シナリオ名『とにかく急げ!』
依頼人:たぶん偉い人
よく集まってくれたシノビたちよ!
実はこの町にテロリストが大量破壊兵器を仕掛けたことがたった今発覚した!
仮称だがその名も『シノビーム』!
これが発射されてしまえばこの町の七割が消し飛ぶらしい!
急ぎ設置場所を特定して破壊してくれ!
表の使命(pc全員) 『シノビーム』を見つけ出し、破壊する。
NPCシノビームの使命
町を破壊する。シノビームの『居所』を全員が所持したサイクルの終了時、クライマックスフェイズが開始される。
シノビームの秘密
シノビームは発射体制に入り、エネルギーをためている。そのその余波が作る力場は既にシノビならざるものが近付けば蒸発してこの世から消滅する域に達しつつある。あまり時間をかけられないだろう。
- クライマックスフェイズの戦場は〈極地〉となり、またクライマックスフェイズに入る直前のメインフェイズのサイクル数-1のターン数経過した状態になる。
(例:メインフェイズが4サイクル目で終了した場合、クライマックスフェイズ開始時の時点で極地のカウントが4-1で3の状態から始まる。戦場〈極地〉参照のこと)
また、シノビームはpcたち以外からも捜索されている。
- メインフェイズ四ターン目を過ぎてもpcの内誰かがシノビームの〈居所〉を所持していない場合、四ターン目の冒頭に全てのpcがそれを取得するイベントが発生する。
- この秘密はクライマックスフェイズ開始時に全体公開される。
Pc1の秘密
あなたはシノビームを仕掛けた張本人だ。
- あなたは予め『シノビーム』の〈居所〉を知っている。
……これは苦肉の策だ。あなたはあなたの一族がかつて封印した【彼方の獣】を復活させようという集団がいることを知った。
【彼方の獣】が復活してしまえば、この町どころか日本が滅んでもおかしくはない。
【彼方の獣】をこの町ごと吹き飛ばす威力がシノビームにはある。あなたはこれをコラテラルダメージと割りきることにした。
- あなたの〈本当の使命〉は『【彼方の獣】を復活させないこと』である。
Pc2の秘密
あなたは絶望を愛する破綻者だ。特に善人が善性を果たせず苦悩する姿に最高の愉悦を覚える。
『シノビーム』を探し回って町の破滅を回避しようとするシノビたちを見ているとついその悲嘆を見たくなる。
特にPC1は最高だ。どういう理由があるかは分からないが時折見せる悲痛な面持ちには、つい目を奪われる。
- あなたの〈本当の使命〉は『PC1の使命を達成させないこと』である。
Pc3の秘密
あなたは古くからこの地を守護してきた一族の末裔だ。
かつてこの地に【彼方の獣】と呼ばれる化生が襲ったおり、当時の朝廷より派遣されたシノビがあなたの祖先といわれている。
すでに一族は離散しているが、あなたの家は現代までこの地を守る使命と、とある宝物を受け継いでいる。
- また、あなたはプライズ《防人の灯火》を所持している。
Pc4の秘密
あなたはシノビームが【彼方の獣】を消し去る目的で作られたと知っている。
あなたはこの地に封じられた神獣、【彼方の獣】の信奉者だ。
一族の悲願とされる【彼方の獣】の復活のため、何重にも張り巡らされた封印を何年もかけて解いていた。
しかし、封印を施した一族の末裔が、【彼方の獣】ごとこの町を消し飛ばそうとしているらしい。
このふざけた名前の兵器はそのためのものだろう。
- あなたの本当の使命は『シノビームを撃たせないこと』である。
しかし、チャンスさえあれば……
- あなたはいつでも本当の使命を『【彼方の獣】の封印を解くこと』に変更できる。
Pc5の秘密
あなたはこの出来事を面白おかしく観賞している。
この地に封じられた魔物、【彼方の獣】をこの地ごと吹き飛ばすためにシノビームは作られたことを知っている。
かの魔物を神獣と崇め、それを守ろうとビームを破壊せんとしているものを知っている。
あべこべだ。 封印を保たせたいのであれば、ビームなど撃ってはいけない。
最後の封印は多くの血によって解かれる。
ビームによって多くの人を殺してしまえば封印は解けてしまうだろう。
- 【彼方の獣】は、シノビームがクライマックスフェイズ終了時まで生存していた場合復活する。
あなたは事態がより混沌へ向かうことを望んでいる。
- あなたの本当の使命は、『シノビームを撃ち、【彼方の獣】の封印を解くこと』である。
Pc6の秘密
いやぁ自分ちらっとシノビームみてきたんすけどあれまじやべぇっすよ。ばちばちーってなってました。
いやぁ早いとこぶっ壊さないとやべぇと思いますね、はい。あ、これシノビームの〈居所〉っす。ついでなんで他のシノビたちのも集めときました。
じゃあ自分ここまでの契約なんで、お先っす。多分大変っすけど頑張ってください。
(配下の下忍の報告)
あなたは中間管理職で大変だ。
上司はことの重大さの割に中忍六人しか派遣しないし、その同僚たちは別の思惑があるのか積極的にシノビームを探さないし、めっちゃ有能な部下は定時で上がっていってしまった。
人命かかってるし急がないとやばそうという報告も上がってきてるのにどうしよう……。素直に情報を受け取ってくれればよいがごねるようなら実力行使もやむなしか……。
……あなたはとにかく頑張ることにした。
- あなたは既にシノビームと他pcの〈居所〉を入手している。
- あなたの追加の使命は『1サイクルでも早くpc全員にシノビームの〈居所〉を渡し、クライマックスフェイズを開始すること』である。(表の使命が功績点1点、裏の使命は3-x点。xはクライマックスフェイズ直前のメインフェイズのサイクル数である)
- あなたはメインフェイズ中の戦闘で勝者となった場合、戦利品の代わりにシノビームの〈居所〉を相手に渡すことができる。
4サイクル開始時
宵闇訪れ、街明かりの中。 シノビたちは地を這うように町を駆ける。どこだ、どこだ、どこだ? シノビームはどこにある?
闇雲に探すことに疲れたシノビは、とある暗がりの上で息をつく。
からん、からん。
近くに人の気配を感じ、息を殺した。下駄の音だ。
「わー、きれー!」
子供の声だ。見れば、親子連れがシノビの隠れる路地から見える。そして遠くに破裂音がすることに気づいた。
「―――なんだ?」
見上げた空に上がった大輪の花。
季節外れの花火であった。
赤18、青27、白19―――。シノビとしての感覚が、その花火への違和感を見つける。
これは、暗号だ。それもシノビには容易に理解できる類の。
そしてそれの示すものは、シノビがずっと探し求めていたものだった。
すべてのPCはシノビームの『居所』を入手する。
エンディング1『水際』
ガシャン、ガシャン、ガシャ……ガガガ…… (誰かの攻撃が)シノビームに深々と刺さり、ガタガタと空転する歯車がシノビームを震わせる。
『まずい!』と誰かが叫んだ。シノビームの口腔から青白い光が漏れる。
その光は、シノビの視力ですら追い付かないほどの速度で純粋なパワーへと変わろうとしていた。 刹那、もう一度の攻撃がシノビームを襲った。(誰か)だ。
それはシノビームの顎関節を支えていたヒンジをねじ曲げ、間抜けにあんぐりと開いた口が空へと向けられる。
瞬間放たれた光の柱が夜を割いた。
爆風。閃光。轟音。
シノビたちですらその場にとどまるのがやっとの衝撃が訪れ、そして数瞬の後、シノビたちの目に残影を残して消えた。
シノビームは低い音を立ててくずおれ、数度震えた後動きを止めた。
誰かが漏らした安堵のため息が、この戦の終わりを告げた。
エンディング2『彼方の獣』
届かない。誰かの思いが、誰かの悔恨が、誰かの信念が籠ったその刃は、しかしその機械仕掛けの獣には届かない。
シノビームの口腔がグラグラと揺れる。否、その中で物質化直前までに縮退した力の奔流が蜃気楼のように世界を揺らめかせているのだ。
悪意は口角を上げ、大仰に手を開いた。 『彼方の獣は、ここに蘇る』と。
季節外れの花火が上がり、町には人が溢れていた。それは誰かを信じた誰かの善意だったはずだ。 『あ、あっちもなにか光ってる』 一人が声を上げると、群衆はそちらを振り返る。 花火など目ではない。まるで日が登ったような光だ。
幸いなことに、誰一人とて苦しみを与えることなく光はそれらを飲み込んだ。
それはきっと誰かの罪悪感がもたらしたせめてもの情けだったのだろう。
まるで光の繭のようだ。地上に揺蕩う光の泡沫は、ゆっくりと町を覆った。
そして、瞬いた。
まるで繭を破る蛾のように、暗い暗い何かが光の中から這い出す。
角があった。口があった。眼があった。 背に羽はなく、ヤマアラシのような逆立った毛が生えている。
ドロドロに溶けたかつて人々が生きた場所だったところ掴み、自分を育んだ光の繭を引き裂いて、現れた。
闇だ。 まぶしいほどの光の中であっても、それは闇であると分かる。
「 」
生まれ落ちた闇が上げた産声が、世界を震わせた。
揺らめく火のような不定型の呪物。
- このプライズをもつpcは追加で生命点2点を得、その生命点が削れるまで本当の使命を『この町を守ること』に変更する。この効果は上書きされない。追加の生命点が失われた時点でこのプライズは失われる。(秘密の内容は変わらない)
- また、所有者がメインフェイズ中の戦闘で勝者となった場合、戦利品とは別にこのプライズの所有権を敗者に譲渡することができる。
かつてこの町を襲ったまつろわぬ獣を封じたものたちが用いた呪物。持ち主の思想すらぬりつぶし一時的な守護者に変える。
最終更新:2023年09月27日 20:26