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「おい、デガス。ヴァギトはまだ帰らんのか?」
ジュバフはイライラしながらデガスに尋ねた。
「アァ?知らねェヨ、んなモン」
「そうか、帰っていれば作戦失敗の非を帝王様の前で声高にあげて見せたというに」
「必ず作戦失敗してくるとは限らないだろう。それにその帝王様がいらっしゃらないようだが?」
ブザンが口を挟む。そこにレイファが、
「ああ、なにやら姿を変え地球へ降りるとか仰っておったぞ」
「なに?地球へ?それも姿を変えてだと?どのようにだ?」
「さあの?童は後姿を暗がりでしか見ておらんからの」
そう言って意地悪く微笑むレイファにジュバフがキレた。
「何が『見ておらんからの』だ!ふざけるのも大概にしろ!!」
「オイ、落ち着けよジュバフ!あと今のちょっと似てタゾ!」
「それは今関係ないだろう!?」

機動少女伝マサト 第10話「真実、愕然!」



「どういうこと!?なんで青崎くんがカリグラで幹部してるの!?」
麻里と亜紀斗は互いに鎧を脱ぎ捨て対峙していた。
「…その前に、君から話してよ。君がその巨人に…アテナスに乗った経緯を」
亜紀斗がそう言った直後、麻里は言った。
「…騙されないよ」
「え…?」
「青崎くんがカリグラの幹部だったら知ってるはずだよ?私はブザンって奴に名乗ってるんだから。
麻里だって」
「なんだって…!?…さてはブザンの奴、気遣いやがったのか!?僕が地球人だからって…」
(地球人だからって…?じゃあ青崎くんは別に異星人じゃないってこと…?じゃあなんで…?)
「…とにかく、谷口さん。君には聞きたいことがある」
亜紀斗は麻里に向き直り話しかけた。
「私がアテナスに乗った経緯…ね。いいわよ(…あれ?青崎くんはアテナスの名を知っていた…
じゃあアテナスってまさか…?)」
麻里はいくつかの疑問を抱えつつ話し始めた。
「私はある日普通に公園でくつろいでたの。そしたらいきなり爆発が起こって、みんな吹き飛んだ…
その爆風の中から出てきたのが…ブザンだった」
「うん、そこまでは知っているさ。その後デガスがでしゃばって女を一人殺…まさか!?」

「そう、それが私…」
事実を聞いた亜紀斗が一瞬たじろぐ。
「その後、気付いたら変な空間にいて、『ある奴』に会ったの」
「『ある奴』?それは一体…?」
「青崎くんもカリグラなら聞いたことあるかもね。…ラシュアっていうの」
「ッ!?ラ、ラシュア…!?」
「やっぱり知ってたんだ…教えて、あいつは一体誰なの?青崎くんと、カリグラとどういう関係なの?」
「…谷口さん、少し黙って。まだ僕は話を聞いている途中だよ」
たじろいだ亜紀斗は平静を取り戻し麻里に詰め寄った。
「そうね…ラシュアは私に言ったの。『お前に戦う力をやる』って。それがアテナスなの」
「…そうか、やっぱり奴が…」
「さ、今度は私が聞く番だよ。知ってること全部教えて」
「……そうだね、じゃあ聞いていて。僕は一月くらい前に一人で教室で本を読んでいた。その時、
目の前にある男が現れたんだ…ブザンさ」
「…………?」
首をかしげる麻里を無視して亜紀斗は続ける。
「ブザンは僕に言ったんだ、『お前の力が欲しい、カリグラへ来い』とね。後で聞けばそれは
帝王様のお達しだったそうでね」
「帝王様…?それって一体誰なの?デガスの奴も言ってたけど」
「そうだね…君は勝ったんだ、真実を知る権利はあるだろうね」
そう言って亜紀斗は一回言葉を切った。
「僕らのトップの名は『グラーマン帝王』。多数の星の人間から構成される戦闘部隊『カリグラ』の長だ」
「っ!?グラーマン帝王…それに…『多数の星の人間から構成される』って…どういうことなの!?」
「言ったとおりさ。カリグラは一種類の異星人ではない。数種類の星の人間が集められたものなんだ」
亜紀斗は驚愕の事実を麻里に告げた。
「……でも、なんで60億人もいる地球からは青崎くんが選ばれたの?」
「グラーマン帝王様は各星から『ある感情』が最も強い人間を選んで引き抜いているのさ」
「ある…感情…?それって何なの?」
少し間をおいて亜紀斗は答えた。
「『自分の星への絶望感』、とでも言おうかな。とにかく、自分の星に諦めだとかを感じてる人間を集めてるんだ。
そしてその星を様々な手段で制圧、最もよいと思われる形に直してきたんだ」
「様々な手段…それで地球は巨大ロボットでの虐殺だっていうの!?地球の『最もよい形』って何!?」
亜紀斗は間髪いれずに答えた。
「『ゼロ』さ」

「『ゼロ』…って、まさか!?」
「そう、全て無かったことにするんだよ。文明も、技術もね」
「なんで…そんな…」
「もう地球はこれ以上ない、というところまで悪化しているんだ。歯止めの利かない環境汚染、
人を傷つけ殺すことをなんとも思わない若者、外見や思想が違うというだけで殺しあう民族・宗教間紛争…」
亜紀斗は大袈裟な手振りで得意げに話して見せた。
「だからって!それは虐殺を起こしていい理由になるの!?」
「…例えば指先に強力な毒が入ったとしよう。毒を抜くより、指そのものを切り落としてしまったほうが
時間はかからない。地球は全宇宙規模で見て指先ほどの価値しかない…いいたいことが分かるね?」
「だから…地球を切り落として他の星を守るっていうの…?そんなの、矛盾してると思わないの…?」
「ああ、思うさ。でもそのたったひとつの矛盾だけで全宇宙が救われるんだ、安いものだろう?」
「ふざけないで」
麻里はいつしか亜紀斗を睨んでいた。
「地球をゼロになんて…私が絶対にさせない」
「そう…じゃあ、寂しいけどお別れだ。戦場で会うことがないように祈っているよ」
「…………そう」
気付けば亜紀斗は麻里の目の前から消えていた。
一人残骸の街に残された麻里は、泣いた。
誰が見ているでもなく、泣いていた。

「…ドンパチは止んだみたいだな」
神夜は先ほどまで爆音が響いていたビル街を見つめていた。
「麻里……あ、あれ?」
神夜の前を、一人の少女が横切っていった。ビル街のほうへ向かおうとしているようだった。
「お、おい!そっちは危ないよ…って」
「きゃっ!」
神夜の忠告空しく、少女は派手にすっ転んだ。
「だ、大丈夫か?」
「え、ええ…痛っ!」
少女は膝をすりむいていた。
「無理すんなよ、俺が家まで送ってやる。お前、名前は?」
少女は少したじろいでから答えた。
「え、あ、あの…リュノ、です…」


機動少女伝マサト 第10話「真実、愕然!」 完


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最終更新:2010年01月15日 07:14