SF百科図鑑

神林長平『七胴落とし』

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2002.暮れ?

[日本SF]
「七胴落とし」神林長平(早川文庫JA)
明晰な悪夢。理系作者だけあって非常に理知的、論理的文体だが、書かれている内容は非常に幻想的というか幻覚的。子供にだけある相互の感応力(要するにテレパシー能力)が大人になると失われてしまう、それを主人公は「死ぬ」と表現し忌み嫌う。感応力のある子供達は感応力を用いた性的遊戯に溺れ、事故死者が続出する。主人公の少年は不良少女の麻美に目を付けられ、危険な性遊戯に巻き込まれ、次々と死者が・・・。そしてついに二人は対決の時を迎える。果たしてどちらが勝つのか・・・
どこからこんなアイデアが出てくるのか、作者の頭をかち割って見てみたい気がするが、とにかく凄かった。これ、SF読者以外にも受けるんじゃないだろうか、例えば講談社あたりが出していれば。子供と大人、子供の感受性を失いたくない子供、大人不信、モラトリアム、五月病、予備校生活と受験、少年犯罪、少年の性、家族の問題、老人介護etc・・・誰もが経験のある日常的な問題が、この作品ではSF特有の異化手法によって効果的に浮き彫りにされている。エンタテインメントしても優れている。SFジャンルに留まらない一般性を有する傑作として薦めたい。
さあ、次は「敵は海賊/海賊版」を読むぞ。
10/10点

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