしつぶてが発生し、少女を怯ませる。霊夢はその隙を突き、鉈で少女を殴った。(無論刃がついていない部分で)
倒れそうになるのを抑え、少女は鏡に逃げ込む。そしてまたレベッカの背後に現れ、ハンマーを振り上げた。

(でも……)

レベッカはそれを右に移動することで避け、移動しながらも晶術の詠唱を行う。強力なものを使えばどうなるか分からないので、下級のものだ。
少女はその前にレベッカに攻撃を仕掛けようとするが、レベッカの晶術の詠唱終了の方が少し早かった。

「ピコハン!」
(それでも、私は救いたい。何もかもを救うのが無理ならば、私の出来る範囲の全てを!)

少女の頭上にピコハンが落ち、ぴこんっと語尾に星マークでもつきそうな音がなる。少女は立ち眩みのような感覚に襲われ、大きな隙が出来る。

(だって……)

大きな傷をつけることを考えてはいけない。神託の盾(オラクル)騎士団に入りたての頃、一番最初に習った“剣術”をレベッカは放った。

「――魔神剣!」
(だって私は、その為に医者になったのだから!!)

地を這う衝撃波は真っ直ぐにしか飛ばない。けれど今の少女にはそのそれなりの速度のある真っ直ぐにしか飛ばない衝撃波を避けることは出来なかった。
飛ぶ斬撃は少女の右足に直撃し、切り傷を作った。少女は一瞬悲鳴を上げる。レベッカはその間に間合いを詰め、シャルティエを少女の鼻先に向けた。

「……動かないで」
「。。。。。。殺すの?」
「…………癒しの光よ……ヒール!」

レベッカが詠唱を終えると、白い光が少女の足を包んだ。やがて役目を終えたかのように白い光が消えると、少女の足の切り傷は綺麗に消えていた。
――このぐらいならヒールで完治出来る様だ。レベッカは何故か妙な安心感を憶えた。

「。。。なんの。。。つもり。。。?」
「私は、誰かを殺す気はこれっぽっちもありません。だから……」

「この場は退いてください」と言う前に、少女は黙ったまま鏡の中へと消えていった。安心するとどっと疲れが襲ってきて、レベッカはその場に座り込んだ。
そこに霊夢が飛んできて、レベッカの近くに下りる。

「あ、霊夢ちゃん。怪我はない?」
「私は平気。それよりも、あんたはまともに攻撃くらってたじゃない」
「あはは、私も平気。慣れてるから」

霊夢は座り込んだレベッカに手を差し伸べた。レベッカは霊夢の手を掴んで立ち上がる。

「にしても、なんであいつの傷治したの?」
「治すつもりで攻撃したんだけど……」

レベッカのその言葉に霊夢は目を丸くしたあと、笑った。レベッカは顔を真っ赤にして怒るが、全く迫力はなかった。


【G3 街の入り口(荒地)・昼過ぎ】


【名前・出展者】霊夢@東方(ry
【状態】健康 爆笑中
【装備】鉈@ひぐらしのなくころに
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者打倒の為の仲間を探す
1:あっはははははは!
2:コトナのところに行く
3:ゲームに乗っている奴はぶっ飛ばす
※:リシェルがゲームに乗っている事には気付いていません

【名前・出展者】レベッカ@長月コトナ
【状態】TP消費中 軽度の打撲
【装備】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブディスティニー
【所持品】魔理沙の箒@東方 アクアマリンの指輪@テイルズオブファンタジア 基本支給品一式
【思考】
基本:あの子(ララ)の遺志を継ぎ、この状況を打破する
1:な、なんで笑うの!?
2:そのコトナさんを助けてあげないと
3:シャルティエをリオン・マグナスの元へ届ける。また、レニーファを探す
4:出来ればクロにはもう会いたくない
※クロのことは話していません。また、話すつもりはありません
※譜術の効果減少に気づきました

【名前・出展者】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブディスティニー
【思考】
1、レベッカって結構強いのかな?
2、坊っちゃーん
3、坊ちゃんドコー?


   *   *   *


――優しくされたのが怖かった。折角の決心が、揺らいでしまいそうだったから。
治った筈の足の傷が、ズキリと痛んだ気がした。

【名前・出展者】ミアージュ@空婿(ry
【状態】左腕の中指が無い 氷タイプだからこおっていても問題無い(らしい) 軽度の疲労
【装備】巨大ハンマー
【所持品】基本支給品一式 不明支給品1~2個
【思考】
基本、ゲームには乗って願いをかなえる
1、。。。。。。どうして
2、何処かで休む
3、。。。そういえば。。。。。。。。。左手の中指がない

※ミアージュが鏡による移動でどこに行ったかはお任せします



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最終更新:2008年12月16日 15:56