スンッ―――― ザァン、 ザンッ、 ザグンッ、 ザァンッ、 ザキィンッ、 ズバンッ、 ザンッ、ザキャアァンッ ! ! ! ! ! ! ! ! (氷冬が四刀を鮮やかに振るうと、彼女に迫る刃が相殺され朧となって消えていく。しかしこの時、誰もが目を疑ったのは―――――氷冬の刀が、『 八 刀 』に見えたことだ)
フーナ「―――――!?(ぇっ……?) …… …… ……な、何が…起きたの…っ…?(…それに今…氷冬の刀が…二重になって見えた様な……??)(咄嗟の出来事に目をぱちくりさせている) 」
ぼうれい騎士「……あの娘、今何をした…?(呆然)」
雛菊(六道)「―――――!!?(振り切られた斬撃に驚いたように、暴走する本能が鎮まり返る)」
氷冬(八舞)「 シ ュ ゥ ゥ ゥ … ――――(水色の瞳が真っ白に染まっている以外は何一つの変化はない。手に握られた刀も、いつもと同じ四刀だった。だが…―――) ス ス ス ス … … ――――― ギ ュ ラ ア ァ … ッ … ! ! ! ! (鮮やかに四刀で弧を描くと、その軌道がはっきりと具現化される。完成された残像剣…『八本の刀』が現出したのだ)」
AS「・・・さぁ、今こそ語るがいい。お前だけの、剣の理を―――此処に・・・刻みつけてやれ。(見守るように、けれども楽しげに剣戟を見据えている) 」
氷冬(八舞)「……(氷の様に冷たく閉ざされた表情。唇から零れる白い吐息が空気を凍てつかせる。)……この世には、「何も斬らない剣士」がいるんだってね、AS。触れるものすべてを斬り伏せる剣は、本当の剣じゃない。傷つけるためのものなんかじゃなく、"救うため"のものなんだと… それが…貴方が言っていた「最強の剣」。……やっと、見つけたんだ。(右足を上げ、片足立ちで四刀を構える。それは今までの氷冬の構えには無かった、"武"とはかけ離れた異例の構えだった)」
氷冬(八舞)「“八色之姓”(やくさのかばね)を奏で、閃劇に踊る≪ 八 舞 ≫(やまい)―――― 魅せてあげる。( チ ャ キ … ッ … )(胸元を覆うように交差した両腕と共に展開される四刀が、吹き付ける吹雪風によって時折「八刀」となって揺らめく。その様は孔雀の羽の様に、偉大で、美しく、神々しい)」
スカーフィ「わぁ……!氷冬…なんだかとっても綺麗だよ…♪(思わず彼女の姿にうっとりと見惚れる)」
AS「嗚呼、好い・・・それが、お前だけの答えだ。その剣こそが、お前そのものだ。―――故に、それは何よりも強い。(頬を撫でる吹雪に、微笑みかける)お待ちかねの彼女にも魅せてやれ・・・ 」
雛菊(六道)「……ぁ…ッ…ぐ……!(再び頭蓋に激痛が響いた時、血に飢えた獣の様な呻き声を上げてよろめく)はぁ…はぁ…ッ…――――――― シ ュ オ ン ッ ! ! ! (今にも体力の限界によって倒れそうだった身体が前傾したその瞬間、音速を越えた速度で氷冬の懐に潜り込み、既に刀を振っていた)」
フーナ「――――!!(氷冬ッ…!!)」
氷冬(八舞)「―――――(雛菊の凶刃が首元に届きそうになった…その瞬間だった―――) ガ ッ キ ャ ァ ン ッ ! (閃光と共に、雛菊の刀が弾き返された)」
雛菊(六道)「っ――――!!?(弾かれた瞬間、緩慢化された空間の中で氷冬をその瞳に捉える)」
たしぎ「……っ……!?(彼女(雛菊)の刀が届いたと思ったのに……何故、急に刀が弾かれて…!?)」
モララー「…"弾いたんだ"。(呟くようにたしぎにそう応える)」
たしぎ「…っ…!?で、ですが…あの距離で刀を振うことなんて―――」
モララー「できるんだよ。今のアイツならな。(静かに瞳を閉ざす。そして再び氷冬の姿を捉えるや否や、不敵な笑みを浮かべる)…これから"一瞬の出来事"だ。目ぇ離すんじゃねえぞ。」
カイ「ほーぅ…何が起こったのかよく分からんが、あの嬢ちゃんの仕業なのは確かだろうな。ククク…惚れるねぇ~♪(激励を口笛に乗せて) 」
AS「気づくのが遅かったようだな泉の騎士・・・いや、今はもう、猫か?(ようやく気づいたのか、と言うかのように笑う)・・・半端なものは教えてなどいない、脳裏に焼き付けるがいい、秒すら惜しむ剣の語り合いだ。 」
雛菊(六道)「ズバァンッ、 ズァンッ、 ザキィィンッ ! ! ! ! (空間を断裂する勢いで刀を振い、強烈な斬衝が螺旋を描きながら氷冬に喰らいつく)」
氷冬(八舞)「八色之姓…―――― “真壱”(まひと)。」
――――― ザ ア ァ ン ッ ! ! ! ! ――――― (荒れ狂う津波の様に入り乱れる斬撃が、一瞬にして蒼白い一閃に崩され、"地平線"となる)
剣士「切り崩した…!?あの斬撃の嵐を…ッ…!!」
ヒロ「……………!?あのたくさんの斬撃を一瞬で…!? 」
武舞(ぶのまい)が魅せる波動により、四刀は鮮やかな軌道を残し、八つとなる ―――自らの意識を深く落した先にある無我の境地で踊る、神楽の舞。それが ―――
―――― ≪ 八 舞 ≫ ――――
氷冬(八舞)「スススス…―――(緩慢化された空間の中で八刀を滑らせるように虚空を切り撫でる)」
雛菊(六道)「(…負けたくない…)――― ぁ…あああぁ…っ…!!(遠距離から伸縮自在の刀を振い、接近を許さない苛烈な斬撃で何度も氷冬に斬りかかっていく)」
氷冬(八舞)「スゥ…ハァ…(深呼吸をひとつ。深い呼吸と共に、瞳の中の白銀世界が更なる白みを帯びていく―― )二の段…――― “遊味”(あそみ)。(ギュラアアァ――― ザギャギャギャギャグァンッ ! ! ! ! )(身体を捻りながら宙へと翻し、空中で逆さまのまま四刀を素早く振う。刀の軌道が二重となり、「八閃」の刃が雛菊の刀を悉く弾き落としていく)スタン…―――― フ ォ ン ッ (着地後、滑る様な足運びと共に、舞い踊る様な立ち回りで八閃を奏でる)」
プルスト「(傍から見れば、明らかに戦いの構えではない…なのに、それでいて全く無駄のない動きで彼女(雛菊)の剣を掻い潜り、相殺する…!フーナの友人…あれは、人の動きじゃない…!)(見違えるほど動きが鋭くなった氷冬に思わず息を呑む) 」
雛菊(六道)「(…手放したくない…) ググッ――― ビュオワアアアァァァッ ! ! ! (回転斬りと共に斬撃の竜巻“風恋”を放って雛菊の行く手を阻む)
」
氷冬(八舞)「 ヒ ュ オ ァ ッ ! (斬撃の竜巻に避けるでも相殺するわけでもなく、真っ直ぐにその中へと飛び込む)」
ブーメランプリム「馬鹿な…!あいつ…自ら斬撃の中へ…っ…!!!(驚愕した顔で)」
スカーフィ「かぅ…っ…氷冬……!(…だ、大丈夫…ボクは信じてるから…――――― 氷冬、キミが必ず勝つってこと…!!)(張り詰めた緊張からぎゅうと胸元の衣服を掴む)」
大剣使いの男「………!!(勝負に出るか、氷刀…!!)」
氷冬(八舞)「――――― “剥音”(すくね) ―――――」
ザ キ イ ィ ィ ―――――――――――― ン … ッ … ! ! ! ! (音を剥き、彗星の如く解き放たれた一閃が、雛菊に届く)
雛菊(六道)「 ! ! ! ? (その紫電を目にした時には既に遅く、五臓六腑に迸る残響によって宙へと舞う)―――――(宙を漂う中、群青広がる空を眩しそうに仰ぐ。まるで水中の中へ身を投じたような不思議な感覚が過る。眩しい陽の光に視界が真っ白に塗り潰されていく中、懐かしい風を頬に感じそっと瞳を閉じる…――――)」
―― ある春の日の花畑 ――
色とりどりの花が咲き誇る野原を裂く様に、ただ真っ直ぐへと続く長い道を男が歩いている。
腰元に一振りの刀を携え、陽気な鼻歌を歌って、春の路を差す陽光を浴びながら歩く彼だったが、前方に花ではない小さな影を見つけて目を細めた。
男が見据えた先にひとつの人影――― 少女の姿があった。ぼろぼろの白い布切れに身を包んだ小柄な少女。道の真ん中で、何かに怯えている様に身を縮めている。
男が声をかけると、少女は恐る恐る顔を上げて彼の顔を覗きこんだ。生きる目的を失ったかのように、ハイライトの無い瞳。陰に覆われた様に黒味を帯びた碧の髪。この時男は、少女のその姿から捨て子だと察した。
男が名前を尋ねる。しかし少女は答えなかった。答えられなかったのだ。名前も持たない者に名乗ることはできない。生まれ育った故郷。両親の顔。友達のこと。好きなもの。何を尋ねても無言しか返ってこなかった。
そこで男はしばらく考え、少女を養子にすることを決めた。生きる目的の無い少女はそれを否定しなかった。生まれて初めて知った様な温かな感情に揺るがされた少女はゆっくりと立ち上がり、男と見つめ合った。
その時男は、少女の小さな両手に弱弱しく握られている一輪の花を見る。白い花弁に金色の花芯。小さくてころんとした可憐な花が、少女にそっくりだとほくそ笑んだ男は、彼女をこう名付けた。
――――――― " 雛 菊 " ―――――――
―― とある剣道場 ――
雛菊(当時:11歳)「――― はあああぁぁー!!(凛とした強い瞳で見据えた相手に、振りかざした木刀を振う)」
バ ス ン ッ … !
道場生「ぐぅ…!(彼女の気迫に負かされ隙を見せてしまい、瞬く間に倒される)」
鑢「そこまで。勝者は雛菊。…見事だね、これで130勝目にしてここまで無敗。日々の行いの賜物だ。この調子で鍛錬を怠ることなく、そして自分の実力を驕ることなく、精進するんだ。」
雛菊「はい、お師匠様!(汗で煌めく白い肌と本来の艶を取り戻した鮮やかな碧の髪。そして、自らに生きる目的を与えてくれた男に向けたその輝いた瞳は、"生"に満ち溢れていた)」
「あの雛菊って奴、女のくせに…目障りなんだよ。」「あいつばかり師範からちやほやされやがって…」「師範の実の娘じゃないから余計腹が立つぜ…」「あいつさえいなければ…」「ヒソヒソ…」
雛菊「 ブ ン ッ … ブ ン ッ …(道場の隅で懸命に素振りの稽古を行っている。他の道場生の囁きが耳に入っているのかどうかは不明だが、彼らには見向きもせず、ただひた向きに努力に勤しんでいる)」
雛菊「お師匠様が直々にお相手してくださるなんて、光栄です。よろしくお願いします。(深々と頭を下げる)」
鑢「今日まで君は本当に強くなった。だから、これが最後の稽古だ、雛菊。私を倒せたなら、君はこの道場を卒業できる。そして、卵から孵った"雛"の様に、『世界』へと旅立つんだ。」
雛菊「お師匠様…私は…貴方から大切なことをたくさん教わりました。でも、これからもずっと貴方の傍で『剣』を振いたい。たとえここで貴方に打ち勝てたとしても、私は…この道場を継ぐために残ります。」
鑢「…… …… ……我が娘ながら、可愛いことを言うね。(やれやれと苦笑しながら)」
雛菊「……(しかし内面では、自分自身ですら把握できないほどひどく緊張状態に陥っている。骨の髄まで痙攣するかのように全身が硬直しかけている)」
鑢「…雛菊、君の全身全霊を込めた太刀を振いなさい。もしもその覚悟があるなら、私もそれに応え、全力で太刀を振おう。(木刀を構える)」
雛菊「はい…!(同様に木刀を構え、しっかりとその相手を見据える)」
道場生「―――――― は じ め ! !(試合開始の合図を下す)」
雛菊「―――――!( タ ン ッ )(合図が下されるや否や爆発的な踏み込みから先制攻撃を仕掛ける。かわされても鑢との距離を保ちながら隙の無い剣戟を叩き込んでいく)」
鑢「 ス ン ―――― ガ ッ ガ ン ッ カ コ ン ッ ! !(流れる様な歩法から刀を受け流し、苛烈に繰り出される攻撃を刀身で受け止め弾き返していく) タ ン ―――― ズ ゥ ン ッ (雛菊の刀の軌道をずらし、死角から薙ぎ払う)」
雛菊「――――!(弾き返された直後に巧みに刀を振り回してその凶刃を防ぐ)」
鑢「 ガ ッ カ コ ン ッ ズ ァ ッ (どうした、いつもより粗いよ。いつもの「君」はどうした。私を越えられないのなら、自分さえも越えられないよ、雛菊――――)」
雛菊「ッ……!(お師匠様…私は…――――――)」
―――― 私は…貴方にとても感謝しています。貴方と出会わなければ、今の私はなかったのですから。…いいえ、今に私はいなかったかもしれません。 ――――
―――― そう、これは恩返し。私に剣道を教えてくれた貴方に、強くなった自分を見てもらうために。 ――――
―――― …だからこそ、私は… ――――
雛菊「 (―― 自 分 に 負 け る わ け に は い か な い !――) 」
鑢「―――――――!」
―――――― バ ァ ン ッ ――――――
鑢「……ふ、ふふ…っ…」
―――― 君が私の娘でよかったよ、『雛菊』… ――――
鑢「 ド サ リ … ―――(ゆったりとした空間の中を泳ぐようにその身体が崩れる。仰向けに倒れる最中に朧げに映る娘の姿を静かに捉え、床に大の字に倒れる。頭部から、真っ赤な滝がだらりと流れ出す…)」
雛菊「はぁ……はぁ……―――!!?(接戦の末に勝敗を喫したその時――刃を交えた相手が血を流して倒れている現状に大きく目を見開いた)」
道場生『師範ーーーッ!!!(決着がついたその瞬間、多くの道場生が倒れた鑢のもとへと駆け寄る。応急処置や救急車の呼び出しのために何人かが慌てて道場から出ていく)』
雛菊「…ぁ……ぁ…… ぉ…お師匠様…っ……(眦に雫を溜め、狼狽する)」
道場生「……ていけよ…」
雛菊「……!?」
道場生「――― 出ていきやがれッ!!この恩知らずの人殺しが!! ―――」
雛菊「――――!!!( ビ ク ン ッ )(生きることに満ち溢れていた瞳が、一瞬で絶望一色に染まり上がる)」
「そうだ!ここから出ていけ恥知らずが!!」「お前は師範に勝った…なら、この道場を出ていく理由にもなるだろ?…出ていけ。」「てめぇは師範に、恩を仇で返した大馬鹿者だよ。去れよ…!」 『出ていけぇッ!!』『出ていけ!!』
雛菊「ぅ…ぁ……っ…あ……――――――」
―――― ちがう…わたし、は……わたしはただ、あのひとに…… ――――
雛菊「カランカラン… ! ――――(耐えきれない感情に木刀を手放してしまい、逃げ出すように道場から姿を消した)」
―― 翌日・翡翠家 ――
女性(鑢の妻)「……心配いらないよ、雛菊。幸いにも鑢は致命傷には至らなかった。少し…目覚めるのに時間はかかりそうだって、お医者様がそう言っていたけどね。(敷布団に眠る鑢を見つめながら)」
雛菊「……(今にも泣き出しそうな、悲愴に暮れた瞳で静かに眠りこんでいる鑢を見つめている)」
女性「…気持ちは分かるが、そう悲しい顔をするんじゃない。鑢とて剣道を極めた師範。弟子と稽古をすれば、こうなることは重々分かっていたことさ。…この人もそろそろ歳だからね。我が子と稽古に励むとなれば、少年心が擽られた様に無茶したかったのさ。そんなものだよ。」
雛菊「………(正座の上に作った握り拳を強く握りしめ)」
女性「この人はねえ…昔からお人よしが過ぎるんだよ。道場を開いたのも、貴女をこの家に連れてきたのも、その理由はただ一つ。若い者に、生きる目的を見出してほしかったからなのさ。」
雛菊「……?」
女性「生きる目的を失い、命を絶つ人はこの世に五万といる。この人は、そういう人たちに生きる目的を自分で見出させ、新たな人生に導くことに生き甲斐を感じていたんだ。…雛菊、ここへ来て貴女が幸せだと感じたのなら、それは鑢の本望だよ。」
雛菊「……」
女性「だから、ね…お願いだから、「自分」を許してちょうだい。…鑢だって、そう言うに違いないわ。」
雛菊「…… …… ……はい…っ…(涙声にそう応え、口元を手で覆い、溢れ出る蒼い感情を流し出す)」
女性「…この人のもとで育ったんだから、優しすぎるのね。貴女が私たちの子で本当に良かった。」
雛菊「―――…それでは、長い間…本当にお世話になりました。(風呂敷を両手に、深々とお辞儀する)」
女性「よせやい、絶縁するわけでもあるまい。…いつでも帰ってきなさい。」
雛菊「はい…!……あの……」
女性「…ああ、わかっているよ。鑢にはちゃんと伝えるから。貴女は、貴女が目指すところへ行きなさい。いつか立派になった貴女を、あの人はきっと心待ちにしているわ。…さぁ、お行きなさい。でないと、汽車に乗り遅れてしまうよ。こんなど田舎だから、乗り遅れたらあと半年も待たなきゃいけなくなるかもねえ。(冗談交じりに笑いながら)」
雛菊「ふふっ…そうですね。では、お師匠様によろしくお願いします。…行ってきます、お母さん。(女性に再び頭を下げ、田舎道を進んでいく)」
女性「気をつけてね。(旅立つ雛菊の背を、懐かしむ様に見送る)」
雛菊「(お師匠様、見ていてください。貴方に教えてもらった「剣」で、私は強くなります…―――――)」
雛菊「―――――― ド サ ァ … ッ … ! ! (刹那と久遠が入り混じる記憶を辿って還ってくる。飛び疲れた華蝶が儚げに命を散らすように、その身が地面に落ちる) シ ュ ゥ ゥ ゥ … (全身を纏っていた光衣は消滅し、瞳を覆い尽くしていた罪の渦は波のように引き返していく)」
氷冬「―――――― フ ォ ン (雛菊の精神が鎮まると共に、自らも元に戻る)…はぁ……はぁ…っ……!(実践では始めてだったけど…上手くいけたみたいね…)(呼吸を落ち着かせようと胸元に手を添え)はぁ……はぁ…… ……(目の前で仰向けに倒れ込んだ雛菊に一瞥を与える)」
キリギリス「……!!?おおっと…!!ここで、ついに決着かああぁーー!!??(倒れ伏した雛菊に思わず身を乗り出すように)」
雛菊「…… …… …… …… ……ピク…(片手の指が、静かに微動する)」
騎兵「……!いや、まだだ…!」
雛菊「…… …… …… やっと、思い出しました。(ぽつりと空へ呟く様に)…私が生きる理由… 刀を握る理由… 強くなる理由… そして……ここにいる理由を。(その身を起こし、傍らに落ちている蕨を拾い上げる)…ありがとうございます、氷冬さん。危うく私は、そのすべてを、忘れてしまうところでした。(傷だらけの身体でなおも笑顔を見せ、心の底から感謝するように氷冬に微笑んだ)……――― 決着をつけましょう。(眼を閉じ、再び開けた時…その眦を決した瞳はただ一人の剣士として、爛々と輝いていた)」
ヒロ「…………なに、まだ…立てるというのか…!?」
モララー「…まだだ。こんなすげぇ戦い、まだ終わるはずがねぇ。そうだろ? 」
氷冬「……それはお互い様よ。貴女に出会わなければ、今の私はなかったのかもしれないのだから…―――(互いに微笑み合い、ぶら下がった四刀を振り上げて身構える)――― ええ。(強い覚悟を刻んだ瞳で向き合う)」
雛菊「(…背負った罪をしっかりと受け止めて… もう、自分を見失わないために―――)スゥ…ハァ……(淀みも歪みもない瞳をゆっくりと閉ざし、呼吸する)」
氷冬「(…一度決めた決意は、絶対に曲げない… もう、自分を見失わないために―――)ハァ…ハァ……(乱れた呼吸を整え、刀を強く握りしめる)」
ヒ ュ ォ ァ ァ ァ … (閃劇に、冬風と春風が入り混じる)
氷冬/雛菊『―――――― ダ ッ ―――――――』
最終更新:2018年02月24日 12:06