第三話『重機炸裂、二人目の勇者!』
臨海新台場ホール。
海の真ん中に作られたそれは、数百万人を動員できるまだ新しい巨大なコンサートドームである。
今ここには、多くの企業が出入りしている。
世界的なジャパニーズロックミュージシャン、『鈴那零』のコンサートを控え、こぞって参入してきているからだ。
勇者企業も、その内の一つだった。
つぐむ「うわぁ、やっぱり鈴那零のコンサートってなると規模が違うな……」
巨大トラック、ジムローダーの運転席から眺めるそれは、凄まじい人々の熱気に溢れていた。
ガンドジム「そうすっかね……俺はそうは思わないんすけど」
つぐむ「あれ、ガンドジムは零が嫌いなの?」
ガンドジム「…………」
ジムローダーのディスプレイから声が途絶えた。
どうも、ここへ来てからもガンドジムの様子は変であった。
ここ数日、護衛を兼ねて勇者企業の仕事を見学したが、ガンドジムは非常に仕事熱心な疑似人格AIだった。
勇者ボディが重機であることを生かし、工事現場ではせっせかと働いていた。
疑似人格AIに、働くことの欲があることには驚いたが、それがプログラムされているものとしてつぐむは心にとどめた。
とにかく、今日のガンドジムは様子がおかしかった。
その時、会場が湧いた。
つぐむ「……れ、零だ! 鈴那零! 本物だよ!」
肩まで伸ばした黒髪。
ギターが似合うその姿は、まさしく鈴那零であった。
零はマスコミに囲まれ、フラッシュを浴びていた。
つぐむ「見なよガンドジム! 本物だよ!」
ガンドジム「………あいつは…」
つぐむ「え、ち、ちょっと……」
つぐむは驚いた。
零がマスコミを下がらせ、まっすぐこちらに歩み寄ってきたからだった。
マスコミがその光景をシャッターに収めようと群がるが、警備員がそれを押さえる。
零はもうジムローダーの目の前に立っていた。
つぐむ「ほ、本物……」
ガンドジム「…………」
それは奇妙な時間であった。
ガンドジムと零は、つぐむとは違う次元での睨み合いをしているようで、そこには誰にも立ち入れない壁のようなものがあるような気がした。
零「君……」
つぐむ「は、はい!?」
零「ガンドジムとは、仲がいいのかい?」
零が目の前にいる、という状況に緊張するのは当然だった。
だが零が、ガンドジムの名前を出したことに驚きながら、つぐむはなんとか答えた。
つぐむ「い、いや……ガンドジムは、僕が雇って…」
零「そう、か……」
零はつぐむの言葉にがっかりした様子だった。
訳が分からず、零の様子を見ているしかないつぐむだったが。
「ロボットが暴れているぞ!!」
「逃げろぉぉぉぉぉ!!」
つぐむ「な、何だ!?」
ガンドジム「て、敵っすか!?」
水中から現れた巨大ロボットが、水しぶきの雨をドームに降らす!
まるで竜の落とし子のようなフォルムのロボットが、ドームに迫る!
零「あいつら……!? やめろ!!」
ガンドジム「うぉぉぉおおおおおお!!」
つぐむ「が、ガンドジムっ!?」
突然加速するジムローダー!
逃げまとう人々を避け、ロボットへと向かう!
ガンドジム「雇い主!! シートベルトを忘れるなっす!!」
つぐむ「ち、ちょっとたんまぁぁぁぁぁあ!!」
ジムローダーが宙に浮く!
ガンドジム『チェェェエエエェェンジバトリィィィイイイイド!!』
巨大トラックは瞬間、ロボットへと変わる!
コンテナミサイルを担ぐ、二人目の勇者!
ガンドジム「炸裂勇者ガァァァァアアンドジィム!! いくっすよ!!」
つぐむ「うわああぁぁぁぁぁぁあ!?」
座るつぐむの叫びを無視し、ガンドジムが吠える!
ショルダーカバーが左右に展開する!
ガンドジム「ミィィィィサイルロォォォオダァァァァア!! 発射!!」
計三十六発!
爆発がロボットの足を止める!
つぐむ「が、ガンドジム!? いきなりどうしたんだよ!!」
ガンドジム「あいつの……あいつのライブは……」
つぐむの体がシートに押さえつけられる!
重機動のボディを加速させ、ガンドジムは宙に舞った!
ガンドジム「俺は……絶対に中止にさせないっす!! 絶対に!!」
つぐむ「が、ガンドジム……」
疑似人格AIであるガンドジムが、なぜこれほど鈴那零のライブに拘るのかはつぐむには分からない。
いや、疑似人格である、データだけの存在の彼らが、何かに固執するというのが理解出来ない。
だが……、コクピットに座ってわかるのは、ガンドジムは“本気”であるということだった。
それは無骨なシートを押さえるGが、つぐむに物理的にイメージさせる“感情”であった。
つぐむ「が、ガンドジム! “契約合体”だ! それしかない!」
ガンドジム「雇い主に対して、ご無礼するっす……!!」
つぐむは懐から札を取り出す!
転送される諭吉三枚!
つぐむ「……“契約合体”!!」
ガンドジム「だりゃあぁぁぁぁぁあ!!」
空から、巨大なダンプカー……アイアンダンパーが現れる!
ガンドジムと一つになり、現れたのは……
ガンドジム『粉砕勇者!! パワァァァァァァァァアアアアアドッガンドジム!!!』
それは無骨そのもの!
強靱な両腕は、ロボットを空中へと投げ飛ばした!
コンテナが“大砲”へと変形する!
ガンドジム『くらえぇぇぇええ!! パワァァァアアアアアアドフレアァァァァァアアアアアアア!!!』
燃え盛るビームが、竜の落とし子を真っ二つに粉砕した!
木っ端微塵になったロボットは、海へと墜ちた!
まともに考えれば……。
データだけの存在の彼らに、具体的な人間的要素である、感情は皆無のはずなのだ。
だが……。
つぐむ「……なあ、ガンドジム」
ガンドジム「ん、なんすか雇い主」
つぐむ「……いいや、なんでもない」
ガンドジム「……? 変な雇い主っす」
つぐむの疑問はループしていた。
零のこと。 ガンドジムのこと。
つぐむの探求心は、次第に興味ではなく本気へと変わっていった。
戦え勇者企業!
負けるな社員、パワードガンドジム!
最終更新:2009年12月06日 13:29