動き出した時代

キルビス「とんでもない…ことだと…?」

アキラミオリさん、それは…一体…。」


二人は彼女から目を逸らさず耳を傾け続けた。
ミオリは、ひと段落置いて一呼吸をし、重苦しい表情で口を開いた。


ミオリ「つい最近、殺し屋の神の軍団という野蛮な殺し屋集団が崩壊して…謎の暗躍組織が世界に君臨したの。」

キルビス「――――ッ!!!」

ミオリ「その組織は…私たちが生まれてくる前から、いえ…遥か遠い昔から存在していたらしいの。」

アキラ「それって…まさか…っ!!?」


ミオリが口を開く度に、二人は豹変して身体が徐々に震えだした。


ミオリ「奴等はこの世界を滅ぼし、新たな世界にへと創り直そうとしている。組織名となったそのトップの名が――――」





―――――この世界の創造主、通称…“混沌の女神”…っ!!






キノピオ兵「厳重体制を整えろぉー!!敵は目の前まで迫っているっ!!」


慌ただしくなった城内の中、アオは何事と言わんばかりにクロワッサンを口いっぱいに頬張って動揺している。


キノじい「ひ、姫様…っ!」

ピーチ「……ええ、城の者を裏口へ回し、直ちに避難を…!」

キノじい「は…っ!しかし姫様、場が混乱している為…あまり手早く退避は進まないかと…っ!?」

ピーチ「…困りましたわね…。」

アオ「ングング……ふぅー…。」


乱雑な食堂の中、呑気にオレンジジュースを喉へ豪快に流したアオは椅子を退かして立ち上がる。


アオ「さっき……」

ピーチ「…?」

アオ「クッパの軍団が迫ってきていると聞いたんだけど…それ、俺に任せてくれないでしょうか…?」

ピーチ「……ぇ…??」

キノじい「……はぁ…っ!?おい若造、お前…何故奴等の事を!?いやそれより…気は確かかっ!?」


ピーチとキノじい、それから近くで騒いでいた数人の兵たちが唖然とした表情へ一変し、彼の顔を見た。
やっと爽やかで静かな朝に戻れたと、アオはぐぅーっと上に手を伸ばし背伸びをした。


キノピオ兵「あの方…今、何を…!?」

キノじい「どうやら庭に落ちた時に頭を打ったようなのじゃな…。」

アオ「いんや、じいさん。俺は正気さ。」


けろっとした彼の顔を見て一同は驚きを隠せぬ表情で叫んだ。


ピーチ「あ、アオさん…っ!?」

アオ「城が危機なんでしょ?んじゃ…俺に護らせてくださいよ。」

ピーチ「アオさん…貴方……。」

アオ「任せてくださいって。助けてくれた恩義があるし…なんたってこーんな美味い朝食を腹一杯食わせてくれてのに、一緒に逃げるなんて男が廃れるってもんですよ。」


彼は満面の笑みを見せた。


キノじい「若造…。」

ピーチ「…アオさん…。」

アオ「…大丈夫です。俺、こういう事態には結構慣れているから。」


そう言うと食堂を飛びだし、廊下へと出ていった。


ピーチ「あ…っ!だ、誰か…!」

キノじい「うむ……あの若造を死守しろぉッ!!」

キノピオ兵「は……はっ!!!」


呆気に取られ、我に帰った兵たちも急いで彼の後を追いに向かった。


ピーチ「じいや…本当に、よかったのでしょうか…?」

キノじい「あの若造の目は本物だった。今は小さな希望にも賭けたい位、我等はこの危機を斬り伏せたいのですじゃ。」

ピーチ「………。」

キノじい「それに…。」

ピーチ「……?」

キノじい「……かつてのマリオ殿を見ているかのようだった。あの若造、只者ではなさそうですじゃ…。」


*☆*―BGM―*☆*



その頃城の玄関では大群の兵が防壁を作って待機している。
その遥か前方の道筋から何かがこちらへ接近してくるのが、中からでもはっきり確認できた。
長い行列の軍隊が真っ直ぐにこちらへ行進している。


キノピオ兵「あ、君…っ!!」


アオはその防壁を飛び越えて先頭に出た。
すくっと立ち上がり頭を挙げると、いつの間にか敵の軍隊はすぐ目の前まで来ていた。
クリボーにノコノコ、見たことのある雑魚キャラばかりだけれども、これだけの数を見れば流石に圧倒された。
すると軍隊の中から一人、割り込むように出てきた。
見た感じはハンマーブロスなのだろうか…だが見たことのない敵だった。


ハンマーブロス「おい、これはどういうことだ。」


華奢な体のブロスは傍にいたクリボーに目もくれず話しかける。


クリボー「さあ…何故、人間があの城に…?」


軍隊はどうもアオを見て僅かにたじろいでいる。
本人は「?」を浮かべ様子を伺っていたが、リーダーと思われるブロスの様子が一変したのを察知し、身構えた。


ハンマーブロス「テメェ……あれだろ、これまでの世界の危機を振り払ってきたという英雄…曇天蒼ってのはぁ!?」

アオ「清辿蒼な、俺は。」(汗)

ハンマーブロス「ングッ……そ、そうだ!何故その英雄様がここにいるんだぁ!?」

アオ「何故って言われてもなぁー…。」


未来から飛んで来たとは言え、何かと話を受け入れなさそうな輩には何を言っても無駄だ。
苦笑いして頭を掻くしかなかった。


ハンマーブロス「…まあいい。」


予想通りに捨て置いてくれたので、少しほっとした。


アオ「あんたたちこそ、ここへ何の用なんだ?また姫様の誘拐…とか?」

ハンマーブロス「人間様のテメェが知る由はねえよ、アホンダラがぁ。」

アオ「そりゃそうか。」(苦笑)


背後でキノピオ兵たちが騒いでいる。
突然の奇襲故に、準備が遅れて焦っているのだろう。


ハンマーブロス「おい人間、テメェには用はねえんだ。命が欲しけりゃ見逃してやる、退け。」

アオ「それは無理な相談だね。こっちだって命を救われているんだ、借りはきっちり返さないと…ね!」


アオは懐から一丁のナイフを取り出し、手の内で回して構える。


ハンマーブロス「…ほお…?この俺とタイマン張ろうってのか?面白い…!」


ドシンと一歩前に出たブロスは何処からともなく、自分と同じ背丈の長さを誇る大きなハンマーを取り出した。
先端が球体状と珍しい形をしていた。


ハンマーブロス→ジェネラルブロス(以下:ジェネラル)「俺は真・クッパ軍団天才軍師にして副司令官、ジェネラルブロス!愛用する俺の武器、「大紛争」でテメェを明日の朝刊一面を独占しちゃうくらいドロドロミンチにしてくれらぁっ!!」


ジェネラルと名乗る朱色のハンマーブロスは大きなそのハンマーを振り回し、肩にかける。


アオ「(うぇ…やっぱ引き受けるんじゃなかったかな…。いや、流石にそれは不味い。相手があのクッパでないだけ運の付きだ。)それはお断りだね。」

ジェネラル「ほざけぇっ!!」


ジェネラルは大きく振りかぶるとアオに目掛けハンマーを振り下ろす。
隙が大きい為難なく横ステップで回避したが、直撃した地面を見ると先程の一撃で地面に大きな地割れが生じ、防壁の中央が崩れた。
なんという馬鹿力だ…。


アオ「あぶね…。」(汗)

ジェネラル「よく避けられたな、だが次はねえぞぉッ!?」

ノコノコ「隊長、こんな奴俺たちに任せてくださいよぉ!」

ヘイホー「そうだよー、僕らでかかればイチコロさー。」

アオ「くっ――――!?」


ヤバい…この数と一気にやり合わなきゃいけないのか!?
僅かな絶望が脳裏を横切ると同時に、目の前でノコノコの体が宙を舞った。


ジェネラル「俺の勝負に手出し口出しをするなぁっ!死にてえのかアホンダラァッ!!?」


この男、どうやら好戦的な性格だと見た。
敵軍がそれに脅えるのを見て、俺は命拾いをしてほっと胸を撫で下ろした。
だがそれはほんの一瞬だけ、すぐにジェネラルはハンマーを両手で握りしめてこちらへ駆け出してきた。


ジェネラル「俺の部下が邪魔したなぁ?だがここからだ、行くぜ?」


ジェネラルはその細い身体でハンマーを器用に扱いながら荒い大振りを連続でかましていく。
アオにとってはいとも簡単に避けられるものだったが、当たればほぼ即死に値するこれに当たる訳にはいかないと、油断をせずしっかりと避けきる。


ジェネラル「とおぉっ!!!」


ダンッ…!!

ジェネラルは荒い大振りの最中に空高く跳躍し、空中で大きく振りかぶった。


メット「来た!隊長の必殺奥義!!」

クリボー「一発かましてくだせー!隊長ぉー!」


敵軍の歓声が耳に入り、アオははっと息をのみ込んで構える。
次に繰り出されるのは…彼の必殺技。それが一体何のかは無論知る由はないが…ただでさえ、あの一撃だけは喰らいたくない。


ジェネラル「“抱腹絶倒(ホンドン・サイ・ラウフタァ)”!!!」



一気に飛びあがってからの急降下でアオに接近し、ハンマーを振り下ろした。


アオ「――――――――――ッ!!?」


ドオオオオオオオオオオォォォォォオオオーーーーーーン……ッ!!!!!!


辺りに舞うのは広範囲に広がる土煙。
互いの軍はそれぞれ二人がどうなったのか、その姿が確認できず不安が横切っている。
しばらくするとジェネラルの高笑いがその場で響き渡り、クッパ軍は活気を取り戻す。
アオへの心配が高くなり、一人の兵士は防壁を飛び越えようとしたが…その時だった。


アオ「―――――俺を討ち取れたかい、隊長殿?」

ジェネラル「はぁうんっ!!??」(大汗)


土煙の中から突如として現れたアオはジェネラルの顎に蹴りによる不意打ちを浴びせる。
ハンマーを握っていたので反動は薄かったが、すぐにアオの二度目の蹴りを喰らう。


ジェネラル「グ…っ…おぉ…っ?!」

キノピオ兵「おおっ…やったぁ!!」


今度はキノピオたちに活気が戻った。


アオ「うらぁっ!!」


ナイフを逆手に持ち、柄でジェネラルの腹にめり込ませる。


ジェネラル「くぁ…っ…!?」


ハンマーを地面に手放し、腹を抱えて退けるジェネラル。
クッパ軍の兵士たちが彼に駆け寄るが、ジェネラルはそれを振り払い、素手でアオに殴りかかる。


ジェネラル「人間風情がぁ…っ!!この俺をだぁれだと思っていやがるぅッ!!?」


血走った眼で我を忘れた様に駆け出すジェネラルを見て、アオはナイフをしまった。


アオ「ブロスもどきだろうがぁーっ!!」


ジェネラルの隙の多いパンチをしゃがんで回避し、頭上にきた顎にカウンターアッパーを喰らわせた。
細い体をしていた彼はぬいぐるみの様に大きく吹っ飛び、兵士たちの中へ落下した。


クリボー「な…隊長…!!?」

ヘイホー「そんな…ジェネラル隊長が…っ!?」


兵士たちに囲まれ仰向けに倒れたジェネラルは気絶していた。


アオ「ふぅ…やったかな…。」

キノピオ兵「すごい…あの強そうなハンマーブロスを…!」


アオはキノピオ達の歓声を浴び、フッと安心した表情を浮かべた。


クリボー「くそぉ…よくも隊長を…!」

ムーチョ「許せん…人間め、キノコ軍め…っ!」

アオ「ゑ…?」(汗)

チョロプー「隊長の仇打ちだ、おいらたちでかかるぞぉー!!」


クッパ軍団はけたたましい猛獣のような雄叫びをあげ、一気にこちらへ駆け出してきた。
え……不味い、どうしよ…本気(ガチ)でヤバい…っ!


メット「数で押すのだぁー!行けぇええー!!」

キノピオ兵「不味いぞ、こちらも戦闘を開始する!かかれぇー!!」


「待ちなぁー!!その勝負、俺たちが引き受けてやらぁっ!!」


両軍が一斉にぶつかろうとした時、何処からともなく聞き覚えのある声が聞こえた。
辺りが唖然と静まり返った時、クッパ軍団の方で「ぐあああぁっ!」と、やられた叫びが響いた。


マリオ「久しぶりだな、アオ!それにピーチ城のみんなにクッパ軍団!!」

クリボー「あれは……ひぃっ!?ま、マリオだぁ!!あのマリオだぁああーー!!!」

キノピオ兵「あっ…!マリオさんだぁー!!!」

アオ「ゑ…っ!?嘘、マリオ!?」(汗)


突如として現れたマリオは手に火球を作りだし、クッパ軍団を吹き飛ばしていく。


ムーチョ「こんな時に…マリオめ…っ!」

マリオ「おっと、俺だけじゃないぞ。」

ムーチョ「何…っ!?グアァッ!!」

古酒「やれやれ…すごい数だな。」

アオ「あれは…!」


古酒は水を剣に模した形に作り上げ、マリオの背後で構えていた。


モララー「邪魔だ、TURBOブレットォッ!!」

ノコノコ「ぎゃあぁぁああ~~っ!!!」

アオ「…!モララー!!」

モララー「ったく…驚いたぜ、アオ。お前までこの世界に来ていたなんてな。」


思いもよらぬ知り合いの乱入により、気が付けばクッパ軍はもう半壊状態に陥っていた。


メット「くそっ…何なんだこいつ等は!?もう軍が半壊しているとは…!?」

レインド「そういうこった、もう諦めて家へ帰りな。」


岩に腰かけていたレインドの声に驚いたメットは、ジェネラルに代わり軍へ退却を呼び掛けた。
まだ動ける者は倒れた者たちを背負い、一目散に退却していった。


アオ「え……あ…っ!れ、レインドさん…!?」

レインド「よっ、元気にしてたか?アオ。」


また運よく助けられたと、アオは力尽きたように腰をその場で下ろし一息ついた。




真・クッパ軍団軍師にして副司令官のハンマーブロス。
『天才軍師』を自称するが、何処か抜けていて何かと失敗する。
外見は並みのハンマーブロスに比べて僅かに華奢な体を持つ朱色のブロス。
愛用する「大紛争」は先端が球体型のハンマーである。

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最終更新:2012年07月03日 19:16