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019.獣

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匿名ユーザー

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019.獣

驚愕と恐怖がこびり付いた、名も知らないノービスの死に顔。
醜く崩れ、鮮血で汚されたその死体を見つめているうちに
ローグは奇妙に心が躍りだすのを感じた。

「それじゃあ、ゲームスタートです。頑張って、殺し合いましょうー」

白い衣装の女が言う。
血に飢えた獣が、ローグの中で静かに生れ落ちた瞬間だった。

「食料、回復剤……っと。おや、あんたまだ一つも使ってなかったんだ?」
泉に上半身だけを浸し、長い髪を散らしているマジシャンの少女に向かってローグは、まるで親しい友人を相手にするかのように話しかけた。
うつ伏せになったマジシャンの少女の体からは、大量の血が滴り泉の中へと流れてゆく。
当然、少女からの答えは無い。
「ま、有難く使わせてもらうよ。こーゆうのはいくらあっても困らないからね」
言って、それらを自分の鞄の中へと放り込む。
元々支給された物を入れただけでは一杯にならない、大きめの鞄。
倒した相手から物品を奪い取ることも、十分視野に入れられている、といったことか。
しかし、このゲームとやらは、一体何なのだろう。
どうにかして、元の場所へは戻れないものか。

……あの白装束を狩れば、もしかしたら……?

いや、それはどうだろう。
ノービスの少女を殺した時の、あの太刀捌きは常人のものではなかった。
そもそも、危ない橋は渡らない――強者は避け、弱者に当たるのが、ローグの生き方だ。
だからこそ、最初に出会ったのが一次職の、しかも体力の無いマジシャンであったことは幸運以外の何ものでもなかった。
反面、一番手強い相手となる可能性もあったが……。
軽い身のこなしを特技とする彼女にとって、避けることが出来ないのは、魔術による攻撃。
詠唱途中に仕留める事が出来ればこっちの勝ちだが、ファイアーウォールなどを使われ、しかもサイトをされるとトンネルドライブで近づくことさえ出来ない。
……そこで、マジシャンの少女には、警戒されること無く近づける策をとった。
信頼されてしまえば、後は裏切るだけだ。簡単なこと。
心は全く痛まない。むしろ、血を見るとゾクゾクとした快感を覚えるくらいだ。
自分の手で殺した相手の血を見るのは、あのノービスの少女の死に様を見たときよりも遥かに心地よかった。

木漏れ日が反射して、泉はきらきらと輝く。
小鳥の囀りも止むことは無く、そこはとても美しい場所だった。
澄んだ泉を赤く染めてゆくマジシャンの鮮血、傍らの岩場に倒れた死体。
この光景を、しっかりと目に焼き付けながら、ローグは鞄を持ち上げ、立ち上がる。
「おっと危ない、忘れるところだった」
不意に、忘れ物に気づいた彼女は、マジシャンの少女の方へと駆け寄った。
「これは、返してもらうね。地味な武器でも、これしかないもんだからさ」
そう言って、血の気の失せた体に刺さったダマスカスを無造作に引っこ抜く。
彼女の持つ箱の一方から出たのが、このダマスカスという短剣だった。
滴る血をペロリと舐めて、くすりと笑った彼女は
ダマスカスを鞘に収め、そのまま足取り軽く森の奥へと歩み去っていった。


<♀ローグ ダマスカス[1]1個、小箱(未開封)1個、赤ポ、食料獲得>

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