死神のキャラメル煮

※ちょい補足
このSSは兵器と神々と運命の歯車編の後日談です。

あの恐ろしい事件から2ヶ月の時が過ぎ、破壊された街の復興や、焼き尽くされた星々の再生に向けてのプロジェクトが順調に進み、世界は再生に向けて動き出し始めていた。
僕はプルスト・レイ・カローネ、9…いや、今年で10歳を迎えたばかりのお子様だけど、惑星神と呼ばれる神様の一員として現在活動中。
今日、僕は退院した助手と共に、久しぶりの休暇を家で過ごす事になった。
僕が現在住んでいるのは、下積み時代、師匠と共に過ごした激安家賃のボロアパートの一室。
仕事の都合で、職場で寝泊まりしたり、野宿することも多かった為、ここに帰って来たのは何日ぶりになるだろうか…とにかく久々の我が家である。

カレン「はぁ~、久々の我が家は落ち着きますね~。」

プルスト「我が家って…ここ僕の家なんですけど、カレンの家は別にあるでしょ。」

カレン「そうでしたね、えへへ…。」

プルスト「……ところで、その……腕の方は大丈夫なんですか?」

カレン「あ、はいっ、腕ならもうこの通り……完璧にくっ付きましたから、これからまたバリバリ働かせてもらいます!」

この子が僕の助手、カレン・ソル・リムル。
まだ6歳……ではなく7歳の女の子にもかかわらず、かなりの働き者で、惑星神に憧れている。
よくドジをやらかすが、いざという時頼りになったりする。
2か月前のあの事件で、彼女は負傷した僕を助けようとして、右腕の骨をバキバキに折られてしまった。
今はもう完治し、元の元気な彼女に戻ったわけだが…彼女が痛めつけられているのに何もできなかった、あの時の悔しい気持ちが、まだ僕の心に残ったままである。

プルスト「そう、良かった……それにしても、結構もらってきましたね、退院祝い……果物のバーゲンセールにでも行ってきたのかと思いました。」

カレン「あぁ、これですね……いや~、本当に夢でも見ているのかと思いました……憧れの惑星神の方々から、こんなに祝福を……思い出しただけでも泣きそうです。」

プルスト「もう泣いてたでしょうが、皆の目の前で……大声張り上げて顔面ぐしゃぐしゃにして……迎えに来て早々ビックリしましたよ、一体何事かと…。」

カレン「すみません、あんまり嬉しかったもので……面目ないです。」

プルスト「ったく……しかし、どれも高そうなフルーツだこと……うわ、何この林檎、まるで宝石みたい……。」

カレン「良ければ差し上げますよ、私1人じゃとても食べ切れそうにありませんから。」

プルスト「え?いや、別にそんな………   あっ。」

退院祝いのフルーツバスケットの中にあった、綺麗な林檎を見て、昔の記憶を思い出した。
まだ僕がハーディという死神の弟子として働いていた、下積み時代の頃…林檎しか食べられない師匠の為に、よく林檎を使った料理を作っていた。
腕にはそこまで自信が無かったものの、師匠はとても喜んで食べてくれていた。
師匠が好きだった料理を、彼女にも食べさせてあげたい―――――そんな思いが、ふと僕の胸をよぎった。

カレン「どうしました?」

プルスト「……そういや、僕からの退院祝い、まだでしたよね。」

カレン「えっ…は、はい……でも、気にしないでくださいね?プルスト様もお忙しいわけですし……。」

プルスト「そうか……じゃあ、これから作ります。」

カレン「…えっ?」

プルスト「昔、林檎しか食べられない師匠の為に、よく林檎を使った料理を作ってたのを思い出したので……それを作ろうかと、この上質な林檎を使って。」

カレン「へぇ~…プルスト様、お料理得意だったんですか?」

プルスト「いや、得意って程じゃないけど……あの時のお礼が、どうしてもしたいものでして。」

カレン「あの時って……えっ、そ、そんな、良いですよぉ、わっ、私はただ……その……えっと……。」

プルスト「僕もカレンの退院祝いがしたいんです、良いでしょ?」

カレン「はっ………はい………プルスト様のお料理、是非食べてみたいです……。」

プルスト「フフッ…期待して待っててくださいね。」ガラッ

カレン「………はぅ……あんな優しい顔のプルスト様、初めて見たかも………(*゚.゚)」ドキドキ



とは言ったものの、いざ冷蔵庫を開けてみると、中はほとんど空に近い状態になっていた。
実をいうと、あの事件に出くわす前に、冷蔵庫がほぼ空に近くなってきたため、仕事を早く終えて買い物にでも行こうと思っていたのだが、その矢先にあのような事態になってしまった。
事件が解決した後も、忙しい日々が続き、買い物に行く余裕が無かったため、冷蔵庫の事もすっかり忘れていた。
何か材料になる物は無いかと探していると、ふと冷蔵庫の隣の戸棚に置いてある砂糖の容器が目に入った。
その瞬間、ある料理…というか、デザートの名前が頭の中に浮かんだ。
林檎と砂糖、そして鍋1つあれば簡単に作れる、師匠がとても好んでいた美味しいデザート………  ―――――そうだ、それを作ろう。
僕はすぐさま準備に取り掛かった。


プルスト「……林檎が2個と、そんで砂糖が大体70グラムくらい……これで材料はOKと、そんじゃ先に林檎を切るか……。」トントントントン

プルスト「………次は、砂糖をフライパンに入れて、焦がすと……。」ザラザラ

プルスト「(ここが結構難しいんだよね……久しぶりだから、焦がし過ぎないように気をつけないと……。)」

カサカサカサカサ…>(:|三) 

プルスト「∑ (;゚⊿゚)げっ…な、何しに来たこいつ……あっち行けって、そこの林檎にたかったら殺すぞ!」

カサカサカサカサ…(三|:)< 

プルスト「あ、本当に行った……話が分かるのか、あのゴキブリ……  おっとヤバい、コンロの火点けるの忘れてた……。」パチン


数分後


プルスト「………よし、こんな感じで良いかな。」ジュワー…

プルスト「(後は林檎を入れて、林檎自身の水分で炒め煮にすれば……。)」ドサドサ ジュゥー…

プルスト「…………はぁ……懐かしいな、この甘い香り………。(*-‿-)」



カレン「………ん……何だろ、良い匂い………これは林檎の香りと、後は………。」

カサカサカサカサ…>(:|三) 

カレン「え?………キャーーーー!!ゴキブリーーーーー!!!!(; ロ)~゚ ゚」

バシィッ グシャッ


プルスト「えっ、ゴキブリ!?何で……  あれ?ゴキブリの魂反応が消えた……。」

プルスト「(……どうやらカレンが退治したみたいだ……てか、さっきの音からして、明らかに物で叩いたよね……変な所で潰してないだろうなあいつ………。)」

プルスト「(もしメスのゴキだったら、辺りに卵が飛び散って………あ~、想像しただけでもう……。)」

プルスト「(………いや、止めよう、調理中にこんな事想像すんの………気分悪くなる。)………さて、大分くったりしてきたし……そろそろかな。」



カレン「あ………あぁ……どうしよう………ラテーネ様から借りた本で……ゴキブリ潰しちゃった………どうしよう…………。(T△T|||)」グスン

プルスト「お待たせしました、カレン。」ガラッ

カレン「ビクッΣ( ̄Д ̄;)プ、プルスト様……い、いえ、全然大丈夫ですよ、あははは………。」

プルスト「………?変なの……ほい、出来ましたよ。」コトッ

カレン「? これは……?」

プルスト「『林檎のキャラメル煮』……名前の通り、林檎をキャラメルで煮て作りました、これに……バニラアイスを乗せて、と………はい、どうぞ、お召し上がりください。」

カレン「うわぁ……美味しそう………で、では、いただきますっ。」ジャクッ モグモグ…

プルスト「かなり久々に作るので、ちょっと不安だけど……どうですか、お味の方は?」

カレン「…………!美味しい……とっても美味しいです、プルスト様!」

プルスト「………!本当?美味しい……?」

カレン「はい…… モグモグ… ん~……甘酸っぱい林檎と、ちょっぴり苦いキャラメル……そこにアイスも加わって………はぁ………幸せです~。(´▽`*)」

プルスト「そう………喜んでもらえて、良かったです。」

何だろう、この気持ちは……。
作ったのは至って簡単なデザートなのだけど……この達成感というか、満足感というか……とにかく嬉しくてたまらない、無性に「やったー!」と叫びたい。
彼女の幸せそうな顔を見るたび、どんどん心の底から湧きあがってくる。

あの時……初めて師匠にこのデザートを作って、振舞った時……美味しそうに食べてくれる師匠の笑顔を見て、僕は人が変わったかのようにはしゃぎ回った。
最初は自信が無かったのに、一言「美味しい」と言ってもらえた瞬間、不安な気持ちは一気に吹き飛んで、嬉しい気持ちで心の中がいっぱいになった。

いろいろあって忘れかけていた…その時と同じ気持ちが、再び僕の心の中で溢れている。

(執筆中)

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最終更新:2024年04月11日 00:56