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「いやあのね、別にコロッケだけが好きでキャベツだけが嫌いってわけじゃいのよ。
 コロッケってどこかフワッっとしてるじゃん?そこが好きなの。だからフワッとしてるものは全般的に好き。
 ただキャベツってなんかパリッとしてるじゃん?そこが嫌いなの。パリッとしてるものは全般的に嫌い。分かる?」
好物のコロッケを口に運びながら麻里は兄、神夜に力説する。
「ああもう分かったから。飯食いながら話すなよ」
「ふん、そーゆうお兄ちゃんだって食べながら……」
「あーもううるさい!俺は無限ループが麺類の次に嫌いなんだよ!!」
「はぁい……」
食卓は一時静寂となった。
麻里の両親は共働きで帰りが遅く、兄妹二人きりの食卓、というのは別段珍しいことでもなかった。
「……普通に食べられる。やっぱサイボーグなんて夢だったか」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、別に」
「飯食ったらとっとと寝ろ。明日も学校だろ?」
「はーい」

機動少女伝マサト 第1話「女神、降臨!」



「おっはよー、マッちゃん」
「おお、ユズリン。おはよ」
麻里はいつもの調子で親友の笠桐柚子に挨拶する。
「マッちゃんもさぁ、そろそろ彼氏の一人や二人作ったほうがいいよぉ?」
「遠慮しとく。特に一人や二人って部分を」
「えぇ、何で?バレなきゃオールオッケーだよ?」
「……ユズリン相変わらず黒いわね。あんただから学年のイケメンツートップ二股なんてできるのよ」
柚子の発言に麻里は毒づいた。

「あれ、青崎くん?早いね」
麻里は教室で一人で本を読むクラスメイト、青崎亜紀斗に話しかける。
「ほんと、いつもこんくらいに来るの?」
「まあね。本、読みたいから」
「へー、さっすが哲学少年。末は博士か大臣かってね」
「どうかな。10で神童なんとやら、20過ぎればただの人、とも言うよ?」
「あはは、手厳しいね、谷口さんは」
「褒め言葉として受け取ってもOK?」
三人はそのまましばらく談笑した。


「おーい、お前ら席に着け……あら?」
「あっ、オッサン」
「オッサン言うな!!」
この男は乙津三郎。麻里達のクラスの担任である。20代だがあだ名は「オッサン」。
「しかし、お前らだけか?もう八時だってのに」
「え、もう八時ですか?」
「ああ。しかも、全員連絡が入っていない」
「あら、乙津先生に谷口さんと笠桐さん。青崎君も」
「梁空せんせーおはよーございまーす」
隣のクラスの担任、梁空魅春が教室に入ってきた。
「どうなさったんです?今日は開校記念日でお休みですよ?」
「「「「え…………!!?」」」」
四人のリアクションは綺麗にシンクロした。
「お兄ちゃんの馬鹿ー!!お兄ちゃんが『明日も学校だろ?』とか言わなけりゃぁー!!」
「あぁ、金古君も銅雲訓もいないわけだわ……」
「図書館に誰もいないと思ったら……」
「で、では、梁空先生は一体……?」
「お恥ずかしながら、私も間違えてきてしまったんです」
梁空先生は少し照れながら言う。
「じゃあ、もう帰りますか。貴重な休日が潰れる……」
麻里の提案に、反対する人はいなかった。

「本当、まいっちゃうよねぇ」
「そういえば開校記念日の通知、きのうもらってたね」
「ごめん、今週末銅雲君とのデートで浮かれてた……」
三人は愚痴をこぼしながら歩いていた。
「じゃ、あたしこの角右だから」
「うん、マッちゃん、またねー」
麻里は角で二人と別れた。と、そこに。
「ヒュウゥ、女ァ、また会っタナァ」
「あんたッ……デガス!?」
「ホホォウ、覚えていタカァ、ダガァ、それも意味のない事ォ。今度こそ死ネェ!!」
デガスは「あの日」のように麻里の胸にナイフを振り下ろす。
「…………ッ!」
そして、麻里は思い出した。「あの日」「あの時」「あの後」。あの男から囁かれた言葉を。
「……ボーグ、オンッ……!!」

ギィィン、という鈍い音が響く。
「ンンン?感触がおかしイナァ」
デガスが呟いた次の瞬間、デガスの肩にナイフの刃が突き刺さった。
「ギャアアアアア!!?な、何者ダァァ!?」
「おいおい、もう忘れちゃったの?『目の前にいた』人間を?」
「…………ッ!!」
デガスは痛みも忘れて目の前の異形に呆然としている。
「あんたがあの日刺し殺して、今日も刺し殺そうとした、谷口麻里だよ」
「あの……女ダトォ!?」
「さあ、第2ラウンドのスタートよ!電磁ウェェッブ!!」
麻里の右前腕からワイヤーが飛び出しデガスに突き刺さる。そして、高圧電流が流れる。
「ガァァァァァァ!!」
「まだまだよ!フィンガァァァバルカン!!」
両手指から弾丸が飛び出しデガスを追い詰める。
「クウウウウウウウウ!!」
「これで決まりね!アァーム!ミサイィィル!!」
左前腕から発射されたミサイルが、デガスに直撃する。
「ヅァァァァァァ!!?こ、こうなっタラ……来やガレ!!ダルーカ!!」
デガスが叫ぶと、巨大な鳥のようなロボットが出現した。
「何、こいつ!?」
「ヒャハハハハ!!踏み潰してやルゼェ!!」
麻里は様々な武装を撃つが、どれも全く効いていない。
「くっそ……打つ手なしか!? ッ、そうか!」
麻里はもう一つ思い出した。あの男の言葉を。
「アテナス!バァァーン、ナァァァーウッ!!!」
すると、麻里の背後に白い巨人が出現した。
「これが……あたしのもう一つの力……アテナス、行くよ!!」
麻里は勇んでアテナスのコックピットに乗り込む。
「な、なんだってんダヨォォ!!?」
デガスは情けない悲鳴を上げる。
「隙あり!!アタッカーパァァンチ!!」
アテナスの前腕が飛び、ダルーカの胴にめり込む。
「フガァッ!?ふ、不意を突かれたとはイエ……カリグラ5幹部の一人デガスがこんな小娘ニ……一撃デェ!?」
直後、ダルーカは大きな爆発をあげた。
「…………凄い。これが……アテナス……」
麻里は、恐れとも敬いともとれる奇妙な感覚にとらわれていた…………。


第1話 完



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最終更新:2010年01月14日 23:07