「ふぃ~、さすがに一日に二回戦闘は疲れるわ~」
麻里は食卓に突っ伏し小声でぼやいた。
「おい、麻里。だれてないでとっとと寝ろ。明日は折角の休みだぞ?」
神夜の言葉を受け、麻里はカレンダーを凝視している。
「どうした?」
麻里は神夜の問いに不機嫌そうに、
「別に。ただ、お兄ちゃん日付間違ってないかなぁって。」
「う、うるせえ!いいから寝ちまえ、お前は!!」
第3話「獅子、疾走!」
『よもやブザンのマルタルドすら敗れるとはな』
「グラーマン帝王様……面目次第もございません」
片膝をつき謝罪するブザンの後ろでヴァギトが軽くフォローする。
「いいんじゃないですか、帝王様?ブザンは頑張りましたよ」
「ヴァギト!貴様帝王様に対しなんという馴れ馴れしい態度を!」
『…まあよい。ジュバフ、貴様もそう腹を立てるな』
「……はっ。時に帝王様、デガスは何処に?」
『彼奴ならダルーカの強化をしているわ。あの鎧の女に一撃で負けたのがさぞ悔しかったのだろうて。
さて、次は誰が行く?』
「その役目、このジュバフにお任せを!」
「…でもさ、ジュバフ?君勝てるのかい、あのロボットに?」
「勝って見せよう!私のドラウグラで!!」
熱のこもる口調で訴えるジュバフに対し、ヴァギトは実に冷ややかに答えた。
「ふうん……帝王様、僕に行かせてくださいよ」
「何っ!?」
『ほう、勝算は……?』
「まあそんなに高くはないですね。でも、先の二人みたいに情けなく負ける気はないですよ。で、
マーヒュンを数体貸してほしいんですが」
『……任せよう』
「了解。じゃ、準備にかかります」
わざとらしく足音を高らかに鳴らせ、ヴァギトは背を向け歩いていった。
「帝王様!何故あやつに……」
『なあに、彼奴の自信の程を見せてもらうのよ』
(まずいぞ…折角ウィリスがいないというのに……このままでは手柄が上げられぬ!)
「じゃ、行ってきまーす」
「夕方には帰って来いよ」
麻里は、保障できかねまーす、と言って小走りで出て行った。
今日は近所のひからびたような映画館で麻里が楽しみにしていた映画の上映があるのだ。
麻里は全力疾走に小走りとスキップを混ぜたようなよく分からない走り方で映画館へ向かった。
「おっす、おっちゃん♪」
麻里はチケットを売る中年の男に呼びかけた。
「おう、マサちゃんかい。相変わらず胸ちっちぇえな。そんなんじゃあ彼氏できねえぞ?」
麻里にいきなりセクハラ発言をしたのはこの映画館の責任者で、ほぼ唯一の客である谷口兄妹とは
最早親友のような間柄である。
「ふーんだ、それはおっちゃんがオッパイ星人なだけだろ?それよりさ、チケットチケット」
「はいよ、『銀河三銃士』な。はいよ、サービスで3割引きしてやるよ。えーと、だから……」
「はい、こんだけだよ。じゃ、また後でね」
「お、おう……相変わらず計算はええな、マサちゃんは」
「……あー、楽しかった♪まさかポルトスがあんな壮絶な最期を遂げるとは……おう?」
ご満悦で出てきた麻里は、すぐに外の異変に気付いた。
「おっちゃん、何かあったの?」
「ああ、よく分からんが、銃を持った人間らしい影が六つほど近づいてきてるらしい。見つかった奴は
女だけブチ殺されてるらしい」
麻里には一つ、思い当たる節があった。
「……おっちゃん、また後でね」
「お、おいおいマサちゃん。まさかこの状態で帰る気か?影が通り過ぎるまで隠れていけよ」
「いいの。私、逃げ足だけは人並み以上だから。じゃ、また見に来るよ」
そう言って麻里は映画館を後にした。
「……女ってえのは、知らねえ内に成長してるもんだねえ」
「……いた!」
麻里は物陰から向こうの様子を伺っていた。
確かに六つ、人の姿をした影がいる。
しかし、それは人と呼ぶにはあまりに異様であった。まず、全身が黒一色だ。肌と思われる
部分まで金属光沢のある黒で覆われている。さらに言うなら、顔もない。時折口のようなものが開くが、
そこからは短機関銃が顔をのぞかせる。
と、異形のうち一体が一人の女性を髪を掴んで引きずってきた。そして、
ダダダダダダダ、と銃声が連続で聞こえたかと思うと、女性の顔の部分がみるみるなくなっていった。
「――――――――ッ!!」
気付けば麻里は、物陰から飛び出していた。
「おい!そこのビックリ人間ども!あんたたちの狙いは私だろ?撃てよ!その人じゃなく私を!!」
六体の異形は一斉に短機関銃を麻里に向け、発射する。
「ボォォーグ・オォォォーン!!」
麻里は叫びながら異形に突撃していった。
鎧をまとった麻里の前に、機関銃の弾丸はことごとく跳ね返されていった。
「HVJMHVKYKTYDKYVYV!?」
「HJUILHLYVTFCRYXCUKL!!」
異形は何か叫んでいるが、内容は全く分からない。
「そこの女の人の仇だ!!フィンガーバルカァァァン!!」
指のバルカン乱射で異形二体を早々に破壊した。
「FMYBKLUJUL+OINYYIVUKY!!」
「YRSDTAEJGIUI<LGGYGK<JT!?」
「IOGUTDXUTESTJDTYCTKJVCY!!」
三体の異形が同時に殴りかかる、が、麻里はこれを素早くかわし電磁ウェッブを射出。三体同時に無力化した。
「JHHJGFFTYDYDYRDTYCR>LOLO!!」
「残りはお前だけか!フラァァァッシュセイバァァァァァ!!」
麻里は腹から刀の柄を出し、それを力強く握った。すると、アテナスのF・エクスカリバーのように光が伸びる。
「でりゃああああ!!」
残った異形は真っ二つにされ、その場に倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「いやぁ、すごいねえ」
気付けば麻里の肩に手をまわす謎の男がいた。顔は良く分からない。麻里のように色付きのバイザーがついた
鎧を着込んでいる。
「!?」
「おっと、驚かせちゃった?僕はカリグラ五幹部のヴァギト。以降、よろしく」
「あんたがこれをけしかけたのか!?なんでこんな手段を!?」
「だって君が誰だか分からなかったんだもの。なら女を皆殺しにしたほうが手っ取り早いだろう?」
「…………っ!!」
「でもひどいのは君も一緒だろう?あの女見捨てて、顔がなくなるさまを見てたんだから」
「ッ!」
「君のためにもう何人も死んでるんだ。君のせいだよ?君が大人しくデガスやブザンに殺されていれば……ふふふ」
不気味な笑いを残しヴァギトは去った。
後に残された麻里の胸中にあったのは、言いようのない絶望感だけだった。
第3話 完
最終更新:2010年01月14日 23:09