『見事であったな、ヴァギト』
「お褒めに預かり光栄です、グラーマン帝王様」
ヴァギトは帝王に跪き、少し大袈裟に振舞った。
「私は認めぬぞ、あのような作戦は!」
ジュバフがヴァギトに吼える。
「ハッ、いいんじゃあネエノ?俺ァ嫌いじゃナイゼ?こういう作戦ハ」
『おお、デガス戻ったか。ダルーカの強化は完了したようだな』
「エエ、で、帝王様。次の出撃は是非俺ニ!汚名を雪ぐ機会を何卒この俺ニ!」
『よかろう、ならばやってみせよ』
機動少女伝マサト 第4話「少女、失意!」
あの日――一人の女性を見殺しにした日から、麻里は頭の中が真っ白になっていた。
ヴァギト。あの男の言葉で麻里の戦意は完全に削がれていた。
「……私の、せい……?」
麻里は兄、神夜に「ユズリン家に泊まる」とだけメールを送った。
しかし、実際柚子に確認をとったわけではなく、麻里の「一人でいたい」という思いの募った末の行動であった。
麻里は今、誰もいない公園で一人、項垂れていた。
「……私、もう駄目かもな……」
「あれ、谷口さん。どうしたの、こんなところで」
失意にくれる麻里に話しかけたのは、亜紀斗だった。
「青崎くん……なんでもないよ。ちょっとボーっとしてただけ」
「そうかな?いつもの谷口さんらしくないよ。話してみてよ」
亜紀斗の言葉に心を動かされたのか、麻里はつらつらと喋りだす。
「……例えばね、自分を狙った奴が自分が分からないから似た奴を殺していった。自分には殺される人を
救えるだけの力があるのに、救わなかった……。こういう時って、どうすればいいのかな……なんて、思っちゃってさ」
「……救えたのに、救わなかった……まあ、それは酷いよね」
亜紀斗は少し顔をしかめた後、言った。
「……やっぱり?」
「うん。僕はそう思うよ。でもね、」
「でも?」
「僕ならこうするな。後悔なんて一切無し。とにかく目の前の自分が出来ることを精一杯やる。
そうすれば、最悪な結果だけは回避できるはずだよ」
麻里は、亜紀斗の話を黙って聞いている。
「ゲームか、何かかな?僕のがアドバイスになるか分からないけれど、頑張ってね、谷口さん」
「うん、また、明日ね」
麻里が言うと、亜紀斗は少しうつむいて、
「……ごめんね、明日からは会えそうにないんだ」
「え?どういうこと?」
「みんなにはまだ言ってないけど、実は僕、転校するんだ」
「え――――」
麻里はあまりに唐突な出来事に絶句する。
「このことは、みんなには明日まで黙っていて欲しい。縁があったら、また会おう」
亜紀斗はそう言って去っていった。
「……青崎くん……」
麻里がふと空を見上げると、
「!!」
見覚えのある影が降ってきた。
『オラァァァ!あの野郎ォォォォ!!どこダァァァァ!?』
「あれは……デガスのメカ!?こうしちゃいられない!ボー…」
言いかけて、麻里は迷った。
また、私は誰も、何も守れずに死なせていくだけじゃないのか。
迷いのある私が言って、無駄に犠牲が増えるだけじゃないだろうか。
そう思った時、亜紀斗の言葉が脳内でよみがえった。
『とにかく目の前の自分が出来ることを精一杯やる。そうすれば、最悪な結果だけは回避できるはずだよ』
その瞬間、麻里は吹っ切れた。
「…ボォォーグ・オォォーン!!アテナス!バァァーン・ナァァァァーウ!!!」
麻里は鋼鉄の女神を呼び出す。
アテナスの額から放たれる光が麻里を包むと、麻里は一瞬でアテナスの操縦席へ送られた。
操縦席にはスイッチやレバーの類のものは一切ない。四肢の動きを伝達する回路が両手足に絡みつき、
麻里の意思、行動に反応してアテナスは動き出すのだ。
「出たな、女ァ!!引導渡シタラァ!!フェザーミサイル!!」
「かわせ、アテナス!」
ダルーカの翼から射出された羽根状のミサイルをアテナスは全て回避した。ミサイルは空の彼方へ消え去っていく。
「やるナァ!!ダガ、これはどうかナァ!?ザ・マッドダンス!!」
ダルーカが超高速でステップをみせると、麻里の目にはダルーカが五体ほどに見えた。
ダルーカそのままアテナスを取り囲み、ミサイルや格闘の連打を繰り出す。
「「「「「ハッハッハッハッハッハァ!!終わりダァァァァ!!!」」」」」
デガスの憎たらしい声も五重になって聞こえる。
「……助かったわ、あなたが狙いを私に集中させてくれて」
「「「「「アァ?何言ってンダァ?」」」」」
麻里の言葉にデガスは首をひねる。
「これなら、周りに被害は出ないもの。思いっきり行くわよ!」
アテナスは腰から二本の剣…の柄を抜き出した。
「やるわよ!エクスカリバァァァ!!!」
麻里が叫ぶと、柄から光の刃が伸びる。
「エクスカリバー・乱舞斬!!」
アテナスは二本のエクスカリバーを振り回し、一体づつ確実にダルーカの分身を片付けていく。
「……外れ!……外れ!……外れ!……外れ!……外れ!?」
五体斬っても、本物は見当たらない。
「……そこかぁ!!ヘビーアンカー!!」
麻里は空にヘビーアンカーを発射する。
そこには、特殊迷彩で姿を消したダルーカがいたのだ。
「グガガッ!!」
「もう逃がさないわよ。エクスカリバー・X斬り!!」
「ま、またカヨォォォォォ!!!」
ダルーカは爆発、炎上した。
「……青崎くん。私、やってみたよ。今自分にできること……」
麻里は遠い空を見上げながら呟いた。
機動少女伝マサト 第4話 完
最終更新:2010年01月14日 23:13