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ニーア > 副官アクセルss「悪い冗談」

初めてあんたを見て、なんて胸糞悪いガキだと思ったのを覚えているよ。

入っては死んでいくのが俺たちだ。今更、ガキの一人が俺たちの仲間になるったって、珍しくもなんとも無い。まして、そのガキの目が死んでようと無くなってようと、俺の仕事には関係無い。だが、こんな気分になったのは初めてだ。その時の俺にはどうにも理由は分からなかった。

正直、あんたと一緒に仕事して、どういう理屈で俺があんたの下についたのかなんて、こんな嵐のような毎日の中、咽ぶような血と臓物の匂いの中でとても覚えていられない。ただ、あんたに会ったその時の感情だけははっきりと覚えてる。ああ、そう。確かにあの時俺は心底嫌な一方で多分、このガキと長く仕事をするのだろうなとも思った。

あんたは群れたがらない。部隊長なのにだ。どんなに美味しい仕事をしても、どんな苦境を凌いでも、あんたはいつもそのツラだ。会った時のまんまだ。あんたが俺たちの事を嫌ってるんだって事には最初から気づいていたよ。金だけもらったら誰より早くさっさとその場を離れるようなあんたを見て、誰があんたを部隊長だと信じるんだ?

あんたは譲らない。あんたは一度として、自分の意思を覆さなかった。普段は作戦をこちらに丸投げで、指示もろくにしないくせに、行動の開始と終了だけはあんたが決め、ほかの誰にもそれを譲りはしなかった。それを不満に思うやつはいただろうが、あんたと殴り合おうなんてやつはあんたの部隊には俺を含め存在しなかった。

あんたは評価されない。団長やその周りがどう思っていたかは知らねえが、あんたは俺たちにとって石ころを詰め込んだカタパルトみたいなもんだ。放り投げれば多くの敵が死ぬ、便利なやつ。それ以上でも以下でもなかった。あんたが居たことで楽になった戦場は多い。だがそれはどっちかてーと、兵器が予想以上の効果をだしただけ、と受けとられてた。あんたの直感で俺たちが生き残ったきっかけになった事もあるが、大半は忘れさられてる。あんたは役職ではなく呼び捨てで呼ばれることや、誰一人敬語を使わないことにも何も言わなかった。

それなりに長い付き合いだってのにあんたの事で思い出せるのはこのくらいだ。

ああ、そういやあ、いつだったか、俺はあんたに聞いたことがある。隊長は何が不満なんすか、みたいな事を。
確か俺は酔ってた。それに仕事明けで少しばかり浮かれてた。でなきゃ、あんたが大好きな一人でいる時にわざわざこんな事聞きゃあしないだろう。

意外にもあんたは俺を無視しなかった。空から俺に視線を写して、少ししたらまた空を眺め出した。踵を返した俺に、あんたはここの全部だと答えた。続けて、気に入るか気に入らねーかは生きる事と関係ないと言った。
その目とその言葉で、そこでようやく分かった。この女のこの目はここにも、俺たちにも、自分自身にも、なんら興味がないってことだったんだろう。真実、この女は生きる事にしか目的がない。こいつの目には熱がない。戦いの高ぶりも、自分の力が通用する興奮も、成り上がろうとする欲望も何もない。ただ、俺たちを諦めというには色素の薄い感情で傍から見ていたんだろう。

切りつけた傷が黒い泡と共に煙を上げて治っていく。あんたはその唯一抱え込んだ異常な生への執着心で踏みとどまった。
俺の体は、力を失って慣れ親しんだ泥に落ちていく。俺たちが今まで多くの連中にしてきたように、俺たちもまた、落ちて、泥と一体になり戦場の匂いの一部となる。
滅びゆく意識に俺は、やっとの事で絞り出した。今まで見たことのないツラで自分を置いて逃げろなんて似合わない事を言ったあんたへ。

「隊長、あんた、新しい居場所を見つけたようですな」

あんたは初めて俺に無関心ではない顔をした。心底嫌そうなツラをしてるあんたのその言葉を聞いてみたかったがどうやら、もう命が続かない。

だがまあ、満足だ。おかげさまでヘドが出るほどに嫌いだったあの時のあんたの顔をもう思い出すことも出来なくなっちまったようだ。

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最終更新:2019年12月13日 20:28