「うおぉぉぉぉぉっ!」
するどい手刀が繰り出され、目の前の円盤を叩き落す。そして勢いをつけ振り向き様に横に払いさらに数機の円盤を叩き落す。
だが数機を落したところで相手にはさしたる痛手ではないらしく、ひるむことなく次々と残った円盤からレーザーが発射された。
両腕を顔面でクロスし、背を丸め防御姿勢をとるも、次々と矢のように放たれるレーザーの前に装甲は削れ、むき出しになった部分からは爆発が起こる。
「ぐっおおおお……!」
爆発の勢いでゆらぐ機体を追撃のレーザーがさらに別方向へと仰け反らせた。
操縦桿を引き、なんとか体勢を立て直すとゲンカイザーは再び拳を振るった。
正面の円盤を中心から貫き、上空へと逃げようとした円盤の一機を引き抜いた拳で掴み、握りつぶす。
そして拳に残った破片を背を見せた敵円盤の群へと投げつける。
円盤の残骸は散弾銃のごとき威力で次々と円盤を撃墜していく。
破片にその身を貫かれ、爆発を起こす円盤群の中、爆発による明かりに照らされたゲンカイザーが拳を上げる。
「限界突破!」
「……一体どうなっているんだ」
ゲンカイザーが円盤群と戦闘を繰り広げていた頃、住宅地を貫くようにして作られた道路を巨大なロボットが歩いていた。
この辺りはいまだ円盤の手も伸びておらず元の状態を保っていたが、避難勧告が出たからだろうか住宅地だというのに人の姿は全く見えない。
辺りを見渡しながら巨大ロボットが足を動かす。ロボットが足を下ろすたびに足音が響き大地を揺るがす。
強大なボディに、威厳溢れる巨大ロボット。
巨大ロボットは辺りを伺いながら歩を進めた。歩き進めるうちに住宅地を抜け、なおも進むといまだ開発の手がつけられていないであろう野原へと出た。
風が吹き生え茂った草をカサカサと揺らす。
「気がついたら僕はこんなところに居た……」巨大ロボットの中の男が誰に聞かせるでもなく呟くと、
巨大ロボットを停止させ、コックピット内に灯るランプやゲージ、表示される情報をチェックしていく。
一通りチェックすると、ディスプレイのひとつに表示されたパーセンテージを見つめそこに表示される数字に疑念の念を抱いた。
「支持率が表示されない……?」
おかしい……と男は思った。確かに自分はこれまでもさまざまな無茶をしてきたが、それでも民は自分を信じ、支えてくれた。
この男の乗っている巨大ロボット……セイカイオーは人々の支持率をエネルギーにして稼動する。
支持率とはその名のとおりセイカイオーを、そしてパイロットをどれだけ支持するかというものであり、いわば人々の信頼、そして願いでもある。
平和を愛する心が、セイカイオーという希望の象徴の原動力となる。
その支持率が表示されないということは、殆どの人間は平和を諦め、絶望に浸っているということであった。
計器が故障しているのではないか?それを確かめようとセイカイオーのパイロット……民荷 尽が計器をチェックしようとしたとき、コックピット内に衝撃が走った。
なにごとかと正面のディスプレイへと目を向けると、そこにはゲンカイザーを襲ったのと同型の円盤が数機と、セイカイオーと同程度の大きさの巨大ロボットが一機存在していた。
円盤はふよふよと不気味に漂い、巨大ロボットはシルバーボディーが怪しい輝きを放っている。
「あいつらが攻撃してきたのか……?」
ダメージ自体は大したことはない。だが支持率が極端に低下している今、未知の相手との戦闘は危険である。
だが、相手はセイカイオーの事情などおかまいなしといった感じにセイカイオーへと向かい突進してきた。
「くっ、お構いなしということか……聖界機兵、出馬!!」
「ぐぁぁ……」
シルバーボディーの巨大ロボットは、両腕を触手のように変化させるとセイカイオーのボディーを滅多打ちにしてきた。
円盤もセイカイオーを取り囲むように浮遊しシルバーボディのロボットの攻撃の隙をぬぐってレーザーを撃ちこんでくる。
強烈なラッシュと円盤達のレーザーによる波状攻撃にセイカイオーはきりきり舞いだ。
やはりモニターに表示されないほど出力が落ちているせいだろうか、セイカイオーの動きは鈍い。
普段なららくらくと捌けるであろう攻撃も今では脅威だった。
だが、それでも動けるということはモニターに表示されないほど極僅かだが、平和を信じている人たちがいるということだ。
その人たちの希望が消えない限り、セイカイオーは戦い続けられる。そしてその希望を消さないためにも、セイカイオーは負けるわけにはいかない。
「くっ、アクセル・ナイフッ!」
敵ロボットの攻撃を片腕でガードしながらも腰からセラミック製のナイフを取り出すと、顔面へと振り下ろされる触手へと突き上げた。
振り下ろされた触手の勢いと、突き上げられたナイフとの勢いで紫の液体を噴出しながら触手が千切れ飛ぶ。
千切れ飛んだ傷口を腕へと変化させた片腕で押さえ、後ずさるシルバーボディのロボット。
その様子にセイカイオーを取り囲むように飛行し、攻撃を仕掛けてきた円盤たちの動きが変わった。
先ほどまでは触手の隙を狙った断続的な攻撃だった。だからこそ一発一発の攻撃は対したことなく、装甲で防ぐことができた。
だが今度の攻撃は違った。レーザーを持続的に発射しつつ円盤たちがセイカイオーの周りを高速回転し始めた。
「これは……ぐぅぅぅっ!」
円盤たちによる全方位からのレーザーカッター。セイカイオーの装甲がじりじりと溶け始めた。このままでは胴体は真っ二つだ。
「このぉぉぉっ!」
アクセル・ナイフを振りかざすものの現在の支持率の下がったセイカイオーでは円盤の動きにはついていけず、高度を上げ回避されてしまった。
その間にもレーザーは止まずじりじりとセイカイオーのボデイを刻んでいく。
「くそぉぉっ、このままじゃ……」
セイカイオーがついに膝をついた。その時だ。
「アシッド・レイン!カンサレイトッ!」
どこからか強力な勢いで発射された水流が回転する円盤のひとつへと直撃した。
水撃を浴びた円盤はジュウジュウと音を立て溶解していく。さきほどの水流は強力な酸だったのだ。
かさかさとゆれる草木の間から、シルバーボディのロボットとは別の、もう一体のロボットが姿を現した。
黄緑色のボディに銀の胸板、額からは金色に輝く二本の巨大なアンテナが伸びている。
謎のロボットの出現に円盤達の動きが止まった。謎のロボットを警戒しているようだ。
黄緑色のロボットは、そんな円盤達の間を抜けセイカイオーに歩み寄ると片手を差し出した。
その手をつかみ立ち上がるセイカイオー。
「……ありがとう。君は?」
「俺は緑木護。そしてこいつはバッサイオー」
尽の通信に黄緑のロボット……バッサイオーのパイロット、緑木護が答える。
「緑木護……バッサイオー……」
「細かい話は後にして、まずはあいつらを倒しましょう!」
「……ああ!」
護の提案に尽が頷く。そうだ、まだ事態は解決していないのだ。
「円盤は俺に任せて、あなたはあのロボットを!」
「分かった!」
力強く答え、バッサイオーを背にセイカイオーが駆け出す。
円盤たちもようやく事態を飲み込んだのか、セイカイオーを追いかけようとバッサイオーの頭上を通り抜けようとする。
その内の一機を強酸性の水撃で撃ち落すと、バッサイオーは改めて円盤達の前に立ちふさがった。
「お前たちの相手はこのバッサイオーだ!」
仲間を2機も撃ち落され、円盤たちも先にバッサイオーを倒すことにしたのだろう。
セイカイオーの時と同じくバッサイオーを取り囲むとぐるぐるとその周りを回転し始めた。
先ほどよりも高速回転だ。
「一機一機潰すのは面倒くせぇ!まとめて溶かしてやる!アシッド・レイン!」
人差し指と中指、二本の指を揃え片手を天空へと突き出すと、先ほどの円盤を撃ち落した強酸性の液体が上空高く発射された。
上空高く発射された液体は拡散し、雨のように円盤郡へと降りかかった。
音と煙を上げ、そして装甲だったものを撒き散らし落ちていく円盤郡。
アシッド・レイン――酸の雨は円盤郡を一機残らず、跡形も無く溶解させてしまった。
一方その頃、セイカイオーとシルバーボディのロボットとの戦いも終結を迎えようとしていた。
敵ロボットへと駆け出したセイカイオーはアクセル・ナイフを構えるとその勢いのまま敵ロボットの頭部へと突き出した。
切断された傷口を変化させ、紫の液体の放出を食い止めた敵ロボットは、残った触手を振り上げ、アクセル・ナイフを叩き落した。
が、敵ロボットが次に見たのはアクセル・ナイフを持った手とは別の、もう片手での渾身の拳だった。
「うおおおおおおおおおっ!」
渾身の一撃に顔面を大きくへしゃがせ、くるくると宙を舞う敵ロボット。そして地面へと激突。だが勢いは消えず地を削りながらなおも進み、
ようやくその勢いが収まった頃にはその身はズタボロだった。
地面に転がりピクピクと動いていた敵ロボットは、残っていた触手を目の前に突き出すと、ガクンと頭を垂れた。つられて突き出した触手も垂れる。
渾身の一撃を放った勢いで前のめりに折れそうになり、またもや片膝をつくセイカイオーの元へとバッサイオーが駆け寄る。
セイカイオーは再びその手を借り立ち上がると、その場で改めて礼を言い、自己紹介と元の世界での自分の立場、自分が気付くとこの世界に居たことを話した。
つづく
最終更新:2011年12月08日 08:25