はめ手
はめ手を知っておくことは実はそれほど重要でもありません。
これによって負けることは、強くなってくれば自然となくなってくるし、はめ手によって勝つこともできなくなります。
はめ手ははめ手であるが故に失敗すれば不利になることが多く、あまりお勧めできません。
それでもあえてこの章で紹介するのは、定跡を覚える前にいくつか知っておくべき要素がはめ手にはあるから……ということにしておきます。
それにはめ手で負けるのは、誰だって嫌だと思います。
先ずは有名な二つのゲームを見てみましょう。
フールズメイト
はめ手とはちょっと違うが、チェスにおいて最短で勝負がつく試合です。
1. g4?!
グローブと呼ばれる戦法。あまりお勧めできないが、知らない相手には有効だと思います。
1...e5
2. f3??
何を意図しているのか分からない。当然 2. Bg2 とすべきです。
2...Qh4#
わずか2手で終了。バカがやりそうな試合なので、フールズメイト(バカ詰め)と呼ばれます。
リーガルメイト
レーガルメイトと訳される場合も。リーガルは人の名前です。
1. e4 e5
2. Nf3 Nc6
3. Bc4 d6
フィリドールディフェンスと呼ばれる戦法。現在マスターの間で使われることはほとんどありません。
4. Nc3 Bg4
5. h3!
白の巧妙な罠。
5...Bh5?
5...Bxf3 が絶対手。
白がやや優勢ではありますが、勝負はこれからです。
6. Nxe5 Bxd1??
ポーン損ですが、6...dxe5 として我慢するべきでした。
7. Bxf7+ Ke7
8. Nd5#
このような形をリーガルメイトといいます。意外と見る場面が多いかもしれません。
あと、二つほど見ておきましょう。
窒息メイト
1. e4 c6
2. Nc3 d5
3. Nf3 dxe4
4. Nxe4 Nf6
カロカンディフェンスです。非常に優秀で、マスターも良く使います。
最近、日本の上位者がよく使う定跡のひとつです。
白の2手目 2. Nc3 は珍しい部類の手ですが、無い手ではありません。
5. Qe2
はめ手。ビショップの道を塞ぐので、一見すると悪手にも見えますがそれほど悪い手ではありません。
ビショップは将来的に g2 に上げる計画です。
黒が正しい手順を選んで指しても白がやや良いでしょう。
5...Nbd7??
6. Nd6#
ピンによる窒息死です。キングの行き場所がなくなっています。
これは昔のチェスの名手、ケレスの実践譜にもあります。
クイーン捕獲
1. e4 d5
2. exd5 Qxd5
3. Nc3 Qa5
4. d4 Nf6
スカンジナビアンディフェンスと呼ばれます。早い段階でクイーンが出てくるので一般的には悪い定跡とされていますが、実はマスターもたまに使う玄人向けの定跡。
5. Bd2 Nc6?
普通は 5...c6 とします。クイーンの退路をつくるためです。
6. Bb5 Bd7??
7. Nd5
クイーンが捕獲されてしまいました。b5 のビショップを取ればナイトフォークです。
最終更新:2010年08月24日 19:23