第二話
初陣に勝利したひゅうがは、少しずつではあるが活気を取り戻し、新しい生活にも馴染み始めた。
エイテルオンの操縦もみるみる上達し、自分を気にかけてくれるいぶきのことを邪険に扱ったりも
しなくなった。学校の帰りに、高美に自分の近況を話すことが、彼の何よりの楽しみとなっていた。
岡村いぶきという娘は、つくづく不思議な少女だ。彼女は、たとえクラスメイトの何気ない一言で
あっても、そのまま受け止めてそのたびに一喜一憂したりしている。ひゅうがは、そんな彼女を
危なっかしく思いつつも、この無口な少女に少しずつ友愛の情を感じ始めていた。
一方そのころ、「次の敵はおそらく二体一組で襲ってくるだろう」との見解を示した榊の命令で、
ひゅうがの乗る「エイテルオン一号」に続き、「エイテルオン三号」が実戦に投入されることが
決まった。そのエイテルオン三号のパイロットとは、じつは他でもなくいぶきその人である。
だが、前々から彼女の指導にあたっていたのり子は、そのことに対して一抹の不安を抱えていた。
いぶきはエイテルオン三号の装備をまったく使いこなすことが出来ず、エイテルバリアを張ることも
出来なかったのだ。「三号が出たところで、どうせ一号の足を引っ張るだけに決まっている」
……それが、エイテルフォースに所属するすべての人間の共通の見解であった。
そして、いよいよその時は訪れた。榊の予測どおり二体現れた敵ロボットに立ち向う、エイテルオン
一号と三号。いぶきの乗る三号は無謀にも前に飛び出して行ったため、二体のロボットに徹底的に
痛めつけられてしまう。そのことに怒ったひゅうがは敵の一体をたちまち倒したが、残る一体には
逃げられてしまった。エイテルオン三号は大破し活動不能。いぶきも病院へと運ばれていった。
いぶきの見舞いに来た者は、ひゅうがを除いて誰もいなかった。何故あんなことをしたのか、と
問い掛けたひゅうがに、いぶきは意外な答えを口にした。
じつは、自分が期待されてはいないことに、いぶきは最初から気づいていたのだ。「それならば」と、
彼女は仲間であるひゅうがにすべてを託すため、わざと攻撃を受けて敵の手の内を彼に知らせようと
していたのである。これほどまでに心が優しすぎるなら、エイテルバリアを張れないのも当然だ。
「戦うってどういうこと?自分のしていることが何なのかよくわからない」…いぶきの問い掛けに、
ひゅうがは言葉を詰まらせた。そんなことは自分だって考えたことはないが、なるべく早く自分なりに
答えを出せないと、彼女に申し訳が立たない。悩みに悩んだひゅうがの出した結論はこうだった。
「栄え輝け福音よ、永遠(とわ)に照らせよ陽の光。逆転の戦士、エイテルオン参上!」
……それは、病床のいぶきに向かって、「徹底的にヒーローとして振舞う」こと。ひゅうがの作戦は
功を奏し、乗り手の意思の力を受けたエイテルオンは、再び現れた敵をたちまち打ち倒した。
いぶきは、ひゅうがのこの心遣いをとても喜んでくれた。だが、この「名乗り口上」が思わぬ波乱を
呼ぶことになろうとは、ひゅうがはその時まだ知る由もなかった……。
つづく
最終更新:2010年01月15日 07:31