心の引っかかりに踏ん切りなんてつけれてないかもしれないけど、とにかく今はバゴラと戦うんだ!
けれども結局ピンチになって、そこに現れたのは!
「あれこれ考えて戦うのは難しい!」
そう言いながら空中で一回転にひねりを加えるのは、子どもの頃に憧れていたヒーロー、ブレイザー1。
彼の放つ存在感は、虚構のものであるはずという否定の意見をはねのけるほどのものだった。
「だからといって考えを捨てて戦えるか――」
「――否、それは獣の真似事、獣以上に力を使うことなどできない!」
思わぬ攻撃に虚を突かれたバゴラがようやくと腕を振る。
しかしブレイザー1すでにそこにおらず。
前にのめる相手へ向かい、跳んでやり過ごしたかと思えば電柱の上に。
見とれてる場合じゃない。戦い方からも見て分かる。あんなデカい相手じゃあいくら彼でもどうにもならない。
現にバゴラはピンピンしてる。
ならばと俺は転がり気味に移動してタックルしながら太い尻尾を掴む。
「あ゛ぐぇ!」
バゴラが慌てて尻尾を振り回す。こなくそと抑え込むが、なんと地面に火の玉吐き付けて勢いで振りほどいてきた。
背中の廃ビルで衝撃は減ったけどお陰で追撃を食らうハメに。が、
「とうッ!!」
横からブレイザー1が電柱とともに倒れこみ、一瞬ながらも動きをさえぎった。
その隙を突いて俺はプラグマの身をひるがえらせる。
しかしうまく誘導されたようで、二発目三発目と集中砲火。
「"一つのことしか考えない"んじゃない、"一つのこととして考える"んだ。」
「目で見るもの、耳で聞くもの、体で感じているもの、心で思っていること……全てかき集めて!」
なんだ、今なんて言ったんだ?あーもう聞こえなかった!!
それよりバゴラの火の玉をかわして――
その時ふと思った。
結局俺は考えたってろくな答え出せなくて、それで体動かしてどうにかしてるんだよな。
だから考えたって無駄なんだけどいつも余計に考えてしまうんだ。
"俺よりもっと上手くやれる人が他にいるんじゃないか"とか、"とりあえずの勢いでバゴラ獣を打ちのめしていいのか"とか。
"オヤジ今頃どこの国にいるんだろ"とか、"今度の総理大臣だれだっけ"とか。
"汗だくだから帰ったら風呂入ろう" "あのお化けビル結局封鎖されたんだ" "このあたり電柱多いな" "なんだあいつ地面蹴ってるのか"
どうでもいいことまでごっちゃになって頭の中をグルグルまわる。
こんだけやって俺も相手も、なんでもかんでも止まってる。走馬灯って奴か?違うと思うけどなぁ。
「まぁどうでもいいや。いつも通り、動いてりゃどうにかできる。」
周りの時間とともに、目の前の火の玉が動き出した。
間に合うか微妙だけど知ったことか。もういい、こいつは避けない!
「あ゛ぼぁ゛ー!!」
火の玉を影にして斜めから突っ込んでくるのも知ったことか。
めちゃくちゃ熱いし背骨に衝撃が直にきて折れそうだが、どっちもこっちも踏ん張って、とにかく一発ぶん殴る!!
「でええい!!」
こっちのが相手より吹っ飛ぶが、だからどうした。さっき倒れた電柱を蹴っ飛ばし、再び向かうバゴラの利き足をくじく。
前のめりになったところにぶつかりに行ったついでで、別の折れた電柱をぶつける!
バゴラ獣がそれを叩き落すが、電線が切れた勢いでほかの電柱も一緒に崩れる。
一本一本なら大したこともない電線も、束になるといい邪魔だ。
ワンテンポ遅れた攻撃を肘でもらって、流れのままに横に倒す。
で、どてっ腹に一撃!
「あ゛ぐるぇ!!」
うめきながらも反撃はきっちりしてくる。なんだよこいつのタフさは。
だけどそれならこっちも負けてやれない……と思ったすぐだがやっぱりあの火の玉は何発ももらえない。
今度は相手の背後がビル。ここで一気に叩くほかない!
腕を前に交差させて、姿勢を低くして突撃。でもこっちからぶつかりに行ってるんだ、カウンター狙いでもらうのとは訳が違う。
正直かなりガタが来てるけど今はプラグマを、叔父さんとコロナを信じて進むのみ。
「くそおおおおおお!!!!」
激突!
しかし相手も腹を据えたのか、ゼロ距離にも関わらず火の玉を吐き続ける。
バゴラもただではすまないようだがこれじゃあ先にこっちが参る。
渾身の一撃を入れたい所だが、衝撃がびしびしとプラグマを揺らし踏ん張れない。
あと少し、あと少し時間があれば――
「待てよ。」
頭の中でごちゃごちゃにしたまま置いていた考えが、なんとなく繋がった気がした。
「あ゛ぐー!!!」
「これだっ!!」
火の玉にあわせて即座に地面をけり後ろに下がる!
当然食らうがそれよりも!
バゴラとプラグマに引っかかったままの電線の束を引っ張ると、さっきで崩れかけてたのか簡単にたぐり寄せられた。
高圧電塔。こいつを突き立てる!
バチバチとスパークが来てはいたが、ぶつけてやれば案の定デカいやつが巻き起こり火の玉吐き出す直前で、プラグマもろともバゴラ獣の動きが止まる。
激しい衝撃が全身に伝わる。時間が経つのが遅い。スローモーションの意識がそのまま止まってしまいそうだ。
だけどこの何もない空間で握り締めた俺の拳は、プラグマの腕と繋がってる。
そしてその腕は電塔を伝い、バゴラ獣を捉えているんだ。
やつが自由になった瞬間、あの火の玉をもろに喰らう。
意地でも離すものか。死んでも離すものか。だけども死ぬものか。
耐えろ。堪えろ。たえろ――
ばガらガらアぁァぁ!!!!!!!!!
前々から思ってた。観測台っていうけどあれって地震とか大丈夫なのかって。
バゴラの半分がうずまったお化けビルの"頭"が電圧と衝撃に耐え切れず目の前に崩れ落ちてきた。
同時にてのひらを開く。お互いを繋いでいた電塔が地面に落ち、相手は待ちに待ったぞと言わんばかりに巨大な火の玉を吐きつける。
だがこっちのやる事は最初から決まってる!!
腰を落とし、開いた手を再び握りしめ、プラグマに破片を打ちつけながら目の前を塞ぐビルの残骸をぽっかり喰らう炎ごと――
「ブレイザアァァァナックルゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
お化けビルの全壊とともに、巨大な獣はついに、崩れ去った。
「結果は考えることで導き出される。重要なのは悩み、考える事それ自身だ。よくやったな、少年。」
ぼろぼろの状態で立ち尽くしていると、幼いころ聞いていた優しい声が聞こえる。
だけど振り向いた時にその姿はなく、ただ、夕焼けが見えるだけだった。
最終更新:2011年12月08日 09:08