妹を守るために兄がとった行動

329 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:11 ID:rZUEdyU7
1年生になったばかりの妹に、俺は入学祝いとして1匹のハムスターを
プレゼントした。
妹はたいそうハムを可愛がり、ハムもまた彼女の愛情に答えて、よくなついた。
餌をねだる仕草や、元気よく回し車を回していた姿が、今でも瞼に焼き付いている。
俺も妹も、この心安らぐ時が永遠に続くものと信じて疑わなかった。
5月某日。俺達兄妹にとって忘れられない日がやってきた。
連日の受験勉強に疲れていた俺は、
暖かい日射し、心地よい風に誘われ、あっさりと眠りに落ちた。
だが、妹の悲痛な叫び声が、俺を夢の世界から連れ戻した。
慌てて階段を降りると、廊下に座り込み、肩を震わせている妹の姿が
目に入った。
俺の姿を見つけると、妹は泣きじゃくりながらすがりつき、
玄関を指さした。




331 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:13 ID:rZUEdyU7
運命の出会いだった。
妹の指の先には大きな黒猫がいた。
この辺りで「ボス」と言われている野良だった。
俺は思わず妹の顔を見た。外傷はない。
ホッと胸をなで下ろすも、俺はある異変に気づいた。
ケージの中にハム小屋がないのだ。
「まさか!」そう思ったときだった。
ポキポキッという音とともに、黒猫はゆっくりと顔を上げた。
口元が真っ赤に濡れている。俺の様子を窺いながら糞猫は口を動かした。
そのたびに、また先ほどのポキポキッという音が聞こえてくる。
俺はようやくすべてを悟った。
このド畜生が妹のハムスターを………、食ったッッッッッッ!!!!





334 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:14 ID:rZUEdyU7
俺が動くよりも先に、妹が猫に向かっていった。
一生の不覚だった。
糞猫はスリッパを振り上げた妹を見て、
ひるむどころか、顔めがけて飛びかかってきた。
今までに聞いたことのない悲鳴を上げ、妹はうずくまった。
目の辺りを押さえて大泣きしている。
指の間から大量の血があふれていた。
その時俺の中で何かが切れた。
「うおあああああああおあおあおああ!!!!!!!!」
俺はそこらじゅうにあるものを、手当たり次第に投げつけた。
糞猫は大して慌てる様子もなく、玄関の引き戸を開けて逃げ去った。
あとに残ったのは割れたガラス、砕け散った植木鉢、
そして下半身と下顎のなくなったハムスターだった。
俺はこの日、初めて生き物を殺したいと、心から思った。





336 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:15 ID:rZUEdyU7
少し落ち着いてきた俺は、救急車を呼び、外出中の母に携帯で連絡を取った。
妹の傷口にあてた白いタオルは、みるみるうちに真っ赤に染まってゆく。
なかなか来ない救急車にじれて、俺は植木鉢の大きな破片をさらに小さく割った。
救急車の中で妹は「痛いよ、痛いよ」と言いながら、俺の手を握りしめた。
手を握り返すことしかできない俺は、自分の無力さに腹が立ち、涙をこぼすだけだった。
幸いにも妹の傷は眼球をはずれていた。それでも5針も縫う大けがだった。
3年経った今でも、その傷は彼女の顔に深く刻まれている。
妹のショックはことのほか大きく、再び学校に行けるようになるまでに、
1ヶ月以上も要した。
その間妹は、大学教授をしている叔父の家で過ごした。
女手一つで俺達ふたりを養ってくれている母が、気兼ねなく働けるようにと、
叔父が申し出てくれたのだ。俺は叔父の気遣いに心から感謝した。






339 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:18 ID:rZUEdyU7
あの出来事以降も、糞猫はたびたび我が家を訪れた。
奴はうちをうまいもの(ハムスター)が食える場所と認識したのであろう。
しょっちゅう食料を盗んだり、動物にちょっかいを出しにきた。
父の形見の万年筆を盗み、大切にしていたロップイヤーに大けがを負わせ、死にいたらしめた。
「絶対に殺してやる」奴に対する憎悪はふくらむ一方であった。
だが、糞猫はそんな俺をあざ笑うかのように、糞をひり、ハーブを踏み荒らし、無法の限りを
尽くすのであった。
いっこうに捕まらない糞猫に業を煮やし、自分の猫に当たったりもした。
でも、健気にすりよってくる彼の姿は、俺の怒りが猫全体へ向かうことをかろうじて押さえるのであった。

そして3年の月日が流れた。







346 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:34 ID:8rVtqbwP
玄関の戸が開いていた。確かに閉めたはずだ。いや、引き戸だから閉め方が強くて
開いてしまったのかもしれない。そんなことを考えながら中へ入ろうとすると
ガサガサという音が聞こえてきた。俺は音の正体を確かめるべく、静かに玄関の戸を開けた。
黒い後姿が目に飛び込んできた。奴だ。
糞猫は俺達に気づくと、ゆっくりと向き直った。思った通り奴はサンドイッチを食っていた。
俺はお前のために買ってきたんじゃねえ。体の血が逆流するのを感じた。
糞猫は食いかけの獲物をくわえ、落ち着いた態度で外へ出ようとした。
大胆不敵にも俺達のすぐ脇を通ってだ。
「怖いよ」妹が俺の背中にしがみつく。3年前のあの日の記憶がよみがえってきた。
糞猫が玄関を出ようとしたまさにその時、俺は素早く引き戸を閉めた。
不意をつかれた奴は、玄関のドアに挟まれる形となった。
俺は反対側の戸を開けると、力一杯体当たりした。1回、2回、3回と。
そのたびに糞猫は悶絶し「ギャッ」と低い声を上げた。
積年の恨みを晴らすのは今しかない。
俺は妹にガムテープを持ってくるように言いつけた。





349 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:37 ID:8rVtqbwP
ほどなく妹はガムテープを持って戻ってきた。
俺は片手で引き戸を押さえながら、もう片方の手で妹が切ったガムテープを受け取り
糞猫の後ろ足を封じた。奴は一層激しく暴れ始めた。
引き続き戸を押さえながら正面に回る。我が仇は牙をむき出しにし「シャー」と威嚇の声を
上げている。俺は箒の柄で糞猫の頭を数回強く叩いた。奴は突然力が抜けたように、ガックリとうなだれてしまった。
どうやら脳震盪のようだ。俺は細心の注意を払って、憎むべき敵の口にガムテープを貼った。
そして、意識の朦朧としている奴の前足をも封じ、俺は引き戸から手を離した。
事の成り行きをじっと見守っていた妹が突然口を開いた。
「お兄ちゃん、箒貸して」そういって、俺の傍らから箒を取ると彼女は、何度も何度も糞猫めがけて振り下ろした。
奴はようやく気づき、逃れようと左右に転がるのであった。鼻から漏れる叫び声に笑いを禁じ得なかった。
やがて糞猫は額を切り、出血した。そこで妹はようやく箒を止め、嗚咽の声を漏らした。
俺は妹から箒を取り上げ、中で休むように言った。妹は黙って頷くと家の中へ入っていった。
俺は足下でもがいている仇敵を見下ろし、思わずこう口走っていた。
「お楽しみはこれからだ」と。






351 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:39 ID:8rVtqbwP
前足のガムテープが少し緩んでいた。俺は物置から針金を取り出し、糞猫の抵抗を完全に封じ込めた。
8の字にしてから、真ん中の部分を絞るように巻くと絶対に取れない。
最初のうちはもがいていたが、動くと食い込むことに気づいたためか、ほどなく奴は動くのをやめた。
まず、ひげを切ってみた。両手両足を封じているせいか、何の反応もない。1本1本抜けば良かったと後悔した。
次はしっぽだ。長くてなぜかテカッている。しの字に曲げ強く握ってみる。
またしても、鼻から悲鳴が。あまりにも間抜けな声に、思わず失笑してしまった。
何度も繰り返すと、ついにしっぽは「く」の字に曲がってしまった。
この部分がポコンと節くれだつのだ→く
次に逆モヒカンにしてみようと思い、植木用ばさみを物置から出してきた。
だが、思いの外毛が油っぽく、なかなか切れないので断念した。
辺りはかなり暗くなっていた。
本格的に〆るなら、母親も妹もいない時がいい。
俺はコンクリートブロックを胸の高さまで持ちあげ、糞猫の後ろ足めがけて落とした。
鈍い音がした。
奴はフゴッフゴッフゴッと泣きながら、左右に転げまわった。
「ザマミロ&スカッとサワヤカ」とはこういう気持ちをいうのだろうか。
俺は糞猫のしっぽをつかむと、物置に投げ入れた。







353 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:41 ID:8rVtqbwP
翌日(つまり今日だ)、果たして猫はそこにいた。
このごにおよんでも、シャーシャーと人を威嚇する。猫撫で声のひとつも出せば、死なずに済んだかもしれないのに。
しっぽをつかんで持ち上げると、ゆうべブロックを落としたところが紫色になっていた。
良心の呵責などみじんにも感じなかった。妹や動物たちの苦しみに比べたら、まだ序の口だ。
さて、俺はかねてよりやってみたかった猫バットを実行した。
何のことはない、猫をバットに見立てて素振りをするだけだ。しっぽを持って壁に向かってだがね。
1発、2発と素振りをするうちに、心のもやもやが晴れていく気がした。糞猫はギャッ、ギャッと低い声を
例によって鼻から漏らした。
次に、ゆうべから飲まず食わずだったので、水を飲ませてやることにした。
口のガムテープをはがすと、奴は精一杯の虚勢を張って俺を威嚇した。
俺は糞猫の襟首をつかみ、洗面器の水を飲ませてあげた。
人が親切に手伝ってあげたのにも関わらず、糞猫はむせるばかりでちっとも飲みゃしない。
辺りを見回すと、なかなかにオイシイ道具があることに気づいた。







354 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/26 23:59 ID:OYA11Qho
それはペットボトルだった。
俺はペットボトルを半分に切り、飲み口を糞猫の口にねじ込んだ。
そしてもう一度、ガムテープで口をグルグル巻きにした。
俺はホースを右手で持ち、左手で蛇口をひねった。
水がどんどん奴の胃の中へ消えていく。
「ガグルアッゴッゴゴゴガア」
猫でもうがいをすることがあるんだなと思って、深く感心した。
気のせいか糞猫の腹がふくらんでいるようだ。
おいしい水(水道だが)がたらふく飲めて、さぞうれしい顔をしている
ことだろうと思い、表情を見ることにした。
俺は唖然とした。







358 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/27 00:06 ID:tQO+3JqS
俺は、糞猫が脳震盪を起こしたときの悩ましげな顔を、
もう一度見たいと思い、奴の頭を箒の柄で叩いた。
だが、妹に叩かれた傷が開いただけで、トランス状態には
陥らなかった。
そこで俺は糞猫の下半身をつかみ、頭を地面に叩きつけてみた。
変化は4回目で現れた。
激しく体全体が痙攣し始めた。顔を見ると目が完全に寄っていた。
痙攣は20秒ほど続いた。我が仇敵はもうすっかりぐったりしている。
もう少し楽しませてくれよ。
俺は、もう一度糞猫の頭を地面に叩きつけた。前回よりも強くだ。







360 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/27 00:14 ID:tQO+3JqS
「ギニャーーーッッッッッッッ」
それは今までに聞いたこともないような声だった。
今度は痙攣するだけではなかった。
小便が噴水のように飛び出してきた。
身をかわすのが遅かったら直撃していた。
それと同時に、アナルから小汚い糞がひり出されてきた。
痙攣は静かにおさまっていった。
糞猫の瞳からは生の光は、完全に失われていた。
俺はついにやった。とうとうやったんだ。
妹そして死んでいった動物たちの仇を
今討つことができたんだ。
後悔の気持ちなどみじんもなかった。
心の中を爽やかな風か吹いているようだった。
このゴミは隅田川に流してこようと思っている。

ここまで読んでくださったことを感謝します。
乱文乱筆失礼いたしました。






373 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/27 09:11 ID:gntml2/Z
後日談
 いつもより、かなり早く目が覚めてしまった。時計は4時半をさしていた。
俺は着替えをすませ、家族を起こさぬように注意しながら庭にでた。
物置の中に置かれた燃えないゴミの袋。そこには不倶戴天の敵の物言わぬ姿があった。
俺はゴム手袋をはめ、変わり果てた仇敵の元首だったところをつかんだ。
鼻血らしきものが固まったあとがあった。赤黒い舌は口からはみ出していた。
俺はニッパーで奴の戒めを解いてやった。四肢はすっかり硬くなっていた。
針金のあとは紫色に変わっており、ところどころ血がにじんでいた。
俺は動かなくなった敵の顔をぐりぐりと踏みつけた。何の反応もない。
俺はもう一度袋にゴミをぶち込み、家から100mほど離れると、
スクーターのキーをひねった。






375 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/27 09:24 ID:oI3hkNaR
30分ほどとばしたところで、俺は目的の隅田川に着いた。
時折トラックが通り過ぎるだけで、あたりにはまったく人気がなかった。
俺は再びゴム手袋をはめ、袋からゴミを取り出した。
俺は糞猫の尾をつかみ、下から上に振り上げるようにして放り投げた。
空高く舞い上がったゴミの体は5回、6回と回転しながら、隅田川に着水した。
見事なムーンサルトだった。オリンピックに出られなくて残念だったな。
もはや魂の抜け殻と化した我が仇敵は、一度深く沈んだ後水面に姿を現した。
悠久たる隅田川の流れに身を任せたゴミ猫は、浮きつ沈みつ俺の元を去っていく。
三途の川はもっと長いんだろうな、そんなことを考えながら俺は大声で笑った。
これで名実ともにKatzen niedermachen = 猫虐殺 になってしまった。





376 名前: Katzen niedermachen ◆tAJRSkG6 投稿日: 02/04/27 09:26 ID:oI3hkNaR
 家に戻ると、妹はジャージに着替えて俺を待っていた。ひどく不機嫌だった。
彼女の朝練につきあう約束をしていたのをすっかり忘れていたのだ。
一緒にランニングをしていると、妹の方から話しかけてきた。
「お兄ちゃん、そう言えばあの馬鹿(糞猫)どうしたの?」
俺は首を横に振り、「あいつはもう2度と来ないよ」と言った。
「良かった」と妹は満面の笑みを浮かべた。
やはり、俺のしたことは間違っていなかった。
「いいことをしたあとは、気持ちがいいなあ」
俺は小学校時代の担任の言葉を思い出していた。
                          完
最終更新:2013年09月17日 20:05