通勤中に猫ハウスを発見した。中に可愛いトラ猫がいたので時々餌を放りこんでたら、ある日犬みたいについて来て、とうとう我が家まで来てしまった。
無視して家に入ったが、気がついたら家の中にまで入り込んできやがった。やっぱり軽い気持ちで餌なんてやるもんじゃないなあと反省。
元はといえば俺が悪いんだがそれはそれ、不法侵入を許すわけにはいかない。正義感の強い俺はお仕置きしないわけにはいかなくなってしまった。
お仕置きといっても経験のない俺は、ものすごく悩んだ。電気プレイが一番好きなんだが、他人の真似は主義に合わないし、ローマの闘技場みたいにデスマッチさせるにも相手がいないし。
夢に出てくる家の中にあるものでなんとかしなければ。
悩んだあげく、冷蔵庫を開けるとアイスノンとたくさんの氷があったのでそれを使うことにした。
とりあえず猛暑さようならを祝う氷のプレイにする事にしたんだが、まあやりながら考えよう。まず、逃げられてもつまらないんで、なでなでして油断させながら、首にロープを巻いた。これで逃げられる心配はないだろう。
後ろ足だけが床に付く程度にロープを持ち上げて固定。少し油断させるためにポークビッツを口に運んでやった。
夢中でムシャムシャしてる間に、そっと後ろ足と床の間にアイスノンを差し込んだ。
あくまでもお仕置きなので、なるべくダメージ少なくするにはこんなもんでいいだろう。ジワジワと効いてくるだろうから、その間テレビでもみるか。
二本足で直立するトラ猫。所詮下等動物には長くは続けられないだろう。首と両後ろ足で体重を支え、足の裏には冷たい氷がしかれているし。
何やら俺の後ろで落ち着かなくもぞもぞしだしたので、テレビを見るのを止め、後ろを振り返って猫の方を見た。
するとトラ猫は私の予想しない動きをしていた。
足の裏が冷たいのか両足でジャンプを繰り返す予想外の動き。
ジャンプして足を氷から浮かすのはいいが、ぶら下がったままでは首が締まって苦しいらしく、その場で四方八方に飛んでは元の位置のアイスノンに着地を繰り返す。
「カンガルー?」
北半球でカンガルーに会えるとは思いもよらない展開だ。
トラ猫による楽しげなカンガルーダンス。身体能力で対空時間を稼いで私のブリザドから逃れようとするとは!
まあこのまま続けたら衰弱死するんだろうけど。
そう思った私はトラ猫に一時の休憩を与えることにした。
ロープを緩めるために近づいた私に。
「フシャー!」
初めて発した鳴き声がこれかよ。しかも前足で威嚇しながら。
これではすぐに次のお仕置きをしないとな。念のため、試しにポークビッツを箸で摘んで近づけたら前足で払いのけ、部屋の隅へと叩き落とした。しかもシャーシャーと騒ぎ出した。
この時、私に芽生えた感情は紛れもなく殺意であった。
しかし、私の行為は駆除でも虐待でもない。あくまでもお仕置きなので、トラ猫の更正に繋がらなければならない。
そんな教育者の気分に浸りながら、まずその無礼な挨拶の鳴き声から更正してやろう。
シャーシャーと泣き続けるトラ猫に対し、ゴミ箱から空のペットボトルを取り出し、額をめがけて殴りつけた。
「パシッ」「シャー?!」「パシッ」「シャー!」「パシッ」「シャー!」「パシッ」「ンシャー!」・・・
鳴き声を発したら殴る。バカなこいつでもすぐに理解できるだろう。
トラ猫への愛の体罰。すぐに先生の気持ちが伝わるだろう。そう思いながらペットボトルに力を込めて殴り続ける。
「ペシッ」「ンシャー!」・・・
先生である私とトラ猫は、睨み合いながら、まるで永久機関のように同じ動作を繰り返していた。
私は疲れのために何回ペットボトルを持ち変えただろうか?気がつくとトラ猫の顔は微かに腫れ上がっているようだ。
生徒の異変に気がついた私はすぐに殴るのを止めた。
最終更新:2010年09月19日 04:33