第二話 必殺の総理大臣
あるホテルの一室。
そこから、セイカイオーと巨大ロボットの戦いを見下ろす影があった。
「ふん……小僧め。 いい気になりおる……」
影はテーブルに置かれた、号外の記事に目を落とす。
口元が歪む。
「だが、まぁ……なんにせよ、奴の失脚は遅くはあるまい。 あと一押しだな。 残念だなぁ……総理大臣、君の栄光は短いものになりそうだよ……ふはははは……はははははははははははは!!」
影はホテルの一室をあとにした。
翌朝。
首相官邸。
腕を組みぼうとする総理、尽の前で言い争うおっさんが二人。
「総理……前回の出撃ですが。 かなり予算が危ういことに……、そんなポンポンと出撃されては…」
「なぁあにを言うかッ! 総理は民のことを考えて戦っているのに……それを貴様はぁぁ!!」
「財政の安定が私の使命です。 あなたもですよ防衛庁長官、最近は武器に予算を掛けすぎです」
「犯罪者から日本を守るために、最新鋭の武器を用意するのはぁあぁ!!」
律子「やぁああめなさぁあああい!!!」
法務大臣、定芽律子の怒声に、部屋が静まり返った。
目を丸くする禿頭は財務大臣、官上和夫(カンジョウカズオ)。
隣にいるいかにもな軍人は防衛庁長官、蓮辺仁(ハスベジン)。
律子「……二人とも、つくす君よりこの世界が長いんだから、しっかりしてください」
そう言われ困り顔をするのは、官上。
官上「だがね、律子君。 今回は例外が多すぎる……。 つくす君が総理になってから、明らかに出撃回数、街への被害が増加してる。 被害を受けた民間人への保証や道路の舗装、セイカイオーの整備……。 本当に忙しい」
尽「……本当に、すまないと思ってる」
そう言う総理を見て、官上は機械的だが、こう言った。
官上「……私は、前総理の選択を信じてます。 もちろんあなたもだ、つくす君。 きっと君を選んだのには、訳がある……そんな気がするんです」
蓮辺「私も同感でありますッ!」
蓮辺が背を伸ばす。そこに、声が響いた。
???「私も同感ですな、財務大臣」
いつの間に入ったのか、部屋に男が居た。 イタリアの高級スーツを着込んだ、初老の男だ。
蓮辺「おお、いらしたのですか、官房長官殿!」
尽「総次郎さん……」
総次郎は尽の前で一礼する。
総次郎「うむ、元気そうでなにより。 昨日のドンパチのことで頭を悩ませてないかと心配しましたぞ」
尽「いえ……」
尽の暗い態度に思い当たり、総次郎は話題を変える。
総次郎「ああ……兄貴のことをまだ思い悩むのか」
尽「……僕が側にいながら…何もできなかった」
総次郎「兄貴は君をかばったのだ、君の未来が日本の未来に繋がるのを予期してたのだよ。 どのみち……兄貴はもう長くはなかった、仕方ないさ」
総次郎が尽の肩をポンと叩く。
総次郎「今は悩め、自分を磨け。 支持率を気にしていてはなにも始まらんよ」
そう言い、総次郎は部屋を後にした。部屋が静まるが、それもつかの間……携帯の着メロが鳴り響く。
蓮辺「む……失礼、……む……ん………な、なにぃぃい!!?」
律子「どうしたの!?」
ただならぬ雰囲気に、律子の声も強張る。
蓮辺「いや、工事用のロボットが複数暴走し、市街がパニックになっているとの通報が……!」
律子「警察のロボットじゃ、太刀打ちできないの!?」
蓮辺「それが、新型らしくって如何せんパワーで負けてるらしくって……」
尽「……出る!」
椅子から立ち上がり、駆け出すつくす!
律子「つ、つくす君!」
市街。
暴走した工事用ロボットは、無差別に建物を壊し、道を塞ぎ、車を投げ飛ばす!
住民が悲鳴を上げる……その時!
「おい、ありゃ……」
「ママ、あれ……」
空を覆う、巨大な飛行機。
その下部ハッチが開く!
『――聖界機兵、出馬ぁぁあああ!!』
蓮辺の声が、辺りに響き渡る!
粉塵が舞う中に、そびえ立つ巨体!
尽「――一億の民の為、生きる者の権利の為……威厳の化身とならん!!」
粉塵が風にまかれ、巨大な影が姿を表す!
尽「セェェェェェェェェェイカァァァァァァァァイオォォォォォォォォォ!!!」
民衆は騒いだ。
あるものは救いだと。
あるものはまぬけだと。
それらすべてが、尽には伝わった。
ディスプレイに映し出されるパーセンテージ……そう、それは支持率を表していた。
絶えず変化するそれは、本来なら絶対無敵の力を持つ聖界皇の力を制御している。
支持率が高いほどセイカイオーは本来の力を発揮する……だが、もし支持率が0になれば……
尽(……僕は総理大臣を降り、セイカイオーは……敗北する)
迷っては居られない。
セイカイオーが工事用ロボットの群れに攻め込む!
尽「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
工事用ロボットは想像以上にパワーは強い!
セイカイオーはなんとか押さえ込むが、持久戦は不利!
尽「くっ……アクセル・ナイフッ!」
腰から引き抜いたるはセラミック製のロボット用ナイフ!
セイカイオーはそれを工事用ロボットの間接部へと刺し、破壊する!
尽「両手……よしっ! 次!」
間接を破壊され、攻撃手段を失ったロボットが動きをやめる。
残るロボットは二。
尽「うぉぉおおおお!」
アクセル・ナイフの切れ味は、工事用ロボットの装甲を引き裂く!
コンピューターを裂き、火花を散らして機体が止まる。
ちょうどその時、官邸から車で、律子が到着した。
律子「……つくす君」
尽「あと、一……はぁあああ!!」
残り一機に仕掛けようと踏み込むセイカイオー。
しかし!
律子「……!? だ、だめ、つくす君!!」
尽「……!? な、なに……!」
最初に破壊したはずのロボットが、セイカイオーを体当たりした!
そのロボット……失われた両手からサブマニュピレータが現れた!
先端が特殊なスタンガンになっているらしく、火花が飛び散る!
律子「軍事用の……対ロボットスタンピック!? なんで……」
反撃を試みるセイカイオー、しかし!
尽「……く、くそ…! 離せぇぇっ!」
生きているもう一体に、押さえつけられるセイカイオー!
尽「……こ、ここまでなのか…!?」
律子がとっさに、懐からあるものを取り出す。
しかし……
律子「……なんで手を止めるのよ、定芽律子…!」
これは鍵。
絶対的な力を解放する鍵。
故に、危険な鍵。
これを、民荷尽という男に託していいのか?
「ぐぁぁあああああああああああああああああ!!!」
我に返る律子。
目の前では、スタンピックを押し当てられるセイカイオー…!
律子「……馬鹿ね、何悩んでんのよあたし……!」
鍵を取り出す。
それは、鍵であり――判子!
判が、宙に押される!
宙に浮かぶ、紋!
尽「こ、これは……!? 法務省の……承認印!?」
律子「法務省は秩序を司る省……即ち、秩序を守るための絶対権力の束縛が、印の役目! やって、つくす君ッ!!」
セイカイオーにパワーが溢れる!
尽「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
押さえつけていた手を強引に引きちぎる!
肘打ちをくらい、停止するロボット!
あとは、スタンピックのロボット!
尽「……はぁぁあ…絶対ぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!! 決定ぃぃぃぃぃぃぃいいい!!」
セイカイオーが右手をかざす!
そこに輝く、法務省の印!
工事用ロボットへと加速するセイカイオー!
尽「ディサァァァァァァァァイショォォオオオオオオオオオオオンブレイカァァァァァァァァアアア!!!」
爆音!
振動が地を伝わり、爆風が広まる!
律子「……この力、つくす君なら……そう思いたい」
輝く日本の明日の為。
戦え、聖界皇!
最終更新:2009年11月23日 17:27