「申し訳ありません、グラーマン帝王様。奴に止めを刺せませなんだ……!」
ジュバフはただグラーマンに頭を下げている。
『まあよい、ジュバフよ。結果的にあの鋼鉄の乙女は大破した。それでよい』
「…有難き幸せと存じます」
ジュバフはさらに頭を下げた。
「…………?」
その一方で、ヴァギトは疑問の目をグラーマンに向けていた。
(おかしい……地球侵攻に来てからというもの、帝王様が変に甘い気がする……
普段の帝王様なら、作戦失敗や乗機大破は厳罰だったのに……何があった?
僕がカリグラ本星を離れたほんの五年間で一体何が……?)
機動少女伝マサト 第7話「戦士、休養!」
「……あ、あれ?ここは……私の部屋……!?」
「おお、気がついたか。おい、神夜。目を覚ましたぞ」
麻里の隣には、どこかで聞いたような声の長髪の女性が座っていた。
そして女性の声で神夜が部屋に入ってきた。
「ああ、すまんな。…ウィリスっつったか。大丈夫か、麻里?」
「お、お兄ちゃん……って、ウィリス……?」
麻里は『ウィリス』という言葉を必至で脳内から探る。……数秒後。
「あ、あーーーーー!!あのエアジェスのパイロット!」
「思い出したか、割と遅いな」
「こういう奴なんだよ、麻里は。この様子だと、大丈夫そうだな」
神夜は麻里を気遣ったつもりで発言した。
「あなたが……カリグラ?でも……私があった幹部とは随分違うわね。アーマーもないし」
「私があった幹部……アーマー……ヴァギトの事か」
「そうそう、そいつ。あー、腹立つ!変な心理攻撃してきやがって……あー!」
麻里が突然何かを思い出し叫んだ。
「ど、どうした!?」
反射的に神夜が尋ねる。
「今何時!?」
「え、えーと……10時30分だけど?お前5時間近くあのロボの中で気絶してたんだぜ?」
それを聞いた麻里はこの世の終わりのような顔をして叫んだ。
「じゅうじはん!!?」
「ああ、10時30分だけど、それが?…ああ、学校なら俺が電話入れておいた。休むってな」
麻里はそれを受けて神夜の胸倉を掴んだ。
「なにしてくれとんじゃドアホーーーーーーーー!!今日は青崎くんと会える最後の日だったのにーー!!」
「あ、青崎くん?…ああ、クラスメイトの。最後の日って…転校でもするのか?」
「……うん」
麻里は少ししょげて答える。
「……好きだったのか?」
「……少しね」
一気に兄妹は気まずい空気となった。とそこへ、
「……すまない。さっきからずっと蚊帳の外なのだが」
ウィリスが少し膨れて割り込む。
「え!?あ、ああ!」
「す、すいません!」
二人は大急ぎで謝罪する。
「…まあいい、あの後アテナスは大破した。ドラウグラと相打ちでな」
「よく分かんねえけど、二つの光がぶつかった衝撃波でお前のロボもあの龍もブッ壊れたんじゃねえかな」
「ああ、それで正解だ」
「た、大破!?それじゃあこの先どうするのよ!!」
麻里が悲鳴にも似た声を上げるとあの声が響いた。
『落ち着け、麻里』
「え!?あ、あんたか。落ち着けったって……」
麻里が言いかけたところで神夜とウィリスが割って入る。
「おい、麻里。この声誰だ?」
「姿はまるで見えないぞ?」
「え!?お兄ちゃん達にも聞こえてるの?さっきまで私にしか聞こえてなかったはずなのに……」
『いや、そんなことは無いぞ。私の声は他人にも普通に聞こえる。ただ私が話すとき近くにお前しか居なかっただけだ』
「あ……」
麻里は声に妙に納得した。
「……と、とりあえず。あんたさ、そろそろ名前教えてくれない?いいかげん不便なのよ。アンタとかコイツとか」
『……まあ、いいだろう。G・デストロイヤーを使い生きていたなら、私の名を伝えても問題ないだろう』
と、声は前置きをしてから続けた。
『私の名はラシュア。ラシュアとはカリグラの言葉で『猛き者』という意味だ』
「カ…カリグラ!?アンタってカリグラだったの!?」
『……そこは話せば長くなる。また次の機会にそれを話そう』
「ラシュアとやら……先程アテナスが動けないといった状況に落ち着けと言ったな。……根拠は?」
ウィリスが天を睨みつけ尋ねる。
『アテナスの装甲には自己修復装置が搭載されている。大破状態でも7日ほどおいておけばきれいに直る』
ラシュアは少し早口気味で三人に伝えた。
「なあんだ、それなら……って、7日!?そんなに動けないの!?」
「その間にまたカリグラが来たらどすうるんだよ!?」
麻里と神夜が騒ぎ立てる。ラシュアは一間おいて、
『そこは、だ……。ウィリス、7日ほど、カリグラの相手を頼めるかな?』
「……成る程、理解した。途中エアジェスの操縦が利かないと思ったら、ラシュア。貴様が操作を奪ったか」
『さあ、何のことだかな。偶然ではないのか?』
ラシュアはとぼけた口調で返す。
「チッ……まあいい。アテナスが修復終了するまでの7日間、このウィリスと愛機エアジェスが
カリグラの侵攻を阻止してみせよう」
「あ、ありがとうございます、ウィリスさん」
麻里が頭を下げると、ウィリスは、
「ウィリスでいいよ、麻里」
と微笑みかけ一階へ降りていった。
『さあ、麻里。お前のアーマーも大分傷ついている。お前自身も休むといい』
「うん、ありがと。そうさせてもらうよ、ラシュア」
『うむ。では、私はアテナスの修復装置を機動させておくのでな。7日後までお別れだ』
ラシュアの声は次第に小さくなっていった。
「さあて、俺は部屋で二度寝でもすっかな」
「……お兄ちゃん」
麻里は部屋を出ようとする神夜を呼び止めた。
「お?どうした?」
「お兄ちゃんさ、さっきからずっとウィリスの胸元見てたよね?」
「うっ!?き、気のせいだ、気のせい!」
「いや、ずっと見てたよ?ウィリス時々お兄ちゃんのほうちょっと迷惑そうに見てたもん」
「あ…いや、だってさ、俺だって男だぜ?あんな服着て横にいられたら……」
「お兄ちゃんの……オッパイ星人がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぎゃふっ!!?」
朝の谷口家が、少し静かになった……。
機動少女伝マサト 第7話 完
最終更新:2010年01月15日 07:09