――― 数年前・とある荒廃した街・夜 ―――
ザ…ザ…(覚束ない足取りで瓦礫や死体だらけの不安定な足場を歩み行く者がいる)
ガラ…ララ…ッ……(風化したように色彩を失った建物の一部が静かに崩れ落ちていく。その音に反応した子ネズミが慌てて何処かへ逃げ去っていく。)
ザ……ザ…ッ…(人の声も風の音もない街の中、聞こえるのはその者の足音…そして、彼の背に眠る少女の、静かで、どこか苦しげな呼吸音だけだった)
希望を失った小さな世界を歩くその青年と少女を照らす様に、月光は儚げな輝きを帯びる。
青年「ハァ……ハァ……(意識朦朧の中、かけがえのない命を背負い灰色の街の中を歩み続ける。その向かう先は解らない。ただ、二人で生き延びたいと言う胸中に秘めた強い思いだけが、彼の行動原理となっていた)」
少女「……ケホッ……(青年の背で静かに眠っていた少女の身体がびくりと動き出す)」
青年「――――!(少女の咳に思わず歩みを止め、傍にある傾いた半壊のベンチに横たわらせる) 大丈夫か、サキ…?(心配そうに少女の顔色を窺いながら、その小さな頭を優しく撫でる)」
少女「ケホッ…ケホッ……(咳を繰り返す度に、純白だったワンピースの胸部が赤く滲み出していく。少女は既に重傷だった。もう、長くは持たない…)……ぅ…ん… サキは…だいじょうぶ…だよ…… …… ……ねえ…おにい…ちゃん……」
青年「っ……(少女…自分の妹が今抱えている痛みに耐えきれない青年。できることなら、痛みに蝕まれるその身体を代われたらと、悔しい思いと共に拳を強く握りしめる。爪が掌に食い込み、ぽたりと鮮血が乾いた地面に滴る)…なんだ…っ…?(乞うように語りかける少女に顔を近づける)」
少女「ハァ…フゥ…ハァ……ごめんね…ほんとうに、ごめん…ね……」
青年「…サキは悪くない…!謝ることなんて、ないんだ…(何度も何度も優しく少女の頭を撫で回す)」
少女「ハァ……ハァ…… おにいちゃん…やさしぃ…(言葉を告げる度に、少女の身体は瞬く間に赤く浸食されていく)」
青年「当たり前だろ…お兄ちゃんは、サキの味方だ。世界で…たった一人の、お前のお兄ちゃんだ…誰よりも、サキのことを愛してる… …だから…っ……だから…!(――――たのむ…たのむサキ…っ…お前まで… お前だけは……っ…)(冷たくなっていく少女の手を強く握りしめる。迫る恐怖に、握る手が僅かに震え出す)」
少女「……サキも…ハァ……ハァ…ッ… …おにいちゃんが……だいすき…だ…ょ……(やがて少女の瞼が静かに閉ざされていく)」
青年「……?……??……!?…サキ…っ……?サキ…っ…!?おい…っ…!しっかりするんだ…!こんなところで寝たら…風邪をひくだろ…っ…?なぁ…サキ…!?……サキ…ッ…!!!(何度も、何度も、何度も何度も、静かに瞳を閉ざした少女のか細い身体を揺らす)」
青年「…… …… ……(信じたくはなかった。当然望んでなどいなかった。たとえこの身が朽ち果てようと、かけがえの無い目の前の命だけは失いたくなかった。しかし、現実は残酷だった。目の前のその小さな命の最期を見届けることしか何もできなかった自分を、こんな惨劇を生み出した現実を、どんなに鳴き縋っても現れることの無かった希望を、すべてを呪いたかった。)」
ポタ…ッ…―――――(青年が流した血涙で月は赤く染まる)
青年「――――― う゛ わ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛あ ゛あ ゛ぁ ゛ぁ ゛ ぁ゛ ぁ゛ ー ー ー っ ! ! ! !」
これは、悲愴、奇跡、狂気、純粋、復讐、再会、決別、邂逅…様々な思いが錯綜する"愛"を描いた物語―――
――― 双眸 ~紺碧の哀/紅蓮の愛~―――
そして時は進み、8年後―――
―――
新世界・大監獄「インフェルノ」 ・南港―――
ザザァン…(穏やかに佇む海原。天候は曇天。辺りには霧が立ち込めている。カモメの鳴き声も、囚人の叫び声も聞こえない静かな港には、荘厳な雰囲気を醸し出す巨大な門がそびえ立っていた)
門番兵A「(槍を片手に扉の傍らに立ち、霧でぼやけた水平線をぼんやりと眺めながら隣の男に語りかける)…なあ、知ってるか。」
門番兵B「どうした。(相方へは振り返らず、目の前の白景色を漠然と眺めながら耳を傾ける)」
門番兵A「一昨日のことだったか。水の国レサーティアに停泊していた政府の軍艦四隻が何者かに襲撃されたって事件さ。」
門番兵B「ああ、あれか。主犯の正体と目的は不明だが、その襲撃によって三隻を討ち沈められたんだよな。生存した一隻はなんとかその場から逃走できたらしいが…」
門番兵A「その一隻が、未だに本部へ帰還していないようだ。襲撃を受けてから一度本部へ一報を入れたらしいが、その数時間後にぱったりと通信が途絶えたそうだ。政府の見解によりゃあ、襲撃者に軍艦を乗っ取られたのかもしれねえって。」
門番兵B「ご愁傷様なことだ。海軍の襲撃被害事件は度々耳にするが、今回の件にすれば誰もが目を疑う事件だからな。とはいえ、強奪された戦艦もGPSですぐに探知される。今頃、編成された討伐部隊が追跡している頃だろう。捕まるのも時間の問題だ。」
門番兵A「それもそうだな。(杞憂だったかと苦笑する)」
門番兵B「それより、今日は1時間後に囚人を乗せた軍艦がここへ来る予定だ。迎え入れに備えないとな。」
門番兵A「そうだな。」
オ ゥ ン … オ ゥ ン … ッ … (遥か先を漂う霧の中に大きな影が現れる。やがてその影は濃くなっていき、その正体を露わにする―――― 一隻の軍艦だった)
門番兵A「ん…?なんだあれは…(遥か先の陰に訝しみ、取り出した望遠鏡を覗きこむ)……!あれは…政府の軍艦じゃないか…!約束の時間より随分早いな…?」
門番兵B「なに…?そんな話聞いていたか…?(困惑した表情で自分も望遠鏡を覗きこむ)…間違いないな… しかし、付近に軍艦が通るなら事前に管理部から連絡が入るはずだが…―――――」
ズ ド ォ ン ッ ! ヒ ュ ゥ ゥ ゥ ―――― ン … (突如鳴り響く砲撃音。その音と共に現れた黒く丸々とした影が港に飛来する。そして…)――――ズ ギ ャ ア ア ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ン ッ ! ! ! ! (巨大門に何かが激突。鼓膜を裂くような爆音が轟き、辺り一面に黒い爆煙と衝撃が迸る)
門番兵A「なんだ――――うわああああぁぁぁッ!!!?(爆発の衝撃で転倒する)…な、な…ッ…何なんだ…何なんだ突然…!?(突然勃発した事態に唖然とし、上手く立ち上がれずにいる)」
門番兵B「おわああぁぁッ…!?(爆異音と共に身を屈め衝撃に耐える)ッ…!?何故政府の軍艦が砲撃を…!?……ッ…!!(その時、先程は話していたことが脳裏を過る)…ま…まさか…いや、そんな馬鹿な…ッ…!?」
門番兵A「どうしたんだ!?何故
政府軍が砲撃を―――ッ!!(ちょうどその時相方と同じ考えが過る)…あ…ぁ……嘘だ… まさか、あれが…―――― "先日強奪された軍艦"じゃないのか…ッ…!?(表情が一気に青ざめる)」
サングル「――――(煙を噴かす軍艦の砲台上に立ち、被弾した方角を冷淡な眼差しで静かに見据えている)」
門番兵B「 ガバッ (咄嗟にトランシーバーを取り出す)こちら南港!襲撃者が現れました…ッ!!敵は軍艦一隻!!至急迎撃部隊をッ!!!」
ヴィ゛ィ゛ィ゛ーッ ! ! ! ヴィ゛ィ゛ィ゛ーッ ! ! ! ヴィ゛ィ゛ィ゛ーッ ! ! ! (大監獄一帯にけたたましいサイレンが鳴り響く)
看守『襲撃だァーッ!!!急いで砲撃準備に取り掛かれ!! 軍艦四隻出動!!四面から包囲して討伐せよ!! 急げ急げェーッ!!!』
ヴェドリー「あーあー…とうとうやっちゃったねえ。(甲板に踏み入れ砲台に立つサングルを見上げる)ここから先は作戦通りでいいのかな。」
サングル「ああ。さっさと『奴』を奪還してこい。これ以上騒ぎを起こせば必ず本部が動き出す。」
ヴェドリー「はいはい、わかりましたよ…―――(溜息を零すと全身がみるみると消えていく)」
サングル(分身体)『コツ…コツ…コツ……(軍艦内部より、各々に姿形が異なる六体のサングルが現れ、本体を囲むように配置に就く)』
ゴゥン…ッ… ! ! ゴゥン…ッ… ! ! ! (大監獄の堅牢な壁が開き、中から軍艦四隻が出動する)
サングル「……行くぞ――― ガ シ ャ ン ッ (白い大鎌を肩に、こちらへ迫る軍艦を睨みつける)」
看守長「敵は軍艦一隻。先の襲撃事件の主犯が何故ここに現れたのかは分からんが…この大監獄インフェルノの名を汚す訳にはいかん。(先頭を走る軍艦の先に立ち、敵軍艦を睨みつける)」
ザザザァーン…ッ… ! ! ! ゴロゴロゴロ…ッ… (先程まで穏やかだった海原が荒れだし、曇天の空から雷鳴が轟きだす)
看守「敵軍艦を包囲いたしました!」
看守長「――――― 撃 て ェ ッ ! ! !」
ドンッ、ドンッ、ドンッ、ドドドドンッ ! ! ! ズドォンッ ! ! ! (全艦、そして大監獄の砲台から一斉砲撃) ヒュゥゥゥーーーン…―――― ボ ギ ャ ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ン ッ ! ! ! ! (四面楚歌の状況に置かれたサングルの軍艦に、容赦ない砲撃の嵐が巻き起こる)
門番兵A「馬鹿め…集中砲火の的になりやがって…!あれだけの砲撃をまともに受ければ、もう終わりだ…!!」
パチッ…パチパチ……ッ…(業火に包まれ、崩壊の音を掻き鳴らす一隻の軍艦だったが…)―――ヒュババババッ ! ! (その焔から七つの影が種火の如く飛散し、それぞれが四隻の軍艦に跳び移った)
サングル(分身体)『バサバサバサ…ッ…―――― タ ン ッ … ! (崩れゆく軍艦から別の軍艦へと大跳躍で跳び移り、それぞれが敵陣に乗り込んだ)』
看守長「これで終わり―――んなッ…!?(敵を討ち取ったと安堵に浸ろうとしたのも束の間。討伐したはずの敵が自ら自陣に飛び込んできたことに驚愕し、思わず退く)……!(なんということだ…あの砲撃の嵐の中を潜り抜けてきたと言うのか…!?それも、ただの跳躍だけで…!?こやつ、只者ではない…!)警戒しろッ!!敵は異能力者に違いない!!総員全力で討伐にかかれェッ!!!(腰元の刀を引き抜き、全部隊に攻撃指示を下す)」
看守『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーッ!!!!(各軍艦にいるすべての看守が、獲物を手にサングルに立ち向かう)』
サングル「―――皆殺しにしてやる。(赤い眼に確固たる殺意を輝かせる) ギ ュ オ ン ッ ――― ズ シ ャ ア ア ア ア ァ ァ ァ ッ ! ! ! (赤い眼光の軌跡を残しながら、迫る群れを瞬間的に潜り抜け瞬く間に斬殺する)」
看守『ぐああああああぁぁぁぁーーーッ!!!!(目にも止まらぬ速さで疾駆するサングルに誰もが成す術もなく血飛沫を上げ倒れ込んでいく)』
看守「総員、港門の守りを固めろ!!早くしろッ!!!(一方監獄内では、突如勃発した襲撃に備え多くの看守たちが右往左往と走り回っていた)」
囚人『なんだ…襲撃だって…? へへへっ…誰だか知んねえが…いいぞ、もっとやれ… ケヒヒ…あわよくばシャバに出られるかもしれねえなあ、俺たち… (慌てふためく看守たちの姿に、牢獄の中で下卑た笑みを浮かべている)』
なげきのぼうれい「オォ………神ダ。神ガ……お慈悲ヲクレタノダ…!(牢獄の中にて) 」
シング「ピクッ――――(暗い牢獄の中で、外から響き渡る爆音に耳を傾け)………随分、騒がしいな…………。 」
――― あぁ、随分派手なパーティでしょ?(看守も囚人たちも騒ぎ出す最中、シングの耳元だけにはっきりと聞こえる何者かの声。彼のすぐ傍で聞こえた声…しかし、声の主は彼の目には見えていない)
シング「………やかましい奴らめ………(呆れた口調で、静かに呟き)今、良い所なんだよ………もう少しで、俺の―――――――― !(再び何かに集中しようとしたその時、すぐ傍から発せられた何者かの言葉を聞いて)!! ………何だ、今の………確かに、聞こえたはず………。(声のした方を振り返り、辺りを見回して 」
ヴェドリー「――― ス ゥ … (藍色に染まる牢獄の壁からすり抜ける様に姿を現す)久しぶりだねェ…きょーそ様っ。(何処か馴れ馴れしさを感じさせる不敵な笑みを見せつけながら現れたのは、豪華なコートを羽織った上半裸体の青年。その奇抜な格好は、彼にとっては見覚えがあった)
シング「――――――は?(壁から現れたヴェドリーを見て、数秒程言葉を失い)――――――はぁ………何なんだよマジで………こんな時に幻覚か?俺も遂におかしくなっちまったってのか………クソが、こうなったのも全部…………(頭を掻きながら、ブツブツと呟いて 」
ヴェドリー「ファッ!!?おいおい困るな~!この僕を忘れてしまったと言うのかい?世界でッ、最もッ、誰よりも何よりもッ、美しく…ただただ美すぃこの僕『ヴェドリー・ギロングス』を!( ガバッ――― ピカアァァ…ッ… ! ! )(コートを勢いよく脱ぎ、黄金色の裸体を見せつける。その神々しい(?)輝きは薄暗い独房の中を隅から隅まで照らしだし、あっという間に豪邸の如き明るさへと変わり出した)」
シング「あ?……ぐぁっ――――――!!(顔を上げた途端、眼前に広がる眩いばかりの光に目がくらみ)っ……………わ、分かった…………分かったから―――――― とっとと服着ろやクソボケェッ!!!!!(ヴェドリーの長い髪を掴み上げ、怒号を浴びせる 」
ヴェドリー「ハハハハ!どうだい?このヴィーナスも虜になる程の美しい輝きは…!これこそ僕が僕であることの何よりの証明――――あひぃんっ!!(髪を掴まれデフォ目で涙目になる)もっと見惚れても良かったのに…(そう言い渋々コートを羽織り直すと独房は再び元の暗さへと沈む) 」
シング「……はぁ………(落ち着きを取り戻し、ヴェドリーの髪を離して)……お前、確か地獄から出た後、自由な露出魔ライフを謳歌していたと聞いたが………一体、どういう風の吹き回しだ? 」
ヴェドリー「ははは!あの頃は楽しかったよ。何にも縛られず、ただ自分の美しさを解放できる喜びに満ち溢れていたからね。…でも、まあ、それだけじゃあ僕の心が満たされなかったのも事実なんだけど……っと、それはさておき!いろいろあってね。君の"力"を必要としている人がいるんだ。彼に懇願されて(正確には違うんだけどね…ははは…)、君を救出しに来たってわけ。(看守から盗んだと思われる鍵を手に、シングの肢体に嵌められた錠を外し開放する)」
シング「何…… !!(錠を外され、自由になった肢体を見て)…………いろいろと聞きたいところだが………とりあえず、今お前が言ってる事がマジなんだという事は、よく分かったよ――――――(ゆっくりと立ち上がり 」
ズッ―――――― ズズズズズズズズズズズ(シングの体から、どす黒く、邪悪なオーラが、少しずつ滲み出てくる 」
ヴェドリー「突然ことで何が起こっているのか分からないって顔だね。僕"も"そうさ。だけど今は、とにかくここを抜けだそう。後のことは『彼』が教えてくれるだろうからね。…さァ、この僕の美しい体に触れるんだ!そうすればここをすり抜けられる…!(がばっと両腕を広げ、さも自らの身体を見せつけるかのようにシングに迫る)
シング「(ヴェドリーを見て)…………フン………本来なら、顔面に何発かお見舞いしてやりたいところだが…………今回は、触れてやろう。(ヴェドリーの体に手を伸ばし 」
ヴェドリー「……(シング…そうか、君もまた…――――)(彼の全身より溢れ出す憎悪の如き邪気に、思わず目を細める)フフフ…さぁ、脱獄(で)るよ。ス ゥ … ――――(自身とシングの身体が壁に溶け込む様に消えていく) 」
その頃、南港では―――
ギガガガガガ…ッ…ズ シ ャ ア ア ア ァ ァ ァ ン … ッ … ! ! ! (火の海が広がる港にて。既に軍艦三隻が焔に包まれ、瓦解しながら海の底へと沈没していく)
看守長「ゼェ…ハァ…ッ……この…化け物が…ッ…! (血塗れの身体、折れた刀剣…既に虫の息の男の目に映るのは…人の姿をした"怪物"だった)」
サングル「 グ ン ッ (目の間に立つ死に底ないの男と目を合わせる)」
看守長「( ド ッ ク ン ッ )―――ッ!!?(サングルの目を直視したその瞬間、全身に歪な衝撃が駆け巡る)ガ…アガ…ァ…ッ…ガガ…ァ…ッ… !(全身が痙攣を引き起こし、膝から崩れ落ちる。皮膚の下の血管が露骨に浮き彫りとなり、皮膚全体が赤く染まっていく。脳を浸食されるような激しい痛みに視界は赤く変色し始め、その赤眼から血涙が流れる。そして…)―――― ブ パ ァ ッ ! (全身が文字通り消し飛び、甲板に血肉の破片が散乱した)」
サングル「ピチッ…――― シ ュ ル …(口元に付着した返り血を舐め取る)」
ヴェドリー「 ス ゥ … ―――(サングルの傍らにシングと共に姿を現す)奪還成功。彼は無事だよ。(サングルの背に)」
シング「……… !(閉じていた目を開け、そこに広がる外の世界を凝視して)………外………そうか………俺は………… ん?(脱獄の喜びに震えていたその時、ふとサングルの姿を見て))………おい、お前は………。 」
サングル「――――……(ヴェドリーと共に現れたシングと数秒目を合わせる。彼に何かを告げるわけでもなく、すぐに踵を返す) …『 闇の世界 』へ戻るぞ。船を"消せ"。
ヴェドリー「りょーかい。(指示に従い、突然跪いて甲板に掌を添える)
門番兵A「ば…馬鹿…な…ッ…!(これじゃあまるで…一昨日の大事件の二の舞じゃないか…!!やはり奴らは本物の…化け物だ…!!)(思いもよらなかった凄惨な結果に慄き、尻餅を突いてしまう)
ス ゥ ゥ ゥ …――――(唯一生存した一隻の軍艦が霧に包まれるかのように消滅し始める)
門番兵B「―――!?み、見ろ…!船が消えていく…!!一体何が…何がどうなっているんだ…ッ…!!?」
数時間後、政府本部から援軍が到着した頃にはインフェルノが出動した軍艦三隻が撃沈。残る一隻は怪奇現象により消滅。そして、囚人1名の脱獄が発覚した。大監獄で起きた襲撃事件は幕を閉じたのだった――――
最終更新:2018年05月21日 00:43