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第十九話「誕生・真の格闘神機!甦れ俺のテッケンオー!」


 テッケンが退院し、ついに帰宅と相成った。母への挨拶もそこそこに、テッケンは祖父、鉄野博士のいる地下研究所へ急ぐ。

「じいさん!俺バイトでも何でもして金貯めるからさ、テッケンオーを早く……」

そんなテッケンを待っていたものは。

「何だ……何でテッケンオーが直ってるんだ?こいつら誰だよ?何がどうなってんだ!?」

そこには鉄野家の経済事情では修理不可能なはずのテッケンオーと、大勢の見知らぬ作業員がいた。
鍛造が言いにくそうに口を開く。
「拳児、実はな……」

「政府の援助を受けたんだ。この人達は政府からの応援だよ」
言いながら降りてきたのはテッケンの父、哲夫だ。

テッケン「何だと……?親父、てめぇテッケンオーを政府に売りやがったのか!?じいさんも、それを許した
     ってのかよ!?」

ダン「どんな事情があろうと、子が親に聞く口じゃあ無えな」

テッケン「お前は、ヤブルのところの軍人!何でウチにいやがる!」

益子「ゲンカイザーが当分戦えないから、しばらくこちらに移させて頂いているの」

テッケン「親父……てめぇどこまで……!」

哲夫「し、仕方がないだろう。この人達の言うように、今はテッケンオーしか戦力が無いんだ。
   お金が無いから直せませんじゃ済まないんだよ」

テッケン「く……じいさん!」

しかし鍛造も黙って首を振るだけだ。

「クソ……親父もじいさんも、裏切り者かよ!」
捨て台詞を吐くとテッケンは階段を登って走り去っていった。

哲夫「すみません、状況のわからない子で。いざとなったら私が……殴ってでも、戦わせますので」
「殴ってでも」の前に口籠もったのは、そんな事をすれば自分がその後でどうなるか、想像したからに違いなかった。

ダン「我々としては、彼が自分の答えを見つけるまで待ちたいが……」

益子「ダウナー線感知!司令、ウツノイドが来ます!」

ダン「やっぱりなぁ!ついて来い伝くん、奴を呼びに行くぞ!」

益子「はい!……って、どこへ!?」


 テッケンは土手で川の流れをぼんやりと見つめながら考えていた。

(民荷尽は信用できる。あいつに協力するのが嫌なわけじゃない)

小石を拾って川面に投げ込む。何に腹を立てているのか、自分でもわからない。
それが不機嫌を加速させ、さっきより少し大きな石を投げる。そんな事を何度か繰り返していると。

彼方で雲を裂いて、空から降りてくる巨大なロボットが見えた。

テッケン「ウツノイド……!」

行かなければならない。しかし、行くわけにはいかない。そんな時。

ダン「おお~いたいた。テッケ―――――ン!」

土手の上をダンと益子が走ってくるのが見えた。自分を探して来たにしては、早い。まるで最初から居場所がわかっていたかのようだ。

ダン「わかってるな?出動しろ」

テッケン「……何でここがわかった?」

ダン「ただの勘よ。俺がお前ならここへ来るかと思ってな……迷った男ってのは、川が見たくなるもんだ」

テッケン「そうやって俺を理解してるとでも言いたいのか。俺はてめえを信用なんてしねえ」

ダン「……川ってのは流れるもんだ。中には流れに逆らう渦もあるが、それでも水は確実に流れていく」

テッケン「だからおとなしく言う事を聞け、か。冗談じゃねえ。そんな理屈で納得できるか!」

ダン「わかってるよ。だから信用しろなんて言わねえ。ただ、俺が川になってやる。それで、お前の小賢しい
   言い分なんざ全部流してやるってんだ。」

テッケン「小賢しいだぁ?……言ってくれんじゃねぇか」

ダン「フン。さあ、お前ン中で渦巻いてるもんを、全部俺にぶつけてみやがれ!」


ヤブル「うおおぉぉぉぉぉぁぁぁっっ!俺がいくぅぅぅぅぅぁっ!!」

秀一「早まるなヤブル!テッケンを信じるんだ」

ヤブル「ちっくしょぉぉぉぉ何やってんだテッケェェェェェン!!」


抜人「出せッ、ここから出してくれ!」

 鍵のかかった病室の内側から、少年の叫び声が聞こえている。通りかかった山村は、戸の前に立っている兵士に声をかけた。

山村「騒がしいな、何だ」

兵士「はっ、ゲンカイザー基地の司令の紹介で入院している民間人の少年なのですが……」

山村「ゲンカイザー……あの赤井男が」

抜人「偉い人が来てるのか?頼む、出してくれ!ゲンカイザーが戦えないんなら、俺が行くしかないんだ!!」

山村「つまり君には何か、戦う力がある、と?」

抜人「うっ、そ、それは……」

山村「まあ、安心していい。ゲンカイザーは出られんが、テッケンオーが復帰したそうだからな」

抜人「本当ですか?それなら、いいんですけど」

山村「……自傷の畏れもある、中の様子には注意するように」

兵士「はっ!」


テッケン「テッケンオーはじいさんが作って、俺が動かす……他の誰の手も借りない、俺達だけのものだった。
     ウツノイドや魔闘メカと戦うのも、ただそうしたいから……それを親父は政府に売りやがった。
     俺が戦う理由は、俺がそうしたいからじゃ無くなった」

 何故だろう。自分でも理解できなかった理由が、ダンという捌け口を得たことで次々に言葉になっていく。
そしてその内容が子供じみていることに、テッケンは気付かされていた。

ダン「それで、お前は戦うのが嫌になっちまったのか?」

テッケン「!……ああ、そうだ……俺は、人の言いなりになるのが一番気に入らねえ」

本心とは正反対の言葉が飛び出してくる。本当は今もちらちらと視界を掠める、ウツノイドの暴れる街が気になって仕方がないのに。テッケンはようやく理解した。
気持ちは何も変わってはいない。今も自分は、戦いたいのだ。そしてダンが自分を論破し、自分の中にある感情を押し流してくれることに期待している。だからこそ、テッケンは思いつく限りの悪態をついた。

テッケン「自分から政府の手先になった兵隊なんかには、わからねぇだろうがな!」

こちらの心情を把握しているのだろうか、それだけ罵倒されても、ダンは冷静に返してきた。
「いいや、わかるさ……テッケン、俺は所詮フツーの人間だ。世界一の腕なんて無いし、ロボットだって
 持っちゃいねえ。だが俺だってな、お前と同じものを持ってるんだ。わかるか?」

テッケン「武器、力……か?」

ダン「そうじゃねえ。心だよ。この国を、星を守りてえっつう心だ。だが俺たちには力が無え。
   だから俺たちは軍人になった。政府の手先、その通りかも知れん。それでも、それで守れる力が
   得られるから、俺たちはこの道を選んだ。そいつはあの政府のスタッフ達もおんなじだ」

テッケン「何……?」

ダンは掌で自分の胸を叩き、それからゆっくりとテッケンの胸を指差した。
「持ってるんだろ?」

テッケン「クッ……」

ダン「まだ踏ん切りがつかねえか……しょうがねえ。いいか、テッケン!」
ダンは突然、殊更にデカい声で怒鳴りつけた!

テッケン「な、何だ!?」

ダン「他人の金なんて物はなァ、使ったモン勝ちだぞ!!?」

テッケン「!!」
益子「!!」

ガ・ガーン!!

テッケン「お、俺は、何て小さなことにこだわっていたんだぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

益子「ま、待ってテッケンくん、今の話は聞いちゃダメ……」

テッケン「目が覚めた……目が覚めたぜ司令、いや、ダン!うおおおおおおおっ!やるぜぇっ!!」

テッケンが走り出す。行き先は、言うまでもない!

益子(ああ今、一人の少年の人生が……)

満足げにテッケンを見送るダンの隣で、益子はひそかに途方に暮れた。


(中略)
ウツノイドの攻撃にテッケンオーは跳ね飛ばされ、尻餅をついた。

テッケン「くそっ、やっぱり体がなまってやがる!」

鍛造「拳児、右の壁にある赤いボタンを押せ!」

テッケン「右の壁?」
見るとそこには、いかにも非常用と思しきカバーに覆われたボタンがあった。
「これを押すとどうなるんだ?」

鍛造「これまでテッケンオーからお前にフィードバックさせていなかった感覚、痛覚がリンクする」

益子「そんな!それじゃもしテッケンオーの腕がもがれたら、彼はそれだけの痛みを感じるんですか?
   人間はその痛みだけでショック死することだってあるんですよ!?」

鍛造「……」
バリン。聞こえたカバーが割れる音が、鍛造の答えとなった。
ウツノイドのパンチがテッケンオーを襲う。両手を突き出してそれを受け止めるテッケンオー。

テッケン「痛ぇ……この感覚、忘れてたな」

受け止めたウツノイドの拳を一気に押し返し、相手が姿勢を崩した隙を突いて、テッケンオーは必殺の鉄拳を見

舞った!

テッケン「うおぉぉぉぉぉっっ!これがテッケンオーの、俺のぉ!鉄拳だァァァァァァァァッ!!」

その一撃で頭部が砕け飛び、ウツノイドは沈黙した。

テッケン「フフ、さすが俺のじいさんだぜ。そうだ、殴った手が痛まなきゃ、これ以上強くはなれねえ」

鍛造「そうだ、今こそお前とテッケンオーは一つになった。本当の格闘神機、テッケンオーの誕生だ!」

テッケン「ああ!」

政府の援助を受け、テッケンオーは自分と鍛造だけのものではなくなった。しかし、それは何かを失うことでは

なかったのだ。ただそこに、分かち合う新たな仲間達が加わっただけなのだ。
テッケンオーを照らす夕陽の向こうまで、川は流れ続けていた。(つづく)



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最終更新:2011年12月10日 21:54