「ブザン!貴様、僕に気を使いやがったな!?」
戻ってくるなりヴァギト―亜紀斗はブザンに詰め寄る。
「文句があるのか?」
「どういう意味ダ?気ィ使うッテ」
「ヴァギトは地球生まれらしいからの。地球人が乗っているっちゅうあのメカの
名前を迂闊に教えてはヴァギトの闘志に曇りが出るとでも思ったんじゃろ」
レイファの解説が終わったあとにジュバフが思い出したように言う。
「そういえば、帝王様はまだなのか?」
「知るか!僕は寝る!お前らで好きにしろ!」
言うなりヴァギトは自室へと戻っていった。
機動少女伝マサト 第11話「騎士、乙女!」
「…ただいま」
麻里が帰ってきた。が、いつになく声に元気がない。
先頭で疲れただけではない。彼女は今、精神的にもすっかり参ってしまっている。
転校したはずの、想いを寄せていた亜紀斗が帰ってきた。それも敵として。
そして、自分に宣戦布告をしてきた。これで平気な方がどうかしている。
「おお、お帰り麻里」
だが、そんな草臥れた麻里を癒してくれる存在、それが兄の神夜である。
「…お兄ちゃ…って、ん?誰、それ」
麻里の目は神夜の胸元で留まった。そこに見たこともない少女が立っていたのである。
「神夜さん…この人ですか?」
「ああ、俺の妹の麻里だ」
「お兄ちゃん、この人誰なの?」
「ああ、さっき怪我してたんで保護した…」
「リュノです。よろしくお願いします」
そう言って少女はペコリと頭を下げた。
「保護したって?この子にもお家とかあるんじゃ…」
「それがな、さっきの攻撃で吹っ飛んだらしくてな」
神夜が言いながらリュノの頭をワシワシと撫でる。
「おっ、お世話になります!」
「…ま、いいや。私妹が欲しかったんだよねー。よろしくね、リュノちゃん」
麻里も神夜の手の上からリュノを撫でる。
「あ、ありがとう…ございます」
顔を赤らめつつリュノが感謝の言葉を述べる。
「よし、そんじゃ、麻里。リュノと一緒に風呂入っとけ」
「あ、はーい」
麻里はそのままリュノを風呂場に連れて行った。
「ふう、ごめんね、リュノちゃん。家のお風呂せまくて」
風呂から上がった麻里はリュノの頭をポンポンと叩きながら言った。
「い、いえ…私、体が小さいので…丁度いいです」
リュノは麻里が昔着ていたパジャマを着ている。
「帰ったぞ、神夜」
ウィリスが買い物袋を提げて帰ってきた。
「お、お疲れ、ウィリス。すまねえな」
「構わない。…で、あのリュノとかいう少女は?」
「ああ、今麻里と風呂に入ってるよ。そろそろあがったんじゃないか?」
「そうか…!神夜、麻里!カリグラだ!」
微かな揺れを感じ取りウィリスは叫んだ。
「なにっ!?麻里、上がったか!?」
「上がったし聞こえた!リュノちゃん、ちょっと待っててね」
「え、あ、はい…」
「ボォォーグ・オォーン!アテナス!バァァァーン・ナァァァーウ!!」
「え?え?な、なんですか、あれ!?」
突然現れた鋼鉄の巨人にリュノが慌てふためく。
「ちょいとわけありでな。俺の妹は地球を守る戦士だ」
「私も行く!来い、エアジェス!!」
アテナスの隣に鋼鉄の天使も舞い降りた。
「ラシュア、敵の構成は!?」
麻里が空に話しかけると、頭の中に声が響いた。
『未確認機が二機だけ、指揮官機は見当たらない。それより、大丈夫なんだろうな?
戦えるのか?』
「やるだけ…やってみるよ」
「来るぞ!」
二人の視界に現れたのは、槍と盾を構えた騎士のような機体と、弓を構えた戦乙女のような機体だった。
それぞれ、人型戦闘兵「サーバルト」と「ヴァーキルア」である。
「新型か…早そうな方はウィリスに任せる!ナックルビーム!!」
「了解。槍のほうは任せるぞ!電光閃!!」
二人は一斉に攻撃を開始した。サーバルトはそれを受け止め、ヴァーキルアは回避した。
「やるな!双電光輪!!」
今度は二発とも直撃した。ヴァーキルアの反撃の光の矢も紙一重でかわす。
「こっちも!アタッカーパァァァァンチ!!」
サーバルトはアテナスの拳を槍で切り払う。が、その隙を麻里は狙っていた。
「そこぉ!ヘビーアンカー!!」
サーバルトに鎖を打ち込み、それを急速に巻き取る。そして、双方の距離が近づいたところで、
「どりゃあああ!!」
膝蹴りでサーバルトを粉砕する。
「さあ、フィニッシュだ!電光演舞・切先の舞!!」
ヴァーキルアの肢体が無数の光のリングの中に消えていった。
「ウィリス!そっち片付いた!?」
「ああ。その様子だとそちらも終わったようだな」
「うん。…しかし、コレを量産されると少しやっかいかもね」
「ああ。早々に決着をつけたいところだが…」
その頃、麻里の家の一室にて『誰か』が呟いた。
「あれは…!?私がいた頃には設計までしか済んでいなかったはず…誰が…!?」
続く
最終更新:2010年01月15日 07:15