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authenticityと現代観光・日本人の到来

MacCannelによれば、現代人は、資本主義的な労働環境と労働を軸にした日常生活において、常に疎外感を感じながら生きている。このなかで、現代の主として先進国で企業などの組織で分割された労働に従事する人々は、日常生活の中での真正性(authenticity)を感じ取ることが難しい。現代人は、この普段のいわば偽りの真正性から離れ、本来の真正性、すなわち、本来の姿の自分を求めて観光に出るとMacCannelは説明する。ここで観光客である現代人が求めるのは、いわゆる普通の一般的な観光客とは異なった経験であるとする。かれらはたとえば、手つかずの自然、そして、手つかずの現地の住民の生活、と言った本来の経験を求めて旅に出る。しかし、彼らは決してその本来性を掴めることはないとされる。
この観光に出る動機としての真正性の追求という観点から見ると、ケアンズは現代人(ここでは日本人)にとっての真正性を提供する格好の場であったと言えるだろう。クィーンズランド州での対日観光事業に関わっていた職員によると、南部のシドニーやメルボルンではなく、北部のクィーンズランド州のさらに北部であるケアンズが栄えたのは、第一には日本からの地理的な近接性、さらには、ケアンズと周辺地域の持つ「商品力」であったという。ここでケアンズの持つ商品力とは以下のように定義できる。ケアンズの周辺には、所謂手つかずの自然、真正性をもつ観光資源が多数存在している。まず第一は、グレートバリアリーフであろう。ここでは広範な珊瑚礁の広がる青い空、澄み渡った海と、そこに生息する熱帯魚、さらにはトロピカルな植生などがそろっている。また、第二は、内陸部に広がる熱帯雨林であろう。ケアンズから数十分移動するだけで、殆ど人間の手の入っていない原生林を見ることができる。これらの「商品」はいずれも世界遺産に指定されている。いうまでもなく、これらの澄み渡る海と空、そしてうっそうとした熱帯雨林などは、日本国内では見ることのできない、真性な経験を観光客にもたらす。
クィーンズランド州の関係者、そして、地元議会が明らかにするように、ケアンズは常に国内のゴールドコーストさらに、海外ではハワイを念頭に置いて、その観光推進を行ってきた。ゴールドコーストやハワイは早期から「リゾート地」としての歴史を持っており、いわば人擦れするかのような様相を呈している。それに対して、ケアンズは田舎町と手つかずの自然、そして、そのままの飾らないフレンドリーさを前面に打ち出しながら観光開発を進めてきたという。
最終更新:2009年10月06日 17:02