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刃 刀可SS・イラスト

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SS

『刃と想い』


 夜の帳が降りた街の中を1人の少女が歩いている。
 背は高く、スタイルもいい。体のラインが浮かび上がる服を着ているが、気後れしている様子はまったくない。切れ長の目と一の字に結ばれた口からはクールな印象を受ける。
 腰にまで届く長さの黒く艶やかな髪は、シンプルな白いリボンを使って高い位置に束ねられており、歩く度に小さく揺れていた。
 凛とした雰囲気を身に纏った少女はまるで侍か騎士のようで――そして、実際に腰には日本刀を帯びていた。
 少女の名は刃 刀可。高校生の魔人である。
 彼女がこんな夜更けに帯刀して街をうろついているのにも理由があった。
 それは、この日彼女が学校で聞いた噂が原因だった。


「‥‥男性の死体が見つかった?」
 昼食時にはとても適しているとはいえない話題を振られ、私は眉を顰める。
 しかし、目の前の友人はこちらの様子を気にすることなく話を続けた。
「そうそう。ここから結構近い場所でさー。どうも殺されたっぽいんだよね」
「殺された、とは穏やかではないな」
「死体を見た人曰く、なんかもうぐっちょぐちょのドロドロだったらしいよ」
「‥‥肉を食べながら、よくそんな話ができるな」
 しかし、皮肉が通じないのか目の前の友人は首を傾げるだけだ。
 こういう場合、彼女の話が止まらないのは分かっている。だから私は適当に聞き流して弁当を不味く感じる前に食べきることを決めた。
「手足がそこら辺にとんでたり~」
「‥‥」
「内臓が辺りに撒き散らされてたり~」
「‥‥」
「頭がぱーんって破裂したみたいになってたり~」
「‥‥」
「でも、何よりすごいのはー、殺された側が魔人ってことだよねー」
「――何?」
 聞き捨てならない言葉を聞いて、思わず箸を止めて聞き返してしまう。
 ようやく私から反応があったことに気をよくしたのか、友人は更に声の調子を上げる。
「そう! 魔人をそんな風に殺せるってことは、殺人犯も魔人ってこと!」
「犯人は捕まったのか?」
「それどころか、目星もついてないみたいだよー」
「む」
 ‥‥そうなると。
 まだ近所に危険な魔人が潜んでいるかもしれない。
 さっさと遠くへと逃げ出している可能性もあるが、凶行をまるで隠そうとしない犯人の性質から考えるだに、どちらかというとこのまま留まって犯行を続ける可能性の方が高い。
 何より相手は魔人だ。基本的に狂ってる存在と考えた方がいい。
「‥‥危険、だな」
「そうだねぇ。うちの生徒会と番長グループも動くみたいだけど、どうなるかなぁ」


 放課後。
 校内は微妙に浮き足立っているようだった。
 それもそうだろう。授業終わりのホームルームで、全生徒に殺人犯が近所に潜んでいることを通達されたからだ。
 勿論、教員達も生徒を不安がらせる為に教えたわけではない。迅速な帰宅を促すのが目的だ。
 だが、ある教室を覗くと男子生徒が2人残ったままだった。
 1人は机に向かっており、もう1人はその隣の机に腰掛けて携帯を弄っていた。
 ‥‥机に向かっている男子は葉破、私の弟だ。もう1人は葉破の友人の筈だ。
「おーい、早くしてくれよなー」
「悪い! もうちょっとだから待ってくれ!」
 友人に謝りながら、弟が必死に何かを書き写しているのが見える。この作業の為に残っているのだろう。
 が、理由があるからといって残っていいわけではない。私は注意をする為に教室へと入る。
「‥‥こら」
「あっ、姉さん!?」
「どうもっす、先輩」
 会釈する葉破の友人に軽く手を上げて挨拶することで返して、弟の席まで歩いていく。
「何をしてるんだ?」
「え、いや、ちょっと‥‥」
「俺のノート写させてやってるんですよ。こいつ、6時間目思いっきり寝てたんで」
「おま、言うなって!」
「――ほぅ」
 威圧するように腕を組んで、葉破の顔を睨むように見る。と、視線を合わせずあからさまに動揺する様子が見てとれた。
 動揺しているのは授業中に寝たことがバレたせいか、それともそのせいで友人を残らせていることか、もしくは、
「こいつ、小テストがやばかったからノートちゃんと出さなきゃいけないんすよね~」
「何でそれを言うよ!?」
 友人が余計なことを言うのを恐れてか。
 しかし、もう遅い。聞いてしまったのだから。
「――葉破」
「う」
「‥‥ここで長々と何かを言うわけにもいかないから、早く家に帰るように」
「あーうー‥‥分かったよ」
 渋々といった様子で立ち上がり、帰る準備を始める葉破。
 ノートを借りようとしたが、それはやめさせる。友人君が家で復習をする時に困るだろうからだ。
「いやー、俺復習なんてしないっすけどね!」
「まぁ、だとしても、だ。あまり弟を甘やかせないでくれるとありがたい」
 ‥‥甘え癖がつくと、いざという時にできることもできなくなる。
 姉として、葉破がそうなるのは何としても避けたいからだ。
 そうこうしているうちに、葉破の帰り準備が整ったようで、鞄を肩にかけていた。
「はー‥‥じゃ、帰るか」
 そのため息はノートを写せなくて残念だからか、それとも家に帰ってからの説教が憂鬱だからか。恐らく両方だろう。
 そんな葉破を励ますように友人君が肩を軽く叩くと、2人は一緒に教室を出る。
 2人が校門から出るのを確認すると、私も準備を始めるのであった。


 こうして――今に至る。
 私がした準備とは、帰る準備ではない。‥‥街に現れたという魔人を殺す為の準備だ。
 武器である日本刀をすぐに抜けるように荷から取り出し、いつ戦闘が起きても問題ないようにする。
 服も動きやすいものへと着替えた。制服も悪くはないのだが、正直なところあまり血で汚したくはない。
 帯刀していることで注目は浴びやすいが、生徒会・番長グループが犯人捜索に乗り出しており私もその一員と思われてるのか、これといった問題は起きてない。
 ――は、ぁ。
 気を張り詰めさせたまま何時間歩き続けただろうか。さすがにその状態を維持するのが辛くなり、息を吐いて一旦リラックスする。
 が、その時だ。
「――ッ!?」
 背筋に冷たいものが走る。分かる――殺気だ。
 一瞬の弛緩を突く様に放たれた殺意の塊。方向は右手から。確認している暇は無い――地を強く蹴る!
 直後、私の背を何かが通り過ぎた。その何かは私の左手にあるブロック塀に直撃し――ブロック塀が内部から破裂した。
「なっ!?」
 礫を背に受けた衝撃で、肺から空気が押し出される。だが悠長に呼吸を整えている暇は無い。飛び込むように転がって、大きく距離を取った。
 ‥‥なんだ、今の破裂は!?
 恐らく、放たれたのは破壊力を持つ弾丸のようなものだろう。しかし、そうなると齎される破壊は弾丸と同じ方向でないと不自然だ。
 だが、違った。まったく逆向きに破壊されたのだ。
 態勢を整えながら、刀の柄に手を伸ばす。弾丸が放たれた方へと視線を向けると、そちらから声が聞こえた。
「アーアー。俺が見てェーのは、そんな花火じゃネェー、のになァー」
 しわがれた男のもの。目を凝らせば、輪郭がぼんやりと見える。
 だが、それだけの情報でも分かる。
 ――こいつが、殺人犯。
 殺人を犯す理由は、花火を‥‥人が破裂する様を見たいから。それから推測すると、魔人能力は弾丸を食らったものを破裂させる能力といったところか。
 成る程。事前に予想した通りの狂人だ。
「だが――関係ない」
 ――私も狂人だから。


 私の剣術は我流のものである。誰かに指南してもらったことはないし、今後も教わるつもりはない。
 理由は単純だ。
 ――私が剣を振るうのは、たった1つの想いの為。
 自分の、自分だけの想い。他人が入り込まない純粋な想い。‥‥決して入り込ませたくない。
 自分だけの想いを体現する剣だからこそ、他人に教わるつもりはない。
 殺す為の剣? 活かす為の剣? 強くなる為? 名誉の為? ――そんなもの、私にとってみれば、全てが等しく不純だ。
 だから、そんな不純な剣はいらない。
「――ふっ!」
 地面を強く踏みしめ、蹴る。
 前へ、ただ前へと進むだけの動きだ。剣術の基本的な足捌きなんてものは知らない。だから進むだけ、それで十分だ。
 純粋で、真っ直ぐ。それで――いい。胸に秘めた純粋な想いを、速度に変換すれば――私はきっと最速だ。
「なっ!?」
 殺人犯の顔が驚きに染まる。一撃必殺の能力を持つ彼に真っ直ぐ突っ込んでくるのは予想外だったのだろう。
 殺人犯が右手をこちらに向け親指を弾くと、紫色の弾丸が放たれた。
 ――だが、遅い。
 右足を前に大きく踏み出すと同時、左足を大きく後ろに引く。ちょうど半身開く形になり、そこを弾丸が抜けていった。
 私の動きを見て、殺人犯が薄く笑いを浮かべた。
「テメェ、その体勢から次の動きができんのかァー!」
 その問いに、私は体を回すことで答えた。
 反時計回りに回転し、左足が前に出ると同時に強く踏み込む。真っ直ぐ殺人犯へのもとへと。
「んナァー!?」
 一瞬とはいえ、敵に背を見せること。バランス感覚が問われる踏み込み。しかし、それらの障害を乗り越えて私は駆ける。
 敵はもはや目の前。後は刀を振るえば、それで終わる。
 だから、振るった。

 ――あぁ、きっと私は狂っているんだろう。
 私の剣は『弟を護る』という想いだけに支えられた剣。
 『弟を護る』為だけに、弟に危害を与える可能性がある危険人物をわざわざ殺すにいく。そんな私はきっと狂ってる。
 ‥‥でも。
「葉破を護る為なら――私は狂っててもいい」


 姉さんが帰ってきたのは夜遅くのことだった。
 俺には早く帰るように言っておきながら、随分勝手だと思う‥‥けども。それについて文句を言うには今日の俺は分が悪過ぎた。
 授業中に寝たこともそうだし、何より小テストの結果が問題だ。あまりにも酷い結果だったので、長々と説教されてしまったのだ。‥‥うん、俺が悪いんだけどね!
 こうして、説教が終わってから食事をし、もう夜も遅いのでそろそろ寝ようかという時だ。
 俺の部屋に姉さんがやってきた。
「‥‥葉破、入るぞ?」
「えっと、どうぞー」
 パジャマ姿の姉さんが部屋に入ってくる。風呂上りのせいか肌がうっすら火照っており妙に色っぽい。
 ――って、相手は姉さん! 姉さんだから!?
 早鐘のように脈打つ心臓を抑える様に胸に手を当てて息を整える。
「‥‥どうした?」
「な、なんでもないよ!? それに、姉さんこそどうしたの!」
「ん‥‥あぁ。あのテストの件でな‥‥」
 うげ。さんざ叱られたテストをまた持ち出されて、一気に気が滅入る。
 それが顔に出ていたのだろう。俺の顔を見た姉さんは申し訳無さそうになりながら、しかし躊躇うことなく続きを話し始める。
「私が勉強を教えてやろうかと思って‥‥どうだ?」
「え――」

 そして。
 ちゃぶ台を前に座る俺と、その隣に座る姉さんという構図が出来上がったのだった。
 ――って、集中できるわけないだろ!?
 近い。姉さんとの距離が凄く近い。ちょっと横を向けば、すぐ傍に姉さんの顔があるのだ。それぐらい近い。
 それに風呂上りの姉さんのいい匂いが俺を惑わす。
 こんな状況じゃ、頭が正常に働くわけがない。シャーペンを握る手はたびたび動きを止めていた。
「って、いけね――」
 これじゃまた姉さんに怒られる‥‥と思ったが、しかし姉さんの反応はない。
 不審に思い、姉さんの方へと顔を向けよう思った直後、肩に重みを感じた。
「え‥‥?」
 何かと思い見やれば、俺の肩に姉さんが顔を預けているのだ。
 瞼は下りており、小さく寝息を立てていることから寝ていることが分かる。
「姉さん――?」
「ん‥‥あっ!?」
 俺の呼び掛けがきっかけになったのか、姉さんが目を覚ます。「しまった」という気持ちが心のどこかで芽生えるが、何が「しまった」なのかは分からない。
「す、すまん‥‥。今日はちょっと疲れててな‥‥」
「‥‥だったら、無理しなくてもいいのに」
「いいんだ、私がしたいことだから」
 姉さんが優しい微笑みを浮かべる。普段、あまり見ることのないその表情は‥‥すごく可愛かった。
「ん‥‥。けど、葉破‥‥ごめん」
「え、な、何が?」
「‥‥もう、限界、だ」
 ぽふり。
 姉さんが体を倒して、俺にもたれかかってくる。姉さんの頭がちょうど俺の胸に来る位置だ。
 俺の視界からは姉さんの顔は窺えない。突然のことに飛び跳ねた心臓が落ち着くより先に、胸の中の姉さんが寝息を立て始めるのであった。
 ――これは天国なのか、地獄なのか、どっちなのかなぁ。


 翌朝。
「うわあああああ!! わ、私は、私は! な、何を!? 誘惑に耐え切れずうあああああああ!? ‥‥でも心地よかったなぁ――ってそうじゃなあーい!!」
 ごろもだごろもだ。

『お姉ちゃんとモンハン』

「葉破‥‥ちょっといいか?」
「うん? どうしたの、姉さん」

「これ、籤で当たったんだが‥‥」
「おぉー、PSPじゃん。姉さん、運いいなぁ!」

「ん。だが、私はこういうので遊ばないからな。葉破にあげようと思って」
「俺もう持ってるんだ‥‥」

「そ、そうか‥‥(しゅん)」
「あ! じゃあ、一緒に遊ぼう! ほら、モンハンとか」

「モンハン‥‥? う、うむ‥‥名前は聞いたことある、が」
「P3もう1本買ってくるから、ちょっと待ってて!」

(葉破、MHP3を買ってくる)

「ほら! 俺の分はもう持ってるから、これ姉さんのね!」
「ありがとう、葉破‥‥!」

(説明を受けてプレイ開始)

「ふぅん‥‥。色々な武器があるんだな。‥‥私にオススメの武器とかは、あるか?」
「そうだなぁ。やっぱり初心者だと太刀とかが分かりやすくていいんじゃないかな」

「太刀‥‥か。ちなみに葉破の武器はなんだ?」
「俺はランス。カウンターでンギモヂィィ!するのが好きでさ」

「ん、んぎも‥‥? そ、それはともかく、太刀とランスの相性はどうなんだ?」
「んんー、ランスはSA無くてこけちゃくからあんまり相性は良くないかな」

「そうか。ではランスと相性がいい武器とかはあるか?」
「そうなると、やっぱりランス同士になるかなぁ」

「‥‥では、私もランスにしよう」
「えっ。でも、ランスはちょっと扱いが難しいところもあるよ?」

「葉破と相性がいい武器がいい(ぼそっ)」
「ん? 何か言った?」

「な、なんでもない! 葉破、ランスのコツを頼むぞ!」
「あ、あぁ‥‥。よーし、それじゃひとかり行こっか」


オチなし。

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