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第五話 新米の環境大臣?


英武チルドレンについて語らなければなるまい。
かつての日本は、度重なる不況によって荒んでいた。 物は売れず、会社はこぞって倒産した。
海外で出来ないことを独自にやるしかない、そう決意した英武総志郎は30歳で総理に就任という偉業を成し、後の英武改革……ロボット産業の確立を成功させた。
日本独自のロボット技術は瞬く間に世界に誇れるものとなり、日本から数多くのロボットが排出された。
しかし……英武自身も予想はしていたが、ロボットによる軍備増強も世界中で行われた。
ロボットとロボットによる、膠着状態……ロボットによる支配。
英武は決意した。
敢えて若い若い人間に、日本の未来を賭けることを。
無論反感は起こり、政界は荒れた。
それでも英武は、英武チルドレンと呼ばれる若手政治家を多く生み出したのだ。
首相官邸。

つくす「結局、小脇さんからは何も分からず仕舞か……」

律子「薬によって、酷く錯乱していたみたい。 誰かはわからないけど、かなり大きな裏があるわね」

小脇は逮捕許諾請求により、緊急逮捕された。 が、得られた情報はゼロ。 小脇自身も現在は病院で治療を受けている。
アトモスフィアーの損傷は軽く、操作系と装甲の一部だけだった。

つくす「今回のことで、僕がいかに巨大な力を持っているのか、考えさせられたよ……。 国務ロボを束ねる者として、力不足を感じた」

律子「……そうね、でもねつくす君。 私はあなたが不適任だとは、思ってないの。 そこを頭に入れておいてね…?」
沈黙が流れる。


総次郎「しかし、そうですなぁ。 今はまず新しい環境大臣を選出しなければ」

律子「……そうね、内閣が欠けるわけにはならない。 早々に……」

総次郎「あいや、待った」

部屋を出ていこうとする律子を呼び止める総次郎。

総次郎「実は……もう選出してありまして」






富士山。
日本の象徴でありながら、近年ゴミ問題が絶えない山。


???「あわっ、あわわわっ?!」

本日何度目か、独特の悲鳴を上げて小柄な女の子が転げ落ちた。
否、女の子とは呼ばず、立派な二十歳の大人なのだが。

つくす「……だ、大丈夫か? 雨宮?」

雨宮「は、はいー……うわっ、泥だらけ……」

……どうみてもちっこい。
雨宮ことは。
彼女もまた英武チルドレンで、総次郎によって選出された、新しい環境大臣……なのだが。

雨宮「よしっと、それじゃ掃除、再開しましょう!」

鼻歌なんかを歌いながら、ちっこい体を健気に動かしてゴミを取っていく。
あ、また転けた。


律子「……でも、なんで彼女なのかしら。 確かに元気で勢いのある政治家だけど、大臣っていうのは……」

つくす「……正直、僕もそう思います」

英武総次郎の考えに、どんなものが隠されているのかはわからないが、もう一度選出すべきだ。
そう考えてた矢先、また彼女が転げ落ちた。


コテージ。

雨宮「え、ええ? あたしじゃ……だめ……」

雨宮、その顔は反則だ。

つくす「……いや、君のやる気はわかるんだ。 ただ…」

雨宮「……わかってます、ドジばっかだし、小さくて政治家って顔でもないし……でも、あたし……一生懸命ですよ? それじゃ駄目ですか……」

彼女のやる気は痛いほど伝わる。
総志郎の下で政界を習っていた時の彼女は、本気だった。
つくすもそれを見てきていた。


つくす「……とりあえず、心に留めておいてくれ」

雨宮「……………はい」


つくす「……悪いことしちゃったかな」

コテージから出て、つくすは悩んでいた。

雨宮ことはは、英武の元で教わった政治家の中では一番の……ようはおちこぼれだった。
いつもやる気だけが先に行き、失敗ばかり。
仲間達に支えられながら、なんとか政治家にはなった、だが……。

総理である立場から、厳しい宣告もしなければならない。 覚悟はしていたが、政治家というよりむしろ人情に左右されやすいつくすの性格のせいで、割り切れないでいた。
こんな時、総志郎先生ならどうしただろうか。

そのとき!

律子「た、大変よつくす君! またロボットの暴走が……」

つくす「な、なんだって!?」



清掃箇所に行くと、ゴミ掃除ロボットが森を伐採しているのが見えた。

つくす「……仕方ない、聖界機兵……」

律子「待ってつくす君! セイカイオーはメンテナンス中なの!」

つくす「な、なんだって……!?」

度重なる出撃に、セイカイオーは細かいダメージが蓄積されていた。

つくす「……くそぉぉ…! 見ていることしか、出来ないのか……!?」


そのとき、影が清掃ロボに駆け出す!

雨宮「……や、やめてくださぁあい!!」

つくす「雨宮っ!? だめだ、危険だって!!」

雨宮を抑えるつくす。

雨宮「でも、こんな……これじゃ…!」

律子「……雨宮さん、“アトモスフィアー”で出撃して!」

雨宮「えっ……」

つくす「律子さん!? でも……」

律子「今は、それしかないでしょ……! 雨宮さんッ!!」

雨宮はぼうとした表情をしていたが、やがて……決意したように、眼に光が灯った。


雨宮「……やります、はい!」


律子が環境大臣の印を雨宮に渡す。
印が宙に浮かび上がる!


律子「……自然を愛し、自然を守り抜く。 それが環境大臣の印!」


アトモスフィアーが、富士の樹海に立ち上がった!


雨宮「……できる、できるはずよ……ことは! ……やぁぁぁ!!」

アトモスフィアーが清掃ロボに飛びかかり、拳を連打する!

雨宮「このっ、このぉぉぉ!!」

つくす「……雨宮…」

つくすは驚いていた。
正直、雨宮はドジな奴だと思っていた。
だが、ドジでもなんでも、やる気がそれを上回る時がある。
一生懸命、そういう力があると、つくすは思い知った。

つくす「……!? あ、雨宮、危なぁぁあい!!」

雨宮「えっ……きゃあああああああ!!!」

突然のビームの雨に、倒れ込むアトモスフィアー!

律子「……軍用パルスガン…! また改造機!」

つくす「雨宮、立て! 早く!」

雨宮「……だ、駄目…脚をやられて……」

つくす「……あ、あきらめるな!! そこで立たなかったら……また、ただのドジに戻ってしまうんだぞ!!」

雨宮「……つ、つくす君……!」

そう。
環境大臣になれてうれしかった。
ドジで駄目な自分が、みんなの為になれると、はりきった。
結局それは夢物語にすぎなかった……でも!
いまだけでも!

その時!

雨宮「……アトモスフィアー…?」

アトモスフィアーが関節に悲鳴を上げさせながら、立ち上がる!

律子「……アトモスフィアーが、答えた!? そんな……」

つくす「……いけぇぇぇ!! 雨宮!!」

雨宮「……うん!」

アトモスフィアーが清掃ロボに振り返る!

雨宮「……右翼、左翼ツインビームコンバータ………行きます!」

アトモスフィアーがビームの粒子に包まれる!


雨宮「……バイオメンタル……クラッシャァァァァァァァァァァァァ!!」


極細の無数のビームが、清掃ロボに降り注ぐ!
コンピューター部分だけを射抜かれ、清掃ロボは動きを止めた!



雨宮「……ありがとう、ございました」

律子「……雨宮さん」

雨宮「ほんと、すこしだけど……楽しかったです。 それじゃ……」

車に乗り込もうとする雨宮。


つくす「……それじゃ、明日からの職務、頼むよ」

雨宮「…………ぇ?」

律子「つ、つくす君?」

つくす「……君は、立派な環境大臣だ。 雨宮ことは。 これからも……よろしく頼む」


彼女が駆け出す。
つくすの前で転ける。
律子に支えながら上げた顔は、笑ってるのか泣いてるのか、わからなかった。
ただ、しっかりとこう答えた。


雨宮「……はいっ! 一生懸命……頑張ります!」


総志郎さんが考えていたことが、分かった気がする。
職務に対する熱意。
それを見守る総理大臣。
今日、分かった気がする。


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最終更新:2009年11月23日 17:37