アットウィキロゴ


 国内某所にある教会の地下で、黒いローブ姿の数人の人間が話し合っていた。
彼らの会話は地球人の可聴領域よりも波長が短い、いわゆる超音波なので聞き取ることは出来ないが、あえて日本語に訳すと次のようになる。

「クレリッカが倒された。それも実に惨たらしいやり方で」

「何ということだ。この星の人間も主の教えを説くに値しないのか」

「所詮はバンパイオーの訪れる星か」

「邪教徒は討ち滅ぼさねばならない」

「邪教徒は討ち滅ぼさねばならない」
「邪教徒は討ち滅ぼさねばならない」

邪教徒は――

第二十三話「聖者の行進」



自衛隊の病院。抜人の病室にヤブルとダンがやってきた。

ヤブル「オース、抜人。元気そうじゃねえか」

抜人「ヤブルさん。俺はもう健康ですよ。なのになぜか退院できなくて」

言いながら抜人はダンの方を見た。目を逸らすかと思っていたが、ダンは静かに抜人を見返してきた。

ヤブル「どういうことなんだ、ダン?だいたいこの部屋、個室だし、壁に変なマットが貼ってあるし。
    考えてみりゃわざわざ軍の病院ってのもおかしいぜ?」

鋭くなった。ヤブルの成長を感じながらもダンははぐらかす。
「何もおかしくは無い。退院できないのは急に貧血を起こす理由がまだわからないからだし、壁のマットは抜人が
 発作を起こして暴れることがあるから、自傷防止だ」

マットに関しては本当だ。とはいえ、どうやら納得しているらしいヤブルの様子に、ダンは苦笑した。やれやれ、まだまだか。ダンは続ける。
「そしてこの病院に入れたのは、俺のコネが効くからだ。実際、待遇いいだろう?」

抜人は肩をすくめ、病室の入口に目をやりながら応えた。
「確かに、24時間軍人さんが入り口を固めてくれていますね。トイレにまでついて来てくれるんですよ」

ダン「だろ?軍人だって暇じゃねえ、こいつは破格の待遇だぜ」
抜人の皮肉も、ダンはさらりと受け流した。

ダン「じゃ、俺はちょっと人と会ってくる。待っててくれ」



山村「久しぶりだな」

ダン「おう、すっかり偉くなっちまったようで」

山村「階級なんか羨むガラか。仕事といえばガキのお守り、それに引き替えお前は基地の仕事、充実してるって
   顔に書いてある」

ダン「ン……まぁな。若い奴ら見てると、失くしたモンを思い出すっつーか」

山村「お前が何を失くしたって?あの頃のまんまじゃねえか」

ダン「いやいやこれがそうでも……んなこたぁいいんだよ。どうなんだ、経過は?」

山村「どうもこうも、腹が立つくらいお前の読み通りだ」


 ギリギリ遊園地に帰る車中。抜人の前では続けづらかった話題を、ヤブルは蒸し返してみた。
「でも、やっぱりおかしくないか?コネだけで一般人が軍の病院に入るなんて」

ダン「……本人に黙ってさえいれば、教えてやってもいいが」

ヤブル「なんだ、やっぱり何かあんのかよ?」

ダン「ああ、そろそろ知らせといたほうがいいとは思っていたんだが、実はな……」

ヤブルは真実を聞かされた。
抜人と吸血機との関係が疑われていること。異星人が現れるたびに疑いが濃くなっていること。

ヤブル「まさか。あんな普通な奴が」

ダン「言いたいことは何となくわかるが、別にキャラが濃いことはロボット乗りの条件じゃ無えぞ」

ヤブル「そうじゃ無えよ。なんか、なんかな……」

ダン「何だ、吸血機は味方だって言ってたのお前じゃねえか?」

ヤブル「そりゃあ、そうなんだが……」

確かに味方だと思えたあの瞬間。あの感覚が間違いだったとは思わない。しかし、それが吸血機の全てではないとわかっている。例えば治水市で出会ったときの禍々しさを、抜人と結び付けたくはなかった。

ダン「まあ、いい。抜人には黙ってろよ?」

ヤブル「心配しなくても、言えるかよこんなこと」



 その夜妙に小森抜人のことが気にかかったのは、久しぶりに赤井と会ったからだろう。
抜人の病室に向かった山村は、扉に貼られたメモを見つけた。「屋上」とあった。

 屋上に出る扉を開けると、すぐ脇にいた見張りの兵士が慌てて敬礼をした。問題の少年は、屋上の真ん中で床に倒れている。何があったのか、と兵士に問い質そうとしたとき、起き上がってこちらを見た少年と目が合った。寝転がっていただけらしい。

抜人「あなたは……確か偉い人ですね?」

山村は少年に歩み寄りながら、補足した。
「山村だ、覚えておけ。で、君は何を……してる?」

抜人「星、見てるんですよ」

山村「星か。好きなのか?」
脚を投げ出して座っている少年の横に腰を下ろす。

抜人「ええ。俺の素性……知ってるんですよね?」

山村「ああ」

抜人「宇宙人のロボットが落ちてきたとき、俺、星を見てたおかげで助かったんですよ。そんで俺だけが、
   助かっちまった(※)」

山村「……」
どうして星を見ていると命が助かるのか、山村は怪しんだが、それ以上尋ねることはしなかった。
全てを失った日のことを自ら語りだした、この少年の心をもう少し開かせてみたい――打算半分、興味半分でそう思ったのだった。

抜人「でも、ここは駄目ですね。明るすぎて、夜中だってのにろくに星も見えない。俺の町だって満天の星って
   訳じゃないけど、もう少し見えましたよ」

山村「あそこは周りが山だからな」

少年は黙って頷いた。
これ以上故郷の話をさせて、少年を傷つけずにいるのは難しそうだ。山村は退散することにした。

山村「風邪、ひくなよ」

抜人「平気ですよ」

生意気な、と思いながら監視を兵士に任せ、山村は階段を降りていった。

※ 省略された第4話「関係なくない!」で、星を見ているとき山に落ちた隕石(正体はバンパイオー)を目撃した
 抜人は翌早朝山に入った。そのためにクロイツの最初の襲撃を免れ、生き残ったのである。


「邪教徒め」
「今こそ討ち滅ぼさん」
「目覚めよ、同胞たち!」

街中の地下に隠されていた数十機のクレリッカが一斉に起動し、次々に地上に出現していく。


――クレリッカ!

それは病室に戻り、ベッドに横になろうとした刹那だった。抜人の頭の中にバンパイオーの声が響き、いつものように頭痛が抜人を襲う。

抜人「うう、うぅああ――――――――っ!?ぎゃああぁ―――――――っ!!」

だが、その痛みはこれまでの比では無かった。頭を抱え、目を見開き、口からは泡を吹きながら絶叫した抜人は、すぐに意識を失った。

兵士「おい、大丈夫か!」

絶叫を聞いて病室に飛び込んできた兵士も、もう慣れたものだ。その苦痛がいかばかりのものかは知らないが、少なくとも命に関わることは無いと、高を括っていた。しかし彼の見た光景は、そんな予測をはるかに超えていた。

兵士「あれ……?」

そこに抜人はいなかったのだ。もぬけの殻の病室は、外で聞いた絶叫が嘘だったかのように、静まり返っていた。


益子「N市で神父ロボが大量出現。この前テッケンオーが倒したタイプよ!」

ダン「ああ、小森抜人が特に反応したっていう奴だな」

わざとらしく言いながらダンが机の上に何か置く。ヤブルはその、15cm四方程度の黒い金属の箱を見つめた。

ヤブル「……これ、持ってっていいか?」

ダン「おう、持ってけ」


つかえ「秀一さま、敵が多いそうです。お気を付けて」

秀一「心配はいらない。出撃自粛の間、ヨユウダーの徹底的な調整をしてくれていただろう?」

つかえ「それは、そうですが……」

秀一「だから、全然余裕さ!」

つかえ「秀一さま……」

秀一がウィンクしてみせると、つかえは頬を赤らめた。



テッケン「またあの神父ロボかよ!」

乙女「主を冒涜するものは……」

テッケン「っと、ちょっと待った。乙女、俺たちが戦うのは、神様のためか?」

乙女「え……ごめんなさい。そうじゃないわ」

テッケン「謝るなよ。ちょっと確認しときたかっただけだ。俺たちが戦うのは」

乙女「今、生きている人たちのため」

テッケン「よし、なら行こうぜ!合体、スーパーテッッケンオォォォォ!!」


じいや「坊ちゃま、政府より正式に出動要請がございました。出動自粛はこれまでにございます」

リュウ「フッ、元より自粛など気にしていなかったが、要請まで受けて動かなかったとあっては乙女さんに
    嫌われてしまうな」

じいや「左様にございます」


 白目を剥いていた目が戻ったとき、抜人はバンパイオーの中にいた。ただし、その意識は既に抜人ではない。

抜人「クレリッカ……俺の敵。滅ぼす」

目を充血させて抜人が呟くと、バンパイオーは戦場に向けて飛び去った。


山村「何?あのガキが消えた?」

ただ少年を見張るだけの任務でまさかミスを犯すとは思わなかったのであろう、報告に来た部下は顔面蒼白となっている。山村はまず情報局に問い合わせ、異星人の出現を確認した。

山村「……ほう、これまでにない大部隊の出現か……なるほどな」

受話器を置くと、現場である病室に向かった。病室の前では、報告に来た兵士の相方が山村を待っていた。

山村「――窓は嵌め殺しか。後は……例えばこう、開いたドアの陰に隠れて、お前が部屋の中を見ている隙に……」

相方の兵士「それはありません。彼が中に入ったとき自分は外で待機していましたが、少年は出てきませんでした」

山村「冗談だ。プロである俺たちがそんな手で出し抜かれるものか。では残る可能性は一つだ。あの少年――
   小森抜人はやはり、消えてしまったんだよ」

兵士「は……隊長?」
元はといえば自分が言い出したことだが、あまりの唐突さに兵士は困惑した。

山村「あり得ない事ではないぞ?例えばセイカイオーの行征剣だ。あれは総理が使おうとすると、国会の地下から
   転送されてくるのだという」

兵士「しかし、それなりの設備が要るのでしょう?それに現在では仕組みもわからない失われた技術だとか……」

山村「この世に瞬間移動は起こり得る、ってだけで十分なんだよ。こんな言葉知ってるか、あり得ない可能性を全て
   削除して最後に残った可能性は――」

兵士「は、それは存じていますが……」


山村「だったらこの件は終了だ。俺はお前に落ち度は無かったと言ってるんだ。安心しろ。
   じゃ、俺はちょっと連絡しなきゃならん所があるんで外すぞ。後は任せる」

兵士「は……はっ!」

病室を出て行く山村を、兵士は敬礼で見送った。


スーパーテッケンオーが飛来する!
上空の飛行船からヨユウダーが降下!
地中からはテンサイダーが!

走ってきたゲンカイザーが到着し、今4機のスーパーロボットが並び立つ。向かうはクレリッカの大軍団!

ヤブル「こんだけ揃うのも久しぶりだな」

テッケン「リュウ、奴らのガス榴弾は俺たちの機体にはすげぇ効く。気をつけろ。
     前みたいにすぐやられちまうんじゃねえぞ?」

リュウ「フッ、それはこちらのセリフ……って何だテッケンその羽根は。まさか……」

乙女「私ですわ」

リュウ「なっ、乙女さん!?テ、テッケン貴様ぁっ!!合体などと何と破廉恥なっ!!」

ヤブル「何だと?おい、合体ロボの何がハレンチなんだよ!?」

秀一「あー……諸君、萎縮している様子がないのは非常に結構なのだが」

益子『後ろからも次々に敵が出現しています。もう囲まれてしまっているわ!』

秀一「これでは戦術など考えている暇はないな。各個撃破。いくぞ!」

ヤブル・テッケン「おう!」

リュウ「やい涼茂、なぜ貴様が仕切る……ええい!」

4機のスーパーロボットは散開した。


ダン「もう難しい話はいらん。互いの力を信じ合え、それだけだ!」

電話が鳴る。

ダン「はい、こちらゲンカイザー秘密基地。……おお、山村。……消えた?煙のように?……わかってる、恩に
   着るって。……ああ、機会があったらな。」

ダンが電話を切る。

益子「山村隊長がこんな時に、何です?」

ダン「うむ……おいヤブル聞こえるか。小森抜人が病院から姿を消した。奴が来るぞ」



ヤブル「へっ、俺はお前の話なんか信じてねえよ。本当に来てから考えようぜ!」

ダン『それでいい。敵はまだまだ出てくるぞ。エネルギーは温存していけ!』

おう、とヤブルが返そうとしたその時、激しい突風が吹いた。
夜空の闇に、ひときわ黒い影が見える。翼をもつ人型をしたそれはぐんぐんと近づいてき、やがて紅く光る二つの眼が確認できた。

ヤブル「マジかよ……」

まぎれもなくそれは、吸血機。


抜人「ハァァァァァァァァッ!!」

銃撃をかいくぐりながら一機のクレリッカの直近に着地したバンパイオーは、瞬間的にブラッディブレードで凪いだ。
クレリッカが上下に両断される。
その間にさらに2機のクレリッカが背後から斬りつけたが、バンパイオーはマントを翻して1機を弾き飛ばし、それに視界を塞がれたもう1機に左手の爪を突き刺した。

抜人「しゅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

捉えられたクレリッカは痙攣しながら白化していき、突然灰になって散ってしまった。
抜人は目をさらに真っ赤にして、何者かの意志を口にする。

「我が敵たちよ……我に血を差し出せ!」

そんな抜人の様子を、誰にも見えないところから見ている者がいた。いや、あったというべきか。

(バンパイオーに意識を乗っ取られたのか、少年)



 吸血機は次々にクレリッカを斬り、刺し、灰にしていった。結果だけ見れば、それは心強い助っ人ではあった。

リュウ「ほぉ、なかなかやるではないか。少しだけ評価してやるぞ」

だがヤブルには、事実をそう受け止めることはできなかった。それには今の吸血機の姿は凶暴すぎる。

ヤブル「やっぱり嘘だ。あれが、あんなのがアイツのはず無えよ……」

リュウ「そのナイスファイトを讃えて貴様の本名を聞いてやろう。吸血機はこちらで付けたニックネームだろう。
    本当のを言ってみろ。ん?」

テンサイダーがバンパイオーに歩み寄る。

ヤブル「……!よせっ、雷場!」

抜人「俺の、俺の、敵ィィィィィィィッ!!」

リュウ「!?」

バンパイオーは一瞬、腰を落としたかと思うとテンサイダーに向かって飛びかかり、ブラッディブレードを振り下ろした!
これをかわしたテンサイダーに、今度は左手の爪が伸びる。それもかわすが、攻撃は容赦なく続く。

リュウ「な、何だ!味方という話ではなかったのか!?」

テッケン「そういやお前、前にこいつに手ェ出したことあっただろ。それでお前だけ敵なのかも……」

リュウ「クッ、この愚かな化け物ロボットめ!ならば望みどおり相手をしてやろう!」

テッケン「よせって。そんな場合じゃねえだろ」

とはいえ、バンパイオーはテンサイダーへの攻撃の手を緩めない。

抜人「滅ぼす、俺の、敵……」

ヤブル「やめろ!」

ゲンカイザーが後ろからバンパイオーを羽交い絞めにする。

ヤブル「雷場、離れろ!……吸血機、お前はあの時俺を助けてくれて、一緒に戦った。だから俺、信じてる、
    いや、信じてぇんだ!何か訳アリでも、お前は味方だって、俺たちの仲間だって……」

ザクッ。
羽交い絞めを振りほどいたバンパイオーは向き直り、ゲンカイザーの腹に爪を突き立てた。

ヤブル「な……?」

テッケン「ヤブル!」

秀一「ヤブルゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」(つづく)





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年12月07日 20:20