ずっと、この偏屈でも変わらない日常がそこにあればいいと思っていた。
自分が、何かをすることで、不偏の救いが世に齎されると思っていた。
世界は、何も答えをくれなかった。
虐げられる者は、虐げられるべくして虐げられた。
それは確かに、起こるべくして起こっていた。
無力が、選ぶ事もできずに、無力であることを強いられ、ただ屈するのみ。
抗うことが、馬鹿らしくなった。
せめて、ただ。
このどうしようもない世界が、これ以上悪くならないよう。
流されるまま、何かを見ていた。
流されるまま、世界を巡っていった。
流されるまま、生きている。
いつしか流れは止まって、俺は見ることを忘れた。
止まった流れが、再び動き出すことはなかった。
ただ、これ以上悪くなりはしないだろう。
いつかまた、動き出すことを願う。
不変が、普偏ではないと願うばかり。
取り憑かれていた。
生きる事の意味を、失いかけていた。
ただ、生きるだけでいいと思っていた。
自分を喪っていたのかもしれない。
それでも、俺は生きていた。
生きていたから、振り払うことができた。
生きていたから、奇跡に出会えた。
不変など、ありはしない。
俺がこうして変われたのなら、もう見失うことはない。
救いの手は、きっと不偏であるはずだ。
明日も変わらぬ平穏が。
退屈と不足感に満たされた日々が。
ずっと続いていくものだとばかり思っていた。
この普遍が永遠に続くとばかり思っていた。
不変なんて何処にもありはしなかった。
俺に出来ることは、ただ一つとしてありはしなかった。
日常は唐突に終わりを告げ、地獄がこう言った。
「初めまして、これからお前を永遠に苦しめてあげよう。」と。
俺が出来たことは、この絶望を噛みしめることと、せめてこの地獄が不変ではないことを祈るだけだった。
支配者だけが、全てを奪っていった。
選択肢を、成果を、得たものを、希望を。
普遍の理だった、理不尽が世界に満ちていた。
何をしても無駄だった、それは不変だった。
いつしか私は頑張ることをやめた、世界が斜に見えるようになった。
気がつけば、全く違う世界が広がっていた、私はそこでも足掻いた。
だが、どこまでも世界は不変だった。
絶望と失望が、私の心に木霊した。
女だというだけで、何かを決められることが嫌だった。
強い意思があっても認められないのが憎かった。
自らの力だけで、ただ上へと登っていった。
それでも頑なに認められないのが腹立たしかった。
兄弟は皆不偏に認められていた。
いつしか自分の力で、兄弟を打ち破ったこともあった。
力があることを証明しても、認められなかった。
だが、今は違う。
力があれば、あるだけやれる事は無限に増えていく。
力がなければ、この手は何もつかめない。
変わろうと願えば、いくらでも変われるだろう。
繰り返すだけだが、満ち足りている。
幸せは感じていないが、これでいいと思っている。
空白と空洞ばかりの、自分自身が何よりの課題だった。
変わらない日常も悪くはない。
けれど、私の空白は埋まらない。
いつかこの空白を埋める答えが、手に入るのだろうか。
ただ、不変の平穏を願うばかりでは、何も得られないのかもしれない。
だが、心の何処かでそれを切望している自分がいた。
何故なのか、という問いかけには答えが返ってこなかった。
ああ、空白がそこには―――
最終更新:2024年04月11日 03:21