018.泉
木漏れ日がやわらかく降り注ぎ、木々の上では小鳥たちが囀り交わす。
なんとも麗らかな昼下がり。
深い森の中に、自然に湧き出た泉のほとりで、マジシャンの少女は何をするでもなく、岩に腰掛けぼんやりと水の中を見つめていた。
なんとも麗らかな昼下がり。
深い森の中に、自然に湧き出た泉のほとりで、マジシャンの少女は何をするでもなく、岩に腰掛けぼんやりと水の中を見つめていた。
「突然ですが殺し合いをしてもらいます」
白い衣装に身を包み、狂った笑顔を浮かべた女がそう言い放ってから一体どれくらい時間が経っただろうか。
ノービスの少女が目の前で息絶え、ゲームスタートの宣言がなされ……
それから……そう、気が付いた時には、自分はこの森の中に居た。
ノービスの少女が目の前で息絶え、ゲームスタートの宣言がなされ……
それから……そう、気が付いた時には、自分はこの森の中に居た。
泉の中では小魚が2匹、くるくると弧を描いて泳いでいる。
決して広いとは言えないこの泉の中で、彼らは生まれ、一生をここで過ごすのだ。
外のことなど知らず、不満も感じずに、狭い世界の中でささやかに生きる。
――自分も、そうだとばかり思っていたのに。
決して広いとは言えないこの泉の中で、彼らは生まれ、一生をここで過ごすのだ。
外のことなど知らず、不満も感じずに、狭い世界の中でささやかに生きる。
――自分も、そうだとばかり思っていたのに。
「おや、こんな所にいたんだね」
不意に響いた女の声に、マジシャンの少女はハッと我に返り、振り向く。
そこには、木に寄りかかるようにして立った女→♀ローグが居た。
友好的な笑みを浮かべた♀ローグは、そのままマジシャンの少女の隣へと躊躇うことなく歩を進め、同じように座り込んだ。
「なんだ……あなたでしたか」
「驚かせて悪かったね。探してたもんだからさ」
ほっと胸を撫で下ろすマジシャンの少女に向かって、♀ローグは微笑みながら答える。
マジシャンの少女にとって、今の狂った状況の中、唯一心を許せるのがこの♀ローグなのだ。
そこには、木に寄りかかるようにして立った女→♀ローグが居た。
友好的な笑みを浮かべた♀ローグは、そのままマジシャンの少女の隣へと躊躇うことなく歩を進め、同じように座り込んだ。
「なんだ……あなたでしたか」
「驚かせて悪かったね。探してたもんだからさ」
ほっと胸を撫で下ろすマジシャンの少女に向かって、♀ローグは微笑みながら答える。
マジシャンの少女にとって、今の狂った状況の中、唯一心を許せるのがこの♀ローグなのだ。
幼い頃から魔術について学び、特技と言えば魔術、趣味も魔術。
ゲフェンにある魔法学校での成績も良く、ウィザードの両親から愛情を注がれて育った彼女。
ダンジョンなどは話でしか聞くことがなく、ポータルに乗って行く以外には、ゲフェンの外へも出たことがなかった。
特に不満もなく、これからもずっと、そうやって温々と暮らしていくのだろうと思っていた。
そんな矢先――。
突然、どこだか分からない場所に連れてこられ、同じように連れて来られた人々と殺し合いをしろと言われた。
今まで外の喧騒、ましてや血など見たこともなかった彼女にとってそれは信じられないような出来事だった。
恐ろしさに震え、泣きながら、助けを求めて森の中を彷徨っている時手を差し伸べてくれたのが、この♀ローグだった。
「こんな理不尽な状況下で、あんたみたいな奴に出会えて良かったよ。とりあえず、協力して身を守ろう。困った時はお互い様、ってね」
人懐こい笑みを浮かべながら、♀ローグはそう言った。
そんな成り行きで、今二人は共に行動しているのだ。
ゲフェンにある魔法学校での成績も良く、ウィザードの両親から愛情を注がれて育った彼女。
ダンジョンなどは話でしか聞くことがなく、ポータルに乗って行く以外には、ゲフェンの外へも出たことがなかった。
特に不満もなく、これからもずっと、そうやって温々と暮らしていくのだろうと思っていた。
そんな矢先――。
突然、どこだか分からない場所に連れてこられ、同じように連れて来られた人々と殺し合いをしろと言われた。
今まで外の喧騒、ましてや血など見たこともなかった彼女にとってそれは信じられないような出来事だった。
恐ろしさに震え、泣きながら、助けを求めて森の中を彷徨っている時手を差し伸べてくれたのが、この♀ローグだった。
「こんな理不尽な状況下で、あんたみたいな奴に出会えて良かったよ。とりあえず、協力して身を守ろう。困った時はお互い様、ってね」
人懐こい笑みを浮かべながら、♀ローグはそう言った。
そんな成り行きで、今二人は共に行動しているのだ。
「何してたんだい? 一人でぼーっとして」
水面を指先でゆっくりと波立たせながら、♀ローグが尋ねた。
微かに水音が響く。
「魚を、見ていたんです……ここに来る前は、私も同じようにゲフェンで何の不自由もなく幸せに暮らしていたのに、って」
「ふぅん……なるほどね……」
答える♀ローグの目線は、泉の中で泳ぐ小魚に向けられた。
「あなたのほうは? さっき、私を探していたと言ってましたが」
先ほど言ったことがなんとなく気恥ずかしくなったのか
マジシャンの少女は、慌てて♀ローグのほうへ話題を切り替えた。
♀ローグは小魚に目を向けたまま、ぼんやりと答える。
「あぁ……大したことじゃないんだけど……」
そう言って、微かに微笑んだ。
そして笑顔はそのまま、マジシャンの少女へと向けられる。
釣られて、マジシャンの少女も微笑み返す。
――と。
水面を指先でゆっくりと波立たせながら、♀ローグが尋ねた。
微かに水音が響く。
「魚を、見ていたんです……ここに来る前は、私も同じようにゲフェンで何の不自由もなく幸せに暮らしていたのに、って」
「ふぅん……なるほどね……」
答える♀ローグの目線は、泉の中で泳ぐ小魚に向けられた。
「あなたのほうは? さっき、私を探していたと言ってましたが」
先ほど言ったことがなんとなく気恥ずかしくなったのか
マジシャンの少女は、慌てて♀ローグのほうへ話題を切り替えた。
♀ローグは小魚に目を向けたまま、ぼんやりと答える。
「あぁ……大したことじゃないんだけど……」
そう言って、微かに微笑んだ。
そして笑顔はそのまま、マジシャンの少女へと向けられる。
釣られて、マジシャンの少女も微笑み返す。
――と。
「……!? ぐっ……」
少女の笑顔は、突然水面に叩きつけられた。
何が起きたのか分からず、息苦しさにもがく彼女を押さえつけるのは先ほどまで共に微笑み合っていた♀ローグ。
必死に水の中から視線を上げ、マジシャンの少女は♀ローグを見る。
♀ローグはゆったりと岩に腰掛け、先ほどまでとなんら変わることのない笑顔を浮かべていた。
「あんたが、あの狭い世界に戻る手伝いをしてあげる。……どうだい?泉の中は居心地がいいだろう?」
言って、くすくすと可笑しそうに嘲笑う。
「…………!!」
派手な水しぶきと水音をたてながら、マジシャンの少女は女ローグの手から逃れようともがいた。
しかし、普段体力を鍛える必要のなかった彼女が、短剣を扱い魔物を狩るローグに勝てるはずもなく。
「ぐっ……がぼっ」
酸素の無くなった肺が、空気を求めて呼吸を促す。
泉の冷たい水が、勢いよく気管内へと流れ込んできて、彼女は激しく咳き込んだ。
「うーん。マジシャンのくせになかなかしぶといね」
そう言いながら、♀ローグは更に♀マジシャンの頭を強く押さえつける。
そして、空いている片手で支給された鞄の中を探り、飾り気の無い短剣を一振り、取り出した。
「バイバイ、世間知らずのお嬢さん。人を見る目がなかったね」
くすりと小さく笑い、肩をすくめる。
短剣を持った♀ローグの腕は、何の躊躇いも無く少女の背中へと振り下ろされた――。
少女の笑顔は、突然水面に叩きつけられた。
何が起きたのか分からず、息苦しさにもがく彼女を押さえつけるのは先ほどまで共に微笑み合っていた♀ローグ。
必死に水の中から視線を上げ、マジシャンの少女は♀ローグを見る。
♀ローグはゆったりと岩に腰掛け、先ほどまでとなんら変わることのない笑顔を浮かべていた。
「あんたが、あの狭い世界に戻る手伝いをしてあげる。……どうだい?泉の中は居心地がいいだろう?」
言って、くすくすと可笑しそうに嘲笑う。
「…………!!」
派手な水しぶきと水音をたてながら、マジシャンの少女は女ローグの手から逃れようともがいた。
しかし、普段体力を鍛える必要のなかった彼女が、短剣を扱い魔物を狩るローグに勝てるはずもなく。
「ぐっ……がぼっ」
酸素の無くなった肺が、空気を求めて呼吸を促す。
泉の冷たい水が、勢いよく気管内へと流れ込んできて、彼女は激しく咳き込んだ。
「うーん。マジシャンのくせになかなかしぶといね」
そう言いながら、♀ローグは更に♀マジシャンの頭を強く押さえつける。
そして、空いている片手で支給された鞄の中を探り、飾り気の無い短剣を一振り、取り出した。
「バイバイ、世間知らずのお嬢さん。人を見る目がなかったね」
くすりと小さく笑い、肩をすくめる。
短剣を持った♀ローグの腕は、何の躊躇いも無く少女の背中へと振り下ろされた――。
<♀マジシャン死亡>
<残り46名>