「兄貴、少女ちゃんへのお返し、どうするか決めたの?」
「…何の事だ?」
「いや、真逆とは思ってたけど…。
もうじきホワイトデーよ?」
「……………ああっ!?」
「(少女ちゃん、コレの何処が良いんだろう?)
ちゃんと考えてあげないと、少女ちゃんが可哀相よ?」
「そうは言うがな、妹よ。
そういや、お前もチョコ貰ったんだよな、どうするんだ?」
「まじめとお嬢と相談してね、服を買ってあげようかなって。」
「だったら、俺も一口乗せてくれよ。」
「ダメよ!
兄貴が貰ったチョコは、私達のとは違う特別なチョコなの。
私達のが量産型だとすれば、兄貴のは指揮官用カスタム機なの、次世代試作機なのよ。
そんな手抜きは許さないわ!」
「量産型を馬鹿にするなよ、量産型こそが兵器の完成形だぞ。
…何で俺のだけ特別なんだ?」
「我が兄ながら、ここまで愚鈍だとは…。
(少女ちゃん、考え直すなら今の内よ?)」
「誰がグドンだ、ツインテールなんて喰わねぇよ。」
「地底怪獣の事じゃないわよ!
…はぁ、ちゃんと用意するのよ?」
ぶっとい釘を刺されてしまった。
まぁ、なんだ。
口喧しい所もあるが、あれはあれで気の利く可愛い妹だったりするんだが。
しかし、相手は12歳の女の子だ。
何をプレゼントして良いやら、皆目見当も付かん。
ここは一つ、あいつの知恵を借りるとしようか。
「邪魔するぜ、ナルシー。」
「そろそろ来る頃合だと思っていましたよ、熱血君。
用件はずばり、ホワイトデーですね?」
例の羽根扇をひらひらさせながら言う。
どうやら、かなり気に入ってるらしいな。
「少女さんへのプレゼントをどうするかで悩んでいる、と。」
「流石は軍師、話が早い。」
「折角来て頂いたのですが、今回は手助けしませんよ?」
「おいおい、見捨てるのかよ?」
「いえ、貴方が真剣に悩んで決めたプレゼント、という事に意味が在るんですよ。
尤も、純真無垢な少女さんの事ですから。
そこいらの石ころを手渡して、『俺の気持ちだ。』と言っても、喜んでくれるでしょうが。
まぁ、実際にそんな事をすれば、この基地の人間全てを敵に回しますがね。」
「むぅぅぅぅ。」
「そんなに深刻に考える事は有りませんよ。
先程も言いましたが、貴方からのプレゼントであれば、必ず喜んでくれます。」
「判った、自分で考えてみるよ。」
「えぇ、頑張って下さい。
(本当に、この隊に居ると退屈しませんねぇ。)」
とは言え、何もアイデアが浮かばんのは変わりないんだよな。
自分で考えるとは言ったが、ヒントを貰う位は良いよな?
「どうした熱血、面白い顔をして。」
「『面白い』は余計だ。
そうだ、ベテラン、ちょっと相談に乗ってくれよ。」
「何だ、金なら貸さんぞ。」
「…俺を何だと思ってるんだよ。
斯斯云々って訳だ。」
「成る程、少女へのプレゼントをどうするか、か。」
「あぁ、年頃の女の子が喜ぶ物なんて判らねぇよ。」
「情けない奴だな、ではヒントをやろう。
心優しい少女に相応しい贈り物は3つ!
1つ、麗しさと甘き香りを放つ花束!
2つ、煌びやかな光沢を放つアクセサリー!
3つ、美しき音色を奏でるオルゴール!
俺が師と仰ぐ男の教えだ。」
「成る程、その3つを贈れば良いのか。」
「馬鹿者!
全部贈ってどうする、1つにせんか1つに!!
贈り物を複数贈ると言う事は、己の魂を分かつ事と同じと知れぃ!!!」
「そ、そうか、俺が浅はかだった…!」
「うむ、判れば良い。
精進せよ、熱血!
(師よ、貴方の教えが今、一人の男を救いましたぞ。)」
花束か、花の種類なんてそんなに知らんから却下だな。
アクセサリーも、チョコのお礼にしちゃ仰々しくないか?
となると、残りは、オルゴールか。
どんな曲が良いのやら、「4分33秒」って訳にもいかんだろうしな。
やべぇ、頭から煙が出てきそうだ…。
「少女ちゃん、これ、受け取って貰えるかな?」
「お洋服ですの、きっと少女さんに似合うと思いますわ。」
「ありがとう、お姉ちゃん達。」
「そういや、兄貴からお礼は在った?」
「うん、これ、貰ったの…(照)。」
「あら、可愛いオルゴールね。」
「素敵な音色ですわね、熱血さんを見直しましたわ。」
「良い曲だけど、聞き覚えの無い曲ね。」
「…これ、兄貴の好きな曲のオルゴールアレンジね。
カラオケで良く歌うわね、因みにラブソングよ。」
「ラブソング、なんだ…(真っ赤)。
わたし、お部屋に置いてくるね。
お姉ちゃん達、お洋服ありがとう。」
「少女さん、とても嬉しそうでしたわね。」
「熱血、そういう意味で選曲したのかしら?」
「兄貴の鈍さは<<ニュード集積体>>以上のレアリティよ?
只単に、自分の好きな曲を選んだだけだと思うわ。」
「少女ちゃん、これからも苦労しそうね…。」
「インテリさん、実際の所、全くの脈無しですの?」
「そんな事無いわね。
少女ちゃんの想いにさえ気付けば、兄貴なりに真剣に考えると思うわ。」
「…どうして気付かないのかしらね?」
「何にせよ、少女さんを泣かすような事があれば、熱血さんを許しませんわ!」
「(こうやって外堀から埋められていくのね。
兄貴も満更でもなさそうだし、このまま既成事実を作っちゃえば…。)
少女ちゃんが戻ってきたら、兄貴対策作戦会議といきますか。」
「賛成ですわ♪」
「ふふっ、面白くなりそうね♪」
投下完了。
以前のオペレーション0214の後日談って事で。
本人の意思とは関係なく話が進んでいく熱血の明日はどっちだ?
とはいえ、熱血×少女はネタ切れなんだが。
最終更新:2010年03月08日 00:46