第28話「迫る臨界!その名はエクシード!!」
記者会見。ゼンカイダー部隊の襲撃による混乱に対応するため、内閣はゲンカイザーに関する情報の一部を公表することを決めていた。
記者1「今回襲撃してきたメカはゲンカイザーによく似ていました。ゲンカイザーは以前異星人製のものだと
いう噂が立ったことがありますが、実際どうなのですか?」
尽「……ゲンカイザーが地球で作られたものではないのは、事実です。」
記者2「では、そのパイロットも地球人ではないということですか?」
尽「そんな事はありませんっ!彼は、間違いなく地球人です!」
記者2「彼、ということは、パイロットの方は男性ということですか?」
尽「あ……そうです、男性です」
失言から余計な情報を漏らしてしまった。ちらりと舞台袖にいる新村秘書官を見やると、眉間に皺を寄せている。
記者3「今回の襲撃では、ゲンカイザーがまともな戦闘を行っていなかったように見えましたが、やはり
何か敵との関係が?」
尽「あるわけ無いでしょう!?戦闘にならなかったのは敵が逃げ回ったからじゃないですか!」
記者3「しかし、敵がゲンカイザーからだけ逃げ回ったのは……」
尽「いい加減にしてください!それだけの事で、彼の今までの戦いが嘘になるとでも言うんですか!?」
『しかし、敵がゲンカイザーからだけ逃げ回ったのは……』
『いい加減にしてください!それだけの事で、彼の今までの戦いが嘘になるとでも言うんですか!?』
「参ったな、完全にクロ扱いだぜ」
リモコンでTVを消し、ダンが洩らした。
『ほとぼりが――今度は長くなるかも知れないが――冷めるまで、テッケン達に頑張ってもらうしかないな。
ちょうど今、ヨユウダーのコンピュータから興味深いデータが見つかってな。解析に専念させたいのだ』
通信ごしに話しているのは秀一だ。
益子「興味深いデータって、何です?」
秀一『ゲンカイザーの設計図だ。完全とはいかなくとも、いくらかは『本来の姿』に近づけられるかも
知れない』
南極で発見された異星のメカ、ゲンカイザーは現在、あくまで地球人にわかる範囲での修復が行われて運用されている状態である。本来の性能はいまだ、未知数。
ダン「なるほど。今の状況なら、そっちを優先するのもいいかもな。ヤブルはどう思……おい、ヤブル」
ヤブル「……ちょっと俺、上の掃除にでも行ってくるわ」
益子「ヤブルくん……」
フ・カノー「ゲンカイザーは操縦者の精神をエネルギーにするウツノイド。突破の心を掻き乱せば、その力は
激減します」
皇帝リ・タイアが満足げに頷きかけたそのとき。
「あのゲンカイザーを操る者の精神が、それほど脆いとは思えんが」
カツーン、カツーン、カツーン。
硬い足音を響かせながら入室してきたのは、一人の仮面の武人。
フ・カノー「貴様は!」
その武人、エクシードは皇帝の前までくると跪き、頭を垂れる。
リ・タイア「エクシード。そうか、千日間の拘禁、今日までであったな」
エクシード「ゲンカイザー。一度手合わせしてみたく存じます」
フ・カノー「ふざけるな!指揮官は俺だ、まして今は作戦の最中!」
エクシード「……」
リ・タイア「よかろう。ゆくがいいエクシード。だが、遊びが過ぎるなよ?」
エクシード「有り難う御座います」
再び足音を響かせ退室していくエクシードを、横目で見送るフ・カノー。
「陛下、これはどういう……」
「余は、誰でも構わんのだよ。無限の力の可能性を摘むことができるなら、誰でもな」
リ・タイアの目がフ・カノーをじろりと睨む。
フ・カノー「ク……では、私はアキラーメ砲の改造に着手致しましょう。今のままでは威力がありすぎて
使い所が限られますからな」
リ・タイア「ほう、面白い。許可しよう」
フ・カノー「エクシードめが戻るまでに、試射までこぎつけて見せましょうぞ」
ギリギリ遊園地の外壁には既に「人類の敵」「出ていけ」などの心無い落書きがされている。
ゲンカイザーの基地がこの遊園地であることは公には発表されていないが、カイザーマシンが敷地内に堂々と飾られているほどだ。近隣の住民には周知の事実である。
つまり、この落書きをしたのは近所の顔見知りだということになる。
ヤブル「落書きも早いとこ消さないとな……」
箒とちり取りを持って外に出ると、即座に空き缶が飛んできてヤブルの頭にぶつかった。
「出てけよこのスパイ野郎!」
ヤブル「……痛ぇなぁ」
呟きながら転がった缶を拾い、投げた男の方を見る。それだけだったが、男は怯んだようだった。
「ひ……助けてくれぇ!」
叫びながら男は走り去った。
ヤブル「まったく……」
益子「司令、降下してくる物体があります。これは、ウツノイドなの?微弱なダウナー線を感知」
ダン「……この波形、ゲンカイザーにそっくりだな」
益子「どういう意味です?」
ダン「いや、わからんが」
『何ブツブツ言ってんだ!どうせ敵で、出られんのは俺だけなんだろ!?』
テッケンが通信に割り込んできた。
秀一『この場合に限っては、最も建設的な意見だろう。すまないテッケン、よろしく頼む』
テッケン『おう!』
ゲンカイザー基地が感知した物体、それはエクシードの駆るウツノイド、リンカイオーだった!
リンカイオーが地上に降り立ち、驚いた人々が逃げ惑う。
エクシード「さて、どうすればゲンカイザーは呼び出せるのかな?」
テッケン「そこまでだぜ、ゲンカイザーの偽物!」
スーパーテッケンオーが駆けつけた!
エクシード「地球のロボットに用は無い。俺の狙いは……ほう」
テッケン「こいつ、前のうじゃうじゃいた連中とは、違う」
エクシード「できる相手と見た。地球のロボットよ、名は?」
テッケン「俺の名は鉄野拳児、こいつはテッケンオーだ!」
エクシード「エクシード、リンカイオー参る……!」
ヤブルは遊園地内を掃除していた。ジェットコースター、観覧車と、遊具の周りを丁寧に箒で掃く。落ちているのは枯葉ばかりで、ゴミは少ない。入場客が激減したからだ。
続いてコーヒーカップ、そしてカイザーマシンの周りを掃いていると、益子が走ってやってきた。
益子「ヤブルくん、ここにいたの……」
ヤブル「おいおい益子さん、制服のままこっちに出てきちゃダメだよ……って、客なんか一人もいねぇけどな
!」
益子「ヤブルくん、大丈夫……?なんだか、ヤブルくんらしくないよ?」
ヤブル「何言ってんだよ、俺が俺以外の何になるってんだ!で、どうしたんだよ?」
益子「それが……テッケンオーが負けたわ」
ヤブル「!」
益子「敵はカイザータイプ、この間とは別のタイプが、1機だけ」
ヤブル「一騎打ちで、テッケンが負けたって……?」
益子「ヤブルくん、いける?コンディションが悪いなら……」
ヤブル「いいんだな?」
益子「え?」
ヤブル「俺が出てもいいんだな?テッケンを倒すような相手じゃ、他に手はないもんな!」
目が輝きだしている。ヤブルは箒とちり取りを益子に押し付けると、
「じゃ、後頼むぜ!トップ・イン!」
ハッサン、リンカーを連れカイザートッパーで飛び立っていった。
益子「やっぱりヤブルくんは、ヤブルくんだよね……?」
到着したゲンカイザー、ヤブルの見たものは、翼をもがれたロザリウスと、無残に破壊されたテッケンオーだった。
ヤブル「テッケン!乙女さん!」
乙女「私は大丈夫。翼をやられただけですわ。でも、拳児くんが……」
テッケン「う……すまねえ、負けちまった」
テッケンの声は苦痛と屈辱にまみれてはいたが、どこか満足げであった。
エクシード「待ちわびたぞ、ゲンカイザー」
リンカイオーがゲンカイザーを睨め上げる。その眼が笑うように光る。
テッケン「気をつけろ、こいつは、お前に似ている」
ヤブル・エクシード「「うおおおおおおおおっ!!」」
それぞれ最初の一撃が互いの顔面にヒットした!だが、派手に弾き飛ばされたゲンカイザーに対し、リンカイオーはその場に踏みとどまっている。
ヤブル「くっ、さすがにテッケンを倒しただけのことはあるぜ!」
エクシード「この気迫……いいぞ、突破!」
ヤブル「なめんなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ゲンカイザーが再び飛びかかるものの、攻撃は軽くいなされ手痛い反撃を受ける。そんな攻防が何度か繰り返され。
エクシード「技量はテッケンオーの方が上か。なのに何なのだろうなこの高揚感は。楽しくてたまらんぞ、
ゲンカイザー!」
ヤブル「ハァ、ハァ、ハァ……何なんだこの感じは……?」
益子「司令、ヤブルくんのやる気がぐんぐん下がっています!」
ダン「ああ、何か変だ。ヤブル、どうしたんだ!?」
テッケン『ダン、こっちの映像を回す。ちょっと見てみろ』
司令室のディスプレイに映る映像がゲンカイザー視点のものからテッケンオーのものに変わった。
ゲンカイザーとリンカイオーの闘いが傍目から確認できる。
益子「そんな、完全に腰が引けちゃってる!」
ダン「……やる気低下の原因は、恐怖か」
益子「嘘。ヤブルくんに限って……」
エクシード『どうした突破、気が削がれたか。集中しろ!』
じいちゃん「これは……この声、あの動き、まるで……」
ダン「じいさん、心当たりがあるのか?」
じいちゃん「バカな、あいつは確かに死んだはずだ……」
ダンの問いも耳に入らない様子で、じいちゃんは顔を真っ青にして司令室から出ていった。
ダン(じいさんが知っている、死んだはずの男?そしてヤブルの恐怖……まさかな)
益子「司令、ボーっとしてないでヤブルくんにアドバイスを」
ダン「ぬう……無理だ!がんばれヤブル!気合で何とかしろ!!」
益子「そんな~!」
ヤブル「くそっ、何でだ、ぜんぜん力が入らねえ。うおああああああっ!」
叫びでごまかしながら繰り出したゲンカイザーのパンチを、リンカイオーはもはやかわそうとすらしなかった。直立したままゲンカイザーの攻撃を受け、平然としている。
エクシード「本調子ではないようだな。まさかフ・カノーの目論見どおり、心を掻き乱されている訳でも
あるまい?」
ヤブル「そいつは……どういう意味だ?」
エクシード「フ・カノーはゼンカイダーを使い、地球人の不信を煽ってお前を追いつめた。そこまでは計算
どおりに運んだのだろう。それから、お前はどうした?奴の目論見どおりに心に傷を受け、
力を発揮できなくなったのか?」
ヤブル「……だったらどうだってんだよ」
エクシード「……落胆した」
ヤブル「なに?」
エクシード「ゲンカイザーは我が愛機リンカイオーをプロトタイプとした、いわば息子ともいえる機体だ。
その選んだ者が、そんな小賢しい手に乗るような男とはな。リンカイオーも嘆いておるわ」
ヤブル「うるせえ……じいちゃんと父さんが作った遊園地をあんなふうに汚されて、平気でいろっていうの
かよ」
エクシード「くだらねえ!」
ヤブル「!?」
エクシード「祖父と父が作った?そんな古くせえもんのためにお前は戦えねえってのか?ちっちぇえなぁ!」
ヤブル「な・ん・だ・と……?」
エクシード「!?」
それは一瞬だった。ゲンカイザーはものすごいスピードでリンカイオーに殴りかかっていた。さしものエクシードも対しきれず、限界拳がリンカイオーを捉えようとした最後の刹那。
ヤブル「……………か………はっ……」
天から降りた光の柱が、ゲンカイザーを貫いて大地に突き刺さっていた。
フ・カノー「俺が、俺がゲンカイザーを弱らせたのだ。今更エクシードなどに渡すものか。皇帝の寵愛を
受けるのは、この俺なのだ!」
ビームに貫かれたゲンカイザーはすぐさま爆発し、四散した。その突然の出来事に、エクシードも茫然としている。
『ヤブル!ヤブルゥッ!!』
『ヤブルさん、そんな……いやぁぁぁぁぁっ!!』
エクシード「……勝負は預けた」
仲間たちの悲痛な叫びを背に、リンカイオーは帰還していった。
記者「外務相とは、どんなお話を」
尽「異星人の侵攻に対する諸外国、特に米国との連携方策について。それから円安への……」
参内「総理」
後ろで携帯に出ていた参内が尽の隣に入り、耳打ちした。
尽「何ですって!?……たった今、情報が入りました……ゲンカイザーが、戦闘中に上空からのビーム攻撃
を受け、大破……」
外務大臣との会談の取材に来た記者たちなら、この件の担当ではあるまい。だが当然個人的な興味はあるようで、一堂はざわめいた。
尽「……くそっ、チクショォォォォォォォォッ!!」
民荷尽のこの叫びは、夕刊各紙の一面を飾った。(次回はいったいいつになるんだろう)
最終更新:2011年12月07日 20:14