悪魔城【Go Tell Aunt Rhody 】

「Go Tell Aunt Rhody……、Go Tell Aunt Rhody」

「……なに? 暗いからやめろ? ……随分な言いようだリズ。キャロルを落ち着かせろと言ったのはお前だろうに」

「そんな暗い歌は頼んでない? ……ふん、我儘な奴め。昔からそうだった、リズ。……いや、エリザベス?。俺をあの死の孤島から拾い上げた時から、お前は何も変わらない。」

「ハハハハハ! 軽口も叩きたくもなろうさ! まったくのお笑いだ! かつての、かつての3人がこうして同じ部屋にいるのだからな!フゥ……紅茶でも入れよう。今ジゼルは現場から動くことは出来ん。安心しろ、失望はさせない」






「……どうかね? 味は?」

「む? 微妙? ……と言いつつも、そうもすっきりと飲み干されると、文句も言えんな」

「……さて、茶菓子代わりに小噺でもしよう」

「知っているかエリザベス? エディ?から聞いた話だが、"ゴクドー"という一部のマフィアは、相手に責任をとらせるときに小指を斬らせるらしい」

「エンコヲツム、というらしいのだが……我々にはない風習だ」

「……今、カチコミにきた連中にも、それをさせようか? 一網打尽にし……全員の小指を……」

「そう睨むな……完全なる悪魔になりたいのならこの程度のブラックジョークは優雅に聞き流せ」

「それとも……彼奴等に"期待"をしているのではあるまいな? 夜明けの光がお前達2人を優しく包むと……」

「笑止ッ!! お前は進んで夜を選んだ、否、夜の檻に姉妹共々入り込んだのだ!」

「看守は我等構成員、最早逃げる隙などないぞ? 過去と共に寄り添い、泥にまみれたような日常を征くのだ」





「……槍を収めろ、殺すのなら……すべての事が終わってからにするのだな」

「ククク、さっきまでとは打って変わって……不愉快そうな顔になったな? まるで欲しかったおもちゃを買ってくれなかった童のようだぞ?」

「クハハハ! そう怒るな、からかったことは謝罪しよう。あとでジゼルに報ぜられてもかなわんからな。怒ったアレは俺でもどうしようもない」

「……しかし、ふむ、主を怒らせておいてこのままお開きというのも紳士としてあるまじき行為だ。……面白いものを見せてやる」


<<1枚のボロ写真>>


「1人の女に、2人の子供……。なんだと思うかな?」

「ふふふ、わからんか? 俺の妻と子だ。…… ……なんだその意外そうな顔は? あのな、俺をいくつだと思っている」

「知っての通り俺は元政府軍将校……だが、内部に蔓延る暗い欲望共に俺は食い物にされ、死の孤島へと閉じ込められた…十何年もな」

「島へ行かされる5年前に、彼女と結婚し子を授かった。彼女……エヴリンは良き妻だった」

「幸せな家庭を築く……はずだった……」

「現在に至るも……彼女と子供たちの行方はわからない……かつての家は廃屋と化し、残されていたのはカビ臭い部屋とリビングぐらいだったな……」

「……孤島でいた間に、そのときにはもうすでに、俺はすべてを失っていたらしい」



「……俺としたことが、自分で入れた糞マズイ紅茶の毒気にやられたらしい。こうも口を滑らせてしまうとは……」

「……配置に戻る、俺は……お前達の過去に寄り添おう。永遠に訪れぬ夜明け、呪いすらも包み込む宵闇よ」



 Go tell Aunt Rhody…Go tell Aunt Rhody…Go tell Aunt Rhody…♪

 Everybody is..Everybody is..Everybody is..♪


 Dead……



 男が去った部屋から、ポツリと漏れた少女の歌。
 口ずさんだ歌は、眠りにつく妹の髪を静かに撫でた。

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最終更新:2025年01月21日 03:16