シルビア「じゃ、お願いしまーす♥」
バタン!
藤林如水「・・・・・。」
今日もあの女は私に仕事を押し付けフラフラと外へ行った。
このところ休んでいない、寝る間も惜しみ私は巡回や報告書作成にうちこんでいる。
藤林如水「いや、愚痴は言うまい。これも世界のため、大義のため・・・」
そういって私は鉛筆を握り、報告書に文字を書いていく。部屋には鉛筆が小刻みに机を叩き、滑らせながら文字を刻む音だけが響く。
部下1「(ガチャ)失礼します、●●
一等兵であります。中尉殿そろそろ稽古のお時間です。」
藤林如水「うん、わかった。みなにはすぐに行くと伝えろ、私が来るまでに準備運動は済ませておくように」
そして部下は私の指示を聞いた後敬礼し部屋を出る。
何時もの日課だ、私は
政府軍の抜刀隊を指導している。いつの時代も“もののふ”の魂を忘れさせないためにも・・。
4時間に及ぶ稽古を終えた後、仕事の部屋に戻ってきてみると・・・
私の机の上にドッサリとレポートが山積みになっている。その上にはメモ書きが。
『用事があるのでやっておいてくださーい♥
シルビアより 』
頭に血が上ってきた・・・すかさず冷蔵庫にある栄養ドリンクを一気飲みする。
一息ついてまた仕事に打ち込む。
次の日
シルビア「では、いってまいりまぁす♥」
バタン!!
藤林如水「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
これで何回目だ?・・・・一体あの女はどれだけ押し付ければ気が済む!!?
いらいらしながら、パトロールするために準備をし、部屋を出る。
すると
クレア「おーっと、これはこれは中尉殿。ご機嫌麗しゅう?」ニコッ
出た・・・あの女同様、苦手な女だ・・・。
クレア「おやぁ?中尉殿?こちらが挨拶をしたのですから・・・・相槌のひとつもして下さるのが、部下に対する礼儀ではございませんか?」クスクス
藤林如水「・・・・あぁ、そうだな。ごきげんよう、クレア准尉。変わりないかな?」
クレア「ええ、力は衰えたものの・・・元気いっぱいです。」
この女は・・・・・・。
クレア准尉 最近きた娘で、その腕を買われいきなり准尉へとついた少女。
ここに来る前はかなり危ないことをしていたとううわさを聞くが・・・そんなことは今はいい。そして、シルビアのお気に入りでもある。
クレア「これから巡回ですか?中尉直々になさるとは・・・いやはや、もののふとは実に実直な戦士ですな。私の部下にも見習わせたいものです。」クスクス
藤林如水「言いたいことはそれだけか?・・・失礼する。」
クレア「あ、そうだ・・そういえばですねシルビア中尉が・・・・・・ありゃ、もういない・・・・」
ああまったくイライラする・・・・・ああいう輩を軍に加えるなど・・・一体、元帥殿や大将殿たちは何を考えておられる!!
正午----
やっと一息つける。
街のカフェに入り軽食とコーヒーを頼んだ。
巡回をする時のささやかな楽しみになっている。
カフェの内窓から外を見渡す。行きゆく人々を見て再度自分は武士であるという自覚をする。
藤林如水「私が・・・しっかりしなくては・・・・・・!」
食事を済ませ、外へ出る。すると、目の前にシルビアの姿が映る。
笑っている・・・楽しそうに、気楽に、何も考えず、ただ気の赴くままに、フラフラと・・・。
私はなんだ?何時間も机の上で報告書と格闘、やってもやっても増えていく仕事。部下の指導に巡回・・・。どれだけ働いても働いても報われない。
その時、私の腹の中で沸々と怒りが込み上げてきた・・・。
その日の夜
シルビア「藤林さぁん♪」
シルビア「ねぇえ、報告書ばっかり書いてないで私の話を聞いてくださいな♪」
シルビア「・・・?藤林中尉?」
シルビア「え?」
シルビア「え、えーっと・・・」
私はゆっくりと椅子から立つ。
藤林如水「アクセサリーショップ・・・ゲームセンター・・・本屋・・・色々行っておられましたな?仕事をさぼってでもいかなければならないのですかな?そこらは?」
シルビア「・・・えー、実はですね・・・」
シルビア「え?」
藤林如水「いい加減にしろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
怒鳴り声が部屋中に響き渡る、シルビア顔が固まる。
藤林如水「いったいあなたは何を考えている!!!?いつもいつもいつも仕事を人に押し付けて!!!!ああん!!?ロクに働きもせず鍛えもせず毎日毎日ダラダラダラダラと!!やる気がないのなら今すぐ辞めろ!!」
私の罵声に彼女は哀しそうな顔をする、その後私は彼女に何度も酷いことを言った。ひどい言葉を浴びせるたびに、彼女の貌はどんどん悲痛の表情となっていき、ついには涙を流し始めた。
シルビア「・・・・く・・・ひっ・・・・・・・・ぅぅ・・」
藤林如水「はっ!!まぁた嘘泣きですかな?いいですなぁアナタは!!女だからという理由で泣けば大抵のことは許してもらえるのですから!!」
そういった瞬間、彼女は踵を返し泣きながら走って部屋から出て行った。
部屋に静寂が走る、これでよかったのだ・・・すると、今度はクレア准尉が入ってくる。
クレア「随分と派手に怒鳴り散らしましたね、こちらまで聞こえていましたよ?」
そうか、と私は力なく答え椅子に座った。
クレア「・・・シルビア中尉が何故・・・最近いつもにもましてサボるようになった理由をご存知ですか?」
サボりにそこまで尊大な理由があるのか?
クレア「・・・今日が何の日か、ご存知ですか?」
- ?今日は確か、私の誕生日・・・だった・・・よな?・・・・・まさか・・・。
クレア「彼女は彼女なりに考えました・・・普段サボりまくって嫌われている自分に何ができるだろう・・と。どうすればいつもお世話になっている藤林中尉殿にお礼ができるだろう・・と」
クレア「彼女は何度も私に相談してきましたよ?・・・やたら体を触ってきますが。でsが、貴方には届かなかった。いや、むしろ日頃の彼女の行いからして、当然なのかもしれませんな。」
彼女は・・・私を祝おうとしていたのか?私を・・・・。
外は雨が降っている、酷い降りようだ。
クレア「アナタが決めてください、彼女とどう接するか・・・・では、失礼いたします。」
准尉が出て行ったあと、また部屋に静寂が走る。それと同時に雨の落ちる音が聞こえる。
私はしばらくそとを見ていた。
その雨はまるで、あの時流していた彼女の涙のようであった。
YUETSU END
最終更新:2024年04月11日 00:41