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前回までのあらすじ

地球人のメカを攻撃した異星人のメカ、という事実を恐れられて出動自粛に追い込まれてしまったゲンカイザーとヨユウダー。
フ・カノー将軍はさらに地球人同士の信頼を壊すため、かつて日本を襲ったテロボットを偽装したメカを送り込む。
内閣総理大臣民荷尽はこれを見抜き征界巨人セイカイオーで出撃、怒りを込めて偽装テロボットを倒した。





 日曜の昼下がり。居間のテレビを窓越しに見ながら庭でトレーニングをしているテッケン。

尽『ですからあのテロボットは隣国のものではなく、異星人が送り込んだ偽物です』

記者『そう考える根拠はあるんですか?』

尽『実際戦った私にはわかります。感じがまったく違いました』

記者『いや、そういうのは根拠とは……』

尽『疑っては異星人の思うつぼなんです!今は地球人同士で諍いあっている場合ではないのですから」

テッケン「ヘン、戦えばわかる、か。いっぱしの戦士みたいなこと言ってくれるぜ、あの総理さんも」

そこへ垣根の向こうから男が顔を出した。隣人で乙女の父、披露院だ。

披露院「拳児くん、乙女はお宅に行っていないかね?」

テッケン「ん?来てない……っていうか退院してから会ってないな。どうかしたのか、おじさん?」

披露院「ミサに行ったきり戻ってこなくてね。若い神父様に代わってから帰りが遅いんだが、今日は特に」

テッケン「へえ、神父さん代わったのか。でも気にしすぎるなよ、乙女だって黙って出歩きたいときくらい
     あるだろ。構い過ぎると親離れが進むぞ?」

家族ぐるみの付き合いの中で育ったため、このように軽口も叩き合う仲である。

披露院「うん……まあ、もしお宅に行ったら教えてくれよ」

テッケン「ああ、わかった」

披露院の頭ががひっこんだ。

テッケン「全く過保護なおっさんだぜ……」

しかし、そんなテッケンの頭にも披露院の言葉がぐるぐると回っていた。
(神父様が代わってから帰りが遅い……)
家に来なくなった乙女、若い神父。

テッケン「……そういえば長いこと行ってないなぁ、教会」

なぜか周囲を気にしながら独り言を呟く。
「お、俺も……新しい神父さんに挨拶に行ってみよう……」



第二十一話「白い教会を暴け!」





テッケン「うっ……ヤブル、それに涼茂。何か用か?」

それはまさにテッケンが教会に向かわんと玄関を出たときであった。

ヤブル「いや、うちの軍人がどうしてるか気になってな。お前こそどうした?変装なんかして」

秀一(変装……なのか?いつもの道着と下駄にサングラスと帽子がついただけだが)

テッケン「こ、これは……かくかくしかじか……」

自分の不器用さを自覚しているテッケンは観念し、素直に吐いた。

ヤブル「そうか……そりゃ心配だな。よし、俺も行くぜテッケン!」

テッケン「何でお前が心配する?」

ヤブル「だってその神父に乙女さんが捕まったりしてるかもしれないんだろ?心配に決まってるじゃねえか!」

テッケン「!?」

秀一「むう、それは一大事だ。テッケン、私も付き合うぞ」

妙な話になってきた。だが、ここは合わせておいた方が得策か。

テッケン「……こいつは危険なヤマだ。気を引き締めていくぞ」



3人は件の教会の裏手にやってきていた。建物と塀の間の狭い空間である。

ヤブル「ここがその教会か。にしてもテッケン、よくこんな裏道なんか知ってるな?」
今くぐってきた塀の穴を指してヤブルが言った。

テッケン「昔は俺もよく来た。乙女に引っ張られてな」

秀一「それは、何とも意外な感じだな」

ヤブル「とにかく、その神父はここでその何とかいう怪しい儀式を……」

テッケン「おい、ミサは怪しくないぞ。世界中の教会でやってる」

ヤブル「何?どこでもやってるのか?洗脳の儀式を?」

秀一「そうか、そこから誤解してたのか。道理で突飛な発想をすると思った」

ヤブル「お前わかっててついて来たのかよ!……って、それじゃテッケン何を心配してたんだ?」

ヤブルの勘違いでうやむやになっていたその辺の事情が蒸し返され、テッケンは焦った!
「それはその……!そこに誰かいるのか?」

気配を感じ、テッケンが塀ぎわに立っている木に向かって声をかけた。

秀一「ずいぶん古い手でごまかすな」

テッケン「ごまかしじゃねえ、出てきやがれ!」

「大きな声を出すな。お互い、周りに知られるのはうまくあるまい」
木の陰から、本当に1人の男が姿を現した。

「よく気付いた。さすがは世界最強の男、といったところか」

テッケン「お前は誰だ!」

秀一「待て。貴方はまさか、甲賀公康国家公安委員会委員長?」

ヤブル「そ、それは人間なのか!?」
驚くべき長さの漢字の羅列にヤブルはおののいた!

公康「……政治家としては顔を知られて喜ぶべきだろうが、今は嬉しくないな」

秀一「なぜこんな所に一人で?」

公康「私用だ、答える義務はない。……何をしに来たのかは知らんが、ここには近寄らない方がいい。
   では、俺には俺の用があるので」

公康は草むらに入ると、そのまま溶けるように姿を消した。

ヤブル「……政治家、だったのか?」

秀一「お前も、総理と知り合いなら閣僚の顔くらい覚えた方がいいぞ」

テッケン「バカな……あんなに隙のない男が政治家だと?武道家としても相当な腕のはずだ」

秀一「なんでも、忍術を修めているのだとか……」

ヤブル・テッケン「忍者大臣!?」



ヤブル「こんちはー……」

ヤブルの勘違いが解けた結果、別にこそこそする理由は無いではないかと判断した3人は、普通に正面から教会に入ることにした。

ヤブル「何だ、誰もいないじゃねえか」

秀一「それはそうだろう。披露院嬢がミサに出かけたのは朝。この時間では終わっていて当然だ」

ヤブル「それじゃ、乙女さんはどこに行ったんだよ?」

テッケン「とにかく神父を探すぞ。締め上げれば何か吐くはずだ」

秀一「ずいぶん気合が入ってるな、テッケン」

テッケン「……悪いか」

ヤブル「なぁ、この教会って2階とか、無いよな」

テッケン「ああ、だから隠れる所なんてほとんど無いぜ」

秀一「ん……この床、妙な切れ目がある……これは、地下への入り口じゃないか?」

テッケン「何?本当だ、こんなのがあったなんて……いや、無かった。前はこんなのは無かったはずだ」

秀一「そうだろう。新しいもののようだ」
地下への入り口を開け、ふたの裏側やそこに見える階段を観察しながら秀一が言う。

ヤブル「……行くか?」

秀一「ああ……お前たち、ここからは声は小さくしてくれよ?」


人一人通るのがやっと程度の狭い階段が続いていた。一目で新しいものと知れたが、階段は石造り、照明は壁に据えられた蝋燭と、異様に古めかしい造りが不気味だ。

「何か、本当にやばい感じがしてきたな」
さすがのテッケンもいつものデカい声で話すのは自粛している。

秀一「うむ、正直おもしろ半分で付いて来たがこれは……む、扉だ」

先頭を歩いていた秀一が通路の突き当たりにある引き戸に気付いた。細く開け、3人で中を覗く。そして彼らが見たものとは!?


そこには、小さな礼拝堂があった。装飾は少なく、地下なので当然窓もない。照明は電球の弱い光のみで、一言でいって、あからさまに怪しい場所だった。
並んだ長椅子には二十数人の人々が腰掛け、講壇にいる若い男の話に耳を傾けているようだが、その男の声は聞こえない。

「あれが新しい神父か……」
テッケンは思わずその人物を評価した。顔は、まあ、いいが、確信に満ちた表情で何かを語り続ける姿がどうにも胡散臭い。
何より熱弁を振るっている様子なのに、この静寂の中こちらまで聞こえてこないというのは覇気が無さ過ぎる。

「なんか、やな感じの奴だな」
ヤブルも同じことを思ったようだ。

秀一「――妙だな。声がまったく聞こえない。そう離れてるわけでもないし、彼らには聞こえているようなのに」

言われてみれば、ここまで何も聞こえないのは「覇気が無い」という問題ではないような気もする。
その時。
――我らは選ばれし民。クロイツの声を聞く者。
――クロイツの教えこそ宇宙の真理なり。
――信ぜよ、クロイツを。信ぜぬは邪悪なり。
――我らは選ばれし民。邪悪を討ち滅ぼす者……

長椅子に座っていた参列者たちが立ち上がり、一斉に唱え始めたのだ。

ヤブル「テ、テッケン!これがミサなのか?」

テッケン「バカ言うな、こんなミサがあるか!だいたいクロイツなんて知らんぞ!」

ヤブルもテッケンも動転しながら囁き合う。

ヤブル「くろいつ。そういや何か、俳句の親戚にそんなのがあったような……」

秀一が頭を抱える。
「都々逸のことか?Kreuz、ドイツ語で十字架のことだ。もっとも、ここではそういう意味では無さそうだが」

そんなやり取りをよそに中を覗き続けていたテッケンが、突然大声を上げた。目的の人物を見つけたのだ!
「あああぁぁぁぁっ!乙女ぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」

ヤブル「何!?乙女さんがいたのか!?」

秀一「くっ、気持ちはわかるが、もう少し静かに驚いて欲しかった」

礼拝堂の人々は一斉に振り向き、敵意のこもったまなざしでこちらを見つめる。
神父がこちらを指し、何事か叫んだ――ようだが、相変わらず何も聞こえない。
だが参列者たちは彼に従うかのように立ち上がり、扉に向かってきた!

テッケン「くそっ、こうなったらやるしかないぜ!」

テッケンは扉を開け放ち、礼拝堂の中に飛び込んでいった!中の人々が一斉にテッケンに飛びかかり、テッケンの姿はたちまち人に埋もれてしまう。

秀一「馬鹿な、わざわざ囲まれに行くなんて……!」


しかし、秀一の懸念は所詮常人の発想だったと言わざるを得ない。テッケンを襲った参列者たちは一人、また一人と吹き飛び、壁に叩きつけられていったのだ。

テッケン「邪魔すんじゃねぇぇぇぇ!!」

ヤブル「秀一、今のうちに乙女さんを」

思わず見入っていた秀一に、ヤブルが声をかけた。
テッケンを中心とする人だかりの中で、乙女は一番外側にいた。

秀一「あ、ああ」

ヤブルは乙女に忍び寄り、後ろから彼女の腕を掴んだ。
「乙女さん、帰ろう。みんな心配してるぜ?」

しかし。
ドギャッ。

ヤブル「ぐわっ!」

乙女はヤブルの言葉に耳を貸すことも無く、ヤブルの顔面に正拳突きを叩き込んだのだ!

ヤブル「お、乙女さん!?」

秀一「さすがはテッケンの幼馴染みだ、一筋縄ではいかないな。それに既に奴らの虜になっているようだ」

ヤブル「くそっ、あの神父……あっ、神父はどこだ!?」

???「神父なら講壇の抜け穴から出て行った。見ていなかったのか?」

ヤブル「なに?」

上から声がしたかと思うと、天井からすーっと人影が降りてきて乙女の背後に立ち、トン、と首筋を叩いた。
乙女は突然意識を失って倒れかかり、ヤブルが慌てて抱きとめる。

ヤブル「あんたは!」

バイブル仮面「俺の名はバイブル仮面!」

秀一「バイブル仮面!?いやその声は甲賀……」

バイブル仮面「いいからここは俺に任せて早く出ろ。特に鉄野拳児!」

テッケン「何だ!」
まだ5人ほど相手を残した状態でを呼ばれ、テッケンは不機嫌そうに怒鳴った。

バイブル仮面「テッケンオーが必要になる。急げ!」

テッケン「何だと……くそっ、何かわからんが、任せた!」

ヤブル「乙女さんは俺たちが引き受ける!お前は先に行け!」

テッケン「頼んだぜ!」
そこからは振り向くことも無く、テッケンは入ってきた扉を出、階段を駆け登っていった……。



教会を出、テッケンオーのある自宅まで走る。
突然、ものすごい音がして振り返ると、教会の裏手を突き破って巨大ロボットが出現していた。地下から出てきたのだ。

「野郎、教会を壊しやがった……」
テッケンの心に、言いようも無く激しい火が点いた。


――それは、乙女が出てくる最初の記憶だった。
きっかけはわからない。披露院に連れられ、乙女に手を引っ張られて、テッケンは3人でミサに行った。
朗読される聖書の言葉は何ひとつ意味がわからず、ただただ退屈だったミサが終わると、新顔の少年に神父が話しかけてきたのだった。

「退屈させてしまったね。申し訳ない」

「ほんとにつまらなかったよ。おれ、かみさまなんてしんじてないからね!」

神父は頷いた。
「何を信じるかは君の自由だ。でも、意味がわからなきゃ信じられるかなんて決められないだろう?」

「わからなくてもわかるよ。あんなにつまらないんだから」

「また来ておくれ。そんな言われ方をしたままでは、私はとても悔しい」
少年の肩に手を置き、神父は微笑みながら本音を語った。何だかわからないが負けた気分で、テッケンは目を逸らした――。


キリストに帰依しているわけではない。
あの後知ったイエスの言葉の中には確かに胸を打つものもあったが、それも関係ない。
ただ、あの教会は、俺にとって大事な場所だった。

テッケン「……あなたたちの中で罪の無い者が、まずこの者に石を投げよ」

気付けば聖書の一説を口にしていた。乙女が伝染ったか?

テッケン「勝手な理屈で人を裁く奴らに、教会なんて勿体無いぜ。いくぞっ、テッケンオォォォォッ!!」



(……クレリッカ)

抜人「何?」
その瞬間、自衛隊の病院に事実上軟禁されている抜人にも、異変が生じた。

(クレリッカ……ワガ敵、ワガ敵、ワガ敵……!)

抜人の脳に直接響いてくるバンパイオーの怨嗟の声。それも、これまでとは桁違いの憎しみ。
抜人はたまらず叫んだ。

「な……うわがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

(ワガ敵、ワガ敵、ワガ敵、ワガ敵、ワガ敵、ワガ敵……)

「やめろ、やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

突然の叫び声に、病室の外にいた見張りの兵士が何事かと入ってくる。
「おい、いったいどうした……こ、これは!?おい、鎮静剤を早く!」

仲間の兵士が持ってきた鎮静剤を注射され、抜人は眠った。騒ぎを聞きつけて山村がやってくる。

山村「何だ、またこの坊主か。今度はどうした」

兵士「は、隊長。実は突然叫び声が聞こえまして、入ってみたら狂ったように暴れておりましたので、鎮静剤を」

山村「そうか。……また重なったな」

兵士「は?」

山村「今入ってきた情報だ。謎のロボットが出現してテッケンオーと交戦している」

兵士「ああ、そういえば前回も異星人のロボットが出てきた時に……」

山村「自分が行かなければならんとか叫んでいたな」

兵士「しかし、お言葉ですが、偶然では?今ロボットが出たなどという情報は自分も知りませんでした。
   彼の耳に入ったとは思えません」

山村「ン……そうかもな」

ではこの少年が何者も介さず、ロボットの出現を瞬間的に知る能力を持っていたら?
その仮説は何らかの力を持っているらしいという彼の言葉とも矛盾しない。
何といってもこいつはあの赤井男が怪しんだ少年なのだ。山村は偶然で片付ける気にはなれなかった。


直線や平面を多用したスマートなプロポーション、白く清らかなボディ。神父を思わせるそのロボット「クレリッカ」は、一見すると正義の味方風であった。
クレリッカがテッケンオーに向けビームを放つ。避ければ近隣の民家が傷つく。テッケンオーは自らを盾にした。
実はそれは機械の計器を狂わせる光線だったが、もともとテッケンは計器など気にしたことが無かった!

テッケン「ダメージは大したことねえけど、こんな場所じゃ闘えないぜ!」

テッケンオーは町の北側にある山地に向けて、じりじりと後退を始めた。
神父ロボは散発的にビームを撃ちながら、その後をついて来る。

テッケン「よぅし……そのままついて来い」



テッケンオーは無事に山地までクレリッカを誘導することに成功した。

テッケン「引っかかりやがったな!もう遠慮はいらねえ、俺がぶっ潰してやる!」

しかし、次の瞬間。
ババババババババババババッ!
テッケンオーを中心に円を描くように12機の銀色の中型ロボット「ズィルバークーゲル」が土の中から現れ、テッケンオーに向かって一斉にビーム攻撃を始めたのだった!

テッケン「何っ?引っかかったのは、俺かよ!……くそっ、コンニャロ!」

テッケンオーが近づこうとしてもズィルバークーゲルは全機が同じ方向に移動し、決してテッケンオーを囲む円形を崩さなかった。

テッケン「てめえら、効きもしねえ攻撃をちょろちょろと、鬱陶しいんだよ!……!?」

テッケンは気付いたが、遅かった。ズィルバークーゲルに気を取られているうちに、クレリッカがライフルのような大型の銃を取り出し、テッケンオーを狙っていたのだ。

テッケン「しまっ……」

ドンッ。
弾丸が放たれた。

テッケン「うっ、ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

四肢を引きちぎられるような激痛がテッケンを襲う!

鍛造『これは、神経ガス榴弾か!?拳児っ、拳児ぃぃぃっ!!』

祖父、鉄野博士の分析が通信されてきたが、激痛にもがくテッケンの耳には入らなかった。
神経ガス榴弾。対象内部に神経ガスを撃ち込む榴弾だ。当然、機械であるロボットにはただの榴弾も同然だが、テッケンオーは特殊だった。
人体に極めて近い構造を持ち、なおかつパイロットと感覚をリンクさせているテッケンオーにとって、対生物兵器は最大の弱点ともいえるものだったのだ。

ズズゥ――――ン。
テッケンオーが、山の斜面に倒れる。


 乙女をおぶって地上に戻ってきたヤブルたちにも、テッケンオーのその姿は見えていた。

ヤブル「テッケェェェェェェン!……秀一、もう我慢できねえぜ!ゲンカイザーを出す!」

秀一「わかってる。私とて、世論より仲間の方が大切だ!」

「ん……」

ヤブル「ん、乙女さん、気が付いたのか?っと、おわっ」

乙女はヤブルの背から飛び降りると、テッケンオーの方を見つめた。

秀一「披露院嬢は見ない方がいい。今から我々も行くから心配はいらない」

しかし、その視線を遮ろうとする秀一を制して、乙女は呆然とテッケンオーを見つめ続けた。

乙女「……拳児くん」



『シンケイカイロハスグニバイパスサレルシバラクシンボウシテクレケンジ……』

鍛造の声が耳に入っていたが、まったく意味を捉えることが出来なかった。体が動かない。
焦点の合わない視界の中で、クレリッカがこちらに歩み寄ってきていた。そして剣のような武器を振り上げる。

ここまでか……。朦朧とした意識の中でそんな風に感じた刹那。

「拳児くぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

テッケン「……乙女!」

はるか遠くのその叫びがなぜ聞こえたのかはわからない。ズタズタにされた感覚の中、偶然それを拾う感覚だけが鋭敏になっていたのか。
次の瞬間、テッケンは全てを取り戻した。振り下ろされたクレリッカの腕を掴み、押し戻しながら立ち上がる!

テッケン「聖職者のくせにえげつねえ真似してくれるじゃねえか!」

掴んだ腕を放し、顔面を殴る。クレリッカはよろけるが、自由になった剣を持つ腕を再び振り下ろそうとする。

テッケン「馬鹿の一つ覚えみたいにッ!」

テッケンオーは懐に飛び込んでクレリッカの首を抱え込むと地を蹴り、その首を軸に回転してクレリッカの上に逆立ちした。


秀一「信じられん……あれがロボットの動きか!?」


テッケン「おぉぉぉりゃ!」

バリバリィッ!
逆立ちしたテッケンオーがクレリッカの首を抱えたまま背中側に降りると、クレリッカの首は捻じ切れた!
頭部を失ったクレリッカはふらつきながらも、剣を振り回し続ける。

テッケン「てめえは、許さねぇ!!」

テッケンオーは剣を受け止めると懐に潜りこみ、神父ロボを一本背負いで投げ飛ばした!
クレリッカが飛んでいく!

テッケン「まだまだァァァァァッ!!」

テッケンオーは大地を蹴って駆け出し、飛んでいくクレリッカを追いかけ、追い越す。
そして飛んでくるクレリッカを待ち受け――

テッケン「テェァリャアアアアア!!」

ドゴォン!!

首が外れて出来た穴にテッケンオーの鉄拳が入り、クレリッカは串刺しのようになった後、爆発した。



テッケン「……乙女」

乙女「何?」

言わなければならない言葉がある。撃ち倒され、どうすることも出来なかった自分を救ったのは。

テッケン「……無事で、良かった」

違う。それも本音だが、今言わなければならないのは――。

乙女「え?心配してくれたんだ?」

テッケン「ち、違うぞ!俺はただ、おじさんが心配してたから、その……」

乙女「ふふっ、ありがとう、助けてくれて」

自分に言えない言葉を、乙女は平然と言ってのけるのだった。
テッケンが自分の未熟さを痛感していると、乙女は言葉を繋いだ。

乙女「ねえ、来週のミサは、一緒に行かない?」

テッケン「……ああ、たまには、いいかもな」


公康「尽、証拠を掴んだぞ。ヴァイスキルヒェの背後にいたのは異星人だ。これでゲンカイザー達の出動自粛を
   撤回できる」

尽「うん、聞いてるよ。テッケンオーが大型のメカを倒したら残りの中型は機能停止し、中からは事情を何も
  憶えていない地球人達が出てきた」

公康「そうか。突破くん達から聞いたのか?」

尽「ああ。ところで公康、バイブル仮面って知ってるか?」

公康「何のことだかさっぱりわからん」(つづく)


次回予告
公康「良い子のみんな、今回は俺……ゲフンゲフン、バイブル仮面が大活躍だったね!
   さて次回は、いよいよあの赤いロボット、オリンポスの正体がわかるぞ!
   次回スーパーぼくロボ大戦Winner's Hand
    『紅白ロボ合戦!オリンポス対テッケンオー!』
   かっこいいバイブル仮面に応援のお便りを送ろう。宛先は……」

尽「き、公康?」

公康「ギクッ」




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最終更新:2011年12月07日 20:06