「……よもやウィリスが裏切ろうとはな」
ブザンが呟く。と、そこに。
「ケッ、放っとケヨ、あんな奴」
謹慎が解けたデガスが口を挟む。
『五幹部諸君、揃っているか?』
「ええ、裏切ったウィリスを除いて全員です」
グラーマン帝王の言葉に、ヴァギトが少し皮肉混じりに返す。
『そのことだがな、先ほどウィリスの埋め合わせが到着した。入ってまいれ』
「失礼するぞ」
グラーマンに呼ばれ入ってきたのは、古めかしい言葉を使う幼い少女であった。
『紹介しよう、新たな五幹部となる……』
「レイファじゃ。よろしく頼もうぞ。では、帝王殿。早速出撃させていただけまいか」
『いいだろう。実力を示す手間が省ける』
「有難い。では、童は出撃してまいりますゆえ、諸君は我が活躍をしかと目に焼き付けるが良い」
レイファは悔しそうに睨むデガスとジュバフを一瞥して格納庫へ向かった。
機動少女伝マサト 第8話「妖狐、眩惑!」
「麻里、具合はどうだ?」
「うん、大丈夫。ありがと、ウィリス」
自宅にて、麻里はウィリスの看病を受けていた。
あの日、ジュバフが駆るドラウグラのダークロン・ノヴァを相殺しようと麻里はギガント・デストロイヤーを放つが
勢いは完全には消えず、お互いの機体が衝撃波で大破、という無残な結果に終わったのだ。
その後麻里は気を失い、ウィリスに助け出された。そして、アテナスの修復が完了するまで、麻里は一週間休むこととなった。
そうして、今日がその七日目。明日からアテナスも前線復帰できるのだ。
「お兄ちゃんは、もう学校?」
「ああ。なんでも、試験があるとかで早くに出て行ったぞ」
「そっか……あ、そうだ」
麻里はとっさにある疑問を抱きそれをウィリスにぶつけてみた。
「ね、ウィリスってさ、好きな人とかいたの?カリグラの時」
「なっ…!?いきなり何を言い出す!?」
ウィリスは顔を紅潮させ声を荒らげる。
「ふーん、いるんだ。反応で分かるよ」
ウィリスの反応を楽しむ麻里。次の瞬間、ウィリスの口から意外な言葉が飛び出した。
「……好きな人、というよりは……こ、恋人……だな……」
「え!?恋人!?すっごいじゃん!誰誰!?私の知ってる人!?」
麻里が興味津々で尋ねると、ウィリスはすこし苦い顔をしながら、
「…………デガス、だ……」
「……デガス?D・E・G・A・S・Uで、デガス?」
「うむ、D・E・G・A・S・Uで、デガスだ」
「悪いこと言わない。別れなさい。あいつ女の子平気で刺すわよ」
麻里が真顔で忠告する。
「いや、あの……カリグラから抜けたんでもう別れてるんだが……ッ!!」
「どうしたの、ウィリス?」
「カリグラだ。待っていろ」
「う、うん」
ウィリスはベランダに躍り出ると自分の機体を呼んだ。
「来い、エアジェス!」
エアジェスのコクピットから見えた敵の姿は、巨大な狐であった。
「見たことがないな……何者だ?」
「ほう、お主がカリグラを抜けたというウィリスか。会いたかったぞ」
「……そうだが、お前は?」
「童か?童はレイファと申す。この機体はクスォーフというてな。童の愛機じゃ」
レイファはクスリと笑って紹介した。
「そうか。これはエアジェス。私の愛機だ。……行くぞ!電光輪!」
エアジェスは両手で光輪を作り出し、それをクスォーフに向けて投げる。
「ほう……見事なものじゃな。ま、童の敵ではないの……っと」
スクォーフは軽いステップで電光輪を回避する。
「なっ!?」
「ささ、受け取るが良い、火焔符じゃ」
クスォーフが取り出した札から炎が走り、エアジェスを取り囲む。
「ぐぁぁぁっ!!」
「ほっほっほ、優雅じゃのう」
「な、何が優雅か……電光閃!!」
エアジェスは炎を電光輪から放つビームで切り裂く。
「そのまま動くな!双電光輪!!」
エアジェスの両腕から放たれた二つの電光輪が、クスォーフに連続してダメージを与える。
「うおっと、結構やるの……電磁符、ゆくがよい」
電磁符が電流を噴き出すが、
「無駄だ!電光閃!!」
エアジェスの電光閃にかき消される。
「むうう……勝ち目少なそうじゃの、なら、これでどうじゃ?幻影符」
クスォーフが取り出した三枚の札は、みるみるうちにその姿をクスォーフへと変えていった。
「分身だと!?」
「ささ、皆で火焔符じゃ」
四体のクスォーフが一斉に火炎放射を行う。
「まだだ!エアジェスの真骨頂を見せてやる!」
「真骨頂とな?まあよい。焼き払ってしまえ」
「電光演舞、発動!!」
その瞬間、エアジェスは大量の電光輪を産み出し、それをクスォーフに向け一斉に投げつけた。
「おわっ!?ぶ、分身が消えてしまった……!?」
「さあ、覚悟しろ!!」
「ふ、ふふふ、童は負け戦はせん主義でな……今回は退かせてもらうぞ」
そう言ってレイファは消えていった。
「……ふう、あいつが私の代わり、というわけか……」
ウィリスは空を見上げ呟いた。
機動少女伝マサト 第8話「妖狐、眩惑!」 完
最終更新:2010年01月15日 07:11