新たな旅へ

浜辺で会ったメタナイト達と合流することになったのは運の付きだ。何もせずに時を過ごすだけじゃ何も始まらないから。
しかし元の世界へ戻れる術はあるのだろうか…。
誰もが心の何処かでそう不安が横切っていた。


真庭鳳凰「奇妙な事だー…『時渡り』なんて。」

ハルシオン「うん、僕もこんな経験は初めてだ。」


蝉時雨のうるさい草原の道筋を辿る一行。
今はただ、帰る方法を探し求め人気(ひとけ)の多い街へと向かっている。


メタビィ「メタさん、あとどれくらいで着きそう?」

メタナイト「そうだな……ん、もう目の前だ。」


しかし目の前に映るのは大きな岩の壁だった。


ディーヴ「え…メタナイト、街なんて全然見えないんだけど…。」(汗)

メタナイト「我等の住む時代では、あの岩壁がある位置には大きな街がある。壁が破壊され、時期にその街ができる事になっている。」

ディーヴ「てことは、あの壁を抜けた先に小さな町があるって言う事だね?」


メタナイトが頷くと、ディーヴとメタビィははしゃいで喜んだ。


真庭鳳凰「ほう…やっとこの時代の情報が掴めるのだな。」





あの岩の壁を避けて街に着くにはかなりしんどかった。
猛暑の中を長時間歩き続けていたのではしょうがないことだと思ったが、もうちょっと休憩を取り入れるべきだったかと、メタナイトは街に着いてそう思った。


ディーヴ「やっと着いたね…さてっと、第一街人はいないかな~?」

メタビィ「……あっ!いたよー!」


メタビィが指したのは、青い小さな小屋から出てきた少女だった。
一同は彼女の元へ声をかけながら近寄った。
流石に少女はいきなりの呼び掛けには少々たじろいたが、メンバーのある人物の顔をまじまじと見つめた。


???「……鳳凰…。」

真庭鳳凰「お主は……っ!?カズネか…!」

ディーヴ「…?鳳凰の、知り合い?」


カズネと呼ばれた金髪の少女は鳳凰たちに深々とお辞儀をした。


真庭鳳凰「うむ…まあな…。しかし、何故お主がここに…?」


鳳凰が尋ねると、彼女は「来て」とその小屋の戸を開けてみんなを誘った。


メタビィ「この家…君の?」


カズネは黙って首を振った。


メタナイト「恐らくここは…無人の街だろうな。さっきも見たが、この街の建造物はどこも古い。」

ディーヴ「そっかぁ…だから街人だってあまり見掛けられなかったのはそのせいだったんだね。」

???→カズネ「うん……私が来た時、誰もいなかった…。」

真庭鳳凰「……もしやカズネ、主も…あの本に?」


カズネはこくりと頷く。


メタナイト「被害は拡大していく一方か…。」

ハルシオン「うーん……しかし、情報が得られると思えば、街は既にもぬけの殻だとは…。」

メタビィ「なにか…あったのかな?」

メタナイト「そう言う事には触れない方がいい。それよりも…。」


メタナイトは小屋の中にあった古い椅子に腰を下ろし、カズネの方を向いた。
彼女はきょとんとして見つめ返している。


メタナイト「カズネ…と言ったな。何か、この世界の現状を読み取ることは出来たか?我等は情報がなくて当てもなく彷徨っていたのだが。」

カズネ「……うん。」

真庭鳳凰「カズネ…それは真か…?」

カズネ「うん、鳳凰……これで、知った。」


そう言うとカズネは懐から小さなラジオを取り出し、ホコリ被ったテーブルの上に置いた。


ディーヴ「ぁ、ラジオ♪」

メタナイト「なるほど…これなら有益な情報が得られるな。」

真庭鳳凰「お主、これを何処で……まさか、ここでか?」


カズネはこくりと頷いた。
彼女のことをあまり知らない者たちには、なんて大人しい子なんだろうと思うしかなかった。


カズネ「……聞いたこと、全部話す。」





口数の少ない彼女の話から聞いた事実は、知る者にとっては壮絶なものだった。
殺し屋の神の軍団と呼ばれる、そのまんま殺し屋の賊たちが結成した組織が住人たちによって崩壊した。
それと同時に、世間が思いもよらなかった出来事が起こる。
混沌世界の創造神の一人、『混沌の女神』がケイオスのリセットを掲げ、ついに姿を現した。
殺し屋の神の軍団により弱体化した政府はこれに手をつけるのに精一杯。彼等にとっても悩ましい事件だ。
阻止する者はいない。この世界の創造神故に、誰もが脅え、震えるでしかなかった。
そしてさっき、彼女がラジオで聞いたことは女神が我が本格的に世界へ乗り出し、ケイオスリセットの為に計画を着々と進行させているとのこと。


メタナイト「――――――!!!」

メタビィ「メタさん…これは、まさか…っ!」

メタナイト「…ああ…我々は今、あの時代に立っている……っ!!」


鳳凰を除く一同の表情が一変する。
唯一鳳凰は「?」を出して半分話が飲み込めていない。だがこの世界に危機が迫っているという事は、無論承知していた。
それを見たハルシオンは、彼の顔を覗き込んだ。


ハルシオン「ああ…鳳凰は、知らないのか。」

真庭鳳凰「大体の話は読めた。だが、実のところ興味はないな。この世界、否…この時代の世界に危機が迫っているのであれば、それを食い止めれば安い話のこと。」

メタナイト「真庭鳳凰、これは…あの時の戦いとは比べ物にならないほどの、長期に渡る対決だ。実際に我等は奴等と戦った…だが、奴等とて柔な相手ではない。一筋縄では食い止めることのできない輩なのだ…!」

真庭鳳凰「…ほお、どういう事だ?」

ディーヴ「…私も、女神の事は知っているけれど…戦いの事は知らない。教えて、メタナイト!」

メタナイト「……奴等は、力だけで全てをねじ伏せるその辺の輩はない。全て…“先を読んでいるかのような”鮮明な頭脳の元で動いている。故に、我等は肉弾戦だけでなく…頭脳戦も行って奴等に対抗した。元々力だけで世界の危機を乗り切った我等には、奴等の考える事には理解不能で、気づくまでずっと…奴等の掌で踊り回されていた。」


鳳凰とディーヴ、それからカズネも多少頷きながら話を聞いていた。
メタビィとハルシオンは懐かしむように、されど焦りも混じった表情で目を瞑って聞いている。


メタナイト「先程もカズネから聞いた通り、奴等は殺し屋の神の軍団が崩壊することも既に読み切っていたのだ。英雄や住人たちによって崩壊されるのを。」

真庭鳳凰「…先を読んでいるかのような…か。聞いたか四季崎、まるでお主のようだな。」


鳳凰は、みんなの知らない名前に話しかけた。
一同は辺りを見渡すが、カズネはまっすぐに鳳凰の方に向いていた。彼女もまた、その人物が何処にいるのか知っているからだ。


真庭鳳凰「おっと、これは失礼した。」


そう言うと鳳凰は何処からともなく、禍々しい色の鞘に収められた、大きく反った鍔のない黒刀を取りだし、鞘から刀を抜いた。
それと同時に鳳凰の体はがくんと力が抜け、しばらくしてゆっくりと体を起こした。
彼の目付きが変わっているのを察知したメタビィは警戒態勢を取るが、メタナイトが声をかけ食い止める。


真庭鳳凰(四季崎)「お初目にかかるぜ、俺は……四季崎記紀だ。」


不敵な笑みを浮かべた鳳凰は、今は四季崎という別の人格に変わっている。
それに気づいた一同は驚いた。


メタナイト「貴様は…確か、あの戦いでも…。」


乱雑としたあの混沌の魔獣との戦いで、鳳凰の人格が変わったことに気づいていたメタナイトは思い出した。
今目の前にいる者こそ、あの時の四季崎だ。


真庭鳳凰(四季崎)「久しぶりだな、メタナイト。それにお前たちも。」

メタナイト「やはり貴様だったか。久しいな。」

ハルシオン「あ…うん!久しぶりだな…!」

ディーヴ「…あっ!そっか、あの時の声そっくりだ♪」

メタビィ「……?あ…君だったのか。」

カズネ「四季崎…。」

真庭鳳凰(四季崎)「んで、さっきの話を聞かせてもらったが……なるほどな、鳳凰。確かに俺と似ているのやもしれないな。だが、今の話を聞いた限りでは…とうてい「未来予知」とは程遠いなぁ…。」

メタナイト「未来…予知だと?」

カズネ「四季崎は、未来を読むことのできる能力を持っている…。」

ディーヴ「え…すご…っ!」

真庭鳳凰(四季崎)「けどなぁ、今メタナイトから聞いた話の説が合うのかもしれないぜ。奴等が未来予知の力を司っているとは思えない。本当に、全て頭ん中で計算済みの元で計画を実行しているんだろうな。なんてまあ…真面目な組織なんだろうか。」

カズネ「混沌の女神、今までの敵とは…違う…。」

真庭鳳凰(四季崎)「こいつ(鳳凰)はあまり知らねえようだが…俺は結構長生きしているのでね、女神の事は大体把握してある。過去に何かあったんじゃないかって言うことも…。」

ディーヴ「女神の…過去…。……“カオスメイド”…。」

メタビィ「確か、女神の本名って…それだったよね。」


メタビィはディーヴの方を指した。


ハルシオン「……となると、話を戻して…僕等は、奴等が動き出した時代にタイムスリップをしたという事になるのか。」

メタナイト「これで謎は全て解けたな。」

ディーヴ「ほ…本当に此処が、過去の世界だなんて…。」(汗)

カズネ「タイムスリップ…私も…みんなも…。」

真庭鳳凰(四季崎)「フハハハハハっ!面白いじゃねえか!こんな体験、滅多に出来ないぜ。俺も人生初だぜ、こんな体験はよぉ!」

メタビィ「笑っている場合…?」(汗)

真庭鳳凰(四季崎)「なに、俺たちが過去へ飛ばされたということは分かったとは言え、元の時代へ戻れる方法が見つかった訳じゃない。見つからない方法を手探りで探し出すより、今はこの時代を堪能しておかないと損じゃないか。お前もそう思うだろ、メタナイト。」

メタナイト「…ああ、確かに。だが今は帰る術を見つけ出すより、新たに勃発したこの危機をどうにかするべきだ。」

ディーヴ「もしかして…私たちで女神に立ち向かうって言うの!?」(汗)

ハルシオン「はははは…っ!!それも面白いなぁ。」

メタビィ「だから笑っている場合…?」(汗)

カズネ「歴史を塗り替えちゃ、駄目…。」

真庭鳳凰(四季崎)「何を言ってやがるカズネ。世界を救えば、お前が英雄になるのやもしれないんだぜ?」

カズネ「英雄……そんな称号、いらない…。」

真庭鳳凰(四季崎)「けっ、食えない奴だな~。」


四季崎はカズネの頬を人差し指でつついた。


カズネ「あぅ…><」

メタビィ「メタさん…本気なんですか…?」

メタナイト「状況を読む力をつけなければいけないな、メタビィよ。何もしないよりはずっといい、この際だ…未来でつけたお前の力、奴等に見せつけてみよ。」

メタビィ「……!…はい!!」

ディーヴ「……。(でも、それはそれでいいかもしれない。ずっと気にかかっていた真実が、読めてきそうだもの。)


過去にディーヴは、女神事件が謎を残したまま終結を迎えた際、女神の書いた日記と思われる古い書物を入手して目を通していた。
彼女に起こった苦悩と悲劇、もう一人の創造神カオスマスターとの関係、そして全ての黒幕。
誰もが世界のリセットと言う危機を阻止できて喜んでいたが、彼女はそれだけで納得できずにいた。
謎めいた黒い影が潜んでいることに気づいたのだ。それも、日記によく目を通していた彼女だけ。
当時戦いには参加できなかった彼女は、この機に自らも戦いへ乗り込み、真実を知ろうとしている。あの日記に隠された本当のメッセージ。
キーワードは「カオスエネルギー」。あのエネルギーが女神をどう変化させたのか、彼女の頭は女神の謎だらけだった。


ディーヴ「…行こう、みんな!混沌の女神の野望…私たちで打ち砕くのよっ!!」

ハルシオン「おっ、どうしたんだいディーヴ。急に活気づいてきたようじゃないか。」

ディーヴ「えへへ…悪を野放しになんか出来ないからね!」


それもあるが、本当は真実が知りたいのである。


真庭鳳凰「ほう、話がついたようだな。」


いつのまにか四季崎は消え、鳳凰が戻ってきていた。


カズネ「お帰り、鳳凰…。うん、みんなで…混沌の女神、立ち向かう。」

メタナイト「……よかろう、混沌の女神打倒をここで宣言しよう。」


全員右の拳を中心に突き出し、「おぉーっ!」と叫んだ。


メタナイト「だが先ずは…協力してくれる戦士を探し出さなければな。」

ハルシオン「兵力拡大か…そうだな、それが優先的だろう。」

ディーヴ「あれ、鳳凰…さっきは興味がないとか言っていなかったけ?」

真庭鳳凰「気が変わったのだ、しょうがない…我も協力してやろう。」

カズネ「カズネも…頑張る…。」

メタビィ「僕も…頑張る…っ!」


続き

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最終更新:2012年12月18日 21:17