クレメンティーネ「美味しくないわ」

ちょっとだけ、キャラ崩壊があるかもしれません。




朝5時。
何時も通り、理科室で目覚める。
あれからちゃんと一人きりで綺麗にして、今や埃一つ無い。
力仕事も全部一人でやったから、正直疲れた。
私の朝は早い、というよりこれぐらいに起きないと気が済まないタチだった。
朝から顔を洗い、ぼさぼさの頭をシャワーを浴びながら整える、整えるついでに薬のレシピを考える。
私の朝ご飯は、お手製の薬。
腹持ちがいいし、栄養価も毎日これを摂取しているだけで全て基準を満たせる。
でも・・・

クレメンティーネ「・・・美味しくないわ。」
まずい、致命的に。
栄養価がいいという理由で同期や後輩に勧めてみたものの、「まずい」やら「美味しくない」やらの一点張りだった。
実際、私が飲んでもまずいと思う。
私の朝ご飯はおしまい、ここからは新薬開発、素材調達に努める。


朝8時。
他の仲間達も大体起きて、訓練に備えているいる中、私は一人で薬の開発。
今日はいいものを閃いた。
皮膚を軟化させて、相手の装甲を弱める薬。
これが完成したら、物理攻撃の類の効果の少ない堅牢なソロモンにも効果的な打撃が与えられるはず。
ちょっとだけ、張り切る。


朝10時。
スケジュールの訓練が終わる。
私の訓練は主に投擲の訓練や応急処置の訓練、基本的に攻撃は薬をソロモンに当てて行う。
流石に接近して投げるのは私にはリスクが大きすぎる、だから遠くからでも当てられるように投擲の訓練。
投げナイフを使わされるのだが、薬入りの瓶より軽い。
もうちょっと、重いもので訓練させてほしいものだけれど・・・。
応急処置については、もう説明の予知が無いと思う。


正午。
試薬が完成する、効果のテストはそこにあった人体模型でやってみる。
人体模型に、試薬を一滴垂らしてみた。
すると、垂らした腕の部分がぐにゃりと湾曲した。
ちょっと手で触ってみると、とても柔らかい。
思わず「よしっ。」とガッツポーズ、後はこれを量産するだけ。
一息ついて、お昼ご飯にお手製の薬を飲む。
クレメンティーネ「・・・美味しくない。」
苦労の後ならば、まずいものも少しはマシになる、なんてのは儚い夢だった。
お昼時、他の皆は普通にご飯を食べている。
何だか、自分だけ無理に惨めな目に遭ってる気がしてきた・・・でも体に良いから・・・うん、体に良いから・・・。
良薬、口に苦し、いや、ちょっと苦すぎるわ。


昼3時。
訓練も終わり、私はまた理科室へと戻っていた。
流石にお手製の薬の味に耐えかねて、私は味の改良を試みた。
でも、成分をそのままに味だけ変える、というのは非情に・・・その、面倒くさい。
いっそのこと成分を変えてみる?
だめ、それだとまたバランスを整えないといけなくなる・・・。
苦悩に次ぐ苦悩、片方に手を伸ばすと片方が離れていく・・・。
「人間、どうしても欲っていうのは振り払えないものね、栄養価はいいから味には目を瞑ればいいだけなのに。」
なんて言いながら、当の私は結局改良の作業を進めていた。


夜8時。
今日の最後の訓練も終えて、一向に進む気配の無いお手製の薬の味の改良に着手していた。
そもそも、このまずさは何が悪いの?なんて考えていたら、一部の成分が青汁とかなり合致している事に気付いて、私は絶句した。

クレメンティーネ「・・・それは、美味しくはならないわ・・・。」
自分が間抜けだと思った。
たまらなく恥ずかしくなった。
そして、そこには枕に顔を埋めて足をじたばたさせている私がいた。
この時の私を写真に撮られでもしていたら、多分泣く。


夜10時。
成分を見直して、栄養価も以前と殆ど変化なし。
そして、根本的に苦味を生み出しているであろう成分を引き抜いて、甘みのある成分等を多めに投入。
ここまでしたのだ、何かいい結果が出る筈・・・。

覚悟を決めて、一口。
口当たりはいい、問題は味・・・。
味覚が、はっきりとしてきた・・・。

クレメンティーネ「うっ・・・」

















「美味しくないわ。」



終わりなのよ。








クレメンティーネ「何でこうなるの・・・?」
どうしようもない無力感に、力なく握っていた空っぽの試験管を床に落とす、当然ながら割れた。
クレメンティーネ「あっ・・・、やっちゃったわ、片付けないと・・・いっ!」
何も考えずに割れたガラス片を触って、指が切れた、指の先から赤い液体が滲み出て来る。

クレメンティーネ「ひっ・・・!いや、や・・・やぁ・・・」
血が怖い、怖い、すごく怖い、言葉にならない。
クレメンティーネ「やめ・・・こわい・・・こっち、こないで・・・!」
自分の手に付着した血を見て怖がって、後ずさりしながらも遠ざからない理由が分からずに子供のように瞼を濡らしながら震えている自分が、そこにはいた。

その後、試験管の割れた音に気付いて駆けつけた同期に血を拭いてもらうまで、ずっとそんな一人漫才をしていた。
後輩にバレなかったのが、不幸中の幸いだった。

今度こそ終わりよ。

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最終更新:2024年04月11日 02:07