Interlude

やはりあなたは僕が見込んだ通りの人物だったようだね。

その忍耐強さを信じて、最後にもう少しだけ話をさせて欲しい。

かつて、仙狐族復興のために尽力し、志半ばにして
末梢されてしまった「彼」は知っての通り「あなた」ではない。

かつて数万とも、数十万とも存在していた「あなた」の
集合体が「彼」だ。

無数の貴方や貴女の一人一人が彼を構成する要素となり、
「彼」は代表として、代弁者として物語を回す任を
任されていたんだ。

だがその「彼」を呼び出すのはもう無理だ。

地面に落ちた水を再び器に戻すのが無理なようにね。

だから、今後は「あなた」の番なんだ。

物語を回すには「あなた」が「彼」になり替わるしか方法が無い。

そんなこと自分に出来るだろうか。

なに、そう難しい話でもないよ。

ふとした時に、この場所を訪れてくれる、
それだけでいいんだ。

「あなた」はただ、観測してくれればそれでいい。

それに「あなた」も昔は「彼」だったんだ。

こんな辺鄙な場所を訪れてくれた「あなた」なら
きっと出来るよ。

やってみる。

ありがとう。今後ともよろしくね。

では、同意も取れた事だしあなたには僕の
根城を紹介しておくよ、ここから辿って欲しい。

今は何も無い所だけど、そのうち便利そうな物を
用意するつもりだよ。

なにぶん、全てが手弁当でね、
大小様々な不備は発生すると思うが、長い目で
見てもらえると助かるよ。
最終更新:2021年08月27日 15:12