地天将アレフ駆るアイスマンをなんとか撃退した豪達。
本格的な動きを見せ始めた帝国に訓玉市全体が不安の中にあった。
何処とも知れない闇の中、揺れる明かりが浮き上がらせるカゲ3つ。
「製造に余力を割けない今、地上を攻める駒が不足している。強攻型のアイスマンを失ったのは痛いぞアレフ!」
「落ち着け、過ぎた事を責めても仕方ない。それより作戦の効果を評するべきだ……次に繋ぐために、な。」
「……かたじけない。してそちらの進行状況は。」
「八割といったところかね。もうすぐ地上の連中も気付く頃だ。」
それは悪魔の企てか。怪しげな言葉をかわすのは、プラグマと激闘を演じたザルガン帝国の将プロムとアレフ、二人を取りまとめる謎の三人目。その人物が再び開口。
「さて、その前にプラグマといったか、初めはただの排除要素の一つに過ぎんと思っていたがこう何度も邪魔されるとはな。」
「あの娘、伊達に賢人プラージュの血を引いている訳ではないようだな……。」
「馬鹿をいえ、奴は裏切り者の出来損ないだ。そんな事より何か案があるのだろう? 奴を倒すための。」
プロムが踏み込むと、明かりの炎もカゲも揺れる。
それを受けてか反対に落ち着きはらった様で、ゆっくりと腰をあげローブをはためかせるのは――
「フフフ、そう急くな。だが……拝むついでにきゃつらの首、持ち帰るのも面白かろう。そのための駒は、ある!」
――ザルガン地天将コクテン。女の怪しい微笑が風も吹きこめない地の底をかすかに振るわせる。
「うへっ! なんだこりゃ!?」
あまりのオドロキに変な声をあげてしまうと、それがやたら響いてこっぱずかしい。
なんだといっても目の前に突っ立ってるのはプラグマなわけだけど、問題はそこじゃない。
「ああ、豪くんおかえり、プラグマなら見ての通り、ほとんど修理終わってるよ。あとは右腕を接続するだけみたい。」
「は、はやくない!?」
なにせアイスマンとの激闘からたったの二日しかたってないのにこの様だ。
自分で乗ってるときはわかんないがチェーンで吊り下げられている腕を見上げるとやっぱデカい。
こんなの、そう簡単に直せるもんなのか?
まあ設計したコロナが言ってるんだから信用していいんだろうけどさ。
「いやあね、お国がなんと資金援助してくれたんだよ、これが。それで本職の人も来てくれて修理が早い早い。」
どこからかフラっと叔父さんがあらわれて、超スピードのからくりを明かしてくれた。
言われてみると周りにはそんな感じの人たちがちらほら。
うむむ……餅は餅屋、なのか。と、なにやら見覚えのあるブツが目の前を横切った。
「あれ、撤去しちゃうんですか? えーと電磁とう、とう……」
「電磁投射砲、ね。この前のは無理矢理サーマルガンみたいな使い方したけど。」
「そうそう。それで中が焼き切れて使い物にならなくなったんだよねー。」
「そんな事言ったって、あの構造とプラグマの状態じゃどの道駄目になってたでしょ。」
叔父さんに突っ込まれたのに少しムッとしてコロナが答える。
なにが駄目なのか知る由もないが、とにかくプラグマの武器もしばらくはお預けという事か。
バゴラ獣タッグマッチの時もひどい壊しっぷりだったし、しょうがないといえばしょうがない。
ところでその時からの付き合いになる雨城さんは転属になったとかいって帰っていったらしい。
それって命令違反で左遷ってオチじゃないだろうな。
「……まあ武器はそのうちねー。それよか出力制御が当面の問題だよ。あ、それとね豪くん。」
「?」
「自衛隊が近々大規模な作戦をするから、その間プラグマはあまり動かせなくなるよ。覚えておいてね。」
「え、それプラグマ関係あるんですか?」
「あーそれはだね……」
ドガラゴシャァァァン!!!
突然、耳をつんざくような激しい音。しかもメチャクチャ近いんじゃないか!?
場所が場所だけに野次馬根性だといって無視するわけにもいかない。
コロナに遅れて俺も駆け急ぐ。
「フフフ。隠す気がないなら守りを固めるべきではないかね地上人。」
「し……侵入者だ! 至急歩兵部隊を!!」
ザワザワ……
「おっと、悪いが少しばかり通信妨害をさせてもらったよ。人生の最期ぐらいあわてず穏やかにいこうじゃないか、ええ?」
あの女が壁に風穴あけたってのか!? っていうか地上人ってまさか!
「コクテン!」
「久しいなコロナ。そしてさよなら、かな?」
『ギギギ……シネッ!』
答えは2個イッペン。どうやらあいつはザルガンの人間で、もう一つ壁をぶっ壊したのは目の前に迫ってきてる変な奴だってこと!
「コロナっ!」
ガキィイン!!
間一髪。バールのような腕がすぐそばで振り下ろされる。
プラグマで戦ってた時の感覚でそのまま飛び込んだけど、一歩間違えりゃ腕一本どころじゃすまない。
「フフフ、今のは軽いジョークだ。一つ聞こう、プラグマのパイロットはどいつだ。今日はそいつを殺しに来た。」
「!!」
「……答えないか? ならここにいる人間を順繰りに殺させよう。安心しろコロナ、お前は殺さない。ただ見ているだけでいい。」
『ターゲット……ゼンイキヨリサイセッテイ。』
ロボット? サイボーグ!? そいつが不気味なカメラ眼で周囲を見渡す。
狙いを絞り込んで飛び込んだ先は……叔父さんだ!
「……ざけんな、バカヤロウッ!!」
ゴンッ!
『ギギ?』
そこいらに落ちていたスパナを後ろからブン投げる。
好き放題いいやがって、黙ってられるかよ。
「俺がプラグマのパイロットだポンコツ! 殺せるモンなら殺してみやがれ!!」
「ちょっ!」「ご、豪くん!?」
「ほぉ、お前か。ただのガキにしか見えないが……ソラド。」
『ユウセンジュンイヘンコウ。』
ジャキッ!
「!!」
腰から上が180度回転してこっちに跳んできやがった!
予想外の動きに避けるタイミングを見失ってしまった。
けど、ここでビビったら意味がない。
「へへ、そうだよ俺は特別でもなんでもない『ただのガキ』さ……けどよ、バゴラ獣もお前らのアイスマンも、その『ただのガキ』に今までやられて来てるんだぜ!!」
「この状況で挑発とは……ただの命知らずか、それとも本物を庇っているのか? 」
冷たい声にあわせるように、ロボットが例のバールを俺の眼前に構える。
近くで見ればこいつは本当に人を殺せるんだって感じがビシビシ伝わってくる。
落ち着け。落ち着いて言い返すんだ。
「……そんなんじゃねえ、本当のことさ。プラグマは訓練してないガキでも誰でも動かせるようにできてンだよ。だから俺を……いや、ここにいる人間全員殺したって無駄なのさ。それとも、地上の人間全員を片っ端から殺して回るか?」
「…………。」
「できる訳ない。できたら最初っからやってるはずだもんな! さあどうする……今だって無事で帰れる保証なんかないんだぜ!!」
「フフ……なるほど、そうか、これは一本とられたな! ソラド、放せ。」
『アイ・アイ・マム』
「それが嘘か真かはさておき、お前の度胸に免じてパイロット殺しはやめておこう。地上の兵隊どもただのマヌケではなさそうだしな?」
脂汗べったりな俺の首筋からバールが離れる。
話が通じたって事でいいのか? しかし。
「ただこちらも危険を冒してやってきて手ぶらで帰るわけにはいかん。器のほうには少し……黙ってもらおうか!」
『コウドウサイセッテイ・テキセイオオガタヘイキノハカイ。』
ギュオン!
ソラドとかいう奴が凄い速度で跳びあがる。狙いはプラグマ、そりゃそうだ!
助けってまだこないのかよ!?
ピピッ……ズドン!!
爆風が周りの機材やらを吹っ飛ばし、棒立ちだったプラグマがバランスを崩して傾いていく。
『ツヅイテキャクブカンセツバクハ。』
「――いや、そうは……いかないなっ!」
バゴオオオッ!!
煙と爆発の反響音がおさまりきらない中、それを切り裂いての一撃。
その場の誰もがソラドを蹴り飛ばした謎のカゲに目を奪われた。
「くっ……パワードスーツだと!?」
「久しぶりだな。」
「あれはっ……!」
流星のように銀色が走る赤いプロテクター。
再びピンチに現れたのは、炎のヒーロー・ブレイザー1だった。
鬼気迫るその声が、侵入者たちに浴びせられる。
「さあ、次はお前が覚悟を決める番だ!!」
つづく
最終更新:2011年12月08日 10:52