淫夢の手枕

さて、皆さんにちょっとした質問をしたいと思います。皆さんはオタクに優しいギャルというものを信じますか。
言葉や文字にはパリピ精神が宿るだとか、エロ漫画に書かれている事には特別な力があるといった考え方のことです。
まあこのFANZAの発展した現代において、そんな事を本気で信じる人は珍しいでしょう。
ぼきも半年前までは全くと言って良いほどこのオタクに優しいギャルなんていう非FANZA的な話を信じていませんでした。
お聴きの方でも勘の良い方はもう察しているのではないでしょうか。
ああ、半年前に何かあったのだろう、と。
それが、何かあったと言うほどのものでもないのです。深夜に家出少女を見ただとか、初日のたちんぼと出会っただとか、よくある同人誌のような体験はできませんでした。
ただボキがまら不思議な力を信じてみる契機になった日とでも申し上げましょうか。
いやはや、大切な100個目にこのようなつまらないぼきの日常の体験談など話して良いのかと悩みましたが、皆さんもよろしければごゆるりとご静聴くだされば幸いです。
半年ほど前のある日、ぼきは特に予定も無かったので家に篭って匍匐前進を進めたり、気になっていたエロ漫画を読んだり、SAN値をチェックしてみたりと、なんという事もない、極めていつも通り、つまらない1日を過ごしました。
強いていつもと違うところを挙げるとするならば、その日読んでいたエロ漫画があるかもしれません。
このエロ漫画は3日ほど前に近所のまんだらけに立ち寄った際に購入した、いわゆる春本なのですが、春本と言われるようなエロ漫画の中でも特に古く表紙なんかはカピカピにくっついていて今にもエロ漫画としての体裁を保てなくなりそうな程でした。
ぼきは学がないので、こういった内容も匂い立つ春本なんてジャンルは普段全くと言って良いほど買わないのですが、この日ばかりは特別で、普段気怠そうにレジの近くから動かず、なかなか話そうともしないまんだらけの主人がわざわざ買うエロ漫画を探しているぼきの近くまで来て「このエロ漫画なんかどうだい、お勧めだよ」なんて言ってきたのです。
ここの主人が会計以外で何か話すこと自体、ぼきは初めて見たので驚きが抜けきらないまま、半ば半勃起になって「ありがとうございます、勃ちます」だなんて二つ返事で主人の手元にあったガピガピのエロ漫画を買ってしまいました。
値段が安かったのが救いでしょうか。まあ勃ってしまったからにはちゃんと読もうとも思いました。
こういった筆で書かれているような春本と言えば、鉄棒ぬらぬらだとか画狂老人卍だとかお堅い人がお堅い話をしてるのだろう、どうせ現代人が読もうとしても知識が無くては理解できないのであろうと尻込みしていましたが、いざ表紙をめくってみるとそう難しいこともなく、恋がどうだとか淫夢がどうだとか、思いの外世俗的な抜きどころばかりの面白スレ集で、文体も流石に淫靡なところがありつつも、そう難しくもなく、ほとんど理解のできるものでした。
夕飯を食べて20時には読み始めたと思うのですが、気がつけば手淫は頂点に書かれた12の数字を超え、そのまま日付が変わって深夜になってからもぼきは読書に熱中していました。
ぼきはどちらかと言えば夜行性なもので、この時間までエロ漫画を読んでいることそのものは、あまり珍しいことでもないのですが、眠気も混ざる深夜に、これほど集中してエロ漫画を読んでいたのは後にも先にもこれだけでしょう。
帰りにコンビニで買ったTENGAには手も付けず、気が付けばぼきは淡々とガピガピで薄汚いその本のページをコスり続けていました。
しばらく経った頃、ぼきはエロ漫画に書かれている面白スレの中の1つである、「夢枕獏」という2chスレまとめを読んでいました。人妻に先立たれて一人暮らしをしている、大昔のぼきが変わった淫夢を見るという、古文としてはとてもありふれた内容でした。
しかし、面白い…と言えば面白かったのかもしれません。
そのエロ漫画は何か人を惹きつける不思議なエロさのような物を持っているようで、もうほとんど分かりきっているはずのその抜きどころにぼきは惹きつけられ、時計の針はいつのまにやら2時を越えて進んでいました。
次の瞬間、ぼきはハッと目を覚ましました。流石に眠気に負けたのか、どうやら眠っていたようです。
眠りに落ちた時に倒れ込んでTENGAのボトルも倒してしまったようで、亀頭がびしょびしょに濡れ、それでいてベトベトしていました。
一度果てて頭がまだぼんやりしているからでしょうか、いつもうるさいと感じるvTuberのジーっという耳舐めASMRが全く聞こえません。
ただ、手淫のシコ、シコというまるで誰かがぶっこいているかのような音が、どこか意識を持っているようなそんな音がだけがぼきの耳を突き刺します。ぼきはまた目の前にあるガピガピのエロ漫画に手を置いて、ぼきの淫夢の話を、どこかまたぐらを呼び起こすように読み進めました。
どれくらい経ったでしょうか、ぼきはまたハッと目を覚まします。ボンヤリとした頭のまま、ぼきはまた周りを見渡しました。なんとなく小さなおっぱいが再びぼきを包み込みます。はて、ぼきの社会の窓から見える景色はこれほどまでに臭かったでしょうか。
つけておいたままであるはずのエアコンは何故消えているのでしょうか。先程こぼしてそのままにしていたTNGAのボトルはどこに消えたのでしょうか。
おかしな事が続いているというのに、その時のぼきは意にも介さず、また手元の春本を開くと、「夢枕獏」と書かれたページを開き、またぼきの淫夢が描かれた文字列に集中していました。狭い社会に反響するシコ、シコという音がそれ以外の音を消してしまったのかのように寂しく鳴り響きます。
またしばらく経ってぼきは自分が三度果てていた事に気がつきます。外はまだ臭いまま、というよりも純粋な闇が窓ガラスを覆うような桃色の世界でした。
ぼきの周りにあるのは机と椅子と、まんだらけで買ったエロ漫画が一冊のみ。
そのエロ漫画はまだ「夢枕獏」と書かれたページを開いたままでした。ぼきはもう理由もなくその本に手をかけると、鳴り響く手淫の音に背中を押されるようにただ淫靡な文字を目で追い続けていました。
ふと目を開くとぼきは暗闇の中にいました。自分が立っているのか座っているのかも分からない闇の中でカリ首を下に向けてみると、ガピガピの春本が、もう飽きるほどみた「夢枕獏」の3文字の書かれたページを開き、ぼきを見つめるようにそこに置いてありました。
ぼきはもうそれまで読んでいた他の面白スレ集たちはとっくに忘れてしまっていて、そのぼきの淫夢を何度も何度も何度も何度も読みました。
もうぼきに他の事などなく、あるのはただこの2chスレまとめを読む事だけ。何度も何度も読み、もうそれが何度目か分からなくなった頃、ピチャリという音が耳元で鳴り、足をつたうように汁が流れていきます。
ぼきがそれに気がつき、エロ漫画から目を上げた瞬間、スマートフォンのアラームの音と共にぼきは目を覚ましました。どうやら果てに落ちた時にTENGAを倒してしまったようで、足が濡れているのは溢れたTENGAが見せた正夢だったようです。もう窓からは朝日が見え、エロいvTuberのジーっという耳舐めASMRがぼきの耳を襲いました。
不思議なもので、オタクに優しいギャルでもあるのかというほど熱中して読んだ、その短編の抜きどころをぼきはもう覚えていません。
覚えているのはぼきが淫夢を見るということだけ。それほどまでに、ただの文字であっても言葉には一時的に人を惑わせるようなまら不思議な力があるのです。
そもそもぼきは淫夢を見ていたのでしょうか。見ていたとしたらどこからが淫夢だったのでしょうか。それとも、まだ長い淫夢の中に落ちたまま、皆さんにこうやってぶっこいているのでしょうか。もしかしたら、淫夢を見ているのは皆さんの方で、ぼきのこの話を淫夢の中で反芻しているのかもしれません。
もし、皆さんが今日眠る時、もしもぼきの話が淫夢に出てきたのならば、周囲が臭くなるようなマラ不思議な感覚に襲われたのなら、ぼきの物語にもまたオタクに優しいギャルがあるという証明になるかもしれませんね。皆さんも今日眠る時はくれぐれもぼきの2chスレまとめを思い出しませんように。

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最終更新:2024年07月07日 21:35