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083

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匿名ユーザー

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083.二つの夜


星の全く無い空。簡単な偽装を被って、地面に彼女は寝そべっていた。
脇には、寝る邪魔になるから外したウサ耳を詰めた鞄が転がっている。
ぴょこん、と白い綿毛を覗かせているそれは、この場所に酷く不似合いに思えた。

「誰にも出会わなかったか……」
それは幸運か、それとも単にやる気になっている人間が少ないためか。
まぁ、どちらにしても大差は無いのだが。本番は、これからだろう。

前者だとすれば、自分の幸運に感謝すれば良いだけだし、後者にしても、人が死ぬペースが落ちれば必然的に、あのいけ好かない女が何かを仕向けるだろう。
焦る必は無い。ゆっくりと殺ればいい。

のそり、と体を起こす。いくら偽装を施してあるとはいえ、見破る人間が居ない訳ではない。
頼りすぎるのは禁物であった。周囲を警戒したまま眠らねばなるまい。
♀アサシンは、偽装を被ったまま、手近な木にもたれ掛かる。

重要なのは、むしろ明日からだ。
今は、体を休めておこう。

◇◇◇

星の全く無い空。前記の暗殺者とは別の場所。
そこには二人、少年と女。
ぐーすかと、いびきを立てて眠っている♂ノービスを♀剣士はパイクに身を預けながら、眺めている。

「今は、まだ眠っておけ、少年」
ぼそり、と呟く。
「食料が有って、十分に健康な時はいい。だが、問題はそれらが枯渇しだした時だ。その時にこそ『本当の意味で』この茶番が始まる。前回もそうだった」
その横顔の奥に、潜む陰をうかがい知る事は出来ない。
只、女は一人独白に耽る。

「願わくば……間に合いたいものだな」
そんな言葉は露知らず、ごろり、と♂ノービスは一度寝返りを打った。

まるで違う二つの夜。それらは徐々に更けていく。

→ 084

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